
- 破産手続の費用を立替払いしてくれる「仮支弁」という制度がある
- 仮支弁は要件が厳しく、自己破産では認められないことが多い
- 借金問題の悩みは弁護士に相談を
【Cross Talk】自己破産するにも費用が必要?
自己破産をするにも、弁護士の先生に払う費用や裁判所に払う費用が必要と聞きました。お金がないから破産したいのに、お金がないと破産もできないしょうか?
裁判所の費用については、立替払いの制度があります。ただ厳しい要件があるので、自己破産で適用される可能性はほとんどないでしょう。
そうなんですか…ほかに何か方法はないんでしょうか。
自己破産をするには、弁護士に依頼をした場合の弁護士費用のほか、裁判所に納める破産手続の費用を用意する必要があります。
しかし、自己破産を考えている方の中には、毎月の返済に追われ、蓄えも底をついたという方も少なくないでしょう。そのような状況で、自己破産をするにもまとまった費用が必要と言われ、自己破産をあきらめている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、そのような方のために、自己破産の費用の支払いが困難な場合の対処法を解説いたします。
債務整理にかかる費用の種類

- 債務整理にかかる費用の種類
- 費用倒れになる場合はないのか
債務整理にかかる費用といっても細かくあるような感じなのですが、どのような種類の費用が発生するのでしょう?
債務整理にかかる費用の種類について確認しましょう。
債務整理にかかる費用には次のような種類のものがあります。
相談料
弁護士などの士業に相談する際には、目安として30分5,000円程度の相談料がかかります。
ただし、債務整理については、相談料を支払うのも難しい方が多いので、相談料を無料としていることが多いです。
着手金
弁護士に債務整理に着手してもらうのにかかるお金が着手金です。
目安としては、
自己破産:30万円~50万円
個人再生:35万円~60万円
の費用を、依頼した段階で支払います。
こちらも一括で支払える状況にない方が多いので、分割での支払いを可能にしているところもあります。
成功報酬
弁護士が依頼された事件を解決したときにかかるお金です。
債務整理の場合には、
自己破産:借金を免除してもらう
個人再生:借金を減額した上で分割弁済する計画の案を認可してもらう
以上の場合にかかるお金です。
目安としては、
自己破産:30万円程度~
個人再生:30万円程度~
がかかります。
こちらも分割での支払いが可能なところがあります。
実費
債務整理をするにあたって、弁護士から依頼者へ書類を郵送する、電話をするなどに費用がかかります。
この費用の負担について、細かく記録をして請求する場合と、概算で請求する場合があります。
その他
訴訟をされた場合、遠方の裁判所へ出向くための日当がかかる場合があります。
費用倒れになるリスクはないのか?
債務整理を依頼しても、得られる利益と弁護士費用の釣り合いがとれないことがあります。
例えば、残額が5万円しかない貸金業者相手に任意整理をしても、カットされる利息・遅延損害金が弁護士費用よりも少ないでしょう。
このような場合には弁護士側から任意整理の対象にしないように働きかけてくれます。
債務整理費用が払えない場合の対応方法

