過払い金発生の仕組みとその計算方法について知りましょう
ざっくりポイント
  • 過払い金とは消費者金融などの金融機関に払いすぎていた利息の部分
  • 計算方法は非常に複雑だが、その計算式が組まれたパソコン用の表計算のシートがある
  • 過払い金が発生していない場合・過払金が大きくなる場合

目次

【Cross Talk】過払い金の計算はどうやってやるのか

私はかなり昔から消費者金融から借入れをしていました。過払い金というものがあるのを知り、私に過払い金があるのかを計算したいのですが、どうやってやれば良いですか?

計算式は実は非常に複雑なのですが、弁護士に依頼すれば、自分で計算する必要はありませんよ。

過払い金の計算方法は複雑だが取引履歴を取り寄せて表計算ソフトに入力して行うことができる

消費者金融に支払っていた利息のうち、利息制限法を超える利息については債権者に受け取る権利がないため、払いすぎていたお金であるという評価がされます。このお金の事を過払い金といいます。過払い金の計算方法は複雑なものですが、弁護士に依頼をすれば計算をしてもらうことができます。

過払い金とは

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 過払い金とは消費者金融などに支払いすぎていたお金のこと
  • 利息制限法と出資法の上限利率に差があった頃に発生したもの

過払い金ってそもそもどのようなものなのですか?

2010年に改正された出資法が施行されるまでに発生していた、貸金業者が取りすぎた利息分のお金のことで、これを返してもらえる権利を過払金返還請求権といいます

過払い金の概要

そもそも過払い金とはどのようなものなのでしょうか。
過払い金とは消費者金融などに債務者が返済をするときに、法律で許容されている範囲を超えた利息の収受をしていたことによって、債務者に返還すべきとされるお金の事をいいます。
暴利を禁止するという目的の利率の上限の規定は、利息制限法・出資法という2つの法律でされており、利息制限法が民事上の効力について、出資法が刑罰について規定をしています。

2010年の改正出資法施行までは、出資法の利率が利息制限法よりも高い利率だったので、利息制限法に違反するけど出資法には違反しない、いわゆるグレーゾーン金利での貸付が行われていました。
この点についての裁判がされて、最高裁は利息制限法に違反する利息の受け取りは無効であるという判断をしており、まだ借金の残額がある場合にはそれとの差し引き計算を行い、完済をした場合には完済額との差し引き計算を行い、差し引き計算の結果、返済額の方が多かった場合には返してくださいと主張ができることになっています。

ですので、借入が2010年より前からあるような場合には、その過払い金について調査してみると良いでしょう。

過払い金の計算に必要なもの

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 過払い金の計算には貸金業者との取引履歴が必要
  • 取引履歴は貸金業者に送ってもらうことができる

過払い金を計算するために必要なものはありますか?

取引履歴があれば過払い金の調査はできます。取引履歴は貸金業者に開示の請求をすれば送ってもらえます。

過払い金の計算をするためにはどのようなものが必要でしょうか。

過払い金計算においての必要書類

貸金業者との取引履歴
貸金業者との取引履歴が必要になります。
取引履歴には、いつ・いくらを・借りたまたは返済した、ということが記載されており、過払い金の計算に必要な情報です。

取引履歴は貸金業者に開示を依頼すれば送ってもらえることになっています。弁護士に依頼すれば、取引履歴の開示の依頼から、弁護士に任せることが可能です。

過払い金の計算方法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 過払い金の計算方法の基礎を知る

では過払い金はどうやって計算するのでしょうか

具体的な計算方法を見てみましょう

過払い金は次のように計算を行います

利息制限法の利息上限をまず知る

過払い金は利息制限法の上限を超えた支払いについて発生しますので、まず利息制限法の利息上限を知りましょう。

元本額 利率
10万円未満 年20%
10万円以上~100万円未満 年18%
100万円以上 年15%

実際の支払い額と利息制限法に基づく利息上限の差を計算する

実際に支払った金額を取引履歴から確認をして、利息制限法に基づく利息上限との差額を確認します。
毎月決まった日時に返済される場合、利息は
「利息=(元金✕利率(年利)÷365)✕日数」で計算をします。
30万円借り入れをしている状態で、実際に支払った利息の利率が29.2%だったとして、支払いまで30日間があったとしましょう。
利息=(30万円✕29.2%÷365✕30)=7,200円
です。

29.2%での利率の支払いは利息制限法に違反していますので、30万円の借り入れをしている場合の上限利率である年18%が利息として受け取れる範囲です。
ですので次に18%での利息の場合の額を計算します。
(30万円✕18%÷365✕30)=4,410円 となります。
※端数処理で1円未満を切り捨てた場合
よって7、200円-4,410円=2,790円が無効な利息となります。

差額を元本に充当して次の計算を行う

実際に払いすぎていた利息がある場合には、元本に充当していく事になります。簡単に説明すると、ある日の支払いについて1,000円の過払い金が発生していた場合、その1,000円は元本の支払いに充てます。
次の取引に関する計算では、過払い金1,000円を充当された元本から利息を計算するということになります。

