年間休日の日数の最低ラインを知りましょう。
ざっくりポイント
  • 「年間休日」とは、法律などにより明確な定義があるわけではない
  • 極端に年間休日の日数が少ない会社は労基法32条、35条違反の可能性がある。

目次

【Cross Talk】年間休日ってどのくらいあるものなのでしょうか。

私の会社は年間休日が周囲と比べて少ないといわれています。年間休日は、一般的にはどのくらいあるのが平均なのでしょうか。

年間休日とは、法的にその概念が定められているものではありません。また、業種などにより事情は異なることから、一概に特定の日数が平均的な休日日数だとお示しすることは、難しいと思います。
しかしながら、極端に年間休日が少ない場合には、労基法32条、35条などの規定により 、違法となる可能性があります。

なるほど、年間休日とは、法律などに定義があるわけではないのですね。

年間休日の平均はどのくらいなのでしょうか。もしも、年間休日が平均より大幅に下回るならば、転職を検討しても良いかもしれません。

求人広告を見ていると、年間休日に関する記載のある企業が多いことでしょう。2018年7月6日に「働き方改革関連法」が成立し、政府が旗振り役となって、一般にも大きく「働き方改革」について関心が高まっています。就職活動の学生に意見をきくと、年間休日の少ない企業は、敬遠されるようになりつつあるようです。あなたの会社はブラックなのかどうか。年間休日の平均をご紹介することでその指標を提供しようと思います。

【Cross Talk】年間休日の平均

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 会社の規模ごと、業種ごとに年間休日の平均は異なる。
  • 会社の規模が大きいほど、年間休日は多くなる傾向がある。
  • 宿泊業、飲食サービス業が全業種のなかで最も年間休日が少ない傾向がある。

年間休日の平均とはどのくらいなのでしょうか。業界ごとにことなるものなのでしょうか。

ご理解のとおり、業界や業種などの事情により、年間休日の平均は異なります。近年の傾向としては、日本の観光政策が奏功していることから、海外の観光客が増加していますが、これに伴い、宿泊業、飲食サービス業は、年間休日の平均が少ない傾向があります。また、2020年にオリンピックがあることなどの影響から、あちらこちらで建設ラッシュを迎えていますが、この影響から、建設業も同様に年間休日が少なく、また、昨今問題となっている運輸なども同様の傾向が見られます。

年間休日って

年間休日とは、会社が労働者と契約をする際に、契約書または就業規則などの規定により、定められた、年間の休日の日数のことを指します。とくに法律上の定義はありませんが、一般的な定義としては、1年を365日とし、ここから、企業が定めた所定労働日数を控除した日を「年間休日」と呼んでいます。

年間休日の平均

年間休日の平均を厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」から読み解いて行きます。
まず規模ごとの平均について記載します。

※「1企業平均年間休日総数」=平成29年の1年間で、企業においてもっとも多くの労働者に適用される年間休日日数の平均
※「労働者1人平均年間休日総数」=上記とは異なり、労働者ごとに加重を加えた平均

このように、企業規模が大きいほど、年間休日日数が多い傾向があることがわかります。一般に言われているとおり、大企業のほうが、中小企業よりも休みやすい傾向があるといったことを裏付ける事実と考えられます。

業種ごとの平均

次に業種ごとの平均について記載します。

※「1企業平均年間休日総数」=平成29年の1年間で、企業においてもっとも多くの労働者に適用される年間休日日数の平均
※「労働者1人平均年間休日総数」=上記とは異なり、労働者ごとに加重を加えた平均

上の表を見てわかるとおり、全体的に年間休日が少ないのは、宿泊業、飲食サービス業で、1企業あたりの平均で97.1日となっています。これは、来日する外国人観光客が増加し、宿泊施設や飲食店の利用が高まる一方、供給側の人材の確保が追い付かず、恒常的な残業時間の発生が生じている可能性を示しています。

また、同様に、各種報道で伝えられているとおり、運輸、郵便業においても、1企業あたりの平均で100.3日となっています。生活関連サービス業、娯楽業、建設業などは、104日となっています。

年間休日が大幅に少ない場合は違法の可能性あり

知っておきたい残業代請求のポイント
  • 年間休日が105日を下回まわる場合には、違法な場合がある。
  • 自分の勤務している会社が違法か不安な場合には弁護士に相談すると良い。

年間休日はどこまで少なくしても、違法とはならないのでしょうか。

前項などで、年間休日の法律上の定義はないものの、例えば労基法32条の規定により、事実上の制限は設けられています。

年間休日の最低基準は105日

1年間に勤務することができる時間を計算すると下記のとおりとなります。
週数(365日÷7日)×法定労働時間40時間=2085.7時間
2085.7時間÷1日8時間=260日
365日-260日=105日

会社は、原則として、1週間に休憩時間を除いて、40時間を超えて労働者に労働させてはならず(労基法32条1項)、1週間の各日については、休憩時間を除き、1日について8時間を超えて労働者に労働させてはなりません。

この法的な制約があることから、上記のような計算となります。なお、36協定を締結すると、会社は労働者に時間外労働をさせることができますが、その場合には、残業代を支払う義務があります。

残業代の計算方法については、「私の残業代はいくら?残業代計算方法【図解で分かり易く解説】」を参考にしてみてください。

年間休日が105日を下回っていた場合

それでは、もし、年間休日が105日よりも少ない場合は、どうなるのでしょうか。その会社ごとの就業規則や固定残業手当などの規定を確認しないと、一概には言えませんが、仮にこのような規定を設けていない場合には、違法な残業を会社がさせている可能性があります。
違法な残業であっても、労働者は会社に労働力を提供していますので、正当に残業代を請求することができます。ただし、残業代の請求には消滅時効が2年と短くなっているので、早めに請求することが必要です。

ご自身の勤務している会社が違法な状態なのか、また、自分の場合に残業代の請求ができるかについて疑問がある場合には、弁護士に相談をすると良いでしょう(弁護士の探し方については、「未払い残業代請求について弁護士の探し方や相談の仕方とは?」を参考にしてみてください。)。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ご自身がどの程度休む権利があるのかについては、重要な関心事だと思います。ここで示した基準はあくまで、一般論としての話ですので、すべての場合に当てはまるわけではありません。自分の会社が違法なのか、または、実はブラック企業なのか、不安な場合には、悩まないで弁護士に相談すると良いでしょう。
ブラック企業かを判断してみたい方は、「あなたの会社は大丈夫!?ブラック企業チェックリスト」をご覧ください。