- 法定休日に労働した場合は、割増賃金を支払わなければならない
- 振替休日と代休の違いは、事前に振替の休日を設定したかどうかである
- 代休として法定休日に労働した場合は、休日出勤としての割増賃金の対象になる
【Cross Talk 】振替休日と代休には違いがあるの?
会社に代休を取るように言われたのですが、振替休日と代休には違いがあるのでしょうか?
振替休日はあらかじめ振替の休日を指定したうえで労働しますが、代休は振替をせずに労働する点で異なります。休日労働として割増賃金の対象になるかも注意が必要です。
振替休日と代休には違いがあるんですね。休日労働の割増賃金についても教えてください!
本来は休日である日に労働する制度として、振替休日と代休があります。
どちらも休日に働く点では同じですが、休日労働としての割増賃金の対象になるかなど、2つの制度には違いがあるのです。
そこで今回は、振替休日と代休の違いについて解説いたします。
そもそも法律上の休日とは?
- 法律上の休日として、所定休日と法定休日がある
- 法定休日に労働した場合は、割増賃金を支払わなければならない
法律上の休日とは何でしょうか?
法律上の休日として、所定休日と法定休日があります。労働者が法定休日に出勤した場合は、割増賃金を支払わなければなりません。
労働法における休日とは、労働者が働かなくていい日のことです。休日には所定休日と法定休日があります。
所定休日とは、
法定休日以外の休日であり、企業などの使用者が労働者に与える休日のことです。
具体的には、
週1日を超える休日や、4週間を通じて4日を超える休日は、所定休日にあたります。
所定休日をどのくらい与えるかは、原則として使用者の自由です。
法定休日とは、
法律(労働基準法第35条)によって定められている休日のことです。
法定休日については、使用者は原則として労働者に与えなければなりません。
所定休日と法定休日の違いは、企業が与えることを決めた休日なのか、法律で与えなければならない休日なのかです。
また、労働者が休日に労働した場合に、休日出勤としての割増賃金の対象になるかについて、所定休日と法定休日には違いがあります。
所定休日に出勤した場合は、原則として休日労働の割増賃金の対象にはなりません。しかし、法定休日に出勤した場合は、休日労働の割増賃金の対象になります。
振替休日と代休は何が違うの?
- 振替休日とは、休日に労働する場合に事前に設定される休日であり、代休は休日に労働した後で別の日を休日とすることである
- 振替休日と代休の違いは、事前に振替の休日を設定したかどうかである
振替休日と代休は何が違うのですか?
振替休日と代休の違いは、休日に労働する前に、別の日を休日に設定したかどうかです。事前に設定した場合は振替休日で、設定しなかった場合は代休にあたります。
振替休日とは、もともと休日と定められていた日に労働することになった場合に、もともとの休日の代わりに設定される休日のことです。
例えば、就業規則で毎週土曜日が休日とされている会社において、特別なイベントを開催するために、土曜日に出勤することになったとしましょう。
本来は休日である土曜日に出勤するかわりに、あらかじめ次週の月曜日(通常は労働日)を休日に設定した場合、その月曜日が振替休日にあたります。
振替休日の特徴は、本来は休日である日を労働日とする代わりに、本来は労働日である日を事前に休日に振り替えておくことです。
代休とは、事前に休日の振替をすることなく休日に労働をした場合に、本来は労働日である日を休日にすることです。
例えば、就業規則で毎週土曜日が休日とされている会社において、急なシステムエラーが発生したために、急遽土曜日に出勤したとしましょう。
急な出勤のために事前に振替休日を設定する時間がなかったことから、土曜日に出勤した後に、次の月曜日を休日として仕事を休ませたした場合が、代休にあたります。
振替休日と代休の違いは、休日出勤をさせる前に、あらかじめ別の休日を設定したかどうかです。
事前に休日を設定しておいた場合が振替休日であり、事前に休日を設定しておかなかった場合が代休にあたります。
振替休日と代休では賃金に差が出るの?
- 振替休日は労働日に労働した扱いになるので、休日出勤としての割増賃金は発生しない
- 代休として法定休日に労働した場合は、休日出勤としての割増賃金の対象になる
振替休日と代休では、もらえる賃金に差が出るのでしょうか?
振替休日は休日出勤の割増賃金の対象ではありませんが、代休として法定休日に労働した場合は、休日出勤の割増賃金の対象です。
振替休日の場合
振替休日の場合は、休日出勤としての割増賃金を支払う必要はありません。
振替休日は、本来は休日である日を事前に労働日に変更しているので、労働日に働いたのと同じだからです。
労働日に働いたのと同様に扱われることから、振替休日に労働をしたとしても休日出勤に該当しないため、割増賃金の対象にならないのです。
例えば、本来は休日である土曜日に出勤する必要が生じたので、あらかじめ次週の月曜日(本来は労働日)を休日に指定したうえで、土曜日に通常の勤務時間で働いたとしましょう。
労働日に通常の勤務時間で働いた場合の賃金が1万円の場合、振替休日に働いた場合には割増賃金の対象にならないので、賃金は変わらず1万円のままです。
代休の場合
代休の場合は、原則として休日出勤としての割増賃金を支払う必要があります(法定休日に労働した場合)。
振替休日はあらかじめ休日を労働日に変更していますが、代休の場合は労働日に変更せずに労働しているので、休日出勤に該当するからです。
休日出勤に労働をさせた場合は、最低でも35%の割増賃金を支払わなければなりません。
代休はまず休日に労働させた後に、別の日を休日に指定しているだけであり、休日に労働したことは変わらないため、割増賃金の対象になるのです。
例えば、金曜日の深夜に顧客から連絡があり、本来は休日である土曜日に急遽出勤し、通常の勤務時間で働いたとしましょう。
労働日に通常の勤務時間で働いた場合の賃金が1万円であり、休日出勤の割増賃金が35%であるとすると、休日に急遽出勤して働いた場合は、賃金が1万3500円になります。
振替休日と代休では残業代が出るの?
- 振替休日で時間外労働をした場合は、原則として残業代としての割増賃金の対象になる
- 休日に時間外労働をした場合は、残業代としての割増賃金の対象ではないが、深夜労働の割増賃金の対象になる
振替休日と代休では、残業代(時間外労働の割増賃金)が出るのでしょうか?
振替休日は原則として残業代の対象ですが、代休は原則として残業代の対象ではありません。
1日8時間以上または1週間40時間以上の時間外労働をした場合は、いわゆる残業代としての割増賃金が発生するのが原則です。
振替休日によって時間外労働をした場合は、通常の労働日に労働したのと同じ扱いになるので、時間外労働をした分は原則として、割増賃金の対象になります。
また、振替休日によって深夜労働(午後10時から翌日の午前5時の間に労働させること)をした場合は、深夜労働をした分についても割増賃金の対象です。
しかし、代休の場合は休日労働としての割増賃金は発生しますが、時間外労働としての割増賃金は発生しません。
ただし、代休で深夜労働をした場合は、深夜労働についての割増賃金は発生します。
例えば、急遽休日に労働し、通常の勤務時間を超えて深夜まで労働した場合、時間外労働としての割増賃金は発生しませんが、深夜労働としての割増賃金は発生します。
まとめ
振替休日はあらかじめ別の休日を振り替えたうえで労働するので、通常の労働日と同様に扱われ、休日労働の割増賃金の対象にはなりません。
法定休日における代休は、振り替えをせずに休日に労働することから、休日労働の割増賃金の対象になります。
振替休日や代休に労働させる場合は、賃金の計算など複雑な部分もあるので、労働問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめです。