どのような場合に社内行事が労働時間にあたるかについて解説します!
ざっくりポイント
  • 社内行事が労働時間に当たる場合がある
  • 事実上参加が強制されている場合は労働時間にあたる
  • 労働時間にあたる場合は労災や残業代の問題が生じる

目次

【Cross Talk】所定労働時間外に行われる研修などの社内行事への参加は労働時間にあたる?

うちの会社では定期的に就業時間後や休日に研修などの社内行事があります。
上司も参加するため欠席できるような雰囲気ではないので、仕事だと思って毎回参加しています。
ただ、会社からは残業代などは全く出ません。これっておかしくないですか?

所定労働時間外の社内行事であっても、参加が事実上強制されるときは労働時間にあたるとされています。
労働時間にあたる場合には、残業代を請求することができますし、社内行事の間の怪我・病気については労災の対象になる可能性があります。

残業代を請求できるんですね!うちの会社の研修は強制参加といえるでしょうか?

事実上参加が強制される社内行事は労働時間にあたる!

終業時間後や休日など、所定労働時間外に研修などの社内行事が開催されることがあります。
完全に自由参加ならともかく、参加が強制されるような行事の場合、業務そのものではなくても、仕事の一環と思って仕方なく参加している従業員も多いでしょう。
そして、そのような方は、仕事の一環として参加した以上は参加した時間に対応する賃金(残業代を含む)を支払ってほしいと考えることでしょう。
しかし、研修などの社内行事について賃金を請求するには、社内行事が「労働時間」に当たる必要があります。
そこで今回は、社内行事が労働時間に当たるか否かの判断要素や、労災、残業代など労働時間に当たる場合に派生する問題について解説します。

社内行事は残業になる?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 社内行事も労働時間といえることもある
  • 事実上参加が強制されているかが重要

社内行事が残業になる場合もあるということでしたが、具体的にどのような場合に残業になるのですか?

参加しないことで不利益な取り扱いを受けるなど、社内行事への参加が事実上強制されている場合には、労働時間にあたると考えられます。
社内行事の時間を労働時間として扱った結果、決められた労働時間を超えれば残業代を請求できます。

社内行事が労働時間に当たる場合がある

社内行事が残業に当たるかを検討する前に、そもそも残業とは何かを簡単に確認しましょう。
おおまかにいえば、残業とは、決められた労働時間を超えて労働することをいいます。

したがって、社内行事が残業になると言えるためには、社内行事が労働時間にあたり、これに参加することで決められた労働時間を超過することが必要ということになります。

どうやって労働時間になるかを判断する?

研修などの社内行事は、就業規則上の制裁等の不利益な取り扱いによって、あるいは研修等の業務との関連性から参加しないことで業務に具体的な不利益が生じることなどによって、事実上参加が強制されている場合には、労働時間にあたると考えられます。

研修についてですが、行政解釈も「使用者が実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」としています(昭和26・1・20基収2875号、昭和63・3・14基発150号、婦発47号)。
所定労働時間外に行われた各種の社内行事の労働時間性が争われた裁判例として、次の裁判例が参考になります。

八尾自動車興産事件(大阪地判昭和58・2・14労働判例405・64)

・(書道などの)趣味の会について
趣味の会は、会社の従業員の福利厚生の一環としてなされていたもので、その講師に支払う費用等は会社においてこれを負担していたが、会社の従業員がこれに参加するか否かは全くその自由に委ねられ、会社から参加を強制されていたようなことはなかったこと、従業員のなかで現に趣味の会に参加していない者もあったこと、会社において趣味の会に対する出欠をとっていたようなことはなく、趣味の会に出席した場合にこれに対する賃金を支払ったこともなければ、これに欠席したことを理由に不利益を課せられるようなこともなかったことからすれば、趣味の会の活動は、会社の業務として行なわれたとは到底いい難い

・専門委員会の活動
会社では全従業員が経営に参加する趣旨の下に経営協議会が設けられ、その専門委員会として、教養委員会、管理委員会、車輛委員会その他の委員会が設けられ、会社の従業員は、すべていずれかの委員会に配属されていたところ、専門委員会は、会社の業務としてなされたものであって、従業員が各専門委員会に出席して活動した時間は、時間外の労働時間というべきである

・研修会
会社が行った教習用語の統一(注:会社は自動車教習所を経営している)に関する研修会に参加した時間は、時間外労働に従事した時間というべきである

趣味の会は自由参加であることから業務として行われたものではないとして労働時間制を否定したのに対し、専門委員会は全従業員が配属されるものであること、研修会は参加しなければ業務に不利益が生じることから、業務として行われたとして労働時間と認めたものと考えることができます。

社内行事でトラブルが発生した場合

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 社内行事中の怪我が労災の対象になる可能性がある
  • 社内行事への参加で残業代を請求できる可能性がある

社内行事が労働時間にあたる場合、具体的にどのような影響があるのですか?

