債務整理手続きを利用するにあたって嘘をついても一つも良いことがない。
ざっくりポイント
  • 任意整理の交渉によって嘘をついても最終的にはわかってしまいます
  • 最悪のケースでは犯罪になります
  • 間違えていた場合や事情が変わった場合でも気づいたらすみやかに申告をする

目次

【Cross Talk】債務整理をするとはいえ嘘をついてもわからないのでは?

債務整理をすることを考えているのですが、いくら相手が弁護士だからとはいえ、ちょっと伝えづらいことがあります。仮にですが私がここで嘘をついて依頼をしたらどうなりますか?

嘘をついてもすぐに見破られますし、かえってあなたの首を絞める事態になりますので、やめましょう。

債務整理手続きにおいて嘘をついても誰も得をしない

債務整理手続きを利用するにあたって、借金の原因を人に知られたくない、取られたくない資産がある、などの理由から弁護士・裁判官等に嘘をつく依頼者は実は一定数います。
債務整理中に嘘をついたことは、すぐに公になりますし、それによって不利益を被るのは依頼者自身です。

嘘をついてもすぐバレてしまう

知っておきたい借金問題解決のポイント
  • 債務整理手続きを利用するにあたって嘘をついてもすぐにバレることのほうが多い

そもそも、弁護士が依頼者の私生活を細かく把握しているとは思えないのですが、嘘(うそ)をついてもわかってしまうものですか?

ほとんどの場合、どこかのポイントで辻褄(つじつま)が合わなくなって嘘ということが分かってしまいます。

まず、そもそも債務整理をする際に嘘をついていて誰かにバレるのでしょうか。

債務整理といっても任意整理・自己破産・個人再生など、様々な手続きがありますが、どの手続きを利用する際でも嘘をついていると分かります。
例えば、任意整理で嘘をつく例としては、毎月3万円の支払いしかできないにもかかわらず、どうしても自己破産が嫌で、月に5万円の支払いができると嘘をつくと、いざ支払いの時になって支払いができません…となります。

また、自己破産や個人再生をするときに、実は保険をかけているにもかかわらず、妻名義にこっそり変更した、という場合には、提出書類となる通帳の引き落としの明細から保険をかけていたことが判明して、それがどうなったかということを確認しないといけません。

以上は一例ですが、手続きの進行とともに嘘をついていることは大体のケースで露見すると考えておきましょう。

債務整理において弁護士に嘘をつくと

知っておきたい借金問題解決のポイント
  • 弁護士は「辞任」をすることがあります
  • 後になって発覚するということは裁判所などに対しても嘘をつくことになります。
  • 事情を知っていなければ弁護士はそもそも対応すらできないので、嘘をつくのは事態を悪化させるだけ。

依頼をした弁護士に対して嘘をついていたような場合にはどうなりますか?

依頼者が申告した事実に基づいて手続きを進めるため、手続きがスムーズにいかなくなることが想定されますが、場合によっては弁護士が依頼者と信頼関係が築けないと判断した場合には弁護士は辞任することがあります。

自己破産や個人再生は申告された事実に基づいて申立てを行うので、弁護士に嘘をついたというだけではなく、裁判所や管財人・再生委員に対して嘘をついたということにもなります。

たしかに、債務整理手続きの利用方法によっては、自宅がなくなり引っ越しを余儀なくされる、保険を解約しなければならなくなる、とった不利益を被ることもあります。
しかし、自宅を維持したい、保険を維持したい、といった要望がある場合には、弁護士は最大限依頼者の意思を尊重するために、様々な方法を考えてくれます。

たとえば、住宅ローンがかかった自宅を維持したいのであれば、自己破産を利用せず、任意整理・個人再生の利用や、場合によっては「住めればよい」というのであれば任意売却におけるセル&リースバックによって住み続けられる可能性もあります。

依頼者が嘘をついたら弁護士は適切に対処できず、かえって事態を悪化させることになるということを知っておきましょう。
弁護士に当初から本当のことを伝えるのはもちろん、依頼後に当初伝えていたことに変化があった場合(職を失った、ボーナスが出ると申告していたのに出なくなった等)にもきちんと伝えるようにしましょう。

債務整理手続きにおいて裁判所・管財人・再生委員に嘘をつくと

知っておきたい借金問題解決のポイント
  • 自己破産・個人再生で裁判所・管財人・再生委員に嘘をつくと事態を悪化させる
  • 自己破産では免責がされないということになりかねない
  • 場合によっては詐欺破産罪という犯罪に問われる

自己破産や個人再生では裁判所や管財人・再生委員という人たちとの関わりが出てくると思うのですが、こういった方に嘘をついてしまうとどうなりますか?

手続きがスムーズにいかなくなることは当然ですが、免責されなかったり、場合によっては犯罪になったりしますので、絶対にしないでください。

債務整理の方法の中でも自己破産・個人再生といった手続きは裁判所および裁判所から選任される管財人(自己破産の場合)・再生委員(個人再生の場合)という人たちが関係してきます。

これらの人とは期日を定めて面接をして、報告ややりとりをするようなことがあるのですが、ここで嘘をつくとどのようなことになるのでしょうか。

裁判所等の印象が大きく悪化する

まず、裁判所等は自己破産をする・個人再生をするにあたって法に反したことをしていないか?ということを厳格に見ています。
嘘をついているのが判明すると、「後ろめたいことがもっとあるのではないか」という目で見られ、より深く・詳しく調べる必要があると判断され、説明をしなければならない事項、提出しなければならない書面が増えるなどの事態に陥る可能性があります。

本来なら免責されたはずのものも免責されなくなってしまう

ギャンブルなどが原因の借金については自己破産手続きにおいては免責不許可事由として、免責してもらえなくなることになっています。
しかし、免責不許可事由がある場合でも、裁判所が相当と認める場合には裁判所が裁量で免責を許可する裁量免責という制度があります。
実は現実的にはこの裁量免責によってほとんどのケースで免責が認められているのですが、その大前提として、手続きにきちんと協力をして真摯な反省を見せていることが必要となってきます。

にもかかわらず、手続き中に嘘をつくようなことがあると、手続きへの協力姿勢や真摯な反省もないと評価されかねません。
嘘の程度や頻度によっては免責に値しないと裁判官が判断してしまえば、裁量免責をしてもらうことができなくなるでしょう。

場合によっては詐欺破産罪にあたることも

破産法265条は、破産手続きへの信頼を失わせる行為を列挙し、その行為を行った者に対して刑事罰に処する旨を規定しています(詐欺破産罪)。
たとえば、保険に加入していて解約返戻金があるような場合に、この保険の存在を隠すなどして申立てを行った場合には、解約返戻金は財産なので、財産の隠匿行為として同条1項1号に該当します。
詐欺破産罪の最長懲役は10年となっており、犯罪の程度としては窃盗や詐欺・業務上横領罪などと同等の重大な犯罪であるということを知っておきましょう。

まとめ

このページでは、債務整理手続きにおいて嘘をついた場合にどのようなことになるのかについてお伝えしました。
家計の立て直しをする以上、少しでも手元に残して債務整理をしたい…という気持ちはあると思うのですが、本来は全額支払うべき債務について、免責・減額してもらう手続きにおいて嘘をついてまで手元に財産を置いておけるというのは虫が良すぎるというのは想像つくと思います。嘘をついた結果、最悪のケースでは犯罪に該当することになります。実際にはどのような意思があるにしても、正直に申告することでより良い対応策を弁護士は考えてくれますので、きちんと正直に弁護士に申告するようにしましょう。