残業代の基本的な計算方法や、基礎賃金と基本給の違いについて解説いたします
ざっくりポイント
  • 残業代の基本的な計算方法は「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」
  • 基礎賃金は、基本給に各種手当(例外を除く)を加えた1時間あたりの賃金のこと
  • 割増率は、残業した時間帯などによって最低限の基準が法定されている

目次

【Cross Talk 】残業代はどうやって計算すればいいの?

残業代の計算をしたいのですが、計算方法がわかりません。基本給を用いればいいのでしょうか?

残業代の基本的な計算方法は、「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」です。基本給はあくまで基礎賃金を算定する際に用いる一部なので注意しましょう。

残業代の計算には基礎賃金が重要なんですね。残業時間や割増率についても教えて下さい!

基本給から計算するのは間違い?残業代の基本的な計算方法を解説

残業代をどれくらい貰えるのか、自分で計算ができると便利です。
ところが、残業代を計算するための金額として、基本給・基礎賃金・手取りなどのさまざまな用語があるので、どれを使って計算すればいいのか迷いがちです。

そこで今回は、残業代の基本的な計算方法について解説いたします。

基本給とは

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 基本給とは、各種手当や残業代を含まないベースとなる金額
  • 基本給は残業代の計算に用いる「基礎賃金」の一部にあたる

残業代の計算をしたいのですが、基本給や手取りなど、似たような用語が多いのでよくわかりません。

基本給とは、各種手当や残業代を含まないベースとなる金額です。基本給に各種手当や残業代などを加え、保険料や税金などを差し引いた金額が手取りです。

基本給とは、各種手当や残業代などを含まない、ベースとなる金額のことです。
基本給に各種手当や残業代などを加えた金額を、支給額といいます。支給額は一般に給与と呼ばれるものです。支給額から保険料や税金などを控除した金額が、一般に手取りと呼ばれます。

基本給は、残業代を計算する際に用いる「基礎賃金」に含まれるので、基本給の金額が少ないと残業代も少なくなる傾向にあります。
ただし、基本給ではない各種手当も基礎賃金に含まれるものもあるので、基本給が低くても各種手当の金額が多ければ、その分だけ残業代は多くなりやすいです。

残業代の計算方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 残業代の基本的な計算方法は、「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」
  • 基礎賃金とは、基本給に各種手当(例外を除く)を加えた、1時間あたりの賃金

残業代を計算してみたいのですが、どうやって計算すればいいですか?

残業代の基本的な計算方法は、「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」です。基礎賃金は、基本給に例外を除く各種手当を加えた上での1時間あたりの賃金です。

残業代は基礎賃金×残業時間×割増率

残業代の基本的な計算方法は、「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」です。

計算に用いる3種類の項目の概要は、以下の通りです。

・基礎賃金:基本給に各種手当(例外を除く)を加えた上での1時間あたりの賃金
・残業時間:法定労働時間を超えて労働をした時間(原則)
・割増率:通常の労働に比べて賃金が割増される割合

例えば、1時間あたりの基礎賃金が1,000円、1ヶ月の残業時間が40時間、割増率が1.25倍の場合で見てみましょう。
1,000 × 40 × 1.25 = 50,000なので、残業代は5万円です。
以下、残業代の計算に用いる3種類の項目について、詳しく解説していきます。

基礎賃金の計算方法

基礎賃金とは、基本給に各種手当(一部を除く)を加えた、1時間あたりの賃金額です。
月給制の場合は、1ヶ月あたりの賃金額を1ヶ月の所定労働時間で割ることで、1時間あたりの賃金額(基礎賃金)を計算します。

例えば、基本給が月35万円・各種手当が月5万円・1ヶ月の所定労働時間が160時間のケースで考えてみましょう。手当が全て基礎賃金に含まれるとすると、1ヶ月あたりの賃金額は40万円です。

40万円を1ヶ月の所定労働時間の160時間で割ると、1時間あたりの賃金額(基礎賃金)が2500円となります。

諸手当のうち、以下のものは原則として基礎賃金に算入しないと法律で定められています(労働基準法第37条第5項、同法規則21条)。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

ただし、上記の名称の手当であっても、必ず基礎賃金に算入しないわけではありません。家族の人数に関係なく一律で支給される家族手当など、基礎賃金に算入すべきケースもあります。

残業時間の計算

残業時間とは、原則的に、法定労働時間を超えて労働をした時間をいいます
法定労働時間は、原則として1日8時間、1週間40時間と定められています(労働基準法32条1項)。

ただし、労働形態によっては残業時間の計算が原則とは異なる場合があります。代表例は変形労働時間制です。

変形労働時間制とは、一定の期間内で労働時間を柔軟に調整し、一時的に勤務時間が増加しても時間外労働としての取扱いを不要とする制度です。忙しい時期には1日10時間労働させ、閑散期には1日6時間に減らすなどの調整ができます。

変形労働時間制で残業をした場合、残業代として割増賃金が発生するかの基準の一部は以下のようになります。

・1日8時間を超えた所定労働時間が定められている日の場合:所定労働時間(1日10時間労働するなど)を超えて労働した時間のみ
・1日8時間以内の所定労働時間が定められている日の場合:8時間を超えて労働した時間のみ

例えば、変形労働時間制で所定労働時間が1日10時間と定められている日において、合計11時間労働をした場合、残業代として割増賃金の対象になるのは1時間のみです。
また、所定労働時間が1日6時間と定められている日において、合計7時間労働をした場合、8時間を超えていないので割増賃金の対象にはなりません。

割増率の概要

割増率とは、残業によって本来の賃金よりもどのくらい割増されるかを表すものです。
例えば、時給換算で1,000円の基礎賃金において、割増率が1.25倍で1時間の残業をした場合、支払われるべき残業代は1,250円です。  

                          

適用される割増率は、残業をした時間帯、休日か否かなどの条件によって異なります。
なお、割増率はあくまで法定されている最低限の基準です。法定されている割増率を下回ることは法律に違反しますが、法定されている以上の割増率で残業代を支払うことは差し支えありません。

残業代の計算において適用されることが多い主な割増率(原則)は、以下の通りです。

・時間外労働をした場合:1.25倍
・時間外労働で月60時間を超えた部分:1.5倍
・本来は休日の日に労働した場合(休日労働):1.35倍
・深夜(午後10時から翌日午前5時の間)に労働した場合(深夜労働):1.25倍を上記に加算

例えば、休日の深夜に残業をした場合の割増率は、休日労働の1.35倍に深夜労働の1.25倍が加算され、1.6倍になります。

まとめ

このページでは、残業代の基本的な計算方法や、基礎賃金と基本給の違いについて解説いたしました。
残業代の基本的な計算方法は、「基礎賃金 × 残業時間 × 割増率」です。
残業代の計算に用いるのは基本給ではなく、基本給に各種手当(例外を除く)を加えて1時間あたりの賃金を算出した基礎賃金です。
残業時間や割増率など、残業代を計算するには正確な数値を把握していることが重要なので、弁護士などの専門家に計算してもらうのもおすすめです。

この記事の監修者

弁護士 鈴木 奏子第二東京弁護士会
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