歩合制における残業代の考え方と計算方法を詳しく説明します。
ざっくりポイント
  • 休憩時間は実労働時間や残業時間を算出するのに欠かせない
  • 労基法が定める休憩時間は「ゼロ45分以上60分以上」の3パターン
  • 途中付与一斉利用自由利用」の3原則に違反すると刑事罰の対象となる
 
目次

【Cross Talk】休憩時間にも法律の規制はある

先生、今の職場の休憩時間なんですが、本当は1時間休んでいいはずなのに、「アルバイトの身分できっちり休憩取るなんてぜいたく!10分くらい早めに切り上げて仕事に戻れ!!」と先輩にせかされるんです。

先輩のような考え方は明らかに労働基準法に違反しています。それが上司の指示であれば会社ぐるみで休憩時間を搾取していることになり、刑事罰が科される可能性もありますよ。

たかが休憩時間と思って深刻にとらえていなかったんですが……、きちんと1時間休憩させてもらえるように交渉したほうが良さそうですね!

良い仕事をするには休憩が不可欠。休憩時間と労働時間の関係を知ることで実労働時間にあたるかを考えます。

「休憩時間は賃金と同様、労働者の大切な権利です」といわれたら、あなたはどう感じますか。

休憩時間の内容は、労働基準法で細かく定められています。残業代の計算にも休憩時間の把握が欠かせません。休憩時間を適切に与えない会社には刑事罰が科されます。

「休憩」と一口にいいますが、実はとても重要な権利なのです。

この記事では、そんな休憩時間に関する基礎知識から重要判例まで網羅的に解説しています。5つの具体例をあげて「この休憩時間の与え方は適法か?」についてもチェックしているので、自分の職場の休憩時間と比較してみてください。

労基法における「休憩時間」とは

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 休憩時間を正確に把握しなければ、実労働時間も残業代の計算できない
  • 労基法が定める休憩時間は3種類ある
  • 法定労働時間を超えて残業させる場合は、残業の前に1時間の休憩を与える必要がある

休憩時間が法律で認められた権利であることを、たぶん先輩も理解していない感じなんです……。

今日は休憩時間がいかに重要な権利であるか、詳しく説明します。職場の先輩に教えてあげましょう。

休憩時間とは、労働からの解放が保障されている時間です。労働時間=使用者の指揮命令下に置かれた時間ですので、休憩時間=使用者の指揮命令を受けずに自由に休める時間だと言い換えることもできます。

休憩時間の把握は残業代計算にとっても不可欠

休憩時間を正確に把握することは残業代請求に関わってきます。始業時刻と終業時刻は「所定労働時間」を把握する目安に過ぎません。残業代計算の目安は拘束時間から休憩時間を差し引いた「実労働時間」です。休憩時間が特定できなければ、正確な実労働時間が算出できず、残業代の計算もできないということに注意しましょう。

労働法が定める休憩時間

休憩時間について定めている労基法34条をチェックしましょう。

(労基法34条1項)
使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

「少くとも」という文言から、「45分」「1時間」はあくまで必要最低限の休憩時間であることがわかります。また会社側は、労働者に法定労働時間(8時間)を超える残業をさせる場合、残業が始まる前に1時間の休憩時間を与えることが必要だと解釈されています。

労基法34条1項から、次の3種類の休憩時間があることがわかります。

<図解:休憩時間の規制>

労働時間が6時間以内労働時間が6時間以内の場合、休憩時間は不要(注1)

労働時間が6時間超~8時間以内 労働時間が6時間を1分でも超えれば、休憩時間は45分以上必要
労働時間が8時間超 労働時間が8時間を超えると、休憩時間は1時間以上必要(注2)

(注1)休憩させずに6時間連続で労働させると、労働者の集中力や作業効率の面でデメリットが多くなります。そのため、たとえ所定労働時間が6時間以内であっても、労働者に一定の休憩時間を与えている会社がほとんどです。

