借金で問題となる担保とは?担保がついている債務の返済ができないとどうなるのか?
ざっくりポイント
  • 担保とは
  • 担保がついている債務の例
  • 担保がついている債務がある場合の債務整理の注意点

目次

【Cross Talk 】「担保」ってなんですか?

債務整理を検討しています。借金について調べたほうが良い事項として「担保」というものがあるらしいのですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

債務の支払いができなくなったときに、売却してその売却代金を債務の支払いにあてることができるもので、住宅ローンを組む際の住宅が典型的なものです。

なるほど、支払いができなくなるとどうなるか、など教えてもらえますか?

借金における担保とは?支払えなくなるとどうなるか?

借金に関する用語として「担保」という言葉があります。担保とは、借金の返済ができなくなったときに、売却して借金の返済に当てることができるものです。典型的な例は住宅ローンです。住宅ローンを借りるときには購入した住宅が担保になっていることが通常であり、住宅ローンの返済ができなくなると住宅が競売にかけられて売却され、売却代金が住宅ローンの支払いにあてられます。このページでは担保についてお伝えいたします。

借金で問題になる担保とは

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 担保とは
  • 担保がついている債務の支払いができなくなるとどうなるか

担保とはどのようなものなのでしょうか。

債務の支払いができなくなった場合に売却してその売却代金を債務の返済にあてられるものを言います。

担保とはどのようなものなのでしょうか。

担保とは

担保とは、債務の支払いができなくなったときに、売約をしてその売却代金を債務の返済にあてられるものをいいます。
お金を貸す・借りるという契約は金銭消費貸借契約ですが、毎月の返済ができなくなった場合には債権者は裁判を起こして勝訴判決を得たうえで強制執行をすることになります。

借りる側の経済的基盤が乏しい場合や、貸す金額が多い場合には、返済してもらえない可能性が高くなるので、貸し手側としては契約を結びづらくなります。

このような場合、返済できなくなった場合には売却してその売却代金を借金返済にあててよいとするものを差し入れることで、契約をしやすくします。
この場合に相手に差し入れるものを、一般的に担保といいます。

担保をとる場合の法律構成としては、主に、

・抵当権を設定する
・質権を設定する
・所有権留保をする

というものがあります(後述の具体例で詳しく確認します)。

担保の具体例

担保の具体例としては、次のようなものが挙げられます。

住宅ローンでお金を借りる場合

住宅ローンは何千万円もするような高額な契約で、長ければ30年以上の期間をかけて返済するものです。
そのため、万が一支払いが滞った場合、債権者は多額の損失を被ります。
そのため、通常は購入した住宅に抵当権という担保をつけて、住宅ローンの返済ができなくなると、住宅を競売にかけて売却し、その売却代金を債務の支払いにあてる契約にしています。

不動産担保ローンでお金を借りる場合

住宅ローンではなくても、借り入れの際に不動産を担保に入れてお金を借りることが可能です。
住宅ローンの場合と同じように不動産に抵当権をつけて貸付をするので、返済がなければ抵当権に基づいて不動産を競売にかけ売却し、その売却代金を返済にあてることになります。

質屋でお金を借りる場合

質屋では、もっているブランド品や貴金属を預ければ、お金を借りることができます。
これは、質屋に預けたものを担保にお金を借りている状態です。
質屋に対して返済しなければ、担保となっている質屋に預けたものの所有権が質屋に移動することになります。

自動車ローンでお金を借りる場合

自動車ローンでお金を借りる場合、自動車の所有権が信販会社のままになっていることがあります。
この場合、所有権は信販会社に残ったままで(所有権留保)、自動車ローンの返済が滞ったときに信販会社が所有権に基づいて自動車を売却し、その売却代金を債務の支払いにあてることができます。

人的担保

なお、担保については「人的担保」という言葉があります。
債務の返済ができなくなったときに、債権者の代わりに払ってもらう保証人のことを「人的担保」と呼んでいます。
法律構成としては、保証契約(連帯保証契約を含む)となります。

担保がある債務の支払いができないとどうなるか?

