解雇された場合の残業代請求について解説いたします。
ざっくりポイント
  • 解雇されても、残業代は請求できる
  • 解雇されたら、解雇通知書解雇理由証明書を請求する
  • なるべく多くの客観的証拠を残す、集める
 

【Cross Talk】解雇だけでなく残業代請求も検討

会社からいきなり解雇と言われ、とても困っています。残業もたくさんこなして、会社に貢献してきたのに……残業代も一切支払われずにがんばってきたのに……この先一体どうすればよいのでしょうか……。

まずは、解雇の有効性を検討していく必要がありますね。さらに、残業代が支払われていないとのことなので、残業代請求も検討していくべきでしょう。

解雇されても残業代は請求できるのですか?詳しく教えてください。

解雇された!?残業代請求どうしよう……。

会社の役員からいきなり「君は明日から来なくていいよ」と言われてしまったような場合、一生懸命残業もこなしているのに、残業代も支払われていなくて、さらに解雇されてしまったら、動揺して今後どうしたらよいかと分からずに悩んでいる方も多いでしょう。

本コラムでは、解雇された場合の残業代請求について解説するだけでなく、解雇された際に必要となる証拠についても簡単に解説いたします。

解雇されても残業代請求できるの?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇とは普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の要件を満たさない解雇
  • 解雇されても残業代は請求できる
  • 残業代の消滅時効は2年なので、早めに弁護士に相談

解雇されたら、会社に対し、残業代を請求することもできないのでしょうか?

解雇されたとしても、支払われるべき残業代が支払われていなかった場合には、会社に対し、残業代を請求できます。

解雇とは?不当解雇とは?

解雇とは、会社が従業員に対し、一方的に通知して雇用関係を終了させることをいい、普通解雇懲戒解雇整理解雇の3類型に分類されます。そして、それぞれの解雇には、解雇が認められるための要件(条件)があり、要件が満たされていれば解雇は有効となり、要件が満たされていなければ解雇は無効となります。

この要件を満たさない解雇を、一般に不当解雇といいます。なお、不当解雇にあたるかどうかは、勤務実態や会社の経営状態等、個別具体的な事情が考慮されるので、まずは、弁護士に相談してみることをおすすめします。

解雇されても残業代は請求できるの?

解雇されたからといって、会社は従業員が勤務していた分の給与や残業代の支払いを逃れられるわけではありません。残業代の請求に解雇の有効・無効は問われませんので、未払いがある場合、従業員は会社に対し、請求することができます(この場合、通常の未払い残業代請求の方法と変わりないので、「【図解】残業代請求の全手順・流れを詳しく説明」も参考にしてみてください。)。

他方、不当解雇の可能性がある場合には、さらに解雇が無効であると争っていくことができます。

争った結果、解雇が無効となれば、従業員はもともと解雇されていなかったこととなり、その会社に雇用され続けている状態となるので、会社に対し解雇期間中の給与を請求できる余地が出てくるのはもちろん、解雇の方法が酷かったなどの場合には精神的損害を被ったとして慰謝料を請求できる余地もでてきます。

消滅時効には注意!

前項の通り、解雇されても残業代は請求できるのが通常ですが、時間制限なくいつまでも請求できるわけではありません。労働契約上の賃金請求権(残業代を含みます)の消滅時効(請求が認められる期間)は2年と定められていますので、お早めに弁護士へ相談してみることをおすすめします(消滅時効について詳しく知りたい方は「【退職後の残業代請求】残業代請求は退職後もできる?時効は?」をご覧ください。)。

【合わせて読む】解雇通知書と解雇理由証明書って何?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 解雇通知書と解雇理由証明書は従業員が請求しなければ、会社に交付義務はない
  • 解雇理由証明書が発行されていないことが多いので、請求するのを忘れない

会社が解雇についての書面を出してくれません……。

会社は、従業員から、解雇通知書及び解雇理由証明書の請求があれば、これらを交付しなければなりません。

口頭解雇のリスク

会社が従業員を解雇するとき、「明日からもう来なくてよい。」などと口頭のみで解雇を言い渡す場合があります。

仮に、従業員が解雇されたと思いこんで会社に行かなくなってしまったものの、しばらくして当時の解雇を争おうとした場合、すでに解雇を争えなくなってしまっている可能性があります。

例えば、会社からは、「当時、解雇などと言っていないが、無断欠勤が続いたことから、それを理由に解雇する。」などと主張してくることが考えられます。この場合、解雇と言われた事実の証明が難しく、解雇もしていないのに無断欠勤をしたとされてしまう可能性が高くなり、それを理由にした解雇を争うことが難しくなってしまうのです。

解雇と口頭で告げられたら

会社に解雇と口頭で言い渡されたら、必ず、会社に対し、解雇通知書解雇理由証明書を請求しましょう。ここで注意すべき点は、次の2点です。

1点目は、これらの書類について、基本的に、従業員が請求してはじめて、会社に交付義務が発生することです(労働基準法22条2項)。もちろん、従業員が何も言わずとも会社が発行することもありますが、待っているだけでは発行されない場合もあるので、注意しましょう。

2点目は、2つの書面は記載内容が異なることです。基本的に、解雇通知書は、いつ付けで解雇を言い渡し、いつ付けで解雇となるのかが示された書面です。

他方、解雇理由証明書は、解雇になった具体的な理由が示された書面です。よく、解雇通知書のみ発行され、解雇理由証明書は発行されていないことがありますので注意しましょう。

解雇理由証明書の交付を受けていない場合には、速やかに、会社に対し、解雇理由証明書を請求しましょう。この解雇理由証明書の記載事項によって、不当解雇の争い方が大きく変わってきます。

【合わせて読む】不当解雇で必要な証拠は?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 解雇されても、残業代は請求できる
  • 解雇されたら、解雇通知書と解雇理由証明書を請求する
  • なるべく多くの客観的証拠を残す、集める

解雇を争う場合、何か証拠を残しておくべきでしょうか?

裁判などで争っていく場合には、何よりも客観的な証拠が有力です。どのような証拠があるか列挙していきましょう。

書面

・解雇通知書(重要)
・解雇理由証明書(重要)
・雇用契約書
・雇用条件通知書
・就業規則
・賃金規程
・勤怠記録(タイムカードなど)

録音

・解雇や退職勧奨の会話記録
・パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの会話記録

その他必要なもの

他にも、あなたにとって有利と思えるものはどのような形でも構いませんので、残しておくべきでしょう。証拠として使えるかどうか、どの程度有力な証拠となるかについては、弁護士に相談してみましょう。

証拠収集に関しては、別のコラムで詳細に解説していますので、そちらをご覧ください。

まとめ

解雇や退職勧奨にあったら、それだけで気が動転してしまい、冷静な判断ができなくなってしまう可能性が高いです。残念ながら、解雇や退職勧奨が日常的に行われていることも事実です。 そのようなときには、一人で抱え込まず、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう!
弁護士の探し方や相談の仕方については「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」をご覧ください。