(注2)9時〜18時を所定労働時間とする会社の場合、18時ぴったりに全従業員を帰宅させることなどまずありません。実労働時間が8時間を超えるケースが一般的です。そのため大半の会社は、お昼に1時間の休憩を与えることになります(後記「途中付与の原則」も参照)。

休憩時間の法規制(3つの原則・罰則・特例)

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 労基法は休憩時間について「途中付与の原則」「一斉付与の原則」「自由利用の原則」という3つの原則を定めている
  • 3原則に理由なく違反すれば会社側に対して刑事罰が科される
  • ただし、炭鉱労働者には例外アリ

休憩時間の長さ以外の法律の規制はないのですか?

「休憩時間の3原則」と呼ばれる規制がありますので、確認しましょう。

労働基準法は休憩時間について3つの原則を定めています。「途中付与の原則」「一斉付与の原則」「自由利用の原則」です。

途中付与の原則

休憩時間は「労働時間の途中」に与えないといけません(労基法34条1項)。したがって、「始業と同時に休憩時間が始まる」「終業直前に休憩時間を与えて、休憩終了と同時に労働時間も終了する」といった休憩時間の与え方は違法です。

一斉付与の原則

休憩時間は全従業員に対して一斉に与えることが原則です(労基法34条2項)。ただし、この原則には2つの例外があります。

<図解:一斉付与の原則の根拠>

ケース 根拠条文
(例外1)労使協定で休憩時間の分散を取り決めた場合 労基法34条2項ただし書
(例外2)法令が認めた場合 労基法40条1項および別表第1
労基法41条各号(管理監督者など)

(例外2)は、旅客・貨物運送、銀行、郵便、病院といったサービス業について、労使協定がなくても会社側の判断で休憩時間を分散できるように法令が認めたものです。このようなサービス業では、全従業員が一斉に休憩に入ると利用者に著しい不便を与えてしまいます。そのため、労使協定を結ばなくても、「Aさんは11時から1時間、Bさんは13時から1時間」というように会社の一存で休憩時間を分散させることができます。

自由利用の原則

休憩時間をどのように使うかは労働者の自由です。これを「自由利用の原則」といいます(労基法34条3項)。したがって「休憩時間中は、各人の業務について勉強する時間や次の仕事の準備時間などにあててください」などと会社側が指示をしてしまうと、自由利用の原則に反することになります。

罰則

法定の休憩時間を与えないことは論外ですが、上記3原則に違反した場合も、労基法119条により刑事罰の対象となります。

【合わせて読む】坑内労働の特例

炭鉱やトンネルで作業をする坑内労働は、作業現場が広大だったり、人員の出入りが多かったりします。そのため、個々の労働者の労働時間や休憩時間を正確に管理することは非常に難しいのが現実です。

そこで労基法は、坑内労働については、炭鉱やトンネルに入った時刻から出た時刻までを一つの労働時間とみなすことにしました(38条2項本文)。坑内にいる時間に応じて法定の休憩時間が与えられるのはもちろんですが、その休憩時間も実労働時間にカウントされるわけです。

また、坑内労働者の作業ペースは体力や能力によって異なりますし、「喫煙禁止」「現場監督者の目の届かない場所への移動禁止」といった安全管理上の制約もたくさんあります。そのため、一斉付与の原則や自由利用の原則を会社側の一存で制限することが許されています(労基法38条2項ただし書)。

【具体例】休憩時間にあたるの?

 

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 休憩時間は分割でもOK
  • パート・アルバイトも労働者なので、休憩時間を与えないことは違法
  • 休憩中に電話番をさせることは違法
  • 夜勤の仮眠時間中に緊急時対応が義務づけられている場合は違法

法律が休憩時間について色々なルールを定めていることに驚きました!

