残業代請求する前に自分でできることを解説いたします。
ざっくりポイント
  • 労働基準法の規定を知ろう
  • 残業代の計算は難しいけど残業代請求・簡易計算ツールを使えばある程度できる
  • 証拠は残業代請求の命、多めに集める
  • とりあえず謙虚に交渉することからスタート
  • 交渉が上手くいかなくても他の手段がある
 

 

目次

【Cross Talk】残業代請求前に自分でできること

私の勤務先はサービス残業が当たり前になってます。本当ならもう少し多くの給料がもらえるのに、なんだか会社に騙し取られている感じがして嫌なんですよね。でも、いきなり専門家に相談するのも気が引けるなぁ……って思うんです。自分でできることをしておこうと思うんですが何をしたらいいんですか?

とりあえず、残業代請求の基礎知識を身につけたほうが良いでしょう。それと、依頼前に簡単に残業代を計算してみたり、証拠を集めたりすれば、専門家への相談もしやすいと思います。ご自身で会社に請求する場合も含めて、会社に対する残業代請求で、自分でできるところを、まるっと解説しましょう。

まるっと解説してくれるんですね。残業代請求の基礎知識から身につけるぞ!!このコラムは残業代請求の基本的な部分を解説していて、ところどころに関連する別のコラムを参照するように誘導しているなあ。詳細はあとで調べることにして、まずは一通り読んでみようかな。

残業代請求の準備をある程度しておきたい!

サービス残業が多すぎる!働いたことをきちんと評価してもらいたい!残業代請求をしようと思い立って、弁護士に依頼する前にまずは自分でできる範囲のことはしておきたいあなたに、会社に対する残業代請求で、自分でできることがどんなことか説明させていただきます。

未払い残業代請求に関する最低限の基礎知識をもつ

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代請求は「労働基準法」が中心となる
  • 残業には「法内残業」と「法外残業」がある
  • 法外残業や深夜労働、法定休日労働などは割増賃金の対象となる
  • 請求の方針を決める、残業代を計算する、証拠を集めることの3つが重要

残業代請求をしようと考えたのは良いものの、何から始めたらいいか分かりません。

まずは、残業代請求に関する最低限の基礎知識を持つのが大切だと思います。残業代請求は労働基準法の規定に則って行います。基本的な用語についても簡単に説明しますね。法律と基本的な用語を知れば、自分でもっと調べることもできますよ。それに、残業代請求で重要なことについても説明しましょう!

残業代請求と労働基準法

残業代請求は、労働基準法という法律が中心となります。

労働基準法とは、使用者(多くは会社)に向けて、労働者が「人たるに値する生活を」営むための、最低基準を示している法律です。労働者と使用者が契約をしたとしても、その契約の条件が最低基準を下回ったものならば、労働者が酷使されて、健康を害してしまう可能性があります。そのような働かせ方を国が規制して、労働者を守ろうとする法律が労働基準法です。

残業は2種類ある

残業とは労働者と使用者(多くは会社)が定めた労働時間を超えて働いた場合と、労働基準法の労働時間規制(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合を言います。前者は法内残業、後者は法外残業と言います。二つの残業についての違いは、次に説明する「割増賃金」の対象となるか否です。

割増賃金ってなに?

割増賃金とは、労働基準法で定められた時間に働いた場合には、使用者(会社側)通常の賃金よりも割増した賃金を払わなければならないといった規定です(労働基準法37条)。

1日8時間週40時間(例外もある)以上働いた場合や、深夜に働いた場合(22:00~翌5:00)、法定休日に働いた場合などは、使用者(会社)は割増賃金の支払いが義務付けられています。

先ほど言った「法外残業」と「法内残業」の違いは割増賃金に現れます。法外残業は「法定時間外労働」といって「1日8時間、週40時間(例外もある)以上働いた場合」の残業を言います。この割増率については+25%になっています。一方「法内残業」については割増賃金の支払いは義務付けられていません。

詳しくは別のコラムで解説しますので、気になりましたらこちらをご参照ください

【図解】残業代の計算に必要な時間単価の「割増率」とは?

