妊娠や出産を理由に解雇することが違法かを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 妊娠・出産を理由とする解雇や不利益な取扱いは法令によって禁止されている
  • 妊娠・出産を理由とする解雇は違法無効である
  • 不利益な取扱いを受けた場合は、労働審判や労働訴訟を起こしたり、労働基準監督署に相談するなどの方法がある

目次

【Cross Talk 】姙娠・出産を理由に解雇することは許されるの?

出産で仕事を休まれると大損害になるから、会社を辞めるように言われました。妊娠・出産を理由に解雇することは許されるのでしょうか?

法律の規定によって、妊娠・出産を理由に解雇することは、違法であり許されません。不当に解雇された場合は、解雇の撤回を求めたり、労働訴訟を起こすなどの対応方法を考えましょう。

妊娠・出産を理由に解雇することは、違法なんですね。妊娠・出産で不利益な取扱いをされた場合についても教えてください!

妊娠・出産を理由に解雇することの違法性や、解雇された場合の対応方法を解説します。

妊娠・出産によって仕事を休まれると困るという理由で、会社が従業員を解雇したり、降格などの不利益な取扱いをする場合があります。

しかし、妊娠・出産を理由に解雇することは違法であり、不当な解雇や不利益な取扱いを受けた場合は、対応方法を検討することが重要です。

そこで今回は、妊娠・出産を理由とする解雇や不利益な取扱いの違法性や、対応方法について解説いたします。

妊娠・出産を理由とする解雇などの不利益な取扱いは違法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 妊娠・出産を理由とする解雇や不利益な取扱いは法令によって禁止されている
  • 妊娠・出産を理由とする解雇は違法無効である

妊娠・出産を理由に解雇したり、不利益な取扱いをしたりすることは許されるのでしょうか?

妊娠・出産を理由とする解雇や不利益な取扱いは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。妊娠・出産を理由に解雇した場合、解雇は違法無効です。

妊娠・出産を理由とする解雇その他の不利益な取扱いの禁止


妊娠・出産を理由に解雇することや、その他の不利益な取扱いをすることは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。
(第9条第3項)

労働者が妊娠・出産をすると一般に長期間の休業などが必要となり、労働者を雇用する会社にとっては痛手になる場合があります。

とはいえ、妊娠・出産を理由に会社が自由に労働者を解雇できるとなると、妊娠・出産をした労働者にとっては大きな不利益になってしまいます。

そこで、法令によって妊娠・出産を理由とする解雇を禁止することで、会社が自分の都合だけで不当に解雇することを防止し、労働者を保護しています。

また、解雇には至らなくとも、妊娠・出産を理由に会社から降格や減給された場合は、同じく労働者にとっては不利益になります。

そこで、
解雇だけでなく不当な降格や減給などの不利益な取扱いについても禁止
することで、労働者の保護を図っています。

妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いの例

妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いの例として、以下のものがあります。

  • 期間を定めて雇用される者について、契約を更新しないこと
  • 契約の更新回数の上限が明示されている場合に、回数を引き下げること
  • 退職を強要すること
  • 正社員をパートタイムなどの非正規社員とするような、契約内容の変更を強要すること
  • 降格させること
  • 就業環境を害すること
  • 労働者に不利益な自宅待機を命じること
  • 減給や賞与の不利益な算定を行うこと

妊娠・出産を退職理由として予定する定めの禁止

妊娠・出産を退職理由として予定する定めは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。(第9条第1項)

退職とは、解雇以外の事由によって労働契約を解約することをいいます。

退職の事由(退職理由)は一般に就業規則で定められ、例として以下のものがあります。

  • 労働者が退職を願い出て会社が了承した場合
  • 期間を定めて雇用されており、期間が満了した場合
  • 労働者が死亡したとき

就業規則で定めればどのような退職理由でも認められるわけではなく、一定の事由については、退職理由として定めることが法令で禁止されています。

妊娠・出産を退職理由として規定することは、男女雇用機会均等法によって禁止されており、仮に就業規則に規定したとしても、正当な退職理由としては認められません。

妊娠・出産を理由とする解雇は無効となる


妊娠・出産を理由とする解雇は、男女雇用機会均等法によって禁止されています。
(第9条第4項)