休憩時間は賃金などと同様、労働者の大切な権利ですからね。ここまでは少し抽象的な話題が多かったですから、ここからは具体例を挙げながら休憩時間のあり方をチェックしていきましょう。

以下では、休憩時間の取り扱いが問題になりそうな5つの具体例をあげています。「労働からの解放が保障されているか?」を念頭に置きつつ、各ケースの合法・違法をチェックしてみてください。

分割して休憩時間が与えられた場合

たとえば拘束時間が8時間だった場合、労基法は45分以上の休憩時間を与えるよう義務づけています。この場合、「30分休憩1回、15分休憩1回」というように分割しても問題ありません。30分、15分と細切れであっても、労働から解放されており、途中付与の原則や一斉付与の原則にも抵触しなければ適法です。

パート・アルバイトで休憩させてもらえない場合

労基法上の「労働者」なら必ず休憩時間が必要となります。したがってパート・アルバイトであることを理由に休憩させてもらえない処遇は違法です。

ただし、すでに説明したように労働時間が6時間以内であれば、休憩時間を与えなくても違法とはなりません。パート・アルバイトは労働時間が短いケースも多いので、自分の労働時間をよく確認し、休憩時間が必要かどうかをチェックしましょう。

昼休み休憩中に電話番をさせられた場合

電話番は会社の業務ですから、昼休み休憩中に電話番をさせられることは「労働から解放されている」とは到底いえません。また「自由利用の原則」にも明らかに反します。

夜勤の仮眠時間中に対応が義務付けられている場合

たとえば、ビル管理会社の従業員が、ビルの仮眠室で一定の仮眠時間を与えられていたとします。「警報が鳴ったら、休憩時間でもすぐに対応せよ」と会社側から命じられていたなら、その仮眠時間は「労働から解放されている」とはいえませんので、休憩時間とは認められません。労基法上の「労働時間」となります。(大星ビル管理事件:最判平成14・2・28民集56巻2号361頁)

ただし、勤務体制(待機者の人数や業務量等)によっては、対応が命じられていても休憩時間として扱われる可能性があります。具体的な事案によって判断が分かれることになるでしょう。

日直手当で代替が可能

休憩時間が労基法上の「労働時間」に当たるとしても当然に賃金請求権が発生しないことから、仮眠時間ないし日直手当といった方法で代替できる可能性があります。

仮眠時間が「労働時間」にあたるとしても、当然に賃金請求権は発生しない。

仮眠時間の賃金支払いについては、労働契約の内容による。

ただし、労基法上の「労働時間」に該当する以上、通常は賃金支払いの対象となる。
(大星ビル管理事件:最判平成14・2・28民集56巻2号361頁)

例えば、時給が1,500円のビル管理従業員が仮眠時間の賃金を請求しようとする場合、当然には、時給1,500円を請求できないということです。仮眠時間は、確かに「労働時間」ですが、労働内容として、仮眠できるし、何もなければ実質労働しないわけですから、この点を考慮して、仮眠時間ないし日直手当などで代替できるということです(例えば、仮眠時間5時間=2,000円)

深夜手当、時間外労働の労基法の適用はあります。

仮眠時間について詳しく知りたい方は、「仮眠時間、移動時間は労働時間・残業の計算に含まれる?」を参考にしてみてください。

まとめ

「休憩時間が少ないくらいで、いきなり自分の顔と名前を出して会社側と争うのは、なんだか大げさで気が引ける……」そう感じる方もいるかもしれませんね。
そんなときは労働基準監督署に相談してみましょう。自分の匿名性を保ちつつ会社側に処遇改善を求めることが可能です。それでも会社側がごねるような場合は、弁護士に依頼するほうが解決も早まります。
たかが休憩、されど休憩です。休憩時間は労働者にとって大切な権利であることを正々堂々と主張してください。
休憩時間に関連するものとして、「「残業」とは?残業の種類と定義について」や「残業代計算に必要な「月平均所定労働時間数」とは?算出(計算)方法も解説」があるので、そちらも参考にしてみてください。

この記事の監修者

弁護士 水本 佑冬
弁護士 水本 佑冬第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 消費者委員会幹事
一つひとつの案件が、ご依頼者さまにとって重大な問題であることを忘れずに、誠実に職務に取り組みます。