個人再生手続の要件を手続ごとに解説します!
ざっくりポイント
  • 個人再生手続には条件がある!
  • 個人再生には小規模個人再生給与所得者等再生の2つがある
  • 2つの手続で借金が減額できる条件が違う

目次

【Cross Talk】個人再生をしたいけど誰でも借金の減額が認められるの?

個人再生をすれば借金を減額できると聞きましたが、利用するのに何か条件があるのですか?

個人再生は、借金を大幅に(おおむね5分の1に)することができる債務整理の手続ですが、債権者の立場で言えば貸したお金の何分の一しか戻ってこないという不利益を受けるということになります。
そのため、個人再生はだれでも利用できるというわけではなく、民事再生法という法律で定められた条件を満たした場合に初めて利用することができものです。

だれでも利用できるわけではないんですね。
どんな条件があるのか詳しく教えてください!

小規模個人再生と給与所得者等再生の要件の違いを解説します

個人再生は、裁判所が再生計画を認可することで借金を大幅に減額させることができる手続で、自己破産の免責不許可事由のような規定もなく、また住宅ローン付きの自宅を残すことができるというメリットがあります。
このような効力を認めるには、債務者だけでなく、債権者の利益にも配慮する必要があります。そのため、個人再生をするには、民事再生法という法律で詳細に定められた条件を満たす必要があります。
今回は、個人再生を利用することができる条件について解説します。

個人再生手続を利用するには条件がある

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 個人再生手続を利用するには「要件」をみたさなければならない
  • 個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があり、要件が異なる

個人再生手続はどういう場合に利用できますか?

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがあり、民事再生法でそれぞれの要件が定められています。
それらの要件を満たした場合に、個人再生手続を利用することができます。

個人再生手続には、法律上定められた条件(法律的には「要件」と表現されます)がいくつかあります。
それの要件を満たさないと、個人再生手続きを利用して借金を減額させることはできません。

個人再生手続には、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続の2種類があり、2つの手続に共通する要件と、それぞれの手続に独自の要件があります。

小規模個人再生の場合

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 支払不能になるおそれがあること
  • 将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
  • 住宅ローンを除いて負債総額が5000万円を超えないこと
  • 再生計画について債権者の同意があること

小規模個人再生にはどのような要件があるのですか?

代表的な要件としては、借金の返済が困難であること、継続した収入を得る見込みがあること、住宅ローンを除いた負債額が5000万円以下であること、債権者の同意があることなどがあげられます。

借金の返済が困難であること

まず、借金の返済が困難であることが要件とされます。
厳密にいえば、「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生じるおそれがあるとき」に再生手続開始の申し立てをすることができるとされています(民事再生法21条1項)。

破産手続開始の原因となる事実とは、「債務者が支払不能にあるとき」です(破産法15条1項)。
これらを総合すると、債務者が支払不能になるおそれがあること(すでに支払不能になっている場合も含む)が要件ということになります。

継続した収入を得る見込みがある

次に、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあることが要件とされています(民事再生法221条1項)。

個人再生手続では、原則として3年間(特別の事情がある場合は5年を超えない期間)、3ヶ月に1回以上弁済するという計画(再生計画)が立てられ(民事再生法229条2項)、債務者は再生計画に基づいて債務を弁済していくことになります。

そこで、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」とは、今後3年(特別な事情がある場合は5年)にわたって少なくとも3か月に1回の割合で弁済原資となる収入を得る見込みがあることをいうとされています。

住宅ローンを除く総負債額が5000万円を超えていないこと

住宅資金貸付(住宅ローン)の債権の額を除き、総負債額が5000万円を超えないことが要件とされています。

したがって、住宅ローンを除いても負債総額が5000万円を超える場合、小規模個人再生手続は利用できず、通常の民事再生手続(法人の民事再生手続)など他の債務整理の手段を検討しなければならないことになります。

