任意整理や自己破産をしてしまった場合の携帯電話の契約やローン契約について説明します。
ざっくりポイント
  • 自己破産後であっても、一般的には通信回線契約そのものは可能である
  • 自己破産後にスマホ等端末を分割払いで購入することは困難である

目次

【Cross Talk】自己破産した後に携帯電話(スマホ)の契約って締結できるの?

先日友人が不動産投資に失敗して、自己破産してしまいました。私の素朴な疑問なのですが、自己破産した後に携帯(スマホ)の契約はできるのでしょうか。

なるほど、いまやスマホは日本の人口で割ると、1人で複数台持つといわれるほど、生活に欠かせない存在となっていますよね。仮に、自己破産した場合に、スマホが持てないとなると、大変に不便を感じることでしょう。
「携帯(スマホ)の契約」は大きく二つに分かれます。
一つは携帯電話の通信回線そのものの契約です。もう一つは、スマホ等端末の分割払いの契約です。
まず、通信回線契約については、破産手続前に滞納等がない場合でも、滞納があった場合でも、免責決定が得られれば、新規で通信回線契約を締結することができます。
他方で、端末代金の分割払いには、その実質は信販会社からの新たな借入れに等しいことから、破産手続きをとると原則として分割購入することはできなくなります。

なるほど、大変わかりやすくご説明いただきまして、ありがとうございます。

任意整理や自己破産をしてしまった場合には携帯電話関係の契約はできないのでしょうか

任意整理・個人再生・自己破産などの債務整理をしてしまった場合、その後の生活にどのような影響があるのかについては、不安があるかと思います。例えば、債務整理をしたあとに、新しく格安スマホ等(携帯電話回線契約)はできるのか、または、スマホ等の機種変更や、分割払いが可能なのかについては、とりわけ生活に密着していることから、そうした思いが強いでしょう。また、最近はオンラインのさまざまなサイトでショッピングなどができるようになりましたが、決済はクレジットカードの利用が推奨されています。したがいまして、債務整理後にこうした決済のためにローン契約やカードが作れるかについても同様に関心のあることでしょう。この記事では、携帯電話(スマホ)契約が可能なのか、及びローン契約やクレジットカードの作成はできるのかについてご説明いたします。

自己破産後でも携帯電話の契約自体はできる

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 通信料金の滞納がある場合には携帯ブラックとなる
  • 自己破産により免責が得られれば、原則として携帯ブラックではなくなり契約可能となる

一旦、自己破産してしまうと、しばらく携帯電話の(通信)契約はできないものなのでしょうか。

携帯電話(通信)の契約ができるかどうかについては、原則的には、破産による免責決定が得られていれば、可能なものといえます。
自己破産以前に、通信料金の支払いに滞納などがある場合には、各携帯キャリアや格安スマホキャリアが
共有する信用情報に事故情報が記載されます(いわゆる「携帯ブラック」、情報機関はTCA(電気通信事業者協会)。
しかしながら、破産手続が行われた場合、免責不許可事由(ギャンブル等のように積極的に財産を著しく減少させる行為や、投資等の射幸行為が認められる場合)がない場合には、裁判所より免責許可がされる(破産法252条参照)ことから、通信料金の滞納はなくなり、携帯ブラックの情報も消去されます。(TCAホームページ参照)。
したがいまして、自己破産して、免責を得られれば、原則的には、携帯電話回線の再契約は可能となります。ただし、携帯ブラックに記載されている理由が、通信契約の滞納に限定されず、犯罪に使用された端末(いわゆる「飛ばし携帯」)にかかわる場合も含まれる場合には、通信回線契約を断られる可能性があります。

携帯本体の分割購入はできない

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 携帯の再契約はできる。しかし本体端末の分割払い購入はできなくなる
  • 2019年秋以前に契約を行う場合には、各携帯キャリアによっては、ゼロ円端末があるため購入できる場合がある

任意整理や自己破産をした場合には、携帯を分割で購入することはできないのでしょうか。

一般的にはできないものといえます。

冒頭でもご説明しましたが、従前は通信料金と端末料金はセットであったことから、自己破産した場合でも、端末を分割で購入できるケースもありました(通信料金にスマホ本体代を上乗せして請求することにより、事実上分割購入ができる方式。ゼロ円端末等の場合)。もっとも、2019年5月に国会にて、電気通信事業法が改正され、2019年秋の施行以降は、通信料金と端末代金の分離が義務化されることになります。

したがって、2019年秋以降は、端末代金の購入については信販会社等を通じた分割払契約を締結することとなるため、一般的には、任意整理や自己破産をした場合には携帯本体の分割購入はできなくなるものと予想されます。

ローンが組めなくなる

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 事故情報が記載されるため、5~7年間は、クレジットカードやローンが組めなくなる
  • 資力を回復し十分な信用力がある場合にはローンを組める場合もある

携帯の契約についてはよくわかりましたが、ローン契約等は組めなくなるのでしょうか。

自己破産手続き後には、一般的には5年から7年の間、各信用情報機関に対して事故情報として登録される(いわゆる、「ブラックリスト」に載る)ことになるため、新たなローン契約やクレジットカードの契約はできなくなります。

信用情報機関には下記のものがあります。

・全国銀行個人信用情報センター(KSC 銀行業界のブラックリスト)
・CREDIT INFORMATION CENTER(CIC クレジットカード会社のブラックリスト)
・日本信用情報機構(JICC サラ金業界のブラックリスト)

また、賃貸マンションの契約や、賃貸保証会社の審査にも、こうした信用情報が利用されることが多く、審査に通らないケースがあります。
しかしながら、ブラックリストに記載されて5~7年を経ない場合であっても、ご自身の資力が十分に回復し、信用力が十分に担保されるのであれば、ローンの契約や、クレジットカードを作ることができる場合があります。
疑問を感じた場合には、弁護士に相談してみると良いでしょう。

まとめ

任意整理や自己破産等の債務整理を行うことは、大きな決断であり、その後の生活について不安を感じることが多いかと思います。こうした場合には、法律の専門家である弁護士に相談してみるとよいでしょう。