契約社員の残業代請求について詳しく説明します!
ざっくりポイント
  • 契約社員でも残業代を請求できる
  • 時間外、深夜、休日などの割増率を理解して残業代を計算する
  • 会社との交渉がうまくいかない場合は労基署への相談や裁判を検討する

目次

【Cross Talk】契約社員は正社員と同じ仕事をしていても残業代を請求できない?

契約社員は正社員と同じ仕事をしていても残業代を請求できない?

そんなことはありません。契約社員でも残業代を請求することができます。残業代の計算方法と請求方法を解説するので、ご自分の残業代がどのぐらいになるのか計算してみてください。

請求できるんですね!自分が働いた分ですから、絶対に払ってほしいです。詳しく教えてください!

契約社員が残業代を請求するにはどうすればいい?

契約社員のような非正規の社員は、正社員と同じ仕事をしても待遇に差をつけられることがあります。たとえば、正社員と同じように残業をしたにもかかわらず、正社員には支払われる残業代が、契約社員には支払われないということがあります。
しかし、残業代の請求は労働者の当然の権利であり、契約社員であっても残業代を請求することができます。
そこで今回は、契約社員が残業代を請求できる根拠や残業代の計算方法、残業代を請求する方法などについて解説します。

契約社員は残業代が出ないのか?

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 契約社員とは期間を定めた労働契約に基づく労働者のことをいう
  • 契約社員も残業代を請求できる

契約社員でも残業代を請求できるというのは本当ですか?何か根拠があるのですか?

残業代について定める労働基準法の規定は、雇用形態による区別をしていません。そのため、正社員以外の契約社員、アルバイトやパートであっても、残業をした場合は残業代を請求することができます。

契約社員とはどういった雇用形態

契約社員とは、使用者との間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約といいます)を結んだ労働者のことをいいます。

契約期間は、原則として3年以内にしなければならず(労働基準法14条)、3年を超える期間を定めても無効になります(同法13条)。
契約で定めた期間が満了した場合、契約を更新することも可能ですが、通算して5年を超える反復更新をした場合、労働者の申し込みによって期間の定めのない労働契約(無期労働契約といいます)に転換することができます(労働契約法18条)。

契約社員でも残業代は出る!

残業代に関する労働基準法の規定は、雇用形態による区別を設けていません。
したがって、正規、非正規にかかわらず、残業代に関する労働基準法の規定が適用されることになるので、契約社員であっても、実際に残業をした場合は、残業代を請求することができるのです。

残業代の計算方法を理解しましょう

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 法内残業は割増なし
  • 法外残業は原則25%の割増賃金が必要になる

契約社員でも残業代を請求できることはわかりましたが、残業代は具体的にはどうやって計算すればいいのですか?

残業代の計算にあたっては、労基法で定める範囲の残業(法内残業)と労基法の範囲を超える残業(法外残業)を区別することが重要です。両者で計算方法が異なり、後者については原則として25%の割増賃金を支払わなければならないからです。

法定時間内労働

労働基準法は、使用者は、労働者に、休憩時間を除いて1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないとしています(労基法32条)。
労働契約においてこの労基法の制限を下回る労働時間を定めていた場合に、契約で定める労働時間を超えて労基法の制限の範囲内で労働することを、法定時間内労働(法内残業)といいます。

たとえば、労働契約において、労働時間が午前9時から午後5時まで、休憩1時間と定められていた場合(休憩時間をのぞいて労働時間は1日7時間になります)に、午後6時まで労働したとすると、労働契約を超えて労働したことになりますが、休憩を除いた労働時間は8時間ちょうどで、労基法の定める1日8時間を超えないので、法内残業になります。

法内残業も、労働契約で定められた労働時価を超えて労働したことになりますから、1時間あたりの給料(基礎賃金)に法内残業の労働時間をかけた算出した残業代を請求することができます。

残業代=法内残業の労働時間数×1時間あたりの給料(基礎賃金)

法定時間外労働

労基法の1日8時間、1週40時間を超えて労働することを、法定時間外労働(法外残業)といいます。たとえば、労働時間が午前9時から午後5時まで、休憩1時間と定められていた場合に、午後8時まで働いたとすると、午後5時から午後6時までは法内残業、午後6時から午後8時までは法外残業ということになります。

法外残業については、原則として25%の割増賃金を支払わなければなりません(労基法37条)。
したがって、法外残業の残業代は、次の計算式により算出することになります。

残業代=法外残業の時間数×1時間あたりの給料(基礎賃金)×1.25

割増賃金の算出方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 時間外労働、深夜労働は1.25倍の割増賃金になる
  • 休日労働は1.35倍の割増賃金になる
  • 時間外+深夜は1.5倍、休日+深夜は1.6倍の割増賃金になる

法外残業は割増賃金がもらえるんですね。ほかにも割増賃金がもらえる機会はありますか?

