保育士に特有の残業代請求のコツを知る
ざっくりポイント
  • 保育士は長時間労働になりがちで残業代が100%支払われているとはいえない
  • 業界的にサービス残業等が多い
  • 労働時間ではないとされるものの中でも法律上労働時間として認められるものを知る
  • ざっくりポイントざっくりポイント

目次

【Cross Talk】実は残業代未払いが多い!?保育士が残業代の支払いを求めるためには

私は保育士として働いているのですが、あまりにも長時間労働であるにも関わらずお給料が低くて、本当は残業代としてもらえるものがもっと多いんじゃないかと思っています。
残業代請求はできますか?

保育士の方はその多くで未払いの残業代が発生していることがあります。詳しく事情を教えてください。

保育士が未払いの残業代を請求するコツを知る

保育士という仕事に従事されている方の中には、残業代を適切にもらっていない方が多くいます。
これは、保育士という職業が慢性的な人手不足の割にやる事が多いということに起因します。
業界全体として体質的にサービス残業が多いことに合わせて、休憩時間とされている時間にも実は労働時間と評価できる場合があるなどで、残業代請求ができる可能性が高いといえます。

保育士の残業代未払いが多い理由

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 固定残業代の支給・変形労働時間制などでの雇用が多く残業代が支払われないケースが多い

そもそも保育士って残業代未払いが多いのですか?

固定残業代が支給されていることや、変形労働時間制の理解をしていないことから、残業代として正しい支給を受けられていないことを知らない方が多いのですが、実は多くのケースで残業代を適切に受け取っていないことが非常に多いです。

保育士という職業に従事されている方の多くが、実は残業代を適切に受け取っていません。
どのような理由で未払い残業代が発生しているのかを知りましょう。

タイムカード打刻後に仕事を持ち帰ってやることが横行している

保育士の勤務時間の大部分が、子供が園内にいる時間にあてられていますが、その時間内に子供の保育の他に事務作業もこなさなければなりません。

また、その事務作業もアナログなものが多く、勤務時間内で終わらないことが多いようです。
これらの原因から、タイムカードを切ってから自宅で仕事をすることが横行しています。
当然ですが、自宅で仕事をせざるを得ない場合には労働時間に含めることができますが、残業代が支払われていないことがあります。

そもそも労働時間を把握していない

後述する固定残業代の支払いがされていることを根拠に、タイムカード自体がないなど労務管理をしていないことがあります。
そのため、労働時間が何時間であるか分からず、残業代の支払いをしようがないという実態もあります。

固定残業代制・変形労働時間制での雇用により新たに残業代を支払わなくて良いという誤解

保育士は固定残業代制や変形労働時間制といった条件で雇用されます。
その結果固定残業制で残業代は支払われている・変形労働時間制であるから残業代は出ない、といった勘違いをしていることが多いのです。

しかし、このような条件で雇用がされても労働時間に対応した残業代は支払わなければならず、未払いの場合には支払いをしなければなりません。

保育士の残業代請求をする6つのポイント

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 保育士が残業代請求をする場合のポイントを知る

では保育士が残業代請求をするにはどのようにすれば良いでしょうか。
何かコツはありますか?

特にどういった証拠を集めるかなどのポイントを見てみましょう。

それでは、保育士が残業代を請求する場合にどのようなことが大切になるのでしょうか。主なポイントとして6つに分けてお伝えします。

残業代請求の基礎知識を得る

まず残業代請求の全体像を知っておきましょう。

詳しくは、業界的に「サービス残業」が当たり前になっている場合の残業代請求方法・交渉、こちらを参照してください。

残業代請求は

証拠収集→請求する未払い残業額の計算→交渉→裁判→強制執行

という形で進むことが一般的です。
この際、裁判で勝訴をするためには、証拠が必要となり、証拠を提出しなければならないのは、残業代請求をする保育士側ということになります。

証拠がなければ、裁判をしても敗訴となりますし、証拠のある範囲でしか請求が認められないということもあります。
もっとも、証拠がきちんとあれば、交渉段階から有利に進めることができるということを知っておいてください。

保育士特有の証拠を集める

保育士に特有の証拠にはどのようなものがあるのでしょうか。
これも勤務している保育園によるのですが、タイムカードでの出退勤管理をしていない、アナログ作業が多いので時間の記録が多くないということが多く、残業を立証できる証拠が少なくなりがちです。

そのため、日常的なコミュニケーションに使っているもの(電話の着信履歴・メール・LINEなどのSNS)があれば、そういったものの記録は証拠になると考えておきましょう。

業務日報のようなものがあれば、作業内容に合わせて何時までかかったかを記録して、提出する前にスマートフォンや携帯電話で写真をとっておくなどしましょう。

子供の昼寝の時間も労働時間になることがある

保育士に特有の問題として、子供の昼寝の時間があります。
園児の昼寝の時間に合わせて保育士の休憩時間に充てられていることが多くあります。

しかし、休憩時間とされているこの時間にも、ぐずる園児が居れば対応をしなければなりませんし、そのため昼寝をしている部屋から離れられないということも多いでしょう。

休憩時間というのは労務から解放されていなければならず、突発的な事態に対応しなければならない時間は休憩時間にはならないと認定されることがあります。

園児の昼寝の時間は、どのような決まりになっているのか、労働時間であると認定される可能性がある場合には立証できる証拠を確保するようにしましょう。

家に持ち帰っての仕事も残業代が出ることがある

上述したとおり、保育士は自宅で事務作業をするような場合が多くあります。
このような自宅での残業について、通常の勤務時間では処理できない程度の業務量であるような場合は、時間外労働・残業として認定され、残業代支給の対象になり得ます。

自宅で仕事をするように指示があった、前日に明日までに資料を作るよう指示された、など明確な指示がある場合はもちろんですが、持ち帰りの残業ありきで毎日の業務が回っており、個々の指示はなくても黙示的に残業指示があったとみられる場合にも労働時間として認められる可能性があります。
どれくらいの時間を残業していたか、それを裏付ける指示や、業務に関する実態を日記として記載するなどしておきましょう。

「固定残業代制(みなし残業)だから残業代は出ない」は誤解

保育士の雇用形態については固定残業代制(みなし残業)になっていて、何時間残業しても同じとされていることがほとんどです。

しかしながら、実際に勤務した時間(実労働時間)が設定された残業時間分を超える場合には、保育園側は超過分の残業代を支払わなければなりません。

退職しても残業代請求はできる

残業代は労働者の権利ですので、退職後でも請求することができます。
ただ、残業代は給与ですので、2年の消滅時効にかかることになっており、請求できるのは2年分になるということを知っておいてください。

まとめ

このページでは保育士が残業代請求をするときのポイントを中心にお伝えしてきました。
業界的に残業が多いにも関わらず、固定残業代制などでその全額の支給を受けていないことが多い保育士が残業代請求をする場合には、どの時間が労働時間で、どういった証拠を集めるか、ということが鍵になってきます。
できるだけ早い段階から弁護士に相談するなどして、残業代請求を確実にできるようにしましょう。