看護師が未払い残業代を請求する方法を詳しく解説します!
ざっくりポイント
  • 看護師は残業代の未払いが多い
  • 医療記録など看護師に特有の残業代に関する証拠がある
  • みなし残業、業務委託と言われても残業代を請求できる可能性がある
  • 残業代請求の準備は在職中から進める

目次

【Cross Talk 】看護師も残業代請求ができます!

総合病院で看護師として働いているのですが、サービス残業が当たり前のようになっています。先輩が誰も言わないので自分からは言い出しづらいのですが、残業代を請求できないのでしょうか。

看護師のような医療従事者も、法律で定められた残業代を請求することができるので、泣き寝入りせずに請求することをお勧めします。看護師が残業代を請求する場合のポイントを解説するので、参考にしてください。

お願いします!

看護師はサービス残業が多い

看護師のような医療従事者は、職務の性質から長時間の労働になりがちですが、いまだにサービス残業が横行しているのが実態です。
命に係わる仕事をし、身体的にも精神的にも大きな負担を強いられるにもかかわらず、適正な賃金(残業代)さえもらえないのでは、あまりにも酷と言えます。
そこで今回は、看護師が未払い残業代を請求するポイントを解説します。

看護師に残業代未払いが多い理由

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 対患者という職務の性質上、急な業務が発生しやすい
  • 心理的に残業代を請求しづらい

なぜ看護師にはサービス残業が多いのでしょうか。

様々な理由から看護師は残業が多いのですが、対患者という職務の性質上、急な業務が発生しやすいことが考えられます。また、医療という職務の性質から、残業代を請求することに心理的な圧迫を感じるということもあるでしょう。

看護師に残業代未払いが多い理由

看護師は、残業が多い職種と言われています。たとえば外来の看護師の場合、多数の患者に対応する必要があり、診察時間の終了間際に受付をする患者もいるでしょう。また、手術室看護師であれば、長時間にわたる手術に立ち会うことも珍しくはありません。さらに、入院患者の容体が急変する、救急の患者が搬送されてくるなど、突発的な事態に対応しなければならないこともあります。
このように看護師は、職務の性質上、残業が多くなりがちですが、病院によっては、必ずしも残業代を支払うだけの予算的な余裕があるとは限りません。

さらに、看護師のような医療従事者の職務は人の生命に関するものであり、使命感を持って職務に当たっているでしょうし、周囲からも神聖なイメージを持たれています。
ですから、たとえば勤務時間終了間際に救急の患者が搬送されてきた際、残業代をもらえるなら残業して対応する、もらえないなら残業を拒否して帰宅するというように割り切ることはなかなかできないでしょう
このように、看護師の職務の性質から、残業代を請求することについて心理的な圧迫があることも否定できないと思われます。

看護師が残業代請求する6つのポイント

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代請求の基本的な流れをおさえる
  • 医療記録など看護師に特有の証拠がある
  • みなし残業、業務委託と言われても残業代を請求できる可能性がある
  • 残業代請求は在職中に準備をする

先生のおすすめに従って残業代を請求しようと思いますが、何か気を付けることはありますか?

残業代請求の基本的な流れや時効があることなど、職種を問わずに注意が必要なことのほか、看護師特有の残業代に関する証拠など、看護師が残業代請求をする場合に特に注意が必要なこともあります。いくつか代表的なものを解説しましょう。

残業代請求の基礎知識を得る

残業代の請求は、残業代の計算、時効中断措置、証拠収集、交渉、労働審判・訴訟という流れで進んでいきます。

まず、残業代の計算をします。正確な額を計算しようとすると証拠等も必要になりますし、計算にも時間がかかるので、ここでは概算でどの程度の額になるか把握できればいいでしょう。

ここで注意が必要なことが、残業代については、本来支払われる日(毎月の給料日)から2年で消滅時効期間が満了してしまうということです。時効期間の満了が間近に迫っている場合には、時効の中断措置(内容証明郵便によって残業代を請求する)をとる必要があるのです。

そのうえで、より正確な残業代を計算し、万が一、将来、裁判所の手続を利用することになった場合に備えるため、タイムカード、シフト表など、集められる限りの証拠を集めておきます。

証拠の収集が終われば、いよいよ病院(使用者)と交渉します。
交渉がうまくいけば、和解(示談)をして解決ということになります。

交渉がうまくいかない場合には、裁判所に労働審判を申し立てるか、訴訟を起こすかして、残業代の請求について裁判所に判断してもらうことになります。

詳細は「業界的に「サービス残業」が当たり前になってしまっている場合の残業代請求交渉」を参照してください。

看護師特有の残業代請求の証拠となるもの

これまで残業代請求の基本的な流れを解説しましたが、そのなかでも特に重要になるのが、証拠の収集です。

労働審判や訴訟では、残業代を請求する労働者の方が残業時間等についての証拠を提出し、残業代を請求できることを証明しなければなりません(証明できなければ残業代の請求が認められません)。
そうなると、労働審判や訴訟に先立つ交渉においても、証拠がないのに病院側が残業代の支払いに応じることはまずないでしょう
このようにみると、証拠収集は残業代請求の要といえます。

