自己破産の申立てをしたあとでも、他の手続に変更することは可能です。
ざっくりポイント
  • 自己破産をすると自宅は手放さなければならない
  • 自己破産の申立てをした後も、他の手続に変更することは可能
  • どの手続を選ぶかは慎重に検討するべき

目次

【Cross Talk】自己破産を選んだ後に他の手続に変えることは可能なのでしょうか

借金が返せなくなって自己破産の申立てを行ったのですが、数年前に購入した自宅を手放すことについて家族から反対を受けています。今から他の手続に変更することは可能なのでしょうか。

破産手続開始決定が出る前であれば可能です。債務整理の手続には自己破産の他に個人再生や任意整理がありますが、どの手続を選ぶべきかよく検討した方がよいでしょう。

なるほど。それぞれの手続について理解したうえで、慎重に検討する必要がありますね。

自己破産をすると自宅を手放さなければいけない。

自己破産をすると、自宅の不動産のようなめぼしい財産は取り上げられ、債権者に分配されます。自宅を残したいのであれば、個人再生や任意整理のような手続を検討するべきです。
自己破産の申立てを行ってから他の手続に変更することは可能ですが、いくつか注意すべきポイントがあります。

自己破産をすると財産を手放さなければならない

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産をすると借金を帳消しにできるが、目立った財産は換価と配当の対象となる。
  • 自宅を所有している場合には手放さなければいけない。

そもそも自己破産とはどのような手続なのでしょうか。

自己破産は財産を処分して返済に充てる制度です。返済してもなお残ってしまう負債について免責により支払わなくてもよくなるのでメリットも大きいですが、不動産のような高額の財産は現金に換えて債権者に分配しなければいけません。

自己破産とは

自己破産とは財産を処分して返済に充てる制度です。返済後残った負債について免責により返済を免れます。債務整理の手続には自己破産の他にも個人再生、任意整理などがありますが、返済を免れることができるのは自己破産だけです。
自己破産をするためには、まず裁判所に必要書類を提出して申立てを行います。
裁判所は提出された書類などを元に借金を帳消しにしても問題ないか検討し、問題ないと判断されれば免責が認められます。

自己破産をしたら財産はどうなる?

自己破産はメリットが大きい手続である一方、デメリットもいくつかあります。デメリットの一つは財産を取り上げられてしまうことです。

自己破産をすると、目立った財産は売却して現金化され、債権者(お金を貸している金融機関等)への返済に充てられます。売却して現金化することを「換価」、債権者に分配することを「配当」といいます。
生活や仕事に必要な財産は手元に残すことができますが、高価な車や不動産などは換価と配当の対象となります。したがって、自宅を所有している場合には手放してマンションや実家などに引っ越さなければいけません。

自己破産を選んだ後も他の手続きに変更可能

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 申立ての前なら問題なく変更可能
  • すでに申立てをした場合は、破産手続開始決定前なら取り下げが可能

自己破産から他の手続に変更するためにはどうすればよいですか?

すでに申立てをしているか、していないかによって異なります。申立てをしている場合には破産手続開始決定が出ているかどうかを確認する必要があります。

申立てをしていない場合

自己破産をすると決めた後、気が変わって「やっぱり自宅を手放したくない」と思った場合、個人再生や任意整理など他の手続に変更することは可能なのでしょうか。

まず、自己破産の申立てをする前であれば全く問題はありません。手続を弁護士に依頼している場合は、弁護士に連絡して自己破産以外のどの手続を選ぶべきなのか相談しましょう。

申立て後

すでに自己破産の申立てを行っている場合でも、手続の変更は可能です。
この場合は「破産申立ての取り下げ」という手続を利用します。取り下げをすると、破産手続は申立てを行った時点にさかのぼって効力を失い終了します。つまり破産の申立て自体が「なかったこと」になります。取り下げは原則として自由にすることができ、取り下げの理由を詮索されることもありません。

ただし、破産手続開始決定が出された後はどのような理由があっても取り下げることはできません。事案によりますが、申立てをしてから破産手続開始決定が出されるまでは比較的期間が短いので注意しましょう。申立てを行う前に本当に自己破産をするべきかよく検討しておくべきなのは言うまでもありません。

借金を返済できないと結局自己破産になることも

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 個人再生や任意整理は返済義務が残る
  • 返済できなくなれば自己破産するしかなくなることもある

個人再生や任意整理はどのような手続ですか?