借金減額について債権者の同意があること

小規模個人再生手続によって借金を減額させるには、債権者(金融機関等の貸し付けをしている人)によって弁済計画が可決される必要があります。

再生計画に同意しない債権者が債権者の総数の半数以上、または、同意しない債権者の債権額が総債権額の2分の1を超える場合には再生計画は否決されるので(民事再生法230条6項)、借金の減額は認められません。

給与所得者等再生手続の場合

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 収入の変動幅が小さいと見込まれることが要件になる
  • 加除分所得の2年分以上を弁済する必要がある

給与所得者等再生手続の要件は、小規模個人再生手続の要件と違うのですか?

借金の返済が困難であることなど小規模個人再生と共通する要件もありますが、収入の変動幅が少ないと見込まれることという小規模個人再生にはない要件もあります。

また、債権者の同意は必要とされていませんが、収入から税金等や最低限の生活費を差し引いた可処分所得の2年分以上を弁済する必要があるとされているため、収入の多い方は、弁済総額が多くなってしまう可能性があります。

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがありますが、小規模個人再生が基本で、給与所得者等再生がそのうちの特別な類型と位置付けることができます。
したがって、小規模個人再生と共通する要件もあります。具体的には、次の3つは共通の要件です。


①借金の返済が困難であること
②継続した収入を得る見込みがある
③住宅ローンを除く総負債額が5000万円を超えていないこと

これらの要件に加えて、給与所得者等再生では、次の要件も必要とされます。


④給与など定期的な収入について、その額の変動幅が小さいと見込まれること

給与所得者等再生は、小規模個人再生よりも手続を簡易・合理化したもので、債権者による再生計画への同意も必要とされていません。
そのため、④の要件を加えて手続を利用できる人をより制限しているのです。

年収換算で5分の1を超えない程度の変動であれば、変動幅が小さいと見込まれるといえるとされています。

また、要件ではないのですが、給与所得者再生の場合、
可処分所得の2年分以上を弁済する必要があります。
個人再生手続は、借金を減額させて原則3年で分割返済していくことを決める手続ですが、いくらに減額できるのか、言い換えれば最低いくら弁済しなければならないかは、小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続で異なる可能性があります。

小規模個人再生の場合、法律で弁済総額の下限と、債務者が保有する財産を処分した場合の価値(清算価値)を比較して、多い方が最低弁済額となります。少なくとも清算価値を弁済させることで、債権者が、債務者が自己破産した場合以上の弁済を受けられるように配慮したものです(清算価値保障原則といいます)。

給与所得者等再生の場合、これらに加えて、「可処分所得」の2年分以上を弁済しなければならないとされています(3つのうち最も高い額を弁済することになります)。

可処分所得とは、債務者の収入から税金等や、債務者と債務者が扶養する者の最低限の生活を維持するのに必要な費用を控除した後の金銭のことです。

ここでいう最低限の生活を維持するための費用は政令で定められていますが、生活保護基準等を参考にしているため、収入が多い方の場合、可処分所得がかなり多くなってしまう可能性があります。そうなると、その2年分を原則3年で弁済するのは債務者にとって困難あるいは事実上不可能ということもあるでしょう。

現状では小規模個人再生に反対する金融機関は限られているため、給与所得者など安定した収入がある者であっても、小規模個人再生を選択することがほとんどです。
給与所得者等再生をあえて選択するのは、金融機関等ではない債権者が多い、あるいは金融機関ではない債権者の債権額が多く、小規模個人再生の同意が得られないおそれがある場合など、例外的なケースに限られるでしょう。

まとめ

個人再生手続は一定の要件を満たさなければ利用できませんし、要件は小規模個人再生と給与所得者等再生とで異なりますので、ご自身が要件を満たすかを判断するのは難しいでしょう。
個人再生をお考えの方は、個人再生を含む債務整理の経験が豊富な弁護士に相談することをお勧めします。