担保がある債務の支払いができなくなった場合には、担保として差し出しているものを失います。
住宅の場合は競売にかけられた後退去する必要があり、自動車や購入したブランド品・貴金属・電化製品などは債権者が引き上げていくことになります。

質屋に預けている質物は、そのまま質屋に所有権が移ることになります。

いずれの場合でも、担保として差し出しているものの売却代金を債務の支払いにあてたうえでさらに債務が残っている場合には、残った債務の支払いをしなければなりません。

担保付きの債務を債務整理の対象とした場合にどうなるか

担保付きの債務を債務整理の対象とした場合には、目的物が売却されたり、所有権が移ることになります。
不動産で抵当権が設定されている場合には、不動産を競売にかけて売却することになります。
動産の場合には、目的物を引き上げてお金に換えることになります。

なお、例えば自動車が事故を起こして無価値になっている、ブランド品の状態が悪いなどで、引き上げても費用がかかるだけの場合には、引き上げは行われないこともあります。

担保付きの債務がある場合の債務整理の注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 担保がある場合の債務整理の注意点
  • 担保があるからと返済すると自己破産と個人再生では問題になるので注意

担保付きの債務がある場合、債務整理にはどんな注意がありますか?

いくつか注意すべきことがあるので確認しましょう。

担保付きの債務がある場合の債務整理の注意点を確認しましょう。

任意整理であれば担保がついている債務を外して手続きができる

裁判所の手続きをとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法である任意整理では、担保がついている債務を外して債務整理をすることが可能です。

例えば、A社・B社・自動車ローンの会社であるC社がある場合、C社について任意整理をせず従来通り支払ったままで、A社とB社のみ任意整理を行うことが可能です。
これによって、自動車の引き上げがされずに債務整理をすることが可能です。

ただし、A社B社への任意整理後の返済と、C社への従来通りの返済ができることが条件です。
借金が多くなり任意整理で支払えなくなると、自己破産・個人再生を利用せざるを得ませんので、担保がある債務がある場合には早めに債務整理をするようにしましょう。

担保があるからとその債務者だけ払うと自己破産・個人再生では問題に

自己破産・個人再生は全ての債権者に対して支払いを止めたうえで、手続きを行うことになります(個人再生では裁判所の許可があれば住宅ローン債権者のみ支払いを継続することができます)。

担保となっているものがある場合、その債務だけ支払ってしまう方がいますが、これは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といって、特定の債務者のみを優遇するもので、全ての債権者が平等に扱われるべき自己破産・個人再生の手続きにおいては、やってはいけないこととなっています。

自己破産の場合、そのような事情があると免責不許可事由とされ(破産法252条1項3号)、裁量免責を受ける必要があります(破産法252条2項)。なお、このような場合、本来であれば同時廃止手続き(簡易的な手続き)で行うことができたにもかかわらず、管財事件(少額管財・通常管財・特定管財)となってしまうことがあります。

住宅ローンがある場合は任意売却を検討する

住宅ローンがある場合には、住宅を維持するために個人再生を利用することが考えられます。
ただし、個人再生は返済をすることが前提である手続きで、職を失っているなど将来安定した収入が見込めない場合には利用できません。

このような場合には、自己破産をしなければならず、不動産は競売にかけられることになります。
しかし競売は、本来の不動産売買の3割~5割程度で取引されることもあり、債権者としても十分に回収ができないことが多いです。

そのため、債権者と債務者で協議をしたうえで、競売手続きによらず、市場価格で売却する手続きをとることがあります。
このような売却を任意売却と呼んでいます。

任意売却は、債権者と協議をしながら売却活動を行う必要があり、不動産会社の中でも任意売却専門の不動産会社を探す必要があります。
債務整理が得意な弁護士であれば、任意売却専門の不動産会社を知っていることがあるので、債務整理と併せて相談してみましょう。

所有権留保があるものは売却すると自己破産で問題になる

ブランド品や貴金属などが所有権留保として担保になっている場合でも、実際には債務者の手元にあることから、売却してしまうことがあります。
例えば、現金化のためにカードで物品を購入したと判断される場合、破産法252条1項2号で免責不許可事由となる可能性があります。
生活費を捻出するためにやむを得ず売却するような場合でも、事前に弁護士に相談するようにしましょう。

まとめ

このページでは、借金をする場合に問題となる担保についてお伝えしました。
債務者側としては返済ができないと担保を失うことになるので、借金返済が難しくなり担保がある債務がある場合には、早めに行動すべきです。
まずは、弁護士に相談してみましょう。