残業代請求で重要なこと

残業代請求で重要なことは、1.請求の方針を決める2.残業代を計算する3.証拠を集める、ことです。残業代請求をしようと考えたときは、上の3つの事をきちんと行うことが重要となります。

1.請求の方針を決めるということは、ご自身で請求するか、弁護士に依頼して相談するか、交渉をどう行うか、労働審判や訴訟までも覚悟するのかといった大まかなことを決めることです。請求の方針に関しては、残業代を計算することや、証拠を集めることで変わる可能性もあります。最初の段階では大まかに考えておくので十分でしょう。なお2.3.については項目を改めて説明します。

残業代を計算する

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 簡易ツールで計算してみよう
  • 大まかな計算をしておけば、専門家への相談がスムーズに進む

残業代の計算ってどうするんですか?よくわかりません。一発で計算できれば良いのになあ……。

残業代請求の基本の計算式は、残業代 = A:残業時間数×B:時間単価×C:(100%+割増率%)です。請求方針を決めるためにも計算は重要なので、面倒くさがらないでやってみましょう。簡単な計算なら「残業代請求・簡易計算ツール」でできます。事前に大まかな計算ができていれば、専門家への相談時に役に立ちますからね。

残業代の基本の計算式

残業代 = A:残業時間数×B:時間単価×C:割増率(100%+割増率%)

が残業代の計算式です。ABCそれぞれに数字を入れれば残業代の計算ができます。

A:残業時間数はそのままの意味で、残業時間がどれだけかということです。

B:時間単価とは、1時間あたりの労働単価を意味しています。1時間当たりの労働単価の計算には、年間の労働時間をもとに月平均所定労働時間数を計算する必要があります。そして、月給から各種手当を除いた金額を月平均労働時間数で割るといったことで計算することができます。

C:割増率に関しては、先ほど割増賃金の部分で解説した通り、労働基準法で定められた時間によって異なった割合を入れることになります。例えば法外残業の場合は+25%、深夜労働の場合はさらに+25%といった具合です。

ABCそれぞれ簡単に説明しましたが、この簡単な説明で理解するのは難しいと思います。そこで詳細については別のコラムで解説しますので、そちらをご覧ください。

それでもやっぱり計算は難しい

先ほどの残業代計算の解説だけで理解できる人はいないと思いますし、他のコラムなどを読んでみても、「専門用語が多くてわからない!」、「計算が複雑で困った!」などと思う人が多いと思います。

そんな人には、「残業代請求・簡易計算ツール 」がありますので、試してみてください。

残業代請求・簡易計算ツールで大まかに計算してみてから、専門家に相談することをおススメします。大まかに計算が済んでいれば、専門家への相談もしやすくなるでしょう。

残業代請求を行う為の証拠をできるだけ集める

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 労働条件に関する証拠は、雇用通知書や就業規則など
  • 勤務時間に関する証拠は、タイムカードの写しなど
  • 業務内容に関する証拠は、残業指示のメールやメモ書きなど
  • 証拠は「質より量」を意識して集める

相談前にあらかじめ証拠を集めようと思うんですが何に注意したらいいんですかね?

労働条件に関する証拠、勤務時間に関する証拠、業務内容に関する証拠が必要です。残業代請求で必要な証拠は、その事案によって異なることが多いので、専門家に相談する前なら、「質より量」と考えて、証拠となりそうなものを多く集めることをおススメします。

証拠を事前に集めておけば、専門家への相談はスムーズになります。ここでは、証拠収集の基本的なことを解説しましょう。とりあえず、以下の3つの種類の証拠を集めることを第1目標にしましょう。

労働条件に関する証拠

「雇用契約書」(もしくは「雇用通知書」)と「就業規則」のコピーです。「雇用契約書」は、労働者と会社の基本的な契約関係を示す書類で、契約期間や給料額などの記載があります。「就業規則」は会社側が定めた決まりで、就業時間や時間外労働、休日などの規定があるのが普通です。

勤務時間に関する証拠

具体的に働いた時間を確定するために、勤務時間を確認できる証拠が必要となります。たとえば、タイムカードの写しや、シフト表、営業日報・業務日報など、毎日機械的につけている資料です。勤務時間を確認できる証拠では、記録されている時刻まで業務に従事していたことを立証します。

業務内容に関する証拠

残業の指示が分かるメールやメモ書き、残業を承認する書面などです。実際に残業代請求をした場合に、会社側が「残業は指示してない」と反論する可能性があります。

残業代請求に関する証拠として何が重要になるかは分かりません。そこで、専門家への依頼前ならば、「質より量」を意識して多めに集めておくことをおススメします。なお、証拠収集に関する詳細な説明としては別のコラムをご覧ください。

会社と交渉してみる

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 謙虚な姿勢と根拠に基づいた交渉が大切
  • 冷静さを忘れると不利な状況に陥るかも

専門家に相談する前に、まずは自分で会社と交渉してみようと考えました。そのとき気を付けることってなにかありますか?

