昔、借金の自己破産や個人再生したことあるけど、またできる?
ざっくりポイント
  • 自己破産や個人再生に回数制限はない
  • ただし、前回の手続から一定の期間は認められない場合がある
  • 二回目以降は裁判所や債権者に認めてもらうための条件が厳しくなる

目次

【Cross Talk】二回目の自己破産や個人再生は可能だけど、いくつか注意しなければいけないポイントがある。

以前、消費者金融からの借り入れを返済できなくなり自己破産をしました。
その後、生活を立て直すよう頑張っていたのですが、母が病気を患い医療費がかさんだことでまた借金を抱えてしまいました。もう一度自己破産をすることはできるのでしょうか。

それは大変でしたね。
実は、自己破産や個人再生には回数の制限はありません。したがって理論上は二回でも三回でも同じ手続を利用することができますが、いくつか注意しなければいけないポイントがあり、場合によっては二回目以降の利用が難しいこともあります。

そうなのですね。
私のような場合に再度自己破産を利用できるか知りたいので、詳しく教えていただけますでしょうか。

二回目の自己破産や個人再生が認められないのはどのような場合でしょうか。

まずは期間の制限に注意しましょう。自己破産の場合、前回の利用から7年間は原則として免責が認められません。個人再生の場合は手続の種類によって再度利用できるかどうかが異なります。
期間の制限に該当しない場合であっても、裁判所や債権者に認めてもらえるかという問題が残ります。基本的に二回目以降の場合は一回目よりも厳しく判断されますので注意が必要です。

二回目の自己破産・個人再生は可能

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産や個人再生に回数制限はない
  • 手続の種類によって注意すべきポイントが異なる

そもそも自己破産や個人再生とはどのような手続なのでしょうか。

自己破産も個人再生も、借金の返済が困難になった方が裁判所に申立てを行うことにより借金をなくしたり減額してもらうことができる債務整理の手続です。法律上は自己破産や個人再生の利用回数に関する規定はなく、何回でも繰り返すことができます。

借金を返済することが難しくなったときに、裁判所を通じて借金を帳消しにしてもらう手続が自己破産、減額してもらう手続が個人再生です。

自己破産は借金を帳消しにしてもらうことができる代わりに、不動産など目立った遺産は没収され換価と配当の対象になるというデメリットがあります。一方の個人再生は、借金は残るものの減額してもらうことができ、場合によっては自宅を残すことができるというメリットがあります。

「自己破産や個人再生は一度しかできない」というイメージを持っていらっしゃる方がいるかもしれませんが、自己破産や個人再生には回数制限の規定はありません。二回、三回と繰り返すことは可能です。
ただし、二回目以降の自己破産や個人再生にはいくつか注意しなければいけないポイントがあります。自己破産の場合と個人再生の場合に分けてご説明いたします。

二回目の自己破産の注意点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 前回の手続から7年間は原則として自己破産できない(免責してもらえない)
  • 一回目より免責のハードルが高くなる

自己破産の場合にはどのような制限があるのでしょうか。

まず、前回自己破産をしてから7年間は原則として自己破産をしても借金の免責を認めてもらえません。また、7年以上経過していたとしても、裁判所に免責を認めてもらうためのハードルは一回目よりも高くなります。

二回目は裁判所もより厳しく審査するようになるのですね。それはなぜなのでしょうか。

7年間は原則として自己破産ができない

まず、一度自己破産をすると7年間は自己破産ができません。厳密には、免責決定が確定してから7年間は自己破産の申立てをしても裁判所が借金の帳消し(「免責」といいます)を認めてくれません。
これは、前回の免責決定が確定した日から7年以内に申立てがされた場合は「免責不許可事由」に該当すると法律で定められているからです。

なぜかといえば、自己破産は借金を帳消しにできるという強力な効果を有していますが、これは債務者を救済する一方で消費者金融業者や個人などの債権者に不利益を課すことを意味します。もし、一度破産をしてからすぐにもう一度破産することが認められてしまうと、債務者はお金を借りても「また自己破産すればいい」と思って借金を重ねてしまう可能性があります。

そこで、免責決定を受けてから7年間は免責をできなくすることで、自己破産をした人が自分の力で生活を立て直すことを促しているのです。

なお、免責不許可事由に該当するときは必ず免責が認められないわけではなく、裁判所が免責を認めることが相当であるという判断をすれば免責が認められることがあります。これを裁量免責といいます。逆にいえば、裁判所を納得させるような特別な事情がない限り免責は認められません。

一回目より裁判所から厳しく事情を聴かれる

前回の自己破産から7年以上経過していたとしても、一回目と同じように免責が認められるわけではありません。二回目の自己破産の場合、裁判所は免責を認めて良いかの判断を一回目のときよりも厳しく行います。
特に一回目と同じ理由で自己破産しようとしている場合は、「免責を認めても同じ過ちを繰り返す可能性が高い」と判断されて免責されない可能性が高くなります。
二回目の自己破産は一回目のときよりもハードルが高いということを覚えておきましょう。

二回目の自己破産は管財事件になりやすい

繰り返しになりますが、二回目以降の自己破産は一回目のときよりも厳しく判断を行います。
破産の原因を詳細に調査するためとして、管財事件として裁判所が管財人を選任して調査をする可能性が高くなります。
管財事件がどのようなものかについては、「自己破産手続の2つの種類!同時廃止と管財事件って何?それぞれの違いを解説」で詳しく解説していますので参考にしてください。

一回目より費用や時間がかかる

もし一回目の自己破産が管財事件ではない同時廃止だったならば、管財事件となることで費用や時間がより多くかかります。
管財事件になると、管財人面接をクリアしなければならなくなり、手続きが複雑かつ多くなるので、その分弁護士費用が多くかかります。
また、管財人への引継予納金の支払いが必要となります。

