自己破産できちんと借金を清算することを条件に援助を受けられる場合には何をしてもらう?
ざっくりポイント
  • 自己破産をするためには、弁護士費用や裁判所に支払う予納金などがかかる。
  • 親族・知人から援助金を受けられるときは、自己破産のための費用に充てた方がいいことが多い。
  • 借り入れではなく贈与であることを裁判所に証明できるようにしておくことが重要。

目次

【Cross Talk 】親族・知人からの援助金を返済に充てない方がいい理由は?

私は長年、借金で苦しんできましたが、返済の目処が立たないため、自己破産することを決意しました。
そのことを親に話したところ、「少しでも生活の足しになれば」と50万円を援助してくれました。本当にありがたいのですが、使い道に悩んでいます。
やはり援助してもらったお金は債権者である金融機関に返済すべきでしょうか。

援助金は50万円ということですが、借金の総額はいくらでしょうか?

消費者金融3社から借り入れがあり、総額は約400万円です。

では、援助金で借金を全額返済することはできないのですね。それでしたら、援助金で債権者に返済することには慎重になった方がよいと思われます。

返済しない方がいいのですか?それはなぜなのでしょうか。

自己破産をするにも様々なお金がかかるので、援助金の使い道は慎重に検討する。

自己破産の手続の前に親族・知人から援助を受けた場合、援助金を何に使うかが問題となります。援助金の金額などにもよりますが、債権者に返済するのでなく、弁護士費用など自己破産のための費用に充てた方がよいケースが多いです。
また、確実に免責を受けるため、援助者である親族・知人に一筆書いてもらうなどの対応を依頼した方がいいこともあります。

自己破産をすることを前提に援助を受けるのであれば何をしてもらうか

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 自己破産することがわかっているなら援助金は債権者に対する返済には使用しない
  • 弁護士費用や管財人への引継予納金、官報公告費用に充てることは問題ない

親族などから援助金を受けた場合には何に使用すればよいのでしょうか。

自己破産をするためにもお金がかかります。そこで、自己破産の手続をすることが確実であれば、弁護士費用や裁判所に納める予納金に使用することをおすすめしています。

逆にやってはいけないことはなんですか?

浪費してしまったり、一部の債権者にだけ支払ってしまうと、免責不許可事由に該当し裁判所が免責を認めてくれないおそれがあります。

そうなのですね。もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

借金返済を肩代わりしてもらえれば自己破産をする必要はない

まず、親族・知人から援助してもらえる額が借金の総額を上回る場合には、借金の残高をゼロにすることができますので自己破産をする必要はなくなります。残高をゼロにすることができない場合であっても、援助分を返済に充当した後の残高なら自力で返済できる場合は自己破産をする必要はありません。

避けるべきこと

親族・知人から援助を受けても破産せざるを得ない場合には、援助を受けた分の金銭を何に充てるかが問題となります。
絶対にやってはいけないことは、援助金を浪費してしまったり、パチンコや競馬などのギャンブルに使用することです。その理由は、浪費や賭博によって著しく財産を減少させてしまうと、いざ破産をしようと思ったときに免責不許可事由に当たり自己破産が認められなくなる可能性があるからです。

債権者(消費者金融等)への返済に充てることにも慎重になるべきです。前述したように、援助分を返済に充てることにより自己破産しなくて済むなら問題ありません。
しかし、結局自己破産するしかない場合、返済に充てたことによって自己破産するために必要となる弁護士費用が支払えなくなることにもなりかねません。
そうなれば、返済することも自己破産することもできない「八方塞がり」の状態に陥ってしまいます。また、債権者が複数いる場合に一部の債権者にのみ返済をすると、「偏頗弁済(へんぱべんさい)」という免責不許可事由になります。

臨時の収入を返済に充てるというのは一見すると正しい選択のようにも思われますが、自己破産以外に借金の問題を解決するための手立てがない状況であれば、安易に債権者に返済することは避けるべきです。

使ったり返済したりせずに預貯金に回せばよいのではないか、と思われるかもしれませんが、これも必ずしも正解ではありません。自己破産するとき、手元に一定以上(東京地方裁判所の基準では20万円以上)の財産があると、「同時廃止事件」ではなく「管財事件」という手続になります。管財事件とは、破産者の財産をお金に換えて債権者に配当するための手続です。この手続になると裁判所に支払う費用が高額になり、手続も複雑になります。

弁護士費用を援助してもらう

では、親族・知人からの援助金は何に使用すればよいのでしょうか。
まず考えられるのは、援助金を自己破産のための弁護士費用に充てる方法です。ときどき資産が完全に尽きてから弁護士に自己破産を依頼しようとする方がいらっしゃいますが、自己破産の手続を弁護士に依頼するためには弁護士費用がかかります。つまり資産が完全に尽きてから弁護士に依頼しようと思っても遅い、ということになります。
しかし、借金に苦しむ方にとって弁護士費用を自ら捻出するのは簡単なことではありません。そこで、親族・知人からの援助金を弁護士費用に充てることが第一に考えられます。

