会社に不当解雇された場合に、どのように争えるかを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 不当解雇とは、一般に法律や就業規則などを守らずに、会社が一方的に労働者を解雇すること
  • 解雇の種類には普通解雇、懲戒解雇、整理解雇などがある
  • 不当解雇を争うには、会社と交渉する方法や、民事訴訟や労働審判などの法的手続きによる方法がある

目次

【Cross Talk 】不当解雇を争うにはどうすればいい?

「お前は能力がないからもうクビだ」と解雇されたのですが、こんな不明瞭な理由で解雇されるのは納得できません。

労働基準法などの法令や就業規則を守らずに、会社が一方的に労働者を解雇することを、一般に不当解雇といいます。不当解雇を争うには、会社と交渉して解雇を撤回させたり、民事訴訟や労働審判などの法的手続きを利用したりなどの方法があります。

不当解雇について会社と争うことができるんですね。不当解雇に該当しそうな一般的なケースについても教えて下さい!

不当解雇とはどのような場合か、不当解雇された場合にどう争うかなどを解説いたします。

明確な理由もなく突然クビを言い渡されるなど、不当解雇ではないかと思われるような解雇をされる可能性があります。
しかし、どのような場合が不当解雇にあたるのか、不当解雇に対してどう争えばいいのかなどは、よくわからない場合が少なくありません。

そこで今回は、不当解雇とはどのような場合か、不当解雇の争い方などについて解説いたします。

不当解雇とはどのような場合か

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇とは、一般に労働基準法などの法律や就業規則の規定などを守らずに、労働者を不当に解雇すること
  • 業務が原因で怪我や病気になった場合など、法令が明確に解雇を制限しているケースがある

会社に不当に解雇されてしまったと思うのですが、実は不当解雇とは何なのかがよくわかりません。どのような場合が不当解雇になるのですか?

一般に不当解雇とは、労働基準法などの法令や、会社のルールである就業規則を守らずに、会社の都合で一方的に労働者を解雇することです。

不当解雇とは

不当解雇について法令に明確な定義はありませんが、一般に不当解雇とは以下のような解雇を意味します。

・労働基準法や労働契約法などの法令や、就業規則の規定などを遵守せずに、事業主(会社)の都合で一方的に労働者を解雇すること。
不当解雇の代表例が、労働契約法第16条に該当する解雇です。
労働基準法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用した無効な解雇である旨を規定しています。

客観的に合理的な理由とは、労働能力や職務についての適格性の低下・喪失、勤務成績の不良、義務違反や規律違反の行為、会社の経営において解雇の必要性があることなどです。
社会通念上相当であると認められない場合とは、労働者の違反の程度と比較して、解雇をすることが重すぎる場合などが該当します。

一般的に不当解雇に該当する可能性が高いケースの例として、以下のものがあります。

・整理解雇(リストラ)の要件を満たしていないのに解雇すること
・自分の意見を表明しただけで労働者を解雇すること
・就業規則に懲戒解雇についての規定がないのに、懲戒処分として解雇すること

明確に解雇が制限されている場合

労働基準法をはじめとする法律によって、解雇が明確に制限されているケースの代表例を解説いたします。

・解雇予告のケース

会社が労働者を解雇するには、原則として少なくとも30日前までに解雇について予告するか、30日分以上の賃金を支払う必要があります(労働基準法第20条)。
会社から突然解雇されてしまった場合、労働者は生活に困ってしまう可能性が高いです。解雇予告や賃金の支払いを義務付けることで、労働者を保護します。

・業務が原因で怪我や病気になったケース

業務が原因で怪我や病気になった場合は、一定期間(原則として治療のために休業の必要があると認められる期間と、その後の30日間)は解雇が原則として禁止されます(労働基準法第19条)。
怪我や病気になったうえに解雇されたのでは、労働者の生活が成り立たなくなってしまいます。解雇を制限することで負傷した労働者を保護します。

・女性の労働者の産前・産後のケース

女性労働者の場合、産休を取得した期間とその後30日間について、解雇が原則として禁止されます(労働基準法第19条)。
産前・産後に解雇されてしまうと、労働者と子どもの生活に支障をきたす可能性が高いので、一定期間の解雇を制限するものです。

