新型コロナウイルス感染症対策が原因で発生する解雇・雇い止めなどの労働問題について
ざっくりポイント
  • 新型コロナウイルス感染症対策にまつわる労働問題についての法律知識
  • 新型コロナウイルス感染症対策で発生した労働問題の解決方法

目次

【Cross Talk】新型コロナウイルスのせいで仕事ができなくて借金が返済できない!どうすれば?

新型コロナウイルス感染症対策のための一連の対策の結果私が勤務している事業所が閉鎖になるようで私は解雇をされるのですが、会社からは退職届の提出を求められています。これは提出した方が良いのでしょうか。

退職届けを提出すると自主退職をした扱いになってしまう恐れがあります。前代未聞の事態が発生していて安易な行動でどのような不利益を被るかわからない状態なので、慎重に行動しましょう。

相談しておいてよかったです。

新型コロナウイルス感染症対策のために発生している労働問題に関する法律知識と対応方法について知ろう

2020年に流行している新型コロナウイルス感染症対策のために労働環境が大きく影響を受けています。
事業所の倒産・閉鎖や人員整理、勤務方法変更に伴う給与の支払い方法についてなど、様々な影響が発生しています。これに伴って会社としては正しい対応をしようとしているにも関わらず、労働問題が発生しているようなケースも発生しています。基本的な法律知識とともに、労働問題が発生したときの対応方法について検討しましょう。

新型コロナウイルス感染症にまつわる労働問題に関する法律知識

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 新型コロナウイルス感染症にまつわる労働問題に関する法律知識

新型コロナウイルス感染症対策で会社の売り上げが落ち込んだからといって、すぐに解雇ができるものなのですか?

売り上げが落ちたなどの経営不振による解雇については整理解雇の4要件を満たす場合にのみ認められるなどの法律の規定があります。その他の労働問題についても法律上はどうなっているかを見てみましょう。

新型コロナウイルス感染症対策に起因して発生している主な労働問題と、これに対応する法律知識について確認しましょう。

解雇・雇い止め

まずは相談者様のように、解雇・雇い止めといったものが発生しています。
会社の収益が著しく低下するなど、会社の経営上の理由による人員削減のための解雇(整理解雇)も絶対にできない訳ではないのですが、下記の整理解雇の4要件を満たす必要があります。

1.人員削減の必要性があること
2.解雇を回避するための努力が尽くされていること
3.解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
4.事前に使用者が解雇される者へ説明・協議を尽くしていること

新型コロナウイルス感染症は未曾有の事態ですが、そのことだけで整理解雇の4要件を満たしていると判断されたり、例外的に4要件は不要とするものではありません。
また、解雇するような場合には30日前までに告知するか、解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条)。

解雇については、「解雇されると今後の就職に不利になる」などと脅して自主退職を迫るようなケースが散見されるので、解雇の話が出た場合にはなるべく早く弁護士に相談をしておくことが望ましいといえるでしょう。

整理解雇の4要件などについては、
【会社をクビになった!そもそも解雇とは?~解雇の種類や要件を解説~】
こちらのコラムで詳しく解説しておりますので参照してください。

また、例えばマスクが手に入らないにも関わらず、「マスクをして職場に来い!来られなかったら懲戒解雇だ!」など、理不尽な言いがかりをつけられて懲戒解雇とされるケースも想定されます。
懲戒解雇については、客観的合理性及び社会的相当性が認められることが必要となります(労働契約法16条)ので、客観的合理性か社会的相当性のどちらかを欠くような懲戒解雇は無効とされます。

懲戒解雇については
【懲戒解雇されたけど、残業代請求はできるの?】
こちらのコラムで詳しく解説しておりますので参照してください。

退職勧奨

新型コロナウイルス感染症の影響で、会社の売り上げが激減しているような状況で、ただ上記のように解雇は非常に厳しい要件が必要なので、なんとか退職するようにお願いするようなことがあります。
このような、自主退職を働きかけることを「退職勧奨」と呼んでいます。

直接、「新型コロナウイルス感染症の影響で会社が厳しいので退職してほしい」と正面からお願いするようなケースもあれば、「コロナのせいで会社が厳しいので深夜まで働いてもらいますが残業代は出ません」「シフトは大幅に減らします」などと、間接的な退職勧奨をするようなケースまで千差万別です。
このようなお願いに関しては応じる法的な義務はないのですが、職場という閉鎖された中での出来事ですので、一人で対応するのも限界がある場合があります。そのような場合には早めに弁護士に相談すべきといえるでしょう。

退職勧奨については
【退職勧奨されたけど、残業代請求はできるの?】
こちらのコラムで詳しく解説しておりますので参照してください。

残業代問題

新型コロナウイルス感染症の影響で人員を減らした結果、残った人たちに業務が集中するため、長時間残業を強いられるようなケースもあります。
残業については36協定というものを結んでいることが必要ですが、会社であれば基本的にこのような協定が存在します。ただ、36協定が存在しても、残業や早出・休日出勤などの時間外労働は厳しく制限されています。

法律の規定は以上のようになりますが、新型コロナウイルス感染症の影響を理由として「タイムカードを切ってから仕事をしてください」「1時間早く出て仕事をしてからタイムカードを切って通常の勤務をしてください」などの対応を迫られることもあります。
このような場合には、後にきちんと残業代を請求するためには、タイムカード以外にも証拠の存在が不可欠となりますので、適切に証拠を確保するようにしましょう。

