固定残業代はどういうものなのか正しく理解して残業代請求に必要な知識を獲得しましょう。
ざっくりポイント
  • 固定残業代が支払われていたとしても、残業代請求できる場合がある。

目次

【Cross Talk 】固定残業代はどんなに長時間残業をしても定額なの?

ここのところとても忙しく、数か月にわたり残業時間が月60時間を超えていました。
ただ、給与は全く変わらないので会社に対し残業代は支払われないのかを確認したところ、「固定残業代」として一定金額を支給しているため、他に残業代は支払わないといわれました。納得するしかないのでしょうか?

必ずしもそうとは限りません。固定残業代については、会社側が都合の良いように解釈しているケースが多く見受けられますので注意が必要です。
会社が固定残業代を支払っていたとしても、そもそもその固定残業代が有効なのか検討が必要です。また、従業員が固定残業代に相応する時間を超過した労働を行った場合には、会社は、超過した時間分の残業代を支払わなければなりません(労働基準法37条)。

そうだったのですね。固定残業代についてよく知りませんでした。詳しく教えてください。

会社から、固定残業代を支給しているので、残業代を支払う必要はないといわれたが、納得いかない。

固定残業代とは、文字通り定額の残業代をいい、基本給とは区別されます。従業員が会社に対し、残業代請求をした場合、会社は、この固定残業代を支払っているから、他に残業代は発生しないと反論してくることがよくありますが、必ずしも、この反論が正しいわけではありません。本コラムで、解説していきます。

固定残業代(みなし残業)って何?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • ・固定残業代は会社側も労働者側にもメリットがある制度
  • ・固定残業代は残業の有無にかかわらず支給される定額の手当
  • ・固定残業代は見合った残業時間分の残業代であり、その残業時間分を超えた残業に対しては、新たに残業代が発生する

会社から、「うちは固定残業代を支給している」と説明を受けましたが、固定残業代とは何なのでしょうか。

固定残業代とは、定額の残業代を指しますが、その背景や実態について説明しましょう。

そもそも、会社は従業員の勤務時間を管理しなければならないのですが、恒常的に残業が発生しているような会社が、従業員一人一人の勤務時間(残業含む)や残業代を管理することは、とても煩雑でコストのかかるものです。

そこで、会社は、勤務時間(残業含む)管理、及び、残業代計算にかかるコストを削減するため、従業員に対し、一定時間残業したこととして、定額の残業代、つまり、固定残業代を支払うことを考えたのです。

固定残業代については、一見、会社の都合で勝手に決められ、従業員にメリットがないようにも見えますが、従業員にも一定のメリットがあります。

固定残業代は、当該固定残業代に見合った残業時間分の残業代として支払われるものですが、必ずしも、毎月毎月、固定残業代に見合った残業時間分残業が発生するわけではありません。では、残業しなかった月は固定残業代が支給されないかというと、残業しなかった月でも、残業したとみなされ、固定残業代が支給されるのです(ここから「みなし残業手当」といわれたりもします。)。これは、従業員にとって、早く仕事を終わらせられれば、残業をしなくても給与が増えることを意味し、モチベーションの向上にもつながります。
しかしながら、固定残業代を支払っていれば、他に残業代を支払う必要がないと勘違いしてしまう会社や従業員が多くいることが実情です。固定残業代とは、当該固定残業代に見合った残業時間分の残業代であり、その残業時間を超えた残業に対しては、会社は従業員に対し、別途残業代を支払わなければならないのです。

残業代の計算方法について知りたい方は「みなし残業制(固定残業制)で月30時間・40時間・50時間の場合の残業代計算方法」をご覧ください。

固定残業代(みなし残業)が認められる要件

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 固定労働代が有効となるためには、要件がある。

固定残業代は、会社がそうだといえば認められてしまうものなのでしょうか。

固定残業代の有効性が争われた場合、有効と認められるためには、そもそも2つの要件を満たしている必要があります。

労働者への明示

労働者の割増賃金請求権は、一般的に労働基準法上厚く保護されています。それは固定残業代も同じことで、固定残業代を割増賃金の算定基礎から控除するため(固定残業代が有効といえるため)には、労働者が、支給額について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金部分とを区別できること(最判平成6年6月13日裁判集民172号63頁)が必要です。つまり、使用者は、雇用契約書、給与明細、就業規則等で、労働者の残業時間数や各手当が何時間分の残業代として支給されているものなのかを、明示しなければなりません。

残業時間の制限

たとえば、月の残業時間120時間分を固定残業代として支払うという雇用条件は有効といえるでしょうか?月の残業時間120時間は、厚生労働省の労災認定基準である過労死基準を上回る時間であり、このような不相当な残業時間分の固定残業代を支払うという雇用条件は無効とされる場合があります。

まとめ

「固定残業代をもらっている場合でも残業代の請求はできるのでしょうか。」とご質問をいただく事がございます。こちらについては、会社は固定残業代を支給していることを理由に残業代の請求を拒むことがあります。しかし、①固定残業代に相応した時間を超える残業をしている場合、②固定残業代の要件を満たしていない場合には、残業代請求が可能です。もっとも、こうした判断は法的な視点が必要となってくるので、法律の専門家である弁護士に、まずは相談することをお勧めします(弁護士の探し方については、「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」を参考にしてみてください。)。