正社員でなくても要件さえ充たせば個人再生を利用することができます。
ざっくりポイント
  • 個人再生を利用するためには「将来継続的に又は反復して収入を得る見込み」が必要
  • アルバイトやパートでも収入の要件さえ充たせば再生計画を認可してもらえる
  • 毎月の返済を行うために十分な収入があることも個人再生を利用するための要件の一つとなる

目次

【Cross Talk】正社員でなければ個人再生は利用できないのでしょうか?

借金を大幅に減額してもらえる個人再生の手続を利用したいと考えています。個人再生を利用するためにはいくつかの条件がありますが、その中に収入の要件があると聞きました。一定の収入がなければ個人再生は利用できないということなのでしょうか。

個人再生を利用するためには、将来継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが要件となっています。ある程度安定した収入があり、将来も給与が支払われることが見込まれる方を想定した手続です。

では、アルバイトやパートなど、正社員ではない人は個人再生を利用することはできないのでしょうか。

必ずしもそういうわけではありません。収入の要件さえ充たしていれば、正社員以外の方でも個人再生を利用できることがあります。詳しくご説明しましょう。

個人再生の申立てを行う前に、どのような場合に裁判所が再生計画を認可してくれるのか理解しましょう。

個人再生を利用するためには収入の要件を充たしている必要がありますが、これは必ずしも正社員でなければならないということではありません。
アルバイトやパートの方でも、将来にわたって安定した収入を得られる見込みがあることを裁判所にアピールすることによって、再生計画案を認可してもらうことができる場合があります。
どのような場合に個人再生を利用でき、どのような場合に利用できないのか、ご説明いたします。

個人再生の要件

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産と異なり、個人再生を利用するためには収入の要件を充たしている必要がある
  • 「将来継続的に又は反復して収入を得る見込み」があることが条件となる

個人再生の制度を利用するためには継続した収入がなければいけないと聞きました。自己破産では収入の有無は問題とならないのに、なぜ個人再生では収入が問題となるのでしょうか。

個人再生は自己破産と違って減額された借金を再生計画に従って返済する義務が残るからです。再生計画どおりの返済をするために継続的かつ十分な収入がなければ、裁判所は再生計画を認可してくれません。

個人再生とは、裁判所を通じて借金を大幅に減額してもらうことができる手続です。個人再生では、減額後の借金を何回の分割で支払っていくかという計画を裁判所に提出し、認可してもらい、それに従って返済をしていくことになります。この計画を「再生計画」といいます。

個人再生は自己破産と異なりマイホームを手元に残すことができる制度が用意されているため、住宅ローンを支払い中のサラリーマンなどに人気のある手続です。
個人再生は、将来継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、借金額が5,000万円以下の場合に利用することができます。つまり、個人再生は自己破産などと異なり、継続的に収入を見込める場合でなければ利用することができません。

個人再生に収入の要件が設けられている理由は、再生計画に従って返済をしていく必要があるためです。たとえば、減額後に毎月3万円ずつ返済していく必要があるにもかかわらず、収入が全くなかったり、収入が少なくほとんど余剰が生じなかったりするような状態であれば、再生計画どおりに返済していくことは困難でしょう。このような場合は再生計画案を出しても裁判所に認可してもらうことはできません。

個人再生の要件についての詳細は、自己破産はしたくない!個人再生手続ってどんなもの?メリットデメリットを教えて!をご参照ください。

個人再生を利用できる人

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 無職や主婦(主夫)の方など、自分の収入がない方は個人再生を利用するのは難しい
  • アルバイト、パート、でも継続的な収入があれば個人再生は利用可能

個人再生は安定した収入がある方を対象とした制度ということですが、私はアルバイトによる収入で生活をしています。そのような場合でも個人再生は利用可能なのでしょうか。

アルバイトでも収入の要件を充たしていれば再生計画を認可してもらうことは可能です。ただしアルバイト先を頻繁に変えているような場合には収入が安定していないと判断される可能性もありますので注意が必要です。正社員でない方が個人再生を利用することが可能か、ケースごとにご説明いたしましょう。

無職
仕事をしておらず収入がない方は、「将来継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」とはいえませんので、個人再生を利用することはできません。
このような方は、アルバイトやパートを探して継続的な収入を得られるようになってから個人再生の手続をするか、個人再生ではなく自己破産や任意整理といった他の債務整理の手続を選ぶことになります。

専業主婦(主夫)
個人再生の収入要件は、民事再生を利用する本人の収入状況を基準に判断され、夫や妻の収入は考慮されません。
専業主婦、あるいは主夫で自ら収入を得ていない方は、継続的な収入があるとはいえませんので、個人再生を利用することはできません。
したがって無職の方と同様に、アルバイトやパートを探すか、他の債務整理の手続を検討する必要があります。

アルバイト
アルバイトの場合、将来的には収入を見込めますが、継続性が問題となります。再生計画は3年から5年にわたって返済をしていく手続ですので、その間アルバイトによる収入が維持できる見込みが高いことを裁判所に認めてもらえれば再生計画を認可してもらうことができますが、短期的な収入に過ぎないと判断されれば不認可となってしまいます。
同じ勤務先で長期的にアルバイトに従事している場合、収入に継続性があると認められ、個人再生が利用できる可能性が高くなります。

契約社員
アルバイトではなく契約社員の場合はどうでしょうか。契約社員は契約期間が1年間とされていることが多く、更新されるという保証がないため、継続的に収入が見込めるかが問題となります。
今までに何度も契約更新をした実績があり、将来的にも再契約される見込みが高いということを主張することにより、収入の継続性のアピールする必要があります。

個人再生は継続的収入が見込めるだけではダメ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 個人再生では毎月決まった金額を返済していく必要がある
  • 継続的な収入があっても、毎月の返済をするのに十分な収入がなければ個人再生は利用できない

継続的な収入がなければ個人再生を利用できないことは理解できました。では、毎月安定した収入が将来的に見込めさえすれば個人再生は利用可能なのでしょうか。

そうではありません。継続的な収入があるというだけでなく、返済をしていくのに十分な収入がなければ再生計画を認可してもらうことはできません。

毎月の収入の金額も問題になるということですね。詳しく教えていただけますでしょうか。

これまで収入の継続性の要件についてケースごとに解説してきましたが、単に継続的な収入があるというだけでは個人再生を認めてもらうことはできません。
個人再生は、再生計画に基づき、将来の収入から計画的に弁済をしていく手続です。つまり、減額した借金額に対して、収入から割り出される支払額が少なすぎれば、再生計画は認可されません。たとえば毎月5万円の返済をしていく必要があるにもかかわらず毎月の収入から支出を引いた金額が3万円しかなければ返済していくことはできないので、再生計画は不認可となります。
つまり、たとえアルバイトやパートなどで継続的に収入を見込めても、弁済額に対して収入が少ない場合には個人再生は利用ができないことになります。

まとめ

無職やアルバイト、専業主婦が個人再生を利用できるか、ご理解いただけたでしょうか。
正社員でなければ個人再生を利用できないわけではありませんが、収入が不安定だったり、月々の弁済をしていくのに十分な収入がなかったりする場合には再生計画を認可してもらうことができません。
ご自身の収入状況で個人再生が利用可能か疑問に思ったときには、債務整理の専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。