実際に残業代を計算してみて解説いたします。

いくら残業代を請求できるか知りたい!

毎日長時間働いているのに残業代がもらえないとか、残業代はもらっているが少ないのではないか、正しく計算されているのだろうかとお悩みの方は多いと思います。残業代を請求したいと思っても、どのくらいもらえるのかわからず泣き寝入りという方も少なくありません。

そこで今回は、残業代の計算方法を解説したうえで、具体例にもとづいてどのくらい残業代がもらえるのかざっくり計算してみましょう。ご自身の残業代がどのくらいになるのか知りたい方はぜひ参考にしてください。

Cross Talk : 未払い残業代ってどのくらいあるの?

毎日のように残業しているんですけど、残業代をもらえないんです。会社にきちんと払ってもらいたいんですけど、そもそも僕はどのぐらい残業代をもらえるんでしょうか?

簡便にいえば、残業時間に一時間当たりの給与(時間単価)をかけて計算します。また,1日8時間もしくは,1週間40時間(これを「法定労働時間」といいます。)を超えてした残業については,その超えた部分についてさらに一定の割増率(一般的には25%)をかけた賃金を請求することができます。

長時間に及ぶ労務の提供による労働者が被る過大な精神的肉体的負荷に対する対価として,基本給を一定額割増した賃金の支払いを求める権利が労働者に対して付与されるというわけです。イメージしやすいように、計算方法を解説したうえで、具体例を紹介しましょう。

よろしくお願いします!

ざっくりポイント
  • 過去2年分の残業代を請求できる
  • 300万円以上請求できることも
  • 残業代の計算方法のキホン
  • 残業代請求・簡易計算ツールで自分の残業代を計算してみよう
  • 遅延損害金付加金を請求することもできる
目次
「残業代請求をしたら、どのくらいの金額が請求できるの?300万円以上のケースも。」の目次
  1. 残業代の請求は2年間さかのぼることができる
  2. 300万以上の請求になる場合もある
  3. 残業代をざっくり計算してみよう
  4. 自分の残業代が知りたい人に!残業代請求・簡易計算ツールのご紹介
  5. 遅延損害金(遅延利息)の請求で請求額が増える可能性も
  6. 付加金を請求することもできる
  7. まとめ

1.残業代の請求は2年間さかのぼることができる

就職してから一度も残業代をもらっていないんですけど、いままでの残業代を全部請求することができますか?

残念ながら、残業代請求には2年の消滅時効がありますので、全額請求できるわけではありません

残業代請求権には2年の消滅時効があります(労働基準法115条)。消滅時効は,権利を行使できるときからスタートします(民法166条)。そして,労働者が残業代の支払いを請求できるのは,契約により,給与の支給日とされているケースがほとんどです

そのため,残業代を請求できる期限は,給与の支給日の翌日から数えて2年間ということになります。この期限内であれば,退職後であっても請求することができますので,退職してしまったからといって残業代の請求を諦める必要はありません。

反対に、残業代を請求しないままその支給日から2年が経過すると、古いものから順次一ヶ月毎に残業代請求権が時効によって消滅していくということになります。

残業代を払ってもらえない方の中には、労働時間が長く、休日も少ない、いわゆるブラック企業にお勤めの方もいらっしゃるでしょう。

残業代を請求する時間的な余裕も精神的な余裕もないまま働き続けた結果、過去の残業代が消滅時効によってどんどん請求できなくなるという事態もありえるのです。ですから、残業代を請求するには、早めにアクションを起こすことが重要です

<ポイント>

  • 残業代請求権は,支給日の翌日から2年の間に行使しなければ消滅する
  • 時効が完成する前に早めのアクションを

2.300万以上の請求になる場合もある。

多くても2年分なんですね。それじゃ大した額にならないのかも……。

そんなことはありません。長期に渡って賃金未払いの残業が常態化してしまっているケースでは,もとの給与や残業時間次第で請求できる残業代は300万円以上になることもあります。

残業代は過去にした残業2年間分を請求することができます。

ですから、過去2年分が限度ではありますが,残業代の未払いの期間が長期に渡っているほど請求できる金額は高額になります。

たとえば、時間単価1800円の方が,一日8時間を超えて残業した時間した時間が月60時間に及んだものとしましょう。(深夜労働、休日労働はなかったことを前提とします。)計算方法については後述します。

1ヶ月あたりの残業代は13万5千円になります。仮に会社から残業代を1円ももらっていないとすると、1年で162万円2年で324万円にもなります。

休日に出社したり、深夜22時以降に残業したりすると、その労働時間の賃金割増率はさらに高くなり,残業代はさらに高額になります。一般的には,法定の休日労働について35%,深夜労働について25%割増した賃金を請求することができます。一日8時間を超えた労働時間が深夜22時以降に及んだ場合,割増率は50%に及ぶことになります。