- 債務整理費用が払えない場合の対応方法
債務整理の費用が支払えない場合に、どのような対応方法がありますか?
様々な方法があるので確認しましょう。
債務整理のための費用が支払えない場合の対応方法について確認しましょう。
無料で相談する
まず、法律相談には相談料がかかることは上述したとおりなのですが、市区町村の法律相談や弁護士会の相談などには無料で相談できるものもあります。
また、債務整理に取り組んでいる弁護士であれば、債務整理の相談は無料であることのほうが多いです(東京新宿法律事務所も債務整理の相談は無料)。
どうせならば、債務整理の経験が豊富かつ、相談料が無料の弁護士に相談することをおすすめします。
着手金を分割払いにしてもらう
着手金を分割払いにしてもらうようにしましょう。
着手金は通常一括で支払うものですが、債務整理に取り組んでいる弁護士であれば分割で行っています(東京新宿法律事務所も分割での支払いができます)。
成功報酬を分割払いにしてもらう
着手金と同じく成功報酬も分割払いにしてもらうことは可能です。
特に任意整理の場合には、和解が成立すると貸金業者への返済が始まるので、分割で支払うことになる場合があります。
依頼してからお金を貯める
自己破産や個人再生では、管財人や再生委員の報酬として、20万円~50万円程度の支払いが必要であることがあります。
弁護士に依頼した直後に支払う必要はありませんが、自己破産・個人再生の申立時に支払う必要があります。
分割払いの制度も裁判所によってはあるのですが(東京地方裁判所へ自己破産の申立てをする場合には4回の分割)、申立てをするまでに貯めておくのが一般的です。
法テラスを利用する
法テラスを利用すれば、相談料が無料になるほか、弁護士費用を立て替えてもらうことで、収入に応じて毎月5,000円程度の支払いで済みます(生活保護を受けている場合は立て替えてもらった分を返済する必要もなくなります)。
法テラスには、収入要件や、弁護士が法テラスと契約をしているかなどの条件があるので、弁護士に質問してみてください。
費用の仮支弁の制度
費用の仮支弁制度について、破産法は次のように定めています。
裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができる。
この規定を分析すると、まず「申立人の資力」を考慮することになっています。このことから、申立人に破産手続の費用を納めるだけの資力がない場合でなければならないとされています。
次に、「破産財団となるべき財産の状況」も考慮することになっています。
破産財団とは、破産者の財産のうち、破産手続によりその管理・処分権が破産者から破産管財人に移転する財産をいいます。
仮支弁の制度はあくまで国庫からの立替払いですから、後日、国が立替払いをした費用の償還を受けることができるだけの破産財団が破産者にある場合でなければならないとされています。
費用の仮支弁は、これらの事情を考慮して、公益上の要請など「申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認められるとき」に限り認められますので、実際に認められる事例はかなり限定されているといえます。
自分で手続きを行なう
弁護士費用がかかってもったいないから、自分で手続きを行おうとする方もいらっしゃるのですが、おすすめはしません。
まず、弁護士に依頼すれば、貸金業者からの督促を止めることができるのですが(貸金業法21条1項9号)、自分で債務整理手続きを行ってもこのような効果はありません。
また、任意整理では、弁護士が交渉すれば、貸金業者と相場に基づいた有利な交渉ができるのですが、本人が交渉する場合には必ずしも有利な交渉ができるとは限りません。
自己破産や個人再生では、資料収集・作成の手間が多いため申立てをきちんと行えない可能性があるほか、本人からの申立てについては詳しく調査・検討する必要があるとして、簡易な手続きが利用できない結果、余計に費用がかかることがあります。
費用の分割など、負担が少ない支払い方法があるので、弁護士に依頼することをおすすめします。
司法書士に依頼する
債務整理は弁護士のみならず司法書士も取り扱っています。
しかし、司法書士は権限が限られており、任意整理の場合には上限が140万円まで、自己破産・個人再生では申立書類作成までとなっており、裁判所・破産管財人・個人再生委員との面談に同席ができません。
弁護士に依頼してから債務整理の費用の支払いができなくなった場合

- 弁護士に依頼してから債務整理の費用の支払いができなくなった場合の対応
- 他の手続きに移行する場合もある
弁護士に依頼してから急に病気になった・失職したなどで費用の支払いができなくなった場合にはどうすればいいですか?
まず弁護士に相談し、場合によっては他の手続きに変えることも検討しましょう。
弁護士に依頼してから債務整理の費用の支払いができなくなった場合の対応方法を確認しておきましょう。
他の手続きに変える
任意整理の準備をしていたところ、病気で仕事ができなくなったような場合では、そのまま任意整理をしてしまうと返済ができなくなります。
このような場合には、自己破産に切り替えるなどの処理をしますので、依頼後に弁護士に相談してみましょう。
費用の支払いについては必ず弁護士に相談する
一時的にでも、弁護士費用の支払いが難しくなった場合、まずは弁護士に相談してみましょう。
職を失った場合でも、すぐに仕事をみつけて弁護士費用の支払いができるのであれば、弁護士も数カ月程度であれば支払いを待ってくれることがあります。
支払いができない場合に、弁護士費用の支払いをせず、弁護士の事務所からの連絡にも出ないということがよくあります。
このような状態が続くと、弁護士は依頼された債務整理を解除(辞任)することができます。
貸金業者からの督促が一斉に再開することになるので、注意が必要です。
まとめ
費用の仮支弁制度はなかなか利用が認められません。
もっとも、弁護士に依頼をすることで、裁判所に納める費用そのものを安く抑えることが可能です。
自己破産したいが費用を用意できるか心配だという方は、まずは自己破産に詳しい弁護士に相談し、費用の見込みなどの説明を受けることをおすすめします。