管財人への引継予納金

弁護士費用以外にも、裁判所で自己破産の手続をするために申立人が負担しなければならない費用があります。そのうちの一つが管財人への引継予納金です。
管財人とは、一定の財産を有する人が破産するときの管財手続と呼ばれる手続において、破産者(破産する人)の財産を処分して債権者に配当する手続を担当する人をいいます。通常は弁護士の中から裁判所が選任します。

引継予納金とは、この管財人に支払われる報酬のことで、管財事件では破産者が必ず負担する必要があります。東京地方裁判所では引継予納金の額は最低20万円とされています。
親族・知人からの援助金を引継予納金に充当するのも一つの手段です。

官報公告費用

親族・知人からの援助金はあるが、弁護士費用や管財人への引継予納金に充当できるほどの金額ではない、という場合には、官報公告費用に充てる方法が考えられます。
官報公告費用とは、自己破産により免責が認められたときに官報と呼ばれる公の刊行物に情報を掲載するための費用で、自己破産をするためには必ず支払う必要があります。
金額は裁判所によって異なりますが、おおむね2万円以下となっています。

自己破産をする際に援助をしてもらう場合の注意点

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 自己破産のための費用を借り入れでまかなうと詐欺罪に問われることもある。
  • 援助金を自己破産のための費用に充てる場合には、借入金でないことを説明できるようにしておく。

援助を受けるにあたって、援助者である親族などにお願いしておいた方がいいことはありますか?

当事者同士では援助、すなわち贈与であると合意していたとしても、裁判所は「実は借り入れなのではないか?」という疑いを持つ可能性があります。
そこで、借り入れではないことを客観的に説明できるようにしておくべきです。
また、当事者間でも「贈与のつもりではなかった」などと争いになる可能性がありますので、援助者の意思もしっかり確認しておくようにしましょう。

借り入れではないことを客観的に説明できるようにする、とは具体的にどのようなことなのでしょうか。詳しく教えてください。

借り入れではないことを客観的に説明できるように

自己破産をするために親族・知人から援助を受けるときには、それが借り入れではないということを客観的に説明できるように準備しておく必要があります。
自己破産のための費用を借り入れで調達するということは、最初から返済できないことをわかっていてお金を借りていることになります。お金を貸した側は、もし自己破産のための費用だとわかっていたら貸さなかった、という場合もあるでしょう。これは刑法の詐欺罪に該当する可能性がある行為で、自己破産の免責不許可事由にもなっています。

他方、お金を援助してもらった場合、すなわち借り入れではなく返済の義務がない贈与である場合には、それを破産申立費用に使用することは別段問題がありません。
そこで、自己破産をするにあたり親族・知人から援助を受ける場合には、借り入れではないことを客観的に説明できるようにしておきましょう。できれば贈与契約書を作成したり、貸与ではなく贈与であるという内容の念書を書いてもらうなど、客観的な証拠を用意しておくとよいでしょう。

名義が残る振込をしてもらうような場合には弁護士と相談を

多くの裁判所では、自己破産の申立書類として過去2年間の通帳の取引履歴の写しを提出することになっており、取引履歴に詳細不明の出入金があるときには申立人に説明を求めています。これは、自己破産することがわかっているのに借り入れをしていないか、あるいは一部の債権者に優先して支払いをしていないかをチェックするためです。

親族・知人からの援助が通帳の取引履歴に残っていたら、裁判所は高い確率で申立人にどのような経緯での入金なのか確認を取ると考えられます。
そこで、親族・知人から援助を受けて取引履歴に名義が残るような場合には弁護士と相談をするようにしましょう。

申立てにあたって申告をする必要性もあるので許可を得る

裁判所によっては、自己破産の申立てをするにあたって弁護士費用の援助を受けたことを申請しなければいけないことがあります。
たとえば東京地方裁判所の場合、自己破産の申立てをするときに提出する「陳述書(報告書)」の中で、弁護士費用を含む破産申立費用をどうやって調達したのか報告する項目があります。さらに、親族・知人からの援助・借入れによって破産申立費用を調達した場合には、援助金が破産申立費用に使われることを援助者が知っていたかどうかも報告しなければなりません。
虚偽の報告をすれば免責が認められない可能性が高くなりますので、後々トラブルになることを防ぐため、申告にあたって援助者である親族・知人に許可を取っておくようにしましょう。

まとめ

自己破産にあたり親族・知人から援助を受けられる、というのは非常にありがたいことですが、裁判所は自己破産前の債務者の金銭の動きには敏感になっています。援助金を有効に活用し、確実に免責を認めてもらえるように、十分注意しましょう。「これって大丈夫?」と少しでも迷ったときには専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

この記事の監修者

弁護士 境野 秀昭
弁護士 境野 秀昭第二東京弁護士会
最適な法的サービスを目指し、ご依頼者様の声に真摯に耳を傾け、誠実に職務に取り組みます。