残業代は甘え!そんな風に考える必要はありません。
ざっくりポイント
  • 残業代を甘えとする考え方
  • 現代においてはあてはまらない

目次

【Cross Talk】残業代は甘え?なぜそんな風に考える人がいるのか。

私が勤務する会社では残業代の支給がされません。その事について会社の中では「残業代なんて甘えだ!」みたいな雰囲気があり、なかなか支払いを求めづらいです。

そのように考える人にはいくつかのパターンがあるようですが、そのような論調は妥当ではないといえるでしょう。

「残業代は甘え」という考え方は妥当ではない。どうしてそのような考え方が出るのか?どう考えるべきか。

会社に残業代請求をしたいと思っても、中には「残業代の請求をしたいなんか甘えである」とするような考え方もあるようです。どうしてこのような考え方になってしまうのか、そのような論調ははたして的を射たものなのかを検討しましょう。

残業代は甘えであるという考え方の根本にあるもの

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 「昔はもっと残業した」と考える人は、残業代は甘えであると主張する。
  • 「新入社員は教わる立場である」と考える人は、残業代は甘えであると主張する。

そもそもどうして「残業代は甘え」みたいな考えをしてしまうのでしょうか。

「昔はもっと残業した」「新入社員は教わる立場である」というような考え方から、残業代を請求するなんて甘えだという考えになってしまうようですね。そのような主張がされた例を見てみましょう。

残業代は甘えであるという考え方の根本にはどのようなものがあるのでしょうか。

昔はもっと残業した

2017年12月26日に「池上彰が2017総ざらい 知らずに終われない今年のニュースTOP50」(テレビ朝日系)で、出演していた高齢者が若者労働者を「ひ弱」だと発言していたものがインターネットで炎上したことがありました。
若い頃には70~100時間ぐらいの残業をしていた、などという過去を話すシーンもあったとのことです。
いわゆる「過労死ライン」と言われる1ヶ月間に100時間、2~6ヶ月にわたって80時間を超える時間外労働とされる基準に近いあるいはそれ以上に働いていたということになります。

新入社員は教わる立場である

Yahoo!知恵袋などを参照すると「残業代を請求する新入社員に困っている」などとする質問が掲載されていたりします。
新入社員については、「教わる立場である」「仕事が遅い」にもかかわらず残業代請求をするのはけしからん、という考え方が根底にあるようです。中には、いわゆる「ゆとり世代」がこのようなことをするといったものもあります。

残業代は甘え?は違うという根拠

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代は甘えではない、甘えだとする主張に欠落する視点

残業代を甘えとする主張にあまり納得できないのですが…。

おっしゃるとおりで主張には欠落している視点があるのです。具体的に見てみましょう。

残業代は甘えだという主張は正しいわけではありません。
これらの主張には欠落している視点があるので見ていきましょう。

昔と違って現在は給料が相対的に低い

まず、昔はもっと残業をしたという主張をする人たちは、その頃にもらっていた給与の額に相当する給与を今の労働者がもらえていない、という視点が欠落しています。
上述した70~100時間残業をしたと主張する人は60代の方です。
たとえば現在の60代の方が30代だったころ、今から30年前の平成2年の所定内給与額は2,547,000円であるのに対して、令和元年の所定内給与額は3,077,000円とされています。

この額は、賃金構造基本統計調査の所定内給与額というもので、この給与は残業代を含まないものです。
この額だけを見ると、今の会社員の方が50万円近く多くもらっているとも思えます。
しかし平成2年には消費税はまだ3%だったのですが現在は10%です。
また、物価に関する指数である消費者物価指数について、2015年を100とすると、1990年は91.2で最新の2019年は101.8となっております。消費税や物価の上がり以上に給与が上がっているとはいえないのは数字の上でも明らかです。「若者の◯◯離れ」といわれるものの原因が経済的影響によるものであることが指摘されるように、給与は相対的に減っているといえます。

つまり、昔の人は残業代をもらえなくても生活が出来ていたのですが、今の人は残業代をもらえないことによって生活を圧迫しているといえるのです。これを一方的に甘えであるとするのは妥当ではないといえるでしょう。

生き方が多様化している中、会社で家族のように働くことを強要するものは妥当ではない

昔の働き方として、会社が家族であり、居場所になっているような風潮がありました。

しかし、現在では生き方が多様化しているため、本来企業が干渉すべきではない勤務外の時間をサービス残業に充てるよう強要し、「残業は甘えである」という考えの妥当性は低いといえるでしょう。

教育は自社で活躍してもらうためにあるので、教わる立場であるというのは理由にならない

新入社員は教わる立場であるという風潮についてはどのように考えるべきでしょうか。

現在では、即戦力を見越した形での採用をすすめることも多くなっています。そのため、パソコンを触れることは当然で、ワード、エクセルといったビジネス向けのソフトを使える状態でないと採用されない場合も多くあります。パソコンの触り方から教えてもらっていた世代と比較すること自体が間違っているといえます。そもそも、教育は自社のために行うものであって、社員のために行うものではありませんので、残業代を支払わない理由にはならないのです。
また、「仕事が遅い」というのも理由にはなりません。
仕事が遅いというのであれば、「そもそも残業を許可しない」「仕事を早くするための方策を考える」というのが筋であって、残業代の支払をしないということの理由にはならないのです。

まとめ

このページでは「残業代は甘えだ」という主張について、その主張が誤りであることについての見解をお伝えしました。
残業代が無くても生活が豊かであった世代や、残業代を請求されると困る現役の企業側の立場からの一方的な主張が目立つのですが、いずれも自分達の立場・価値観のみの主張となっています。
残業代は、法律上も労働者の労働に対する対価として支払われるべき賃金であって、その支払いをしない使用者側がむしろ甘えであるというべきです。
残業代の支払を受けられないような場合には、残業代請求をするための方法を弁護士と一緒に考えましょう。

この記事の監修者

弁護士 長谷川 裕子
弁護士 長谷川 裕子第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会国際委員会委員
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