残業代請求に関する証拠としては、タイムカード、シフト表などの職種を問わない証拠のほか、業務日報、医療記録(カルテ、電子カルテ、訪問看護の記録等)、時間外の研修会の資料等、看護師特有の証拠があります。
とくにカルテ等には、患者の容体を記録する等の必要から、時刻等が詳細に記載されていることもあるので、労働時間を正確に把握するのに役立ちます。

残業の指示をしていないとの反論

病院(使用者)から、残業の指示をしていない、残業は許可制であるなどと反論されることがあります。

しかし、明示的な残業命令がなかったとしても、就業時間までにとうてい終わらないような業務を指示された場合など、労働者が残業をせざるを得ない場合があります。
このような場合には、残業について使用者の黙示の指示があったととらえることが可能ですので、使用者の指示に基づく残業として、残業代を請求することができると考えられます。

「みなし残業(固定残業制)だから残業代は出ない」は誤解

みなし残業(固定残業制)とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ決められた一定額の残業代を支給する制度のことをいいます。
使用者側からみれば個々の労働者の労働時間を管理する負担が軽減されるというメリットがある一方、労働者からみれば、実際には残業をしていなくても支給されることから、早く仕事を終わらせようというモチベーションアップにつながるという効果があります(そうなれば、光熱費等、使用者の経費の削減も期待できます)。

しかし、みなし残業(固定残業制)が有効とされるためには、固定残業制が労働契約の内容になっていること、固定残業代として支払われる部分と他の基本給が明確に区別できることといった厳しい要件を満たす必要があります。
また、これらの要件を満たしてみなし残業(固定残業制)が有効とされる場合でも、固定残業代で想定された残業時間を超える残業をした場合、超過部分については別途残業代を支払わなければなりません。
したがって、「みなし残業(固定残業制)だから残業代は出ない」とは限らないのです。

みなし残業(固定残業制)の要件は厳格です。詳細は「みなし残業制(固定残業制)で月30時間・40時間・50時間の場合の残業代計算方法」をご覧ください。

業務委託契約だから残業代は払わないとの反論

残業代の請求は、労働基準法に定められた労働者の権利です。
そこで、病院が看護師との間で、労働契約ではなく業務委託契約(請負契約)を締結し、看護師は労働者に当たらず労働基準法の適用がないから残業代を支払う必要はない、などと主張することが考えられます。

しかし、労働者に当たるといえるか否かは、単に契約の名称や形式のみによって決まるのではなく、実質的に雇用関係といえるか(使用者との間に指揮命令関係があるか)によって決められるものです。
契約の形式が業務委託となっているにすぎず、実際には使用者の指揮命令下で働いている場合には、いわゆる偽装請負にあたり、実質的には雇用関係にある(=労働基準法の適用がある)として、残業代を請求するこができます。

退職しても残業代請求はできる

看護師として在職中に残業代を請求するのは気が引けるとか、不当な扱いを受けるのではないかと心配される方がいらっしゃいますが、残業代請求は退職後であっても可能です。

ただし、退職すると先に紹介したような勤務先(病院・医院)にある残業代請求の根拠となる証拠の収集が難しくなります
また、残業代には2年の消滅時効がありますので、退職してから残業代請求の準備を始めると、時効の関係で支払いを受けられる額が少なくなってしまうおそれがあります。ですから、残業代請求は退職後にするにしても、証拠収集などの準備は在職中に行っておくべきといえます。

退職後の残業代請求については、「【退職後の残業代請求】残業代請求は退職後もできる?時効は?」をご覧ください。

まとめ

看護師の未払い残業代請求について解説しました。
確かに看護師は人命にかかわる神聖な仕事ではありますが、それは病院経営者側が残業代を支払わないことの免罪符になるものではありません。
看護師であっても労働者であることに変わりはないので、残業代の請求をし、労働に見合った適正な対価を受けるのは、労働者としての当然の権利です。
残業代の未払いに悩んでいる看護師の方がいらっしゃったら、一度、労働問題に詳しい弁護士に相談してはいかがでしょうか。
弁護士の探し方については「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」をご覧ください。

この記事を監修した弁護士

岩壁美莉
岩壁美莉第二東京弁護士会 / 東京第二弁護士会 司法修習委員会委員
あなたが笑顔で明日を迎えられるように、全力で法的なサポートをいたします。お気軽にご相談ください。