最初から強硬な態度で交渉するのではなくて、謙虚な姿勢で交渉するのが良いかと思います。それに、交渉は冷静に行うのが大切です。

残業代計算も済んで、証拠も集めた場合には、ご自身で交渉してみようと思う方もいるかと思います。その際には、謙虚な姿勢で交渉することと、冷静に交渉を行うことが重要です。

初めから強硬な態度で交渉した場合、会社がムキになってしまい、任意に支払いを受けることが難しくなる可能性があるので、あくまで任意で支払いを受けることを目的とするならば、謙虚な姿勢で交渉することが大切です。その際には「日ごろの仕事内容にやりがいもあって感謝しているけども、残業代は支払ってほしい」といったニュアンスで交渉すると良いでしょう。

ただ、交渉の下地となる証拠や残業時間などの計算表などを具体的に提示しながら、根拠をもって交渉することは忘れないようにしましょう。

また、冷静に交渉を行うことも大切です。会社側はあなたの話をまるで聞かないで、ぞんざいに扱うこともあるでしょう。その際に、あなたが冷静さを失った交渉をしてしまうと、自分に不利なことを言ってしまうかもしれません。交渉方法については別のコラムも参考にしてください。

どうしても交渉に行き詰まったら

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 弁護士に交渉を任せると、会社側の態度が変わる可能性もある
  • 訴訟ではなく労働審判という方法もある

先生!残業代請求の交渉を自分でしたんですけど、会社がまったく取り合ってくれません。もう裁判で訴えるしかないんですか?

弁護士に交渉を任せると、会社の態度が変わるかもしれません。ご自身での交渉で行き詰まった場合には、弁護士などの専門家を利用することを考えてはいかがでしょうか(弁護士に依頼する場合にかかる費用について知りたい方は「残業代請求のための弁護士費用・相場はどのくらい?」を参考にしてみてください。)。

交渉に行き詰まってしまった場合は、すぐに訴訟をしなければならないという考えは誤解です。

ご自身での交渉で会社側が無視するなどの態度を取るのは、本気で残業代を請求をしないと思われているのが原因かもしれません。その場合は、弁護士を通して交渉することで会社側の態度が変わるかもしれません。弁護士名での内容証明郵便を出した場合に会社側が交渉に応じることもあり得るでしょう。

また、必ずしも一般的とはいえませんが、労働基準監督署に相談してみるのも一つの方法です。会社側は労働基準監督署による調査などを気にしていることから、交渉への一定の影響があるかもしれません。ただし、労働基準監督署は残業代の交渉をしてくれるわけではないので注意してください。

他には、訴訟の前に労働審判を利用することも考えられます。労働審判とは、労働審判官(裁判官)1人と労働審判員(労働関係に関する専門的な知識と経験を有する者)2人で組織された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、その都度調停を試みて、調停による解決に至らない場合には、調停委員会が解決案を提示する審判を行う手続です。

労働審判について詳しく知りたい場合は「残業代請求における労働審判とは?~どのような場合に労働審判手続が必要?~」を参考にしてみてください。

このようにご自身での交渉が上手くいかない場合でも、すぐに訴訟という選択をするのではなく、専門家を通じた交渉方法が残っていることを、頭の片隅に置いておくと良いでしょう。

まとめ

残業代請求で、自分でできることを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。このコラムで解説したことは基本的なことです。本サイトの他のコラムも合わせてみれば、残業代請求に関する知識が一通り身につくようになっておりますので、時間がありましたら他のコラムも見てみてはいかがでしょうか。

 

この記事の監修者

弁護士 今成 文紀
弁護士 今成 文紀東京弁護士会 / 一般社団法人日本マンション学会 会員
一見複雑にみえる法律問題も、紐解いて1つずつ解決しているうちに道が開けてくることはよくあります。焦らず、急がず、でも着実に歩んでいきましょう。喜んですぐそばでお手伝いさせていただきます。