破産宣告(破産手続開始決定)とはどのようなもの?
ざっくりポイント
  • 破産宣告(破産手続開始決定)とは、破産者について破産手続きを開始する旨の裁判のことである
  • 破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、3つの条件を満たす必要がある
  • 破産宣告(破産手続開始決定)されると、主に6つの効果が発生する
  • 相談から破産宣告(破産手続開始決定)が出るまでには、早くても2ヶ月~3ヶ月、遅いと1年以上かかることもある
  • 自己破産により債務の支払いが免除されるためには、免責許可の決定を受ける必要がある

目次

【Cross Talk】破産宣告(破産手続開始決定)を受けるための条件とその効力は?

自己破産を検討しているのですが、破産宣告を受けるとどのような効力が発生しますか?
また、破産宣告を受けるために必要な条件はありますか?

破産宣告を受けるためには、一定の条件を満たしていることが求められますし、破産宣告を受けると一定の効力が生じます。

詳しく教えてください。

破産宣告について詳しく説明していきます。

「破産宣告」という言葉を1度は聞いたことがあるという方が多いと思いますが、そもそもどういった意味かを知っている方は意外にも少ないのではないでしょうか?
破産宣告を受けるためには一定の条件を満たすことが必要であり、破産宣告をされると一定の効力が発生します。
破産手続きにおいて、破産宣告(破産手続開始決定)は重要な意味をもちます。
この記事では、破産宣告(破産手続開始決定)について、その条件と効力を中心に解説いたします。

破産宣告(破産手続開始決定)とは?

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 「破産宣告(破産手続開始決定)」とは、破産者について破産手続きを開始する旨の裁判のことである

そもそも破産宣告(破産手続開始決定)とは、どのような意味なのでしょうか?

簡単にいうと、破産者について破産手続きを開始することを裁判所が決定することを意味します。

現行の破産法では、破産宣告のことを「破産手続開始決定」と呼びます。
破産手続開始決定は、字の通り、破産者について破産手続きを開始する旨の決定を意味しますが、このことにより直ちに免責(借金の支払いを免除されること)が許可されるわけではありません。

破産宣告(破産手続開始決定)の意味

「破産宣告(破産手続開始決定)」とは、破産者について破産手続きを開始する旨の決定のことをいいます。破産手続きは、自己破産の申立てによりすぐに開始されるわけではなく、破産手続開始決定を受けて初めて開始されます。

破産宣告(破産手続開始決定)を受けるための条件

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには条件がある
  • 支払不能であること、免責不許可事由に該当しないこと、申立てが適切に行われていることの3つの条件が必要

破産宣告を受けるためには条件はありますか?

支払不能であること、自己破産の申立てが適切に行われていること、破産法30条1項各号のいずれにも当たらないことの3つの条件が必要です。

破産宣告を受けるために必要な条件を確認しましょう。

破産者が支払不能であること

申立てをする人が「支払不能」であることが必要です。
自己破産は借金を返済できない状態にあるときの救済のための手段です。
そのため、もうこれ以上は返済ができないといえる場合のみ利用できます。

そのため、申立人が「支払不能」であることを、破産手続き開始の原因としています(破産法15条1項)。
なお「支払不能」については、定義を定める破産法2条11号において、

11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

と規定されています。

  • 支払能力を欠くこと
  • 弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない

状態とされています。

「弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない」ことの意味を理解するのは難しいですが、借金の全部または大部分について返済できない状態であり、手元にお金がなくて一時的に支払うことができないにすぎない場合には自己破産手続きの対象ではないとするものです。

破産の申立てが適切に行われていること

破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、支払不能状態でありさえすれば、裁判所から破産宣告(破産手続開始決定)をしてもらえるわけではなく、破産の申立てを行う必要があります。

破産法30条1項各号のいずれにも当たらないこと

さらに、破産手続費用を裁判所へ予め納めなければなりませんし、不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないときにも破産手続が開始しません。

破産宣告(破産手続開始決定)を受ける手続きの流れ

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 管財事件の場合の破産手続きの流れ
  • 同時廃止事件の場合の破産手続きの流れ

破産手続きはどのような流れで進むのでしょうか?

