破産手続費用の仮支弁制度について解説します!
ざっくりポイント
  • 破産手続の費用を立替払いしてくれる「仮支弁」という制度がある
  • 仮支弁は要件が厳しく、自己破産では認められないことが多い
  • 借金問題の悩みは弁護士に相談

目次

【Cross Talk】自己破産するにも費用が必要?

自己破産をするにも、弁護士の先生に払う費用や裁判所に払う費用が必要と聞きました。お金がないから破産したいのに、お金がないと破産もできないしょうか?

裁判所の費用については、立替払いの制度があります。ただ厳しい要件があるので、自己破産で適用される可能性はほとんどないでしょう。

そうなんですか…ほかに何か方法はないんでしょうか。

費用が払えないと破産できないの?

自己破産をするには、弁護士に依頼をした場合の弁護士費用のほか、裁判所に納める破産手続の費用を用意する必要があります。
しかし、自己破産を考えている方の中には、毎月の返済に追われ、蓄えも底をついたという方も少なくないでしょう。そのような状況で、自己破産をするにもまとまった費用が必要と言われ、自己破産をあきらめている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、そのような方のために、自己破産の費用の支払いが困難な場合の対処法を解説します。

費用の仮支弁の制度

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 破産の申立てをするには破産手続の費用をあらかじめ納める必要がある
  • 破産手続の費用を国庫から立替払いしてもらえる制度がある

裁判所の費用の立替払いってどんな制度ですか。

破産の申立てをする場合、申立人はあらかじめ破産手続にかかる費用を裁判所に納めなければなりません。この費用を、申立人自身ではなく、仮に国庫から払う(立替払いをする)のが、費用の仮支弁の制度です。
自己破産の申立てをするには、弁護士に依頼をした場合の弁護士費用が必要になるほかに、裁判所が定める破産手続の費用をあらかじめ納付しなければならないとされています(破産法22条1項)。

いいかえれば、破産手続の費用を納めることができない場合には、破産の申立てをすることができない、ということです。
もっとも、破産法上、裁判所に納める破産手続の費用を国庫から立替払いする制度があります(破産法23条1項)。
これを費用の仮支弁といいます。
この制度を利用することができれば、破産手続の費用を用意できない場合でも破産申立てをすることができます。

費用の仮支弁制度の要件

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 費用の仮支弁制度の要件は厳しい
  • 自己破産で仮支弁を認めてもらうことは難しい

国が立て替えてくれるのはありがたいですが、誰でも利用できる制度なのですか?

費用の仮支弁制度には厳しい要件があります。そのため、費用の仮支弁は極めて限定的な場合に認められると言われており、一般的な自己破産で単に費用がないというだけでは認められない可能性が高いと考えられます。

費用の仮支弁制度について、破産法は次のように定めています。

【破産法23条1項前段】
裁判所は、申立人の資力、破産財団となるべき財産の状況その他の事情を考慮して、申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認めるときは、破産手続の費用を仮に国庫から支弁することができる。

この規定を分析すると、まず「申立人の資力」を考慮することになっています。このことから、申立人に破産手続の費用を納めるだけの資力がない場合でなければならないとされています。

次に、「破産財団となるべき財産の状況」も考慮することになっています。

破産財団とは、破産者の財産のうち、破産手続によりその管理・処分権が破産者から破産管財人に移転する財産をいいます。
仮支弁の制度はあくまで国庫からの立替払いですから、後日、国が立替払いをした費用の償還を受けることができるだけの破産財団が破産者にある場合でなければならないとされています。

費用の仮支弁は、これらの事情を考慮して、「申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認められるとき」に認められます。

つまり、仮支弁の制度は、申立人だけでなく、債権者その他利害関係人の利益の保護をするための制度ということができます。

一般的な自己破産の場合、申立人には免責(返済義務の免除)という利益がありますが、債権者からみれば貸したお金が返ってこなくなるわけですから、債権者その他利害関係人にとっては破産手続が特に必要とはいえないでしょう。
そのため、自己破産の場合、「申立人及び利害関係人の利益の保護のため特に必要と認められるとき」には該当せず、仮支弁の制度が適用されない可能性が極めて高いといえます。

じゃあ自己破産できないの?そんなことはありません!

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 弁護士に依頼をすれば同時廃止事件になる可能性があり、破産手続の費用が安くなる場合がある
  • 弁護士費用を分割払いにしてくれる法律事務所もある

そうなると、自己破産の場合は自分で費用を用意しないといけないんですね。破産はあきらめるしかないんでしょうか…

弁護士に自己破産を依頼すれば、裁判所に納める破産手続の費用を安く抑えることができる可能性が高いです。弁護士費用を分割払いにしてくれる法律事務所も増えてきたので、今の返済額よりも少ない負担で弁護士に依頼できる可能性もありますよ。

破産手続の費用が払えるか不安で自己破産に踏み切れないという方には、弁護士に依頼をすることをお勧めします。
「破産手続の費用も払えないのに、弁護士費用まで払えるわけがない」と思われるかもしれませんが、破産手続の費用を抑えるには、弁護士に依頼をすることが効果的なのです。

自己破産には、大きく分けて破産管財人が選任される管財事件と、破産管財人が選任されない同時廃止事件の2種類があります。

管財事件の場合、裁判所に納める費用として、収入印紙代、郵便切手代、官報広告費などすべて合わせて2~3万円程度が必要となり、さらにこれらに加えて破産管財人の報酬等に充てるための引継予納金が必要になります。引継予納金の金額は裁判所ごとの運用によって異なりますが,例えば,東京地方裁判所の場合では、最低20万円程度からとなっており,事案に応じて増額されることもあります。

一方で、同時廃止事件の場合、上記の裁判所に納める費用は2~3万円程度で済みます。
弁護士に依頼をして自己破産手続きの申立てをすれば、同時廃止事件か管財事件の運用になる可能性が高いです。
弁護士費用については、依頼する弁護士によって異なりますが、同時廃止事件の場合は20万~40万円程度、管財の場合はもう少し高くなるのが一般的です。

弁護士に依頼することで、手続を任せることができるうえに、管財事件にならずに同時廃止事件になり、手続費用が安くなる可能性があるので、弁護士費用をかけてでも弁護士に依頼するメリットは大きいと言えます。
最近では、多くの法律事務所で弁護士費用の分割払いに対応しています。弁護士に依頼をして、弁護士から債権者宛てに受任通知を出してもらえば、借金の取り立てはなくなります。そのため、弁護士費用の負担はあるものの、直接債権者とやりとりをすることがなくなるという点でも大きなメリットがあります。

このように、自己破産を弁護士に依頼することには大きなメリットがあります。費用が払えるか不安だという方も、思い切って弁護士に相談するといいでしょう。

まとめ

費用の仮支弁制度はなかなか利用が認められません。
もっとも、弁護士に依頼をすることで、裁判所に納める費用そのものを安く抑えることは可能です。
自己破産したいが費用が用意できるか心配だという方は、まずは自己破産に詳しい弁護士に相談し、費用の見込みなどの説明を受けることをお勧めします。