
- 弁護士に依頼すれば、裁判所の申立てなどの手続きは代理で行ってもらうことができる
- 申立人本人が裁判所に行かなければいけない場合はある
- 弁護士がサポートしてくれるので、裁判所への出頭を怖がる必要はない
【Cross Talk】自己破産をしたいと思うのですが、やはり裁判所に出頭しなければいけないのでしょうか。
借金を返すのが難しくなったので、裁判所に自己破産の申立てをしたいと考えています。自己破産をするためには、やはり裁判所に行かなければいけないのでしょうか。
平日は仕事がありますし、「裁判」というとなんだか怖いイメージがあるので、できるだけ裁判所に行くのは避けたいのですが…。
弁護士に手続きを依頼することで、申立てなどの手続きは弁護士が代理人として行うことができますので、ご本人の負担は大きく軽減されます。それでも一部の手続きは申立人本人が裁判所に出頭して行わなければいけないのが事実です。とはいっても、弁護士が同席できますし、時間もそこまでかかりませんので心配は要りません。
そうなのですね。安心しました。では、どのような手続きで裁判所への出頭が必要になるのか教えてください。
裁判所というと、罪を犯した人が裁判を受けたり、もめ事が争われたりする場所というイメージがあり、「なんとなく怖そう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。自己破産は裁判手続きですので、裁判所に書面を提出したり、本人や代理人が直接裁判所に出頭したりすることで手続きが進行します。
とはいえ、全ての手続きに本人が出頭しないといけないわけではありませんし、本人が出頭しなければいけない手続きもそこまで大きな負担になるようなものではありません。
破産手続きには大きく分けて「同時廃止」と「管財事件」がありますので、2つに分けて解説いたします。
同時廃止の場合

- 申立ての手続きは弁護士が行うことができる
- 裁判官の質問に答える免責審尋は本人が出頭する必要がある
自己破産の種類の一つに「同時廃止」というものがあると聞いたのですが、これだと裁判所に呼び出されて出頭する義務はありますか?
はい、免責審尋という手続きがあり、これには申立人本人が呼び出されます。難しいやりとりはないので心配しすぎる必要はないですよ。
同時廃止では裁判所から呼び出されるのでしょうか?
同時廃止とは?
同時廃止とは、自己破産手続きの種類の一つで、債務者の資産では破産手続きの費用をまかなえない場合に、破産手続き開始決定と同時に、破産手続きを終了するものをいいます(破産法216条1項)。
破産手続きでは、債務者の財産をお金に換えて、そのお金を債権者に配当します。
しかし、債務者に破産手続きでお金に換える対象となる財産がない場合には、手続きを行っても配当をすることができません。
そのため、このような場合には、破産手続き開始決定と同時に、破産手続きは終了します。
これが何を意味するかというと、裁判所から破産手続きを主導する役割をもっている破産管財人が選任されずに破産手続きが終了することを意味します。
そのため、破産管財人と打ち合わせをする管財人面接が行われませんので、破産手続きで呼び出される回数が少なくなります。
関連記事:自己破産手続は2種類!同時廃止と管財事件って何?それぞれの違いとどちらが簡便かを解説
申立て
破産手続きは申立書や添付書類を裁判所に提出することによって行います。申立書に記載しなければいけない事項や必要な添付書類は法律や各種規則で定められており、書類に不備があると修正を求められることがあります。資料の収集や必要事項の記載を漏れなく行うことは決して容易ではありません。
弁護士に依頼することにより、破産をするために必要な書類の収集の指示や申立書の作成を行ってもらうことができます。また、申立書や添付書類を裁判所に提出する作業も弁護士が代理人として行うので、本人が直接裁判所に足を運ぶ必要はありません。
裁判所によっては、申立時に裁判官との面接が行われるところ、弁護士が代理人として面接に出席する場合は本人が出頭する必要はありません。
免責審尋
免責審尋とは、破産を申立てた方が免責をするのにふさわしいかどうかを裁判所が判断するために、裁判官が申立人本人に質問をする手続きです。この手続きは申立人本人が裁判所に出頭して行う必要があります。
「審尋」というと裁判官から問い詰められるようなイメージを持つかもしれませんが、あらかじめ申立て時に詳細な資料を提出しているので一からすべての事情を聴かれることはありません。聞かれる内容は、「住所、氏名、本籍に間違いはないか」「申立書類の内容に間違いはないか」「免責不許可事由にあたる事情はないか」といった質問ですので、その質問に正直に答えれば問題ありません。裁判所によっては、この審尋期日の際に経済的な再建ができるかどうか、現在の生活状況等の確認をとることもあります。
当然のことですが、くれぐれも嘘はつかないようにしましょう。
免責審尋当日の手続きの流れについては弁護士が事前に説明しますし、当日も弁護士が同席しますので心配に思う必要はありません。
管財事件の場合

