自営業者が自己破産をするときに注意すべきポイントについて解説
ざっくりポイント
  • 自営業者でも自己破産はできる
  • 自己破産はメリットが大きいがデメリットもある
  • 自営業者は3つのポイントに注意

目次

【Cross Talk】自営業者でも自己破産は可能?

私は自営業を行っているのですが、事業がうまくいかず、借金を抱えてしまいました。
今までこつこつと返済をしてきましたが、これ以上返済を続けることは難しく、自己破産を検討しています。

自己破産は借金をゼロにすることができる手続です。
自己破産が認められると、借金から完全に開放されて新たな人生を歩むことができます。
一方で、自己破産にはいくつかのデメリットがあります。
中には自営業者にとって大きなデメリットもありますので注意が必要です。

自己破産をするとデメリットもあるのですね。
私のような自営業者にとってどのような不利益があるのか教えていただけますでしょうか。

自営業者が自己破産するときのポイント

自己破産とは、借金を返済することが困難になった方が、裁判所の決定で、借金の支払いを免れる手続です。債務整理にはいくつかの手続がありますが、自己破産はその中でももっとも強力な効果を持っています。
 自営業者でも自己破産をすることは可能ですが、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。この記事では、自営業者の方を対象に自己破産をするときの注意点について解説いたします。

自営業者でも自己破産はできる

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 自己破産をするのに職業上の制限はない
  • 自営業者が注意しておいた方がいいポイントはある

自営業者でも自己破産をすることは可能なのでしょうか。

「特定の職業に就いていると自己破産ができない」といった決まりはありません。裁判所に申立てを行い、裁判所が免責を認めてくれれば自己破産により借金から解放されることは可能です。

そうなのですね。それを聞いて安心いたしました。

ただし、自営業者が自己破産をするときに気を付けておいた方がいいポイントはいくつかあります。

自己破産はメリットが大きい一方でデメリットも大きい手続です。
たとえば、不動産や高級車などの財産は没収されてしまい、現金化されて消費者金融業者などの債権者に分配されてしまいます(現金化することを「換価」、分配することを「配当」といいます。)自分が所有する不動産に暮らしている方であれば、マイホームを手放して賃貸物件や実家などに転居しなければいけません。

この換価と配当の手続は、裁判所が選任した「破産管財人」と呼ばれる人の関与のもとで行われます。
では、自営業者でも自己破産をすることはできるのでしょうか。

特定の職業についていることが理由で自己破産ができないということはございません。そのため、サラリーマンであっても自営業者であっても自己破産の申立てをすることは可能です。ただし、自営業者特有の問題がいくつかあるのは事実です。

自営業者が自己破産するときに気を付けるべきこと4点

知っておきたい借金(債務)整理のポイント
  • 売掛金は処分されてしまい手元に残らない
  • 破産手続中就くことができなくなる職業がある
  • 事実上事業の継続が困難となる場合がある
  • いわゆるブラックリストに載り新たな借り入れができなくなる

自己破産をするときの自営業者特有の問題とはどのようなものでしょうか。

大きく分けて4つあります。まず、自営業者は取引先に売掛金を有していることが多いですが、この売掛金の扱いが問題となります。2つ目は職業制限です。自己破産をすると一部の職業に就くことができなくなりますので、これに該当しないか確認しておきましょう。3つ目は、事実上事業の継続が困難となる場合があることです。そして4つ目は自己破産をするといわゆるブラックリストに載ってしまうという問題です。

今後仕事を続けていくうえで重要な問題もあるのですね。詳しく教えてください。

売掛金の扱い

自己破産をすると目立った財産は換価と配当の対象となると説明いたしました。この「財産」には、不動産、預貯金、車などに限られず、賃金や売掛金などの債権も含まれます。

ただし全ての財産が換価と配当の対象となるわけではなく、自己破産をしても手元に残しておくことができる財産もあります。これを「自由財産」といいます。東京地方裁判所で破産をする場合、価値が20万円未満の財産(現金の場合33万円未満)であれば、自由財産として扱われます。

自営業者の方には、複数の取引先に対して売掛金を有しているという方も少なくないと思います。売掛金が20万円を超える場合、自由財産に該当しないとされています。したがって、自己破産をすると売掛金は回収されてしまい、手元に残すことはできません。

この決まりにはいくつかの例外があります。
まず、売掛金が実質的には賃金である場合です。
たとえば会社と業務委託契約を結んで仕事をしており、実質的にはサラリーマンと変わらないような勤務をしている場合、会社に対する債権は建前上「売掛金」ですが、実質的には賃金と変わらないといえます。

このような場合には給料債権と同様に扱われ、4分の3が自由財産となり、4分の1が処分の対象となります。
もう一つの例外は「自由財産の拡張」という制度を利用した場合です。
自由財産の拡張とは、法律上は自由財産に該当しない財産を、裁判所の決定によって自由財産として取り扱ってもらうことができる制度です。

自由財産の拡張により売掛金を自由財産として認めてもらった場合には、処分の対象とはならず手元に残すことができます。

ただし、自由財産の拡張が認められるためには一定の基準があり、必ず認められるとは限りませんし、全額認められるとも限りませんので注意が必要です。

職業制限

自己破産をすると、法律で定められた一部の職業に就くことができなくなります。
代表的なものは次の職業です。

・弁護士、弁理士、司法書士、税理士、行政書士などの士業
・質屋
・卸売業者
・貸金業者
・警備員
・旅行業者
・生命保険募集人
・建設売業を営む者

これらの職業に就いている自営業者の方は、自己破産をすると、少なくともその手続き中は仕事を続けることができなくなりますので、他の仕事を探すか、自己破産を断念するしかありません。 

事実上自営業の継続が困難になりうる

上記のような職業制限を受けない自営業であったとしても、破産をした場合には、既にご説明しましたように、自由財産の枠をはみ出た財産については換価の対象になります。

そのため、例えば運送業を行っている場合、自動車が高額ですと換価の対象となり、事実上自営業を継続できなくなるおそれがあるので、注意が必要です。

ブラックリストに載ってしまう

債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が5年から10年間掲載されます。事故情報が掲載された状態のことを「ブラックリストに載る」ということもあります。貸金業者は顧客に貸付けを行う前に信用情報機関に照会を行い、貸付けを行っても問題ないか調査を行います。
事故情報が掲載された状態では、事業のための資金を借りることはもちろん、クレジットカードを作ったり住宅ローンを組むこともできなくなります。
自営業者の方は事業の拡大などのために金融機関などから融資を受けたいと思うことがあるかもしれません。ところが、自己破産してから数年間は基本的に融資の申請をしても審査を通らなくなってしまいます。

まとめ

自営業者の方が自己破産をするメリットやデメリットについてご理解いただけたでしょうか。
自己破産は借金に苦しむ方にとってメリットの大きい手続ですが、自営業者の方が自己破産をするときには注意しなければいけないポイントもあります。
自己破産をするとどのようなリスクがあるのか知りたい方は、債務整理の専門家である弁護士に相談することをお勧めいたします。