ですから、「もう長いこと残業代はもらってないし,今更手間をかけて請求したとしてもどうせ大した額にならないだろう」と思って簡単にあきらめてはいけません。

<ポイント>

  • 残業代の未払いの期間が長期に渡る場合には,請求できる残業代は高額になる
  • 深夜労働と休日労働の割増率を踏まえれば,残業代はさらに高額になる。

3.残業代をざっくり計算してみよう。

そんなにもらえることがあるんですね。僕もどのぐらいもらえるか知りたいんですけど、どうやって計算すればいいですか?

会社が定めた労働時間(これを「所定労働時間」といいます。)を超えて労働した時間に、時間単価をかけて計算します。労働時間が1日8時間もしくは1週間40時間を超える場合や深夜と休日に働いていた場合には、さらに割増分を上乗せして計算します。

残業代計算のキホン:残業時間×時間単価×(割増率×100)

たとえば、会社が勤務時間を、9時から17時の8時間とし,休憩時間を1時間と定めていたとします。この場合の所定労働時間は,勤務時間の8時間から休憩1時間を差し引いて,7時間です。

所定労働時間を超えて労働した場合、残業代を請求することができます。たとえば、18時まで働いた場合、1時間分の時間単価を請求することができるのです。もっとも,17時~18時までの残業は,所定労働時間を超えるものの,法定労働時間(一日8時間)の範囲内の残業です(これを「法定内残業」といいます。)。したがって,残業代請求ができることは勿論ですが,これを割増して請求することはできません。

これに対して,上の例でさらに19時まで残業したとします。18時~19時の残業は,法定労働時間を超える残業(これを「法定外残業」といいます。)になりますので,政令で定める割増率をかけた割増賃金の請求ができます。

会社が決める「所定労働時間」と労働基準法が定める「法定労働時間」は区別して計算する必要があるということです。

労働基準法37条1項及びこれを受けて割増率を定める政令の規定をまとめると以下のようになります。

具体例の紹介

それでは、次の3つの具体例について、それぞれ残業代を計算してみましょう。

例1:月給20万円、月の平均所定労働時間が176時間(1日8時間×出勤日数22日)休日出社も深夜労働もなく,月60時間の時間外労働を、2年間続けた場合

まず,残業時間は60時間×24ヶ月=1440時間です。
次に,時間単価は、20万円÷176時間=1,137円(小数点以下切り上げ)です。
したがって、請求できる残業代は、
1440時間×1,137円×125%=204万6,600円となります。

例2:月給30万円、月の平均所定労働時間が176時間(1日8時間×出勤日数22日),休日出社はなく,月60時間の時間外労働(うち10時間が深夜22時以降)を1年間続けた場合

まず,残業時間は,時間外労働につき,月50時間×12ヶ月=600時間
時間外かつ深夜労働につき,月10時間×12ヶ月=120時間
となります。

次に、時間単価は、
30万円÷176時間=1,705円(小数点以下切り上げ)となります。

したがって、請求できる残業代は、
600時間×1,705円×125%=127万8,750円(時間外労働につき+25%)
120時間×1,705円×150%=30万6,900円(時間外かつ深夜労働につき+50%)
これを合計して、158万5,650円です。

例3:月給20万円、月の平均所定労働時間が154時間(1日7時間×出勤日数22日),月30時間法定内残業を,月50時間時間外労働を,月2回法定休日出社(一日8時間)を1年6か月続けた場合

まず,残業時間は,
法定内残業につき,30時間×18ヶ月=540時間
時間外労働につき,50時間×18ヶ月=900時間となります。
法定休日労働につき,16時間×18ヶ月=288時間
時間単価は、20万円÷154=1,299円(小数点以下切り上げ)です。

したがって、請求できる残業代は、
540時間×1299円×100%=70万1,460円(法定内残業につき+0%)
900時間×1299円×125%=146万1,375円(時間外労働につき+25%)
288時間×1299円×135%=50万5,051円(法定休日出社につき+35%)

これを合計して,266万7,886円となります。

<ポイント>

  • 時間数×時間単価×(割増率×100)の計算式を理解する
  • 休日出社や深夜残業があれば割増率が上がる

4.自分の残業代が知りたい人に!残業代請求・簡易計算ツールのご紹介

だいたいのイメージはつかめたんですけど、給料とか残業時間がかなり違うんで…僕はどのくらい請求できるんでしょう?