- 管財事件の場合は、破産管財人との面接、債権者集会、免責審尋のために裁判所に行く必要がある。
- 申立ては代理で行ってもらうことができる。
破産手続きのもう一つの手続きである管財事件の場合には裁判所に呼び出されるのでしょうか?
管財手続きの場合には債権者集会と同時に免責審尋が行われることが多く、ここに申立人本人が裁判所から呼び出されます。また、選任された破産管財人と面接することになり、裁判所ではないのですが管財人の事務所に赴くことがあります。
管財事件とは?
管財事件とは、破産管財人が選任される破産手続きのことをいいます。
法律上は、上記で説明した同時廃止手続きが例外で、原則として管財事件となります。
管財事件でも、借入額が少なく、手続きを簡易に終わらせる少額管財と、その他の通常管財(特定管財)に分かれます。
少額管財の場合には手続きが簡易に終わるので破産管財人への報酬も少なくて良いというメリットがあります(東京地方裁判所の場合少額管財であれば20万円~・特定管財になった場合には50万円~が必要です)。
実務上、個人の自己破産手続きでは、代理人弁護士に依頼している場合には、少額管財で手続きを進めることが多いといえます。他方、代理人弁護士に依頼していない場合、通常管財事件として手続きが進められることが多いといえます。
申立時
同時廃止の場合と同様、申立ての手続きは弁護士に代理で行ってもらうことができますので、本人が出頭する必要はありません。
ただし、裁判所によっては、破産手続き開始決定を出すにあたり、本人との面接が設定されることもあります。
また、管財事件の場合は破産管財人と面接する必要があります。破産管財人とは、破産する人の財産を現金に換えて債権者に配当する作業を行う方で、裁判所が弁護士の中から選任します。
破産管財人との面接では借金をすることになった経緯や現在の収入や財産などが聞かれますが、申立時の代理人弁護士も同席してくれますので不安に思う必要はありません。
債権者集会
管財事件の場合には債権者集会があり、そのために裁判所に出頭する必要があります。債権者集会とは、破産者の財務状況や破産した原因の調査結果を債権者に伝えるための手続きです。
「債権者が集まる」ので債権者から、厳しい質問や非難を受けることもあります。もっとも、債権者が消費者金融などの金融機関である場合には、債権者が集会に出席しないことが多いので、過度の心配は不要です。
免責審尋
管財事件でも同時廃止の場合と同様に免責審尋が行われることがあります。債権者集会など他の期日と同時に行われる場合もありますが、別の日に改めて出頭しなければいけないこともあります。
自己破産で呼び出される回数の目安