東京地方裁判所に申立てをして少額管財となったときには20万円~で(多くの場合がこちら)、通常管財・特定管財となった場合には50万円~が必要となります。
また、管財人の調査が行なわれる結果、その分手続きに時間がかかることになります。

二回目の個人再生の場合

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 給与所得者等再生の場合と小規模個人再生の場合で制限が異なる
  • 再生計画の変更で対応できる場合もある

では、個人再生の場合はいかがでしょうか。

個人再生には2種類あり、手続によっては自己破産と同様に7年間の期間制限の対象となります。また、二回目以降は債権者が再生計画に反対する可能性が高くなり、手続の利用が認められづらくなります。再生計画どおりの返済ができなくなったときには、2回目の個人再生の申立てをするのではなく、現状の再生計画を見直す「再生計画の変更」という制度が利用できる場合もあります。

二回目の個人再生をしないという選択肢もあるのですね。詳しく教えていただけますでしょうか。

7年間は原則として給与所得者等再生ができない

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。

以前に小規模個人再生を利用していたのであれば、二回目の申立てについて期間の制限はありません。ところが、以前に給与所得者等再生を利用した場合には、再生計画認可決定が確定してから7年間は新たに給与所得者等再生の申立てをすることができません。
ただし、この場合であっても小規模個人再生の申立てをすることは可能です。

つまり給与所得者等再生を利用した後に新たに給与所得者等再生の申立てをする際には期間の制限がありますが、小規模個人再生を利用した後に新たに小規模個人再生の申立てをする場合や、給与所得者等再生の後に今度は小規模個人再生の申立てをする場合、小規模個人再生をした後に給与所得者等再生の申立てをする場合は期間の制限はありません。

一回目より裁判所から厳しく事情を聴かれる

二回目以降の利用の場合には、一回目のときよりも裁判所から厳しく事情を聴かれることになります。この理由は自己破産の場合と同様です。

債権者(貸主)に拒否されやすい

小規模個人再生の場合には、再生計画について裁判所から認可決定をもらうための前段階として、消費者金融などの債権者から許可をもらうことが必要となります。この債権者決議は書面によって行われ、金額及び頭数で過半数の債権者が再生計画案に反対すると個人再生は認められません。

一回目の個人再生の場合には、債権者が再生計画案に反対してくることはあまり多くありません。特に債権者が消費者金融業者の場合は反対される可能性は低いです。

ところが、二回目の個人再生の場合には債権者に再生計画案を反対される可能性が高くなります。特に一回目と同じ債権者がいる場合には、反対される可能性がさらに高まりますので注意が必要です。

二回目の自己破産・個人再生ができないときの対処法

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 二回目の自己破産・個人再生が認められなかったときの不服申立
  • 二回目の自己破産・個人再生が認められない場合の代替方法

二回目の自己破産や個人再生が認められなかった場合にはどうすれば良いでしょうか。

申立てをして認められない場合の不服申立てと、他の方法について確認しましょう。


二回目の自己破産・個人再生が認められなかった場合の対処法について考えましょう。

二回目の自己破産ができないときの対処法

二回目の自己破産が出来ないときの対処法として考えておきたいのが、裁判所の判断への不服申立ての手段と、他の代替手段です。

即時抗告

自己破産・個人再生において、免責を認めない・個人再生計画を認可しない裁判所の決定に対しては不服申立を行うことができます。
裁判所での不服申立というと控訴・上告というものを耳にしたことがあると思いますが、免責を認めない裁判所の決定・個人再生計画を認可しない決定に対しては、即時抗告というものが認められています(破産法252条5項・民事再生法175条)。
即時抗告は決定の翌日から1週間以内に行います(民事訴訟法332条)。

任意整理

自己破産・個人再生ができない場合には、任意整理を検討しましょう。
任意整理とは、裁判所の手続をとらず、直接債権者と交渉して借金を減額させる方法をいいます。
任意整理は自己破産・個人再生のような回数制限はないので、自己破産・個人再生が認められない場合でも利用することが可能です。

個人再生

自己破産ができない場合でも個人再生を検討しましょう。
自己破産が認められない場合でも、個人再生であれば許可される可能性があります。

二回目の個人再生ができないときの対処法

再生計画に基づいて返済を行っていたが再生計画どおりの返済が困難になった場合には、わざわざ再度の申立てを行わなくても再生計画の変更で対応できる場合があります。

再生計画の変更とは、再生手続を終えて返済をしている途中に何らかの事情により計画どおりの返済が困難になった場合に弁済期間を延長してもらえる手続です。裁判所に申立てを行って再生計画の変更が認められると、弁済期間を最長で2年延長してもらうことができます。つまり、もともと再生計画の弁済期間が3年だった場合は5年、5年だった場合は7年まで延長してもらえることになります。

再生計画の変更が認められるのは、「やむを得ない事情で再生計画の履行が著しく困難になった場合」に限られます。「やむを得ない事情で再生計画の履行が著しく困難になった場合」とは、例えば、不景気で会社をリストラされてしまった場合、天災によって不測の損害を被った場合、交通事故に遭い仕事ができなくなってしまったなどが該当します。

自身の浪費により返済が困難になったような場合には「やむを得ない事情」とは認められない可能性が高いので注意しましょう。

まとめ

二回目以降の自己破産や個人再生は認められる場合もありますが、一回目よりも困難になります。そこで申立ての準備をする前に手続の利用を認めてもられる可能性がどれだけあるのかあらかじめ確認しておく必要がありますが、自分でその判断をすることは容易ではありません。二回目以降の自己破産や個人再生を検討する際には、債務整理の専門家である弁護士に相談することをおすすめいたします。