
目次
- 1.相続手続きの必要書類の全体像
- 1-1.共通で必要な書類と、手続きごとに追加される書類
- 1-2.書類集めのおおまかな流れ
- 2.すべての相続手続きに共通して必要な書類
- 2-1.戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まで)
- 2-2.相続人の印鑑証明書
- 2-3.遺産分割協議書または遺言書
- 3.手続きの場面別に必要な書類(金融・登記・相続税)
- 3-1.預貯金の解約・払戻しに必要な書類
- 3-2.不動産の名義変更(相続登記)に必要な書類
- 3-3.相続税の申告に必要な書類
- 3-4.財産の種別ごとに追加される書類
- 4.各書類の取得場所・取得方法
- 4-1.戸籍は本籍地の市区町村(窓口・郵送・広域交付)
- 4-2.登記関係の書類は法務局
- 4-3.金融機関の所定様式は各金融機関
- 5.戸籍集めを楽にする法定相続情報証明制度
- 5-1.戸籍の束を一覧図1枚にまとめられる制度
- 5-2.法務局への申出の流れ
- 5-3.複数の手続きで使い回せる
- 6.書類集め・相続手続きを弁護士に依頼するメリット(他士業との違い)
- 6-1.弁護士・司法書士・税理士・行政書士で対応できる範囲が違う
- 6-2.弁護士に依頼できる範囲
- 6-3.もめている・交渉や調停が必要な場合は弁護士
- 7.当事務所の相続手続きサポート(弁護士と税理士の連携)
- 7-1.書類収集から相続税申告まで一貫して対応できる
- 7-2.グループの税理士法人との連携
- 8.よくある質問(相続手続きの書類・弁護士)
- 9.まとめ
1.相続手続きの必要書類の全体像
1-1.共通で必要な書類と、手続きごとに追加される書類
相続の必要書類は数が多く、何から手を付ければよいのか分かりにくいものです。
全体像をつかむには、書類を2つに分けて考えると整理しやすくなります。
・どの手続きでも共通して必要になる書類……戸籍謄本、印鑑証明書、遺産分割協議書または遺言書
・手続きごとに追加される書類……金融機関の所定様式、登記申請書、相続税の申告書など
つまり、共通の書類をひととおりそろえてしまえば、あとは手続き先ごとに数点を足していくだけです。
共通の書類のうち、もっとも時間がかかるのが戸籍謄本です。
先に戸籍から着手すると、全体が早く進みます。
1-2.書類集めのおおまかな流れ
書類集めは、おおむね次の順番で進みます。
・(1)遺言書があるかどうかを確認する
・(2)被相続人の出生から死亡までの戸籍を集め、相続人を確定する
・(3)相続人全員の戸籍謄本・住民票を集める
・(4)財産を調査し、不動産・預貯金・有価証券などの資料を集める
・(5)遺産分割協議を行い、協議書を作成して相続人全員の印鑑証明書を添える
・(6)手続き先ごとの所定様式をそろえて提出する
遺言書がある場合は、(5)が不要になることがあります。
戸籍の収集には、被相続人の転籍が多いと1か月以上かかることもあります。
2.すべての相続手続きに共通して必要な書類
2-1.戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まで)
相続するために必ず必要になる書類として戸籍謄本があります。
遺産分割協議をする前提として相続人を確定する必要があり、相続人の正確な調査に利用されます。
また、その後の銀行口座の解約・自動車の名義変更・不動産登記・相続税の申告にも必要です。
取得は本籍のある市区町村で行います。
現に住所がある市区町村と本籍がある市区町村は異なることもあるので注意をしましょう。
「戸籍謄本」とは実務上このように呼ばれることが多いのですが、戸籍全部事項証明書・戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本などがあり、必要に応じて取得します。
戸籍は、基本的に相続人が被相続人の生まれてから亡くなるまでの全てを取得します。
2-2.相続人の印鑑証明書
遺産分割協議をする際には実印を押すことになります。
実印とは、印鑑登録された印鑑のことをいい、その印鑑が使われたかどうかを証明するために印鑑証明書(印鑑登録証明書)が必要となります。
まだ作成したことがない場合には、印鑑登録を行って、印鑑証明書を発行してもらいましょう。
2-3.遺産分割協議書または遺言書
遺言書の有無によって遺産分割協議書もしくは遺言書の提出が必要です。
遺言書がなければ遺産分割協議を行って、その結果について遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければ無効で、相続人全員で行われたことを確認するために、相続人全員の実印が必要です。
遺言書がある場合には遺言書を添付します。
遺言書が公正証書遺言・自筆証書遺言書保管制度を利用した場合以外は検認も必要で、検認をしたことが確認できる書類(検認調書または検認済証明書)が必要です。