- 同時廃止の場合は免責審尋のために1回呼び出されることが多い
- 少額管財の場合は債権者集会・免責審尋で1~2回、通常の管財の場合はさらに多くなることも
自己破産をすると裁判所に呼び出されることはわかりましたが、何回ぐらい裁判所に行かなければならないのですか?
裁判所に呼び出される回数の目安は、破産手続きの種類によって異なります。同時廃止の場合、呼び出されるのは1回だけが多いでしょう。管財事件の場合、少額管財なら1~2回程度ですむことが多いですが、通常管財の場合はさらに回数が多くなることもあります。
同時廃止
同時廃止の場合に破産者本人が出席する必要があるのは、免責審尋だけです。
一般的な同時廃止の事件の場合、免責審尋は1回の期日で終わることがほとんどなので、裁判所に呼び出されるのも1回だけが多いです。
管財事件・少額管財事件
同時廃止と異なり、管財事件の場合は免責審尋だけでなく、債権者集会にも債務者本人の出席が必要です。
もっとも、少額管財の場合、同じ日に債権者集会と免責審尋を行われることもあり、その場合にはその日1回だけの出席となることになります。
一方で、通常管財の場合、手続きが簡略化されていないうえに、換価(処分)しにくい財産が含まれている、一部の債権者だけに不平等な弁済をしたことで流出した財産を取り戻すといった、破産管財人の業務が複雑で時間を要するものになります。
その場合、債権者集会が1~2回では終わらず、債権者周回のたびに何度も裁判所に呼び出されます。
裁判所に行かなくて良い場合はある?

- 同時廃止の場合は書面審査のみという運用を行っている裁判所もある
- 病気等で裁判所に行くことが難しい場合も行かなくて済むことがある
同時廃止や少額管財なら裁判所に行く回数はそれほど多くないことはわかりましたが、裁判所に行かずに自己破産の手続きを進めることはできないのでしょうか?
破産手続きの運用は、各地の裁判所ごとに違っており、同時廃止の場合は書面審査のみで破産者の出廷を不要としているところもあります。また、病気等が原因でどうしても裁判所に出廷することが難しい場合も、出廷せずに手続きを進めることができることがあります。
自己破産は、破産者の住所地を管轄する地方裁判所に申立てます。
破産手続きの運用は、各地の裁判所によって異なっており、同時廃止の場合には書面審査のみで破産者の出廷を求めない運用を行っている裁判所もあります。
そのため、気になる場合には、ご自身の住所地を管轄する地方裁判所の破産手続きの運用に詳しい弁護士に出廷の要否を確認するといいでしょう。
また、病気等で破産者が裁判所に出廷することが困難な場合、代理人弁護士が裁判所に書面を提出して出廷できない事情情を説明することで、破産者の出廷なしで破算手続きを進めてもらえることがあります。
関連記事:裁判所からの呼び出しを無視して書類送検に?民事執行法の改正について確認
自己破産のときに裁判所に払う費用は?

- 裁判所に支払う費用の種類
- 管財事件の場合には管財人の報酬分がかかる
同時廃止と管財事件があるということは、この2つの手続きに費用の違いがあるのでしょうか?そもそも自己破産のときに裁判所に払う費用はどうなりますか?
2つの手続きで破産管財人の報酬の部分が大きく異なります。自己破産のときに裁判所に払う費用について確認しましょう。
自己破産のときに裁判所に払う費用について確認しましょう。
弁護士に依頼する場合
弁護士に依頼をして自己破産を申立てる場合には、依頼する弁護士費用の他、以下のような費用が必要となります。
種類 | かかる費用(東京地方裁判所の場合) |
---|---|
同時廃止 | 申立手数料:1,500円 予納郵券:4,200円 予納金:11,859円 |
管財事件 | 申立手数料:1,500円 予納郵券:4,200円 予納金:18.543円 管財人報酬:20万円(少額管財の場合)以上 |
自分で手続きを進める場合
一方、自分で手続きを進める場合には、同時廃止として手続きを進めることができない可能性があります。その場合、管財事件として処理されることになり、さらに通常管財事件とされる場合もあるため、管財人報酬の部分が少額管財の場合以上にかかることになります。
自己破産の費用については、こちらで詳しく解説していますので参考にしてください。
「絶対に損したくない!」という人へ!自己破産をするためにかかる費用を解説!」
まとめ
自己破産をすると裁判所から少なくとも1回ないし2回以上は呼び出さることになります。
裁判所に呼び出されるということは、難しい知識を勉強する必要があり、ミスをすると取り返しのつかないことになる、と怖がる方も多いのですが、自己破産に関する簡単な内容を確認するに留まります。
他にも相談がある場合には、弁護士に相談してみてください。