能力不足だから残業代は出せない、と言われた場合にどう対処すべきかを解説いたします
ざっくりポイント
  • 会社の指示で労働者が残業した場合会社は原則として残業代を支払わなければならない
  • 能力不足を理由残業代を支払わなくて良い、とする法規定はない
  • 残業代の未払いは労働基準監督署に通告する、会社に残業代を請求するなどの方法がある

目次

【Cross Talk 】能力不足を理由に残業代を支払ってもらえない場合はどうすればいい?

能力不足だから残業代は出せない、と会社に言われてしまいました。会社の指示で残業をしたのに、こんなことが許されるのでしょうか?

能力不足を理由に残業代を出さなくて良いとする法令はないので、会社は原則として残業代を支払わなければなりません。

能力不足を理由に残業代を未払いにすることはできないんですね。未払いの残業代の対処法についても教えてください!

能力不足を理由に残業代を未払いにはできない

会社の指示で残業をした場合は、残業をした時間について所定の残業代が支払われるのが通常です。
ところが、会社によっては「そもそも能力不足だから仕事が終わらずに、残業をしなければならなかっただけだ。残業代を支払うことはできない」などと主張する場合があります。
しかし、会社の指示によって残業をした場合に、能力不足を理由に残業代を支払わなくて良いとする法令はありません。
そこで、能力不足を理由に残業代が支払われなかった場合の処理について解説いたします。

残業代はどのような場合に出さなければならないか

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 会社の指示に基づいて労働者が残業をした場合、会社は原則として残業代を支払われなければならない
  • 能力不足を理由に残業代を支払われなくて良い、という法令はない

能力不足を理由に残業代を支払ってもらえませんでした。これは法的に認められるのですか?

会社の指示に基づいて労働者が残業をした場合、会社は原則として残業代を支払わなければなりません。なお、能力不足を理由に残業代を支払わなくて良い、とする法令はありません。

残業代は給与である

給与とは、労働の対価として会社から支払われる金員などをあわせたものです。一般に給与に含まれるのは、基本給・賞与・住宅手当などがあり、残業代も給与に含まれます。
すなわち、残業代は労働者が労働の対価として受け取るべき正当な対価である、といえます。

時間外労働をさせると給与を支払わなければならない

いわゆる残業とは、一般に法定時間外労働のことを指します。法定時間外労働とは、法が定める労働時間を超えて働いた場合のことです。

会社(使用者)が労働者に残業をさせた場合、会社は労働者に対して残業代(割増賃金)を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。
法が定める例外などを除いて、法定時間外労働のルールの原則は、「1日8時間、週40時間を超えて労働すること」です。

例えば、ある会社員が会社の指示に基づいて1日11時間・週に合計55時間労働した場合、会社は原則として、法定時間外労働にあたる15時間分について、残業代を支払われなければなりません。

能力不足を理由に残業代を出さなくて良いとする法律はない

能力不足を理由に残業代を出さなくても良い、とする法令の規定はありません。
給与にあらかじめ一定の残業代を含めるとする、固定残業代などの特別な制度を採用している場合をのぞいて、原則として残業代は支払われる必要があります。
会社が残業を命じたにもかかわらず、能力不足を理由に残業代を支払わない場合は、未払いの残業代を請求する権利があるのです。

能力不足を理由に残業代を出してもらえない場合の対処方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 会社で働いている間は労働基準監督署に通告、退職後は会社に残業代を請求
  • 残業代を請求するには、残業代の未払いを証明する証拠が重要

能力不足を理由に支払われなかった残業代について、どのような対処法がありますか?

会社に勤務している間は、労働基準監督署に通告すると事態が改善する可能性があります。退職後は会社に対して未払いの残業代を請求します。いずれにせよ、残業代の未払いを証明するための証拠が重要です。

働いている間は労働基準監督署に通報を

会社で働いている間は、残業代の未払いについて労働基準監督署に通報する方法があります。
労働基準監督署とは、企業が労働関係の法規をきちんと遵守しているかの確認などを主な業務とする、国の機関です。

能力不足だから残業代を出さないなどの不当な理由で、会社が残業代の未払いをしている場合は、労働基準監督署に通報すれば、会社に対して是正勧告などの必要な措置を取ってくれる場合があります。
ただし、労働基準監督署が残業代の未払いについて対応できるのは、会社に改善を促すなどの間接的な措置です。

未払いの残業代を会社から強制的に徴収して支払ってもらうなど、直接的な措置ができるわけではありません。
また、労働基準監督署には日々多くの相談や通報が寄せられるため、常に十分な対応ができるとは限らないのがデメリットです。

労働基準監督署に迅速に動いてもらうには、未払いの残業代があることを客観的に証明できるような証拠があることが重要です。

退職後は残業代請求を行う

会社を退職した後は、会社に対して残業代を請求して支払ってもらうことを検討しましょう。
残業代を請求する方法としては、まずは自分自身で会社と直接交渉して支払ってもらうことが考えられます。
会社と交渉した結果、もし残業代をきちんと支払ってもらえれば、専門家に相談する費用や、裁判などの法的な手続きをする手間などを省くことができるのがメリットです。

デメリットは、会社と交渉をしたとしても、必ずしも会社がきちんと支払ってくれるとは限りません。もう退職したのだからどうでもいいと考えて、会社がきちんと対応しない可能性があるからです。
自分で会社と交渉するだけでなく、労働問題に詳しい弁護士に依頼して、会社と交渉してもらう方法もあります。

弁護士に依頼すると一般に成功報酬などの費用がかかりますが、自分で会社と交渉する負担がなくなる、会社が危機を感じて交渉に応じる可能性がある、会社に対して法的に適切な主張ができる、などのメリットがあります。
会社が交渉に応じない場合は、未払いの残業代を請求するために裁判をするなどの法的措置を検討する必要がありますが、弁護士に依頼すると、法的な手続きをスムーズに進めやすくなるのもメリットです。

証拠を確実に掴もう

会社に未払いの残業代を請求するには、未払いの残業代が存在することを証明するための証拠があるかどうかが、重要なポイントになります。

もし残業代の証拠がなければ、会社にいくら請求したとしても、「残業したことを証明できないのだから、支払うことはできない」と突っぱねられてしまう可能性が高くなります。
また、裁判や労働審判などの法的な手続で残業代を請求する場合も、裁判官などの第三者に未払いの残業代について認めてもらえるように、客観的な証拠があることが非常に重要です。

未払いの残業代を請求するための一般的な証拠としては、労働契約書・就業規則・タイムカード・業務日報・残業を指示する書面やメールなどがあります。
手持ちの証拠が十分でない場合などは、労働問題に詳しい弁護士に相談することで、適切な証拠を集める方法の検討などが期待できます。

まとめ

能力不足を理由に、残業代を支払わなくて良いとする法令はありません。
会社の指示に基づいて、労働者が法定時間外労働をした場合は、会社は原則として残業代をきちんと支払う必要があるのです。
能力不足を理由にして、会社が不当に残業代を支払わない場合は、労働基準監督署に通報すると、会社が是正勧告を受けて事態が改善する可能性があります。
会社を退職した場合は、未払いの残業代を会社に請求することを検討しましょう。
会社と直接交渉したり、裁判所の法的手続きを利用したりなどの方法があるので、証拠集めも含めて、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。