残業時間が3ヶ月以上45時間を超えると会社都合退職にすることができる
ざっくりポイント
  • 失業保険の給付は退職理由が自己都合と会社都合で異なる
  • 自己都合での退職とされると著しく不利である
  • 残業時間が45時間を超えるような自己都合退職は失業保険の給付の関係では会社都合にできる

目次

【Cross Talk】長時間の残業が続く会社を退職する場合には会社都合に出来る!?

私の会社は長時間の残業が恒常的になっており、改善の見込みもないで退職をすることにしました。
残業が長い場合に失業保険に何か影響があると聞きましたが、どのような内容か教えてください。

残業時間が3ヶ月間月45時間を超えるような場合には失業保険の給付において会社都合退職とすることができます。

残業が3ヶ月間45時間を超える場合には失業保険の給付が有利になる

会社を退職する人が次の仕事を探すまでの間の一定期間、失業保険の給付を受けることができます。
この失業保険の給付において、どのような理由で退職したかによって、給付内容(特に給付の開始時期)が異なっており、一般的には会社都合での退職の方が有利です。
残業が3ヶ月間、月45時間を超える場合には、退職が自己都合でも失業保険との関係では会社都合退職として扱われます。

失業保険とは

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 一定の要件を満たした人が退職をする際には失業保険を受け取ることができる
  • 失業保険の給付の内容は退職理由によって異なり、会社都合の方が有利

まず失業保険ってどのようなものか教えてもらうことはできますか?

はい、まずは基本的な事を確認しましょう。

まず、失業保険というものの基本的な仕組みについて知りましょう。

失業保険はどのような保険なのか

失業保険というのは一般的な名称で、雇用保険の失業等給付というのが正しい名称です。
後述する要件を満たすと、退職後にお金が支給されることになります。
支給されるお金は給与の額に応じて支払われるので、新しい仕事を探すまでの間のつなぎや、新しい仕事に就くのに必要なスキルの勉強をするためにその間の生活の基礎にすることができます。

失業保険を受ける条件

失業保険を受給するためには、

1 期間に関する要件
2 就職できる能力があること
3 仕事を探している等

の3つの要件が必要になります。
1.の期間に関する要件としては、雇用保険に入っていた期間が、離職前2年間の間に通算して12か月以上あることが原則的な要件で、倒産・解雇等のいわゆる会社都合退職(雇用保険上の用語では特定受給資格者)の場合には、雇用保険に入っていた期間が離職前1年間の間に通算して6ヶ月以上が必要となります。

2.に関しては再就職できることが要件になるので、病気や怪我で就労が不能な場合には失業保険はもらえません(この場合には傷病手当・障害年金・生活保護というものがその役割を果たすという考え方です)。
3.に関しては仕事を探していることを確認するために、就職活動をしていること(応募・面接・就職関係のセミナーへの出席など)などが必要です。

退職理由で大きく変わる失業保険

この失業保険ですが、上述した通り、退職する際の理由によって、雇用保険に加入していた時期に関する要件が異なってきます。
自己都合退職の場合には雇用保険の被保険者である期間が1年以上必要であるのに対して、会社都合退職の場合は6ヶ月で支給対象になります。

また支給にあたって、自己都合退職の場合には、退職から3ヶ月間受給ができない「給付制限」があるのに対して、会社都合退職の場合には待機期間は7日間しかありません。
さらに、失業保険がもらえる日数の上限が、会社都合退職の方が長い場合が多いです。

残業時間によっては退職理由を変更できる!?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業が3ヶ月連続で45時間を超える場合などには会社都合退職となる

私のように残業が多すぎて退職を決意したような場合には自己都合退職になってしまいますか?