3.手続きの場面別に必要な書類(金融・登記・相続税)
3-1.預貯金の解約・払戻しに必要な書類
被相続人が金融機関に預けていた預貯金を解約するためには次のようなものが必要です。
上述した通り、被相続人の戸籍謄本を取得します。
なお、基本的には提出した戸籍謄本は返してもらえますが、金融機関によっては返却に手続きが必要なので、提出する際にきちんと確認しましょう。
相続人全員の戸籍謄本を取得します。
遺言書の有無に応じて、遺言書・遺産分割協議書を提出します。
遺産分割協議書がある場合には、相続人全員の印鑑証明書もあわせて添付します。
遺言書がある場合で、検認が必要な場合には検認調書もしくは検認済証明書を、受遺者がいる場合には受遺者の印鑑証明書を添付します。
金融機関の通帳・キャッシュカード・証書などを提出します。
そのうえで、金融機関が指定する書類を用意します。
様式の名称は金融機関ごとに異なり、相続に関する依頼書や相続関係届書といった名前で用意されています。
3-2.不動産の名義変更(相続登記)に必要な書類
相続で不動産を受け継いだ相続人と、不動産の遺贈を受けた方は、それぞれ相続登記・遺贈の登記が必要です。
不動産登記は登記申請書と添付書類を提出しておこないます。
登記申請書は法務局のホームページで取得できます。
銀行預金と同様に、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本が必要です。
あわせて、被相続人についての住民票の除票が必要です。
相続人の戸籍謄本と住民票が必要です。
相続登記のときには遺産分割協議書が、遺贈のときには遺言書が必要です。
印鑑証明・検認調書・検認済証明書が必要なのは銀行預金の場合と変わりません。
相続登記・遺贈登記をする際には登録免許税の支払いが必要になり、課税価格の計算のために固定資産評価証明書を利用します。
司法書士などに委任する際には委任状が必要となります。
なお、法定相続分どおりに共有として登記する場合は、遺産分割協議書を添付せずに申請することができます。
3-3.相続税の申告に必要な書類
相続税の申告に必要な書類には次のようなものがあります。
相続税は申告をして納税します。
申告書は税務署で取得したり、国税庁のホームページで取得することができます。
遺産分割協議書あるいは遺言書を提出します。
被相続人の戸籍謄本・住民票を提出します。
相続人の戸籍謄本・住民票を提出します。
遺産に不動産がある場合には、不動産登記簿謄本・固定資産税評価証明書などを提出します。
所有不動産を確認するためには名寄帳を取得すれば確認できます。
有価証券がある場合には、有価証券に関する書類が必要です。
証券会社を通じて株式を購入している場合には、証券会社の残高証明書を提出します。
預貯金については、預貯金の残高証明書・通帳のコピーか預貯金の取引履歴の過去5年分を提出します。
生命保険・死亡保険については、民法上の相続財産ではないものの、相続税においてはみなし相続財産となります。
そのため、相続財産として計上し、添付書類として保険証書を提出する必要があります。
債務や葬式費用は、遺産から控除することが可能です。
債務については、借金の場合には借用書・金銭消費貸借契約書、葬儀費用については葬儀社からの領収書や明細書などの添付をします。
このほか、マイナンバーの確認書類と本人確認書類の写しの添付が求められます。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う場合には、それぞれ追加の書類が必要になります。
配偶者の税額軽減では、分割の内容が分かる遺産分割協議書の写しと相続人全員の印鑑証明書が必要です。
小規模宅地等の特例では、宅地の利用状況を示す資料に加え、同居していない親族が取得する場合には、その居住状況を示す書類が求められます。
申告期限までに遺産分割がまとまらない場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことで、後から特例の適用を受けられます。
3-4.財産の種別ごとに追加される書類
財産の種類によって、追加で必要になる書類があります。
・上場株式・投資信託……証券会社の残高証明書、取引残高報告書、相続人名義の証券口座の情報
・非上場株式……株主名簿の写し、直近3期分の決算書、法人税申告書の別表二
・自動車……自動車検査証(車検証)、移転登録申請書、遺産分割協議書(査定価格100万円以下の普通自動車は遺産分割協議成立申立書で代えられる場合があります)
・生命保険……保険証券、支払通知書、受取人の本人確認書類
・借入金などの債務……金銭消費貸借契約書、返済予定表、残高証明書
・ゴルフ会員権……会員証書、預託金証書
自動車のうち軽自動車については、遺産分割協議書の提出を求められないのが一般的です。
4.各書類の取得場所・取得方法
4-1.戸籍は本籍地の市区町村(窓口・郵送・広域交付)
戸籍謄本は