なお、この計算は利息充当方式と呼ばれる方式で、過払い金に関する計算方法として裁判でも認められている方法です。

全ての取引の履歴について利息制限法の上限利息との差を確認

上記の作業を全ての取引履歴に記載された取引について行います。

具体例

実際に例を確認します。なお、説明を簡単にするために小数点以下を使いませんので、正確な計算をするとズレることがあることをご了承ください。

50万円の借り入れをしていた場合には収受できる利息は18%が上限です。
これを365日で割ると、1日につき約247円の利息を受け取ることができます。毎月決まった日付に支払うとして、247×30=7,410円の利息を受け取ることができます。
毎月利息だけとして10,000円を受け取っていた計算ですと2,590円の過払い金が発生していた事になり、その分は元本に充当されることになります。
次の取引の確認にあたっては497,410円の18%で利息を計算することになります。

過払い金が発生していない場合と過払い金が少なくなる・大きくなる場合について解説

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 過払い金が発生していない場合
  • 過払い金の金額が大きくなるケース

計算の結果過払い金が発生していない場合や、過払い金の額が少なくなってしまう場合・大きな額になる場合について傾向はあるのでしょうか?

それぞれケースに基づいて確認してみましょう。

過払い金が発生しない場合

  • 2010年6月以降に契約した借入
  • 利息制限法の金利内で契約している場合
  • 10年以上前に完済している場合
  • まず、過払い金が発生していないケースを確認しましょう
    過払い金は貸し付けした際の年利が利息制限法を超える場合に発生します。
    そのため、利息制限法の金利の中で貸し付けがおこなわれている場合には、過払い金が発生しません。

    例えば
    ・2010年6月18日に出資法が現在の利率に改正された後の貸し付け
    ・2010年6月18日以前でも利息制限法の金利内でされていた貸し付けがある場合です。
    また、過払い金としては発生しているのですが、過払い金自体の請求自体が時効で消滅している場合にも、請求ができなくなります。
    2020年4月に時効の制度が改正される前であれば10年で、それ以後は5年で消滅することになります。
    そのため、10年以上前に完済してしまっていると、過払い金は時効で消滅してしまっていることになります。

    過払い金が少なくなる場合

    過払い金が発生している場合でも、実際に交渉すると過払い金が少なくなる場合もあります。
    前述した時効の関係があるのですが、取引をしている中で完済したことがある場合、過払い金を完済後の取引に充当する合意があると認められる場合でなければ、完済前と完済後の取引を一連の取引として認められなくなります。
    もし、一連の取引と認められず、完済前の債務と完済後の債務が個別のものだと評価されると、完済前の債務について発生していた過払い金が時効となります。

    例えば、平成元年から現在まで借り入れをしているとして、平成5年に一度完済をして平成7年に再度借り入れを開始して現在に至るとします。
    グレーゾーン金利での借り入れがあるとして、過払い金計算をした金額があったとしても、平成5年に一度完済をしていて、
    ・平成元年~平成5年(第一取引)
    ・平成7年~現在(第二取引)
    と取引が2つに分けられると評価され、第一取引についての過払い金については時効で消滅していると主張され、これが認められることがあります。
    その結果当初計算した過払い金から減ってしまうことがあります。

    一連の取引として計算できる個別のものとして計算するかは「過払い金の充当合意がある」と認められるかによります。
    完済してから1年以上経過しているような場合や、基本契約が別個になっているような場合には、過払い金の充当合意はないと解釈されます。

    過払い金の金額が大きくなる場合

    過払い金の金額が大きくなる場合としては次のようなケースが挙げられます。

  • 返済期間が長い場合
  • もともとの借入総額が大きい場合
  • 複数社から借り入れをしていた場合
  • 返済期間が長いということは、さらに昔の高利の時代から過払い金が積み重なっており、非常に高額であることが考えられます。
    利息は元金の額に応じて多く発生するので、借り入れた金額が多ければ多いほど過払い金も多く発生しています。
    過払い金は1社にのみ生じるというわけではありません。多重債務となって複数の会社から借り入れをしていたようなケースでは、全ての借り入れ先に過払い金が発生しているようなケースがあります。

    過払い金計算・請求をスムーズに進める対処法

    知っておきたい借金(債務)整理のポイント
    • 弁護士に依頼をすれば、計算から請求まで全てやってもらうことが可能

    計算の理屈はわかりましたが、一つ一つ計算をしていくのは大変ですね。

    一つ一つ自分で計算をしていくのは大変ですが、弁護士に計算を依頼することもできますよ。

    実際に過払い金がいくらあるか、自分で計算をするのは大変な作業なので、弁護士に依頼するのが良いでしょう。

    弁護士に計算してもらう
    過払い金の計算は上述のとおり、簡単なものではありませんが、弁護士に依頼すれば、過払い金を自分で計算する必要はありません。特に、計算が難しいというような場合や、取引が古すぎて履歴の記録がないと言われるような場合には、弁護士に相談をして計算をしてもらった方が良いでしょう。

    弁護士に依頼すれば、取引の履歴の開示、取得から計算、過払金の請求まで一連の手続きをしてもらうことが可能です。

    まとめ

    このページでは、過払い金の計算方法についてお伝えしてきました。
    過払い金というものが存在していても、それが発生しないような場合や、額が少なくなってしまう場合、逆に想定していたよりも多額の過払い金が発生しているようなケースもあります。
    自分の借金について過払金が出ているかどうか知りたい、という場合には弁護士に相談をして計算をしてもらうと良いでしょう。