残業代を取り返したときにかかる税金をきちんと把握
ざっくりポイント
  • 残業代は所得税の対象なる
  • 年末調整の範囲で済むのであれば確定申告は不要
  • 未払い残業代を退職金として扱う場合など取り扱い次第では脱税になるので注意

目次

【Cross Talk】取り戻した残業代に税金はかかるの?

私はある会社に勤めていたのですが、残業代が支払われなかったので退職をしました。残業代を返してもらおうと思うのですが、残業代ってもらったら税金がかかるんですか?

給与をもらったことになるので税金がかかるのですが、年末調整の範囲内であれば特に申告の必要などはないので、税金がかかるケースを知っておいてください。

残業代を取り戻したら所得になるので所得税の対象になる。確定申告の要否はケースバイケース

残業代を取り戻すことになると大きなお金が入ってくることがあるのですが、その時に気になるのが税金です。
個人の所得については所得税の課税対象で、給与をもらった場合には所得税の対象になります。
残業代も給与なので所得税の対象になります。所得税の対象になるということは確定申告が必要になるように思えますが、給与をもらっている人の税金の処理として年末調整というものがあり、この調整でまかなえる範囲内の金額であれば確定申告は不要になります。

残業代の税金について

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代自体は給与所得
  • 遅延損害金・付加金・和解として受け取った場合の処理を知る
  • やってはいけない退職金としての受け取り

所得税というと細かい規定など難しそうなのですが、最低限知っておくべきことを教えてください。

残業代は給与所得として所得税の対象になるという事と、未払い残業代の受け取りをする場合には「給与」ではないものが含まれるという事を知っておきましょう。

未払い残業代を受け取ることによってどのような税金がかかるのでしょうか。

残業代はどんな税金の対象になるのか

給与を受け取る等個人に所得がある場合には所得税の課税対象になります。
所得税は、所得を10種類に分けて収入や経費などを計算することになっており、給与については給与所得として所得税の計算がされることになります。

また、給与の受け取りをする場合には、雇用保険・社会保険の対象にもなり、これらは、会社が源泉徴収をして納付をすることになっています。

残業代請求において、残業として認定されて残業代の金額を計算したとしても、会社が源泉徴収をするものもありますので、全額を受け取ることができるわけではないという事を知っておきましょう。
仮に全額を受け取ってしまった場合には、会社が決算するにあたって税務処理をする際にこれに気づき、返還を求められる可能性があるという事を知っておきましょう。

未払い残業代を払ってもらった場合に支払われるお金とかかる税金

では、未払い残業代を取り戻した時にはどのような課税になるのでしょうか。
前提として未払い残業代を受け取った時の処理として、本来支払われるべきであって残業代とは別に、遅延損害金・付加金というものを併せて受け取ることになります。

残業代については、遅れて支払われたものであるとはいえ、給与であることは変わりませんので、上記のように所得税・雇用保険がかかることになります。

残業代は所得税の課税対象になります。
雇用保険についても支払義務があるのですが、これは会社が差し引きをするので、受け取った金額から新たに支払うものではありません。

なお、社会保険は退職せずにそのまま会社に居る場合には会社が源泉徴収をして残業代を渡すことになりますが、社会保険は4月から6月までの平均所得によって決まるので、残業が多くなっても影響しませんので、追加で徴収されることはありません。
残業代に附帯して請求する遅延損害金や裁判所によって課される付加金については、所得ではないという扱いになるので、所得税の対象にならないとされています。

なお、未払い残業代の請求について、パワハラ・セクハラなどの問題も附帯しているような場合には、不法行為に基づく損害賠償請求として一括して示談をするような場合があります。
この場合、損害賠償請求は所得として含まれないことになります。

しかし、残業代と損害賠償請求をまとめて「和解」という契約の方式で片付ける場合があり、このような清算の仕方をした場合には、和解契約でまとめて支払いを受けた部分については、一時所得または雑所得として所得に計算されることになります。

ただし、和解契約で処理をする場合には弁護士費用は経費に含めることができますので、上手く使い分けるようにしましょう。
この時に絶対にやってはいけない処理は、残業代を「退職金」として支払うことです。
退職金については所得税法上「退職所得」としての処理がされるのですが、退職所得は給与所得よりも低い税率になっています。
残業代はあくまで給与ですので、給与所得としての税率が適用されるべきところ、退職金として退職所得として計算をしてしまうことは、脱税と評価されることになってしまうからです。

残業代をもらった時の手続

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 所得税の対象になる場合には基本的には確定申告をする
  • 年末調整の範囲で対処が可能である場合には確定申告は不要

未払残業代が所得税の対象になるということは確定申告のような手続が必要になるのでしょうか。

基本的には必要ですが、年末調整での手続で終わる場合もあります。

未払い残業代を返してもらった時に必要な手続はどのようなものでしょうか。

修正申告

所得税はその年の1月から12月までの所得を翌年の2月~3月の間に確定申告をするという形で申告・納付を行います。
未払残業代がある場合には、本来支払いをすべきだった年の給与所得を修正する必要がありますので、過去の年度の修正申告を行うという形で申請をする必要があります。

上述のように、示談をして和解をする場合には一時所得もしくは雑所得として修正申告を行います。
取り戻しをした当年の分については、その次の年の確定申告を行うことになります。

年末調整のみでよいケース

基本的には上述した通り確定申告によって行うのですが、残業代を取り戻した時期が直近のもののみで、当年の年末調整を行うことだけで済む場合には、修正申告をする必要はありません。

まとめ

このページでは、残業代の請求と税金についての取り扱いについてお伝えしてきました。
残業代は基本的には給与であるという事を知っていただいた上で、給与に対しては所得税をはじめとした税務処理がある事を知りましょう。
きちんと計算をした上で、会社が源泉徴収として差し引くことになる分・確定申告をする分を綿密に計算する必要があります。
残業代請求の解決方法を退職金として受け取るような場合には脱税の指摘をされる可能性があるという事も踏まえて、弁護士に相談をしながら、適切な解決方法と税務処理を行うようにしましょう。