社内行事が労働時間と判断された場合、たとえば社内行事中にけがをしたときには労災保険の対象になる可能性があります。また社内行事に参加することで決められた労働時間を超える場合には、残業代を請求することができます。

「社内行事は残業になる?」で解説したとおり、社内行事であっても事実上参加が強制されていれば業務と判断され、労働時間にあたることになります。飲み会や懇親会、歓送迎会のようなものであっても、参加が強制される場合には業務と判断され、労働時間に当たる可能性があるのです。
そこで、社内行事が労働時間とされる場合の問題点について解説します。

労災に該当するケース

労災(労働災害)とは、通勤中または勤務中に発生した怪我や病気のことをいい、労災保険の給付の対象になります。
したがって、社内行事が労働時間にあたる場合に社内行事中に怪我をしたときは、業務中の災害になり。労災保険の給付対象になる可能性があります。

参加が強制された社内の運動会で負傷した場合などが、社内行事における労災の代表的な例といえます。
飲み会、懇親会、歓送迎会などは、慰労や親睦を深めるためのものに過ぎず、業務であると認められないケースが多いのですが、なかには業務であることを認めた裁判例もあります。

行橋労働基準監督署長事件(最判平28・7・8最高裁判所裁判集民事253・47)
外国人研修生らの歓送迎会終了後、自動車で研修生らを送る途中に遭遇した交通事故により死亡した従業員について、上司の意向等により歓送迎会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、その結果、歓送迎会終了後に業務を再開するために職場に戻ることを余儀なくされたものというべきであること、歓送迎会は会社の事業活動に密接に関連して行われたものというべきであること、従業員が上司に代わって研修生らをアパートまで送っていった際に交通事故に遭ったものであること等を踏まえると、従業員は、交通事故の際、会社の支配下にあったというべきであり、従業員の死亡は業務上の事由による災害に当たるというべきである。

残業代の支給が必要となるケース

決められた労働時間外に行われた社内行事が労働時間にあたる場合、時間外労働をしたということになります。
したがって、本来の終業時間後に労働時間にあたる社内行事に参加した場合、残業代を請求することができますし、1日8時間という労働基準法の労働時間の規制を超える場合には、割増賃金を請求することができます。

また、法定休日に行われた社内行事が労働時間にあたる場合(休日に強制参加の運動会が行われた場合など)は、休日労働をしたものとして、割増賃金を請求することができます。

社内行事の参加拒否できるの?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 社内行事が労働時間にあたるかがポイントになる
  • 労働時間にあたる場合には参加拒否で処分を受けるおそれがある

時間外にまで上司や同僚と付き合いたくないので、本音を言えば懇親会や運動会には参加したくありません。社内行事への参加は拒否できるんでしょうか?

参加拒否ができるかどうかは、社内行事が労働時間にあたるかどうかによります。
労働時間にああたる場合に参加拒否すれば、懲戒処分などの不利益を受けるおそれがあります。

社内行事への参加について、あまり気が進まないと感じている方は少なくないでしょう。
とりわけ、社内の飲み会や運動会など、業務との直接の関連性が薄い社内行事については、できることなら欠席したいと考える方がいることも無理からぬことです。

そこで、社内行事への参加を拒否できるかどうかですが、この問題は社内行事が労働時間にあたるかどうかにかかっています。

社内行事への参加が事実上強制され、労働時間にあたる場合、単に気が進まないなどの理由で参加拒否することは、正当な理由なく労働時間に労務の提供を拒否することになります。
したがって、このような社内行事への参加を拒否すると、使用者から何らかの懲戒処分(戒告、減給、出勤停止、解雇など)を受けるおそれがあります。

これに対し、社内行事が自由参加で労働時間にあたらない場合、参加を拒否した労働者に対して使用者が懲戒処分をすることはできません。

まとめ

社内行事の労働時間性について解説しました。社内行事が労働時間にあたるか否かは、会社の具体的な指示、命令の有無や社内行事の内容などによって決められるので、ご自身では判断が難しいかもしれません。社内行事が多く、賃金が適正に支払われているかという疑問をお持ちの方は、残業代に詳しい弁護士に相談するといいでしょう。

この記事の監修者

弁護士 今成 文紀
弁護士 今成 文紀東京弁護士会 / 一般社団法人日本マンション学会 会員
一見複雑にみえる法律問題も、紐解いて1つずつ解決しているうちに道が開けてくることはよくあります。焦らず、急がず、でも着実に歩んでいきましょう。喜んですぐそばでお手伝いさせていただきます。