残業が3ヶ月連続で45時間を超える場合など、残業が多すぎる場合には会社都合退職とすることができるようになっています。

まず、自己都合退職か会社都合退職かは、「一身上の都合により…」などとして退職届を出しているかどうかにより決まるものではなく、法律上の規定によって定められます。
その法律上の規定の中に残業が多いことによって退職する場合には、会社都合とすることを認める規定があります。

会社都合となる残業時間の目安

まず、会社都合となる残業時間は次のように規定されています。
離職の直前6か月間のうちに、

1 いずれか3か月連続で残業が45時間を超えている
2 いずれか2か月以上連続する月を平均して、1ヶ月80時間以上の残業をした
3 いずれか1ヶ月で100時間以上の残業をした

のどれかに該当すること。

会社都合退職に変更するメリット

自己都合退職と会社都合退職の違いは上述しましたが、例えば勤務が6ヶ月以上1年未満の場合には自己都合退職とされると失業保険を受け取ることができなくなりますので(雇止めや心身の障害、正当な理由がある場合などで特定理由離職者にあたる場合はなお可能です。)、会社都合退職に変更することができると失業保険を受け取ることができるというメリットがあります。
また、自己都合退職をすると、退職から3ヶ月の給付制限がある一方、会社都合にする場合には待機期間は7日なので、早く失業手当をもらいたい方にとっては大きなメリットになります。
また、例えば、30歳の人が5年以上10年未満勤務していた時に退職する場合には、自己都合だと90日分の支給にとどまるのに対して、会社都合だと180日分の支給になるなど、支給期間が多くなる場合が多いです。

会社都合退職に変更するために準備しておくもの

自己都合退職か会社都合退職かについては、退職時に会社が発行する離職票(雇用保険被保険者離職票)に記載されます。
これをハローワークに提出するのですが、この際に退職理由の事実と違っていないか?という事を確認することになっています。
会社都合退職が多くなると、会社は国から補助金を受けられなくなるなどの不利益を受けることがあるので自己都合退職で記載することがほとんどです。

そのため、ハローワークへの提出の際に、退職理由が違うことを申告する必要があり、これについては判断資料を必要とすることになりますので、残業が上記の規定にわたる長時間のものであったことを証明できる資料を準備しましょう。

失業保険の受給までの流れ

失業保険は次のような流れで給付されます。

1 退職した際に会社から発行される離職票を受け取ります。
2 離職票をもって居住している地域のハローワークに赴き手続をします。
3 7日間の待機期間があります
4 雇用保険の受給に関する説明会へ参加すると失業認定がされます。
5 お金が振り込まれます
6 その後1ヶ月ごとに就職活動をして、失業認定の日にハローワークに赴き、お金が振り込まれるという事を、失業保険の日数分行われます。

未払いの残業代があれば請求もできる

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業が3ヶ月連続で45時間を超える場合などには会社都合退職となる

残業が多い場合の退職で他に注意すべきことはありますか?

残業代が支払われていない、支払われていても一部であるということはないですか?

残業が多い会社において、残業代がきちんと支払われていないことはよくあります。
残業時間については上限があり、この規定にひっかからないようにするために、実態と異なる労働時間にする会社は非常に多いです。
そのような会社の場合には次のような点に注意しましょう。

失業保険を受給していても残業代請求は可能

まず、失業保険を受給していても、残業代の請求は可能です。
前者は国からの給付になるのに対して、残業代は労働の対価として会社から支払われるべきものです。

遅延損害金と付加金に注意する

残業代の請求というと、労働時間を計算と割増率を計算するだけ、というイメージを持っている方も多いのですが、実際に支払いが無い以上、遅延損害金・付加金というものの支払いも問題になってきます。
遅延損害金とは、本来の給料の支払い時期を過ぎた場合に発生するものであり、通常は6%・退職をした後は早期の支払いをさせるという観点から14.6%まで上限があがるものになっています。

また、残業をしているにもかかわらず割増賃金を支払わないような場合には、労働基準法114条に規定されている付加金というペナルティを支払わせることもできます。
どのような請求が同時に出来るのか、という事もしっかり把握をしておきましょう。

まとめ

このページでは、残業が多い場合に退職した場合の失業保険についてお伝えしてきました。
会社を退職した場合の生活保障として支給される失業保険ですが、残業が多い場合には会社都合での退職をすることができる事を知っていただいた上で、残業代の支払いがされていないような場合には併せて請求をすることが望ましいでしょう。
また、残業時間の上限については「残業の上限時間は何時まで?残業が多い業種や残業を減らす工夫を紹介します」で解説していますので、気になる方はこちらもご参照ください。