具体的には、以下の2つの事由による解雇が禁止されており、これらの事由によって会社が労働者を解雇したとしても、原則として解雇は無効となります。

  • 妊娠中の女性労働者を解雇した場合
  • 出産後1年を経過しない女性労働者を解雇した場合

例えば、妊娠している女性社員を会社が解雇したり、出産から半年しか経っていない女性従業員を解雇した場合は、原則として解雇は無効となります。

ただし、妊娠中や出産後1年以内の労働者を解雇したとしても、妊娠・出産とは関係のない理由を証明した場合は、例外として解雇無効には該当しません。

例えば、出産後半年以内の労働者を解雇した場合、解雇の理由が妊娠・出産ではなく、横領を理由とする懲戒解雇であることを会社が証明した場合は例外として考えられます。

妊娠・出産を理由とする不利益取扱いをした会社に課されるペナルティ


妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いを会社がした場合、厚生労働大臣による勧告(会社に対して不当な取扱いの是正を促すこと)の対象になります。
(第29条、第30条)

勧告に会社が従わない場合は、厚生労働大臣はその旨を公表することができます。公表が行われると、会社の信用力低下などといった社会的な不利益につながります。

また、厚生労働大臣は会社に対して必要な報告を求めることができますが、会社が報告に応じなかったり、虚偽の報告をした場合は、20万円以下の過料の対象となります。(第33条)

妊娠・出産を理由とする解雇などの不利益取扱いを受けた場合の対応方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇を争うには、会社に直接請求する
  • 労働審判や労働訴訟など裁判所の手続きを利用する
  • 不利益な取扱いを受けた場合は、労働基準監督署に相談する

妊娠・出産を理由に、解雇などの不利益な取扱いをされた場合は、どのような対応方法があるのでしょうか?

妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いに対しては、会社に撤回を請求する、労働審判や労働訴訟を起こす、労働基準監督署に相談するなどの対応方法が考えられます。

不当解雇の解決方法

妊娠・出産を理由に不当解雇された場合は、
解雇を撤回するよう会社に請求する方法があります。

妊娠・出産を理由に解雇することは原則として違法なので、きちんと主張することで会社が解雇を撤回する可能性があります。

会社が撤回に応じない場合は、労働審判を申立てたり、労働訴訟を起こしたりなど、裁判所の手続きを利用して不当解雇を争う方法を検討しましょう。

会社に直接請求するにせよ、裁判所の手続きを利用するにせよ、不当解雇の問題を解決するには、
法的に適切な主張をすることや、不当解雇を証明するための証拠を集めることが非常に重要です。

自分だけで主張をまとめたり証拠を揃えたりすることは困難ですが、労働問題の経験が豊富な弁護士に相談することで、不当解雇の問題を円満に解決しやすくなることが期待できます。

労働基準監督署に相談する

妊娠・出産を理由に解雇などの不利益な取扱いを受けた場合は、
労働基準監督署に相談する方法もあります。

各地の労働基準監督署には、総合労働相談コーナーが設置されており、あらゆる分野の労働問題の相談窓口となっています。

不当解雇をはじめとする労働問題についての助言やあっせんを行うほか、権限を有する担当部署への取次ぎ、裁判所や法テラスなど紛争解決に役立つ機関の情報提供も行っています。

まとめ

妊娠・出産を理由に解雇することは原則として、違法無効であり、不当解雇にあたります。
妊娠・出産を理由に降格や減給するなどといった不利益な取扱いをすることも、原則として禁止されています。
妊娠・出産を理由に解雇や不利益な取扱いを受けた場合は、労働問題の経験が豊富な弁護士に相談したうえで、適切な対応方法を検討することが重要です。