ご自身の残業代がどのくらいになるのかより詳しく知りたい方のために、残業代請求・簡易計算ツールを用意しています。こちらで給与などの必要事項を選択して計算してみてください。

残業代請求・簡易計算ツールで最長24ヶ月分(2年で時効が完成するため)の残業代を計算することができます。どのぐらい残業代がもらえるか気になるという方はぜひ計算してみてください。

ただし、深夜残業や休日出社があれば割増率が変わりますから、あくまで参考と理解してください。請求できる残業代の正確な額を知りたい場合には、労働問題に詳しい専門家に相談することをお勧めします。

<ポイント>

  • あくまで簡易的なもので、おおよその目安にする
  • 正確な残業代の額を知りたい場合は専門家に相談する。

5.遅延損害金(遅延利息)の請求で請求額が増える可能性も

自分が請求できる残業代の目安はわかりました。でも、本当は毎月ちゃんと支払ってもらえるはずが、自分が請求して初めてもらえるなんておかしいと思います。 もらえる額を増やす方法はありませんか?

計算で算出した残業代だけでなく、支払いが遅れたことについて遅延損害金または遅延利息を請求することができます。

労働基準法上、「賃金は,毎月一回以上,一定の期日を定めて支払わなければならない」旨定められており,使用者はこれを受けて労働者との間の労働契約において「賃金」の支払い時期を定めています。ここでいう「賃金」には、残業代も含まれます。

ですから、使用者が残業代を定められた支給日に支払わないことは、使用者が契約上の義務を怠っていること(これを「債務不履行」といいます。)になります。 使用者の債務不履行によって労働者に損害が生じた場合,労働者は,使用者に対して,損害賠償請求することができます。

賃金が期限までに支払われなかった場合の損害は,遅延損害金としてその利率が法律上定められています。
使用者が営利を目的としない法人である場合や個人の場合、遅延損害金の利率は民法で定められた年5%になります。

これに対し、使用者が会社(営利を目的とする法人)である場合や、個人でも商売をしている場合(商人の場合)には、商法の規定が適用され、年6%の遅延損害金を請求することができます。

また、労働者が退職した場合には、退職した日の翌日から年14.6%の遅延利息を請求することができます(賃金の支払の確保等に関する法律第6条、同法施行令第1条)。

これらをまとめると、

・支給日の翌日から支払日(または退職日)まで 年5%または6%
・退職日の翌日から支払日まで 年14.6%

の遅延損害金または遅延利息を請求できるということになります。

<ポイント>

  • 年5%または6%の遅延損害金を請求することができる
  • 退職した後は年14.6%の利率になる

6.付加金を請求することもできる

請求できる額が増えるのはわかりました!でも年5~6%なんですね。僕は残業代を払ってもらえなくて苦しい生活をしていたのに……。会社にはほかにペナルティはないのですか?

裁判をすれば、未払いの残業代と同じ額の付加金の支払いが認められることがあります。ただ、必ずしも認められるわけではないので、多くを期待しないほうが良いでしょう。

裁判所は、賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、未払い金と同一額の付加金の支払いを命じることができるとされています(労働基準法114条)。うまくいけば未払いの残業代の倍額をもらうことができるということです。

ただし、付加金の支払いは常に認められるわけではありません。まず、「裁判所は」とあるように、付加金をもらうためには裁判をする必要があります。また、「支払いを命じることができる」とされていることから、未払いの残業代がある場合に必ず付加金の支払いが認められるわけではありません。

裁判所は、賃金を支払わなかったことについての使用者の違法の程度や態様や、賃金の支払いを受けられなかった労働者の不利益の性質や内容を勘案して、請求の成否や金額を決定します。裁判所の裁量で付加金の請求の可否が決まるのです。

したがって、単に未払い残業代があるだけでは付加金は認められにくく、使用者の違法の程度が大きいなどといった事情が必要になるでしょう

さらに、付加金の支払い命令がでても,事実審の口頭弁論終結時までにこれを受けた使用者残業代の支払義務を履行した場合には,付加金の支払義務は消滅するものと解されています。

以上からすると,付加金制度は,使用者に対して,賃金未払いについて制裁を課すことで,賃金の適正な支払いを心理的に強制することを主眼とした制度とみるべきでしょう。

<ポイント>

  • 付加金を請求するには裁判をする必要がある
  • 付加金の支払いは認められにくい

7.まとめ

残業代の計算方法などについて解説しましたが、参考になったでしょうか。 請求できる残業代がどのぐらいかがある程度わかれば、自分で会社と交渉する、あるいは費用をかけてでも専門家に相談・依頼するという方針を立てることができます。ぜひこの記事を参考に、ご自身の残業代を計算してみてください。