退職勧奨されたけど、未払い残業代があれば請求することができます。
ざっくりポイント
  • 退職勧奨は違法ではない
  • 退職勧奨されても残業代の請求ができる

目次

【Cross Talk 】会社から「肩たたき」されてしまった場合は、会社を辞めなければならないのでしょうか。

先日、会社の人事に会議室に呼ばれ、早期退職してくれたら、3か月分の賃金を支払うし退職金の積み増しもすると説明を受けました。退職するように求められているのですが、こうした場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。また、未払いの残業代があると思うのですが、請求はできるのでしょうか。

相談者さんのように、会社から条件を提示されて退職するように勧められることを、
「退職勧奨」と呼びます。いわゆる「肩たたき」というものです。退職勧奨とは、労働者に自発的に退職の意思表示をするように促す説得行為等を言います。
説得に過ぎませんので、退職勧奨に応じる義務は当然ありません。また、残業代の請求は退職勧奨された場合でも、請求することができます。もちろん、退職した後でも請求することは可能です。

なるほど、そうなんですね。いきなり、肩たたきにあったので、驚いてしまいました。また、会社を辞めても請求できると聞いて、ほっとしました。

退職された場合でも、残業代請求ができることをご説明いたします。

肩たたきなどの、退職勧奨にあった場合には、言われるままに退職しなければならないのでしょうか。これまで、一生懸命に勤務して、たくさん残業もこなしてきたにもかかわらず、残業代の支払いがない場合には、残業代の請求はできるのでしょうか。

退職勧奨をされた場合でも、労働者はこれに従う義務はありません。また、未払いの残業代がある場合には、残業代と退職は全く別の問題になりますので、残業代の請求をすることができます。退職勧奨として、窓際へ追いやられた場合、それがパワハラの場合、また、未払いの残業代の請求についてご説明をいたします。

退職勧奨は違法ではない

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 退職勧奨は会社側が行う合意解除への説得である
  • 違法でない退職勧奨もあるが悪質内容の退職勧奨もある

退職勧奨が違法ではないとはどういうことでしょうか。

退職勧奨は、あくまで労働者の退職意思形成を促す事実上の行為でしかありません。たとえば、会社から強制的に解雇されるような場面とは異なり、単に「退職してください」と会社から説得を受けている状況に過ぎませんので、原則として違法ではありません。

解雇と合意退職との違い

解雇は、会社の一方的意思表示によって労働者との労働契約を終了させる行為をいいます。労働者の意思と関係なく、会社が一方的に契約を終了させる以上、無制限に認められるわけではありません。他方で、退職勧奨は退職に合意するように「誘因」を行うもの(下関商業高校事件:山口地方裁判所下関支部昭和49年9月28日)であり、それに応じるかどうかは、労働者の自由な意思にゆだねられます。
そのため、退職勧奨を行うこと自体は違法な行為ではありません。

解雇について詳しく知りたい方は、「会社をクビになった!そもそも解雇とは?~解雇の種類や要件を解説~」をご覧ください。

こんな形で退職勧奨は行われる

退職勧奨の方法としては、早期退職者を募集したり、または、個別の労働者に条件を提示して、退職するように説得するなどの方法があります。
このほかの事例としては、悪質な退職勧奨としては、労働者の会社でのデスクを撤去したり、ひたすら無意味な作業を命じることなどがあります(例えば、毎日新聞の切り抜きのみをさせる、社用の封筒のラベル貼りを長時間させるなど)。

退職勧奨されても未払い残業代の請求はできる

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代請求は労働者の正当な権利である
  • 残業代請求権も2年以上放置すると消滅してしまうことがある

退職勧奨された場合には、残業代の請求はできないのでしょうか。会社に残業代の支払いについて聞いたところ、「いままでそんなことを切り出した人間はいない」などと言われ、まったく取り付く島もありませんでした。

退職勧奨されたか否かで、残業代の請求ができるかどうかが左右されるわけではありません。しかしながら、残業代請求には、今のところ2年の消滅時効があるため(労基法115条)、2年以上前の残業代に関しては、請求できない場合があります。

退職勧奨された場合、きれいに退職したいといった想いは、大変立派かもしれません。しかし、こうした感情と、法的に請求が可能な残業代の請求権を行使できるかどうかは別の問題です。

したがいまして、退職勧奨を受けて、上司からどのような説明を受けようとも、事実として時間外労働(残業)をしたのであれば、正当にその超過賃金を請求することができます。

しかしながら、これとは別の話として、残業代請求権にも時効期間(権利が消滅してしまう法的な期間)があるため、未払いの残業代がある場合には、出来る限り早く請求すると良いでしょう。残業代の請求に関して、不明な点がある場合には、弁護士に相談してみると良いでしょう。

退職勧奨の証拠と、残業の証拠を集める

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 退職勧奨の事実や残業の事実確認のために証拠を収集する
  • 証拠は自分の手帳に記載した記録でも有効と評価される場合がある

会社から、肩たたきを受けた場合や、残業代を請求したい場合には、どうすれば良いのでしょうか。

退職勧奨が悪質かどうかにより、対応の方法が異なるので、まずは、どのように肩たたきされたかに関する証拠を残しておきましょう。また、同様に勤務記録についても、残業代請求のために同様に証拠を残すと良いでしょう。

会社の退職勧奨が悪質かどうか、どのような退職勧奨であったかについて、法的に判断するためには、証拠の収集が必要です。したがいまして、退職勧奨の記録をスマホのアプリなどの録音機能を利用して記録することや、書退職勧奨の証拠と、残業の証拠を集める面で提示された場合には、捨てずに保管するようにしましょう。

また、残業の証拠収集のためにも、タイムカードがあれば、その記録を写真に残したり、メールの記録や、日報の記録などを独自にコピーをとるなどして、証拠を集めると良いでしょう。このほかにも、判例によっては、自分の手帳などに記録した勤務記録を証拠として採用された場合などもある(東京地裁判決 平成29年9月26日 事件番号平27(ワ)476号)ため、手帳などに記録する方法も有効です(残業の証拠収集方法については「未払い残業代請求のための証拠の集め方」を参考にしてみてください。)。

退職勧奨に耐え切れなかったら

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 退職勧奨で退職を強要する場合には違法となる場合がある
  • 違法な退職勧奨の場合には損害賠償の請求ができる

会社から、何度も繰り返し、退職勧奨を受けています。この間も、上司に呼び出されて、今後どのようにするのかについて、聞かれ、暗に会社をやめるように圧力をかけられてしまいました。

ここまで説明してきたとおり、退職勧奨自体は、労働者に自分から辞めるように促すことであり、違法ではない場合があります。しかし、悪質な場合は、損害賠償の請求ができる場合があります。

相談者さんのように、執拗に、退職勧奨が繰り返されて、労働者に心理的に圧力を加え、退職を強要する場合には、違法な権利侵害として不法行為となる可能性があります(下関商業高校事件・山口地方裁判所下関支部判決昭和49年9月28日、同事件最高裁判所判決昭和55年7月10日 労判345号20頁)。また、このような場合には、不法行為となるため、損害賠償の請求ができます。

退職形成に耐えられないのであれば、また、損害賠償請求をしたい場合には、弁護士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ご自身が退職勧奨にあった場合に備えて、または、すでに退職勧奨にあっている場合に、この記事が役に立てば幸いです。どうしても、困った場合には、弁護士に相談してみると良いかもしれません(弁護士をお探しの方は「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」も参考になると思います。)。