その他、各種の法律において以下のような規定があります。

・労働者の国籍・新庄・社会的身分を理由とする解雇の制限(労基法3条)
・労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇の制限(労働組合法第7条)
・労働者の性別を理由とする解雇の制限(男女雇用機会均等法第6条)
・女性労働者の結婚・妊娠・出産・産休などを理由とする解雇の制限(男女雇用機会均等法第9条)
・労働者の育児休業・介護休業などを理由とする解雇の制限(育児・介護休業法第10条、同法第16条)

一般的な解雇について

一般的な意味での解雇とは、労働者の同意のない一方的な意思表示によって、使用者(会社)が雇用契約を解除することです。

解雇には以下の3種類があります。

・普通解雇

労働能力の低下や勤務態度が不良であるなど、労働者を原因とする理由によって、雇用契約を解除して解雇することです。
なお、有期労働契約(契約期間に定めがある労働契約)は、期間が満了すれば解雇しなくても原則として労働契約が終了しますが、有期労働者を保護するために、一定の場合に雇止めが制限されています(労働契約法第19条)。

・懲戒解雇

懲戒解雇とは、労働者に重大な業務命令違反や職場規律違反があった場合や、労働者が会社に多大な損害を与えたような場合に、懲戒処分として解雇することです。懲戒解雇をするには、少なくとも就業規則や雇用契約などに懲戒解雇についての規定が必要です。

・整理解雇

整理解雇とは、会社の都合で従業員を解雇することで、一般にリストラとも呼ばれます。整理解雇の一般的な理由としては会社の倒産、人件費削減の必要性、事業所の閉鎖などがあります。

不当解雇をどのように争うか

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 不当解雇を争うには、会社と交渉してみる方法がある
  • 会社が応じない場合は、民事訴訟や労働審判を検討する必要性が高い

会社に解雇されたのがどうしても納得できません。不当解雇を争うには、どのような方法がありますか?

不当解雇を争うには、まずは会社と交渉してみる方法があります。会社が応じない場合は、民事訴訟や労働審判など、法的な手続きを検討する必要性が高いですね。

交渉

不当解雇について会社と争うには、裁判などの法的手続きをする前に、まず会社と交渉してみる方法があります。
会社と交渉する場合、不当解雇にあたるので解雇が無効である(雇用関係が存続している)ことや、雇用関係が存続しているために未払いの賃金(給与)が発生していることなどを請求します。

会社が交渉に応じてくれれば良いのですが、会社が不当解雇を認めない場合は、労働問題に詳しい弁護士に交渉を依頼すると、会社が危機を感じて交渉に応じる可能性があります。

また、交渉の段階で会社が弁護士を立ててきた場合も、対抗するために弁護士を選任する必要性が高いといえるでしょう。

民事訴訟もしくは労働審判

会社が不当解雇について交渉に応じない場合は、民事訴訟や労働審判などの法的手続きを検討することとなります。
民事訴訟では、裁判所に訴訟を提起して裁判を起こし、会社による解雇が不当解雇にあたることを判決として出してもらうのが目的です。
民事訴訟は判決が確定すれば、会社による解雇が不当解雇であることが確定しますが、判決が出るまでに時間がかかります。

労働審判も裁判所が行いますが、訴訟とは異なる手続きです。訴訟が一般に公開の法廷で行われるのに対し、審判は非公開で行われます。
労働審判は労働者と会社の間で起きた労働問題について、迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする手続きです。原則として3回以内の期日で審理するので、裁判に比べて一般に決着が早いのが特徴です。

話し合いがまとまって審判が確定すれば、裁判で和解した場合と同様の効力がありますが、相手が応じない場合は確定しません。
民事訴訟と労働審判のどちらを選択すべきかは事案によって異なります。どちらにしても適切な主張や証拠収集が重要なので、労働問題に詳しい弁護士にご相談することをおすすめします。

まとめ

一般に不当解雇とは、労働基準法などの法令や就業規則を守らずに、会社の都合で一方的に労働者を解雇することをいいます。
不当解雇について会社と争うには、まずは裁判などの法的手続きをせずに、会社と交渉してみる方法があります。会社が応じない場合は、労働審判や民事訴訟などの法的手続きを検討する必要性が高くなります。
いずれにせよ、自分だけで会社と交渉したり争ったりするのが難しいと感じる場合は、労働問題に詳しい弁護士にご相談する事をおすすめします。