破産手続きの流れを確認しましょう。

自己破産手続きの流れについて、管財事件(少額管財)と同時廃止事件に分けて確認しましょう。

管財事件

管財事件(少額管財)は次のように進みます。

必要書類を提出し自己破産の申し立てをする

まず裁判所に破産手続の開始を申し立てます。
自己破産の申立ては申立書を作成し、必要書類を揃えて提出します。

通常は弁護士に依頼して行いますが、弁護士に依頼すればあとは何もしなくて良いというわけではなく、弁護士との間で申立書の作成に必要な事項の聴き取りや打ち合わせを行ったり、申立書に添付する書類を収集して弁護士に渡したりするなど、破産者自身もやることが多くあるので注意しましょう。

管財事件(少額管財)の場合には、裁判所へ支払う予納金(原則20万円以上)があるので、これを用意できない方は申し立てをするまでにこつこつと貯めておく必要があります。

破産手続開始決定

提出された書類に基づいて審査が行われ、問題なければ裁判所は破産手続開始決定(旧破産宣告)を行います。

管財人の選任・管財人面接

破産手続開始決定とともに、裁判所は破産管財人を選任します。
選任された管財人は提出された申立書・添付書類を審査し、管財人面接で不明点等を尋ねます。

全く不明な点などがある場合には、管財人面接前に弁護士へ質問をするので、事前に回答するなどします。
管財人面接では、申立書の内容について確認されるとともに、免責不許可事由がある場合には反省をしているかなどの確認が行われます。

事前に、弁護士を通じて、浪費の内容を詳細に報告したり、反省文の記載を求められことがありますので、適切に対応しましょう。

債権者集会

管財人面接が負わると、債権者集会が裁判所で行われます。
債権者集会では、管財人の調査の結果が裁判所や債権者へ報告されます。

といっても、債権者が債権者集会に来ることは少なく、実際には裁判所・管財人・債務者(弁護士が付き添います)が集まって、形式的な報告を行うことがほとんどです。

調査や配当などが終わっていれば第一回で手続きが終了しますが、配当のための換価が終わっていない・債権調査が終わっていないような場合には第二回目以降も開かれます。
調査等が終わると破産手続きは終了します。

免責許可・不許可の決定~確定

自己破産手続きの終了とともに、債務の免責について許可・不許可の決定がされます。
免責の許可は、この決定が官報に掲載された日から2週間が経過した時点で確定します。

関連記事:自己破産手続は2種類!同時廃止と管財事件って何?それぞれの違いとどちらが簡便かを解説

同時廃止事件

同時廃止事件では裁判所は管財人を選任しません。

必要書類を提出し自己破産の申し立てをする

同時廃止事件である場合にも、まずは必要書類を提出して自己破産の申立てを行います。

書類に不備や調査不足の事項があると、管財人が選任されてしまう(管財事件となる。)可能性があるので、弁護士の質問などには正直に答え、添付書類の提出を速やかに行うようにしましょう。

破産手続開始の決定

申立書類に問題がなければ、破産手続開始の決定(旧破産宣告)がされますが、換価して配当に回す財産がない場合には、手続きが開始されるのと「同時」に手続きが「廃止(終了)」します。

免責手続き

免責に関する事情は「免責審尋」という期日が設けられて、裁判所から直接聴き取りが行われます。
免責を認めることが相当かどうかを判断するために、債務者に対して直接裁判所から聴き取りが行われるので、弁護士と準備をしたうえで臨みましょう。
弁護士に依頼していれば弁護士が同席しているので心配する必要はありません。

免責許可・不許可の決定

免責審尋の結果をもって、免責の許可決定を裁判所が行います。
免責の許可は、この決定が官報に掲載された日から2週間が経過した時点で確定します。

まとめ

破産宣告(破産手続開始決定)を受けるためには、満たさなければならない3つの条件があります。
また、破産宣告(破産手続開始決定)がされると、それに伴い、一定の効果が発生します。
自己破産を検討する場合には、少なくとも、これらの条件と効果を理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。