未払い残業代の請求ができるかどうかのチェックリストを提示いたします。
ざっくりポイント
  • 残業代が発生している場合でも、請求できる期限がある。
  • 残業代は2年を超えると請求できない場合がある。

目次

【Cross Talk 】会社に未払い残業代を請求できるのでしょうか。

先生、私が現在の会社に勤務してから3年が経過します。その間、必死に業務をこなそうと勤務したため、恒常的な残業時間が発生していました。会社に残業代を請求できるのでしょうか。

相談者さんは、大変に生真面目な方なのですね。相談者さんの勤務されている会社は、さぞかし、その恩恵にあずかっているでしょう。それだけに、毎月残業してまで必死に頑張ってきている相談者に対し、会社は残業代を支払う必要があるでしょう。ただし、注意点としては、未払い残業代の請求できる期間は、2年間となります(労基法115条)。したがいまして、残念ながら、相談者さんの未払い残業代のうち、2年より前のものについては、すでに請求ができなくなっている可能性があります。

なるほど、よくわかりました。疑問に感じたら、弁護士の先生に法律相談するようにします。

あなたの残業代請求ができるのかどうか、ここで確認しましょう。

たくさん働いたのに、なぜか給料が変わらない。そんなことはないでしょうか。または、就業規則を見たことがないのに、恒常的な残業時間を行っているなどの状況はないでしょうか。残業代は、労働者が請求することができる正当な権利です。未払い残業が生じているのは、なにもブラック企業に限りません。
また、在職中に、労働者から会社に未払い残業代を請求するには、大変な勇気が必要です。この記事では、どういった場合に、未払い残業代を会社に請求できる可能性があるのかについて、ご説明させていただきます。

未払い残業代チェックリスト

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 未払残業代請求チェックリストに複数項目が該当する場合には残業代請求できる可能性がある。
  • 残業代請求ができるかどうか悩んだ場合には弁護士に相談してみる。

最近、未払いの残業代について話題になっていますが、具体的にはどういった場合に残業代の請求ができるのでしょうか。ブラック企業に勤務していないと、未払い残業代はないものなのでしょうか。

未払い残業代が発生しているのは、なにもブラック企業に限定されません。最近ですと、2019年の3月29日の報道各社のものに、通信大手のKDDIが未払い残業代の合計額が6億7,000万円あったと発表していました。このほかにも、2017年には宅配大手のヤマト運輸でも未払い残業代が問題となっているのが記憶に新しいでしょう。
未払い残業代が発生するか否かは、会社がブラックであることとは直接には結び付きません。残業代は、労働の対価として支払われるものであり、事実として残業があるのであれば、原則的には未払い残業代を請求できる可能性があると考えられます。
とはいえ、一般の方が自分で残業代が請求できるかどうかなど、判断するのは難しいことでしょう。下記にそのリストを提示しますので、このリストに提示されている項目に複数該当する場合には、残業代の請求をできる可能性があるため、お近くの弁護士に相談してみてください。

未払い残業代チェックリスト

上記にて説明したとおり、下記に未払い残業代を請求できるかについてのチェックリストを記載します。ぜひ、確認してみてください。

<未払残業代請求チェックリスト>

① 会社に在籍中、または退職後2年以内である。
※未払い残業代の請求権には消滅時効があります(労基法115条)。消滅時効とは、請求権を行使できる期間制限のことを指します。なお、未払い残業代の時効は、その残業代を支払うべき給与毎に発生します。

② 残業代(時間外手当)は実残業時間通りで計算していない。
※タイムカードがある場合には、タイムカードを切ってから残業をしている。または、タイムカードが存在せず、例えば、従業員が手書きで勤務表に勤務時間を記入し上司の決裁を得るといった形式である場合などです。

③ 各種手当を基本給から外して残業代を計算している。
※各種手当のうち、基礎賃金に含まれるか否かには、法的判断が必要となります。疑問に感じた場合には弁護士に相談すると良いでしょう。

④ 会社は従業員には基本給に残業代を含めて計算していると説明している。

⑤ 36協定を労働基準監督署に提出していないと思われる。

⑥ 就業規則がない、または、就業規則があっても従業員が閲覧できる場所にはない(上司のデスクの中など)。

⑦ 会社と雇用契約書(労働契約書)を取り交わしていない。(飲食店、小売り、美容店勤務等の場合に多い傾向があります。)
ごく小規模な会社や、個人事業主と契約している場合に、雇用契約書を作成していない場合が少なくありません。

⑧ 出退勤管理が会社でされていない、もしくは従業員が行っている。(出退勤管理は会社の義務です。改正労働安全衛生法66条の8、66条8の2~4、66条の9)

⑨ 管理職だが、経営に参加するわけではない、または部下がいない。
※判例法理上、「管理職」とは、実質的に会社と同一視できるような経営判断の決定権限がある場合です。したがいまして、たとえ、取締役などの役員であっても、実質的に会社と一体として経営判断できない場合には、管理職ではないと評価される可能性があります(スタジオインク事件:東京地裁判平成23年10月25日労判1041号P174)。

⑩ 残業は許可制ではない。

⑪ 残業が許可制であっても、会社が恒常的な残業時間を黙認している、または、残業しないと到底処理することができない業務量である。

⑫ 「サービス残業」が常態化している。

⑬ シフト表などの出退勤記録のコピーなどを持っている。

⑭ 出退勤の時間を正確にメモしている。

⑮ 業務日報などを正確に記入している。

チェックリストの該当が多かったら

上記のチェックリストの該当項目が多いといった場合には、未払い残業代を請求できる場合があります。とくに、チェックリストのうち、13~15に該当する場合は、会社に請求を行えば、すぐにでも残業代の支払いを受けられる可能性があります。

未払い残業代を請求するにあたり、重要な要素は、「残業代発生の事実」の証明です。したがいまして、残業代発生の事実が、手元にすでにある場合には、弁護士に相談などを通じ、会社に請求を行うまでの時間が短くてすむ可能性があります。

この他にも、労働契約書がない場合や、就業規則があるかどうかが疑わしいといった場合も、残業代請求ができる可能性があります。その理由は、会社が労働者に残業をさせるためには、労基法36条に基づく労使間の協定(36協定)が必要となるためです。

したがいまして、そもそも契約書がない場合や、就業規則がないといった場合には、36協定が存在していない可能性が高く、この場合は会社がそもそも残業をさせることが違法なのですが、労働者は正当な対価として、未払い残業代の請求ができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。もしかしたら、存外、ご自分の状況であっても残業代請求が可能な場合が少なくはないのかもしれません。
最近は、フレックスタイム制であったり、変形労働制、裁量労働制、固定残業代制など、さまざまな名称の勤務形態があって複雑です。
判断に迷いが生じた場合や、残業代について相談したい場合には、弁護士に聞いてみるのが良いでしょう。