午後10時から午前5時までの間の深夜労働は25%、週1回の休日(法定休日)に労働させた場合は35%の割増賃金を支払わなければなりません。また、深夜に法外残業した場合など、これらの組み合わせによってさらに割増率が上がる場合もあります。

「法定時間外労働」で解説した法外残業のように、割増賃金が発生する場合の残業代は、別途算出方法があります。下記の労働ごとに具体的な割増率を解説します。
(図で知りたい方は「【図解】残業代の計算に必要な時間単価の「割増率」とは?をご参照ください)

時間外労働

「法定時間外労働」で解説したとおり、時間外労働の割増率は、原則として25%です(労基法37条1項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。つまり残業代は、1時間あたりの給料(基礎賃金)の1.25倍ということになります。

ただし、時間外労働が1ヶ月60時間を超える場合、60時間を超過した部分については、割増率は50%となります。
なお、この規定は中小企業には適用されないこととされていましたが、働き方改革に関連する法改正によって、上記の優遇措置が廃止されることになったので、2023年4月1日以降は上記の割増率が中小企業にも適用されることになります。

深夜労働

午後10時から午前5時までに労働させた場合、割増率は25%です(労基法37条4項)。
この時間帯の労働を、深夜労働といいます。

休日労働

使用者は、労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないとされています(労基法35条1項)。
この週に1回の休日を法定休日といい、法定休日に労働させることを休日労働といいます。

休日労働の割増率は、35%です(労基法37条1項、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限を定める政令)。

その他の場合

時間外労働+深夜労働の場合

時間外労働が深夜に及んだ場合、たとえば、労働時間が午前9時から午後5時まで、休憩1時間と定められていた場合に、午前9時から翌日の午前0時まで労働したとすると、午後10時から午前0時までの2時間は、時間外労働であり、かつ深夜労働になります。

この場合の残業代は、時間外労働の割増率25%に深夜労働の割増率25%を加算した合計50%の割増率で計算することになります(1ヶ月60時間超の時間外労働の規定が適用される場合、割増率は50%+25%の75%となります)。

時間外労働+休日労働

たとえば、法定休日に午前9時から午後7時まで労働した場合(休憩は1時間とする)のように、1日8時間を超えて労働した場合でも、割増率は休日労働の35%のままとされています。

休日労働+深夜労働

法定休日の深夜に労働した場合、割増率は休日労働の割増率35%に深夜労働の割増率25%を加算した60%になります。

残業代が出ない場合の対処方法

知っておきたい残業代請求のポイント
  • まずは会社と直接交渉
  • 交渉がうまくいかなければ労働基準監督所に相談を
  • 最終的には裁判所の手続を利用することになる

残業代の計算方法もだいたいわかりました。ただ、会社が簡単に支払ってくれるとは思えません。残業代が計算出来たら、どうやって支払ってもらえばいいですか?

まずは会社と交渉するのが一般的でしょう。
ただ、交渉がつねにうまくいくとは限りません。交渉がうまくいかないときは、労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。
それでもうまくいかないときは、労働審判・訴訟といった裁判所の手続を利用して、強制的に残業代を支払わせることになります。

会社や雇用主が残業代を正当に支払わない場合の対処法を解説します。
契約社員だからといって残業代が出ないことは違法です。

会社に残業代を請求

これまで解説してきたとおり、契約社員であっても残業代は請求できるのであり、残業代が出ないことは違法であると言えます。

残業代の請求は、まずは会社や雇用主と直接交渉するのが一般的でしょう。
直接交渉する場合、タイムカードやシフト表など残業代に関する証拠を収集したうえで、残業代の支払いについての交渉を申し入れます。

自分で交渉をすれば費用がかからないというメリットがありますが、専門家である弁護士に任せた方がスムーズにいきやすいといえるでしょう。
詳細については「残業代請求を弁護士に依頼(相談)するメリット」をご参照ください。)

ただし、交渉はあくまで任意に行うものですから、双方に解決意思がない場合、交渉での解決は困難になります。とくに、会社・雇用主は、残業代の支払いに応じた場合に他の従業員から同様の請求を受けることをおそれ、簡単には支払わないことが多いでしょう。

労働基準監督署に相談

会社や雇用主との交渉ができない場合、交渉がうまくいかない場合は、労働基準監督署に相談するという選択肢もあります。

労働基準監督署から会社や雇用主に対し、残業代を支払うよう指導、勧告してもらうことで、会社や雇用主が残業代の支払いに応じる可能性があります。

裁判所に訴えをおこす

労働基準監督署の指導・勧告には、直接的な強制力(会社や雇用主の財産を取り上げて労働者に残業代を支払わせるような効力)はありません。

そのため、直接交渉や労働基準監督署への相談では解決しなかった場合、強制力のある裁判所の訴訟手続を利用することが必要になります。

訴訟においては、裁判官が、証拠に基づいて残業代を請求することができる権利の存否・範囲を判断します。
残業代を請求する労働者の側が、残業代を請求することのできる権利があることを証明しなければならないとされているので、客観的な資料集めが重要になります。

なお、裁判所における訴訟は厳格な手続で、相応の時間がかかってしまいます。
そこで、残業代の支払いなど労働問題に関しては、原則として3回以内の期日で審理し、迅速かつ事案に即した解決を図る労働審判という制度が用意されています。

まとめ

契約社員であっても、残業をした場合は残業代を請求することができます。残業代が出ないことは違法ですから、会社に遠慮することなく、しっかりと請求しましょう。また、裁判などの請求方法を検討するには、ご自身の残業代がいくらかを把握することが重要です。ご自身の残業代をより詳しく知りたい方には、専門家である弁護士に相談し、残業代を計算してもらうことをお勧めします。