証拠の確保方法については
【未払い残業代請求のための証拠の集め方】
こちらのコラムで解説しておりますので参照してください。

新型コロナウイルス感染症予防の観点からテレワークでの勤務をしている方もいらっしゃいますが、テレワークもきちんとした労働時間です。
電話・Web会議を行った日時や、パソコンのアクセスログ、ワード・エクセル・パワーポイントなどの資料作成に関する日時を保存するなどして、労働していた時間をきちんと把握できるようにしておきましょう。

新型コロナウイルスに感染した

新型コロナウイルスに感染したような場合にはどうなるのでしょうか。
まず、新型コロナウイルス感染症は、2020年2月1日に、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律6条8項の指定感染症に定められています(令和2年政令第11号第1項、令和2年政令第22号)。
指定感染症に罹患しますと、同法に定められる都道府県知事が行う就業制限により、労働者は休養することになります。

これについては、労働基準法26条に定められる休業手当が必要な「使用者の責に帰すべき事由」にあるとはいえないため、使用者は休業手当を支払う必要はないとされています。
そのため、賃金・休業補償は求めることはできなくなっています。

この場合でも、連続して4日以上休むような場合には、傷病手当金の受給が可能といえる場合がありますので、受給を検討しましょう。

参照:
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に感染した被用者等に対する傷病手当金の支給について

賃金の支払い

賃金の支払いが受けられないケースについて検討しましょう。
緊急事態宣言をうけての自粛要請に応じて事業所を閉鎖するような場合に、使用者の責めに帰すべき事由があると判断できる場合には、労働基準法26条の休業補償が必要な場合があります。
使用者の責めに帰すべき事由があるかどうかはケースバイケースになるので、弁護士に相談をするようにしましょう。
在宅勤務・テレワークでの勤務になった場合に、在宅勤務だから給料は払わない・減らすということが発生しえます。
しかし、在宅勤務・テレワークであるという一事を持って給与の支払いをしない・給与を減らすということを会社が一方的に行うことはできません。
賃金の変更については労働契約法8条に規定しているように、労使の合意によって行われるのが原則で、労働者の同意なく賃金の切り下げを行うことは無効です。
懲戒解雇や事実上の不利益を課するような旨をほのめかして合意を迫るような場合には無効とされるようなケースもありえますので、弁護士に相談すべきでしょう。

新型コロナウイルス感染症対策で労働問題が発生したときには弁護士に

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 新型コロナウイルス感染症にまつわる労働問題が発生したときの対応方法

新型コロナウイルス感染症に起因する労働問題が発生した場合にはどうすればいいのでしょうか。

前例のないケースも多くあり、会社としては善処しようとしていても法律に違反するような事も発生しえるでしょう。
当事者同士で何が正しいのかの解決策が見いだせないまま議論をしても感情的な対立に終始してしまうおそれもあります。労働問題に関する深い知識が必要なことも想定されるので弁護士に相談をするようにしてください。

新型コロナウイルス感染症に起因する労働問題が発生したような場合にはどのように対処するのが良いのでしょうか。
結論としてはなるべく早く弁護士に相談をすべきなのですが、その理由は以下の通りです。

前例のない未曾有の事態なので引用すべき事例がないことが多いから

直近で数多くの労働問題が発生したのはリーマンショック時です。
この際には、派遣労働者を中心とする非正規雇用の失業が大量に発生した時期でしたが、今回の新型コロナウイルス感染症は不況というだけではなく、感染症予防のための外出自粛・営業停止といった事態も重なっています。
そういう意味で前例のない労働問題が多発しているといえるので、インターネットで検索して自分で対応しようとしても参考になるケースがないことが考えられます。専門家として知識や経験を有する弁護士に相談したほうが良いでしょう。

自己に都合の良い解釈をして不当に労働者の権利を抑制する可能性があるから

上述のように、前例のない状態ですので、労使の力関係を利用して、労働者の権利を抑制するために、新型コロナウイルス感染症対策を自己の都合の良いように利用する可能性も大いに考えられます。
その対応が法律などの規定に照らして正しいものなのかどうかを確認するためには、労働に関する法律についての深い知識が必要になります。したがって、専門家である弁護士に相談するのが良いでしょう。

当事者間で話をしても感情的になりがちであるから

このような労使の争いについては、当事者間で話し合いをしようとすると感情的な対立に陥りがちです。
当事者が感情的な対立をしているような場合には、当事者間での話し合いが進まず、いつまでたっても争いが解決しないという事もあります。
弁護士に相談・依頼をすることで、弁護士が当事者の間に入って緩衝材としての役割も果たしてくれるので、冷静に話し合いをすすめることが可能になります。

まとめ

このページでは、新型コロナウイルス感染症の流行にともなって発生する労働問題についての法律と対応策についてお伝えしました。
前例のない事態に対応するためには、インターネット上の知識だけでは不十分といえますので、弁護士に早めに相談をすることが望ましいといえるでしょう。

この記事の監修者

弁護士 鎌田 隆博
弁護士 鎌田 隆博東京弁護士会
ご依頼者さまにとって最適な法的サービスを提供できるよう、精一杯努めて参ります。