個人再生や任意整理は自己破産と異なり、返済義務が残ります。もし返済ができなくなれば、結局自己破産するしかなくなる場合もあります。

自己破産は財産を取り上げられる代わりに借金を帳消しにしてもらうことができる手続だとご説明しました。個人再生や任意整理は自宅を残すことができる手続ですが、借金を完全になくすことはできず、引き続き借金を返済していく義務は残ります。
そのため、「自宅を取り上げられるのは嫌だ」という理由で安易に他の手続を選ぶと、返済ができなくなり、結局自己破産するしかなくなってしまう場合もあります。

個人再生は、借金を5分の1から10分の1に減額してもらうことができる手続です。住宅ローン特則という制度を利用することにより、住宅ローンを支払い続けて自宅を残すことが可能です。
定期的な収入があるサラリーマンなどによく利用されている手続です。
個人再生では裁判所に認めてもらった再生計画に基づいて返済を続けることになります。
支払いを滞納した場合、すぐに支払いをすれば大きな問題になることはありませんが、滞納が続くと債権者の申立てにより裁判所が再生計画の認可決定を取り消す場合があります。再生計画認可決定が取り消されると、借金の減額はなかったことになり、せっかく減額された借金が全額復活します。

同時に債権者からの督促も行われるようになり、裁判を提起されることもあります。こうなると、自宅を手放す前提で自己破産の申立てをせざるを得なくなってしまいます。
任意整理は自己破産や個人再生などの裁判手続とは異なり、債権者との任意の交渉により支払回数の調整や利息のカットを目指す手続です。
たとえば300万円の借金があり、3年(36か月)の分割払いで支払う合意が債権者との間で成立したとすると、毎月8万4,000円程度を支払い続ければ完済できることになります。

任意整理の場合、毎月の返済の負担は減りますが、借金を大きく減額してもらうことはできません。返済が滞ると債権者から一括での支払いを求められることがあります。
このように、自宅を残したいからといって安易に他の手続を選択すると、返済ができなくなり、結局自己破産するしかなくなってしまうこともありますので注意が必要です。

本当に他の手続きに変更すべきか慎重に検討をすべき

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 債務整理の手続にはそれぞれメリットとデメリットがある
  • どの手続を選ぶか検討するときには弁護士に相談する

自己破産、個人再生、任意整理のどれを選択すべきか迷っています。どうやって選べばよいでしょうか。

債務整理の手続を選ぶ際に考慮すべきポイントはいくつかありますので、弁護士と相談して決めることをお勧めいたします。

自己破産、個人再生、任意整理にはそれぞれメリットとデメリットがあります。基本的には自己破産のようにメリットが大きい手続ほどデメリットも大きく、任意整理のようにメリットが小さい手続はデメリットも小さくなります。
どの手続を選ぶべきかは、借金の総額、債権者の数や性質、今後見込まれる収入、手持ちの財産、毎月返済可能な金額、債務者本人の事情や希望などによって異なります。
繰り返しになりますが、自宅を取り上げられたくないからという理由で安易に自己破産以外の手続を選ぶと、返済ができなくなり、自己破産せざるを得なくなる場合があります。
手続を選ぶ際には債務整理の専門家である弁護士にアドバイスを受け、慎重に検討するようにしましょう。

まとめ

自己破産から他の手続に変更するときの方法についてご理解いただけましたでしょうか。
破産手続開始決定が出される前であれば自己破産から他の手続に変更することは可能ですが、どの手続を選ぶか判断する際には十分な検討が必要です。専門家である弁護士に相談し、自分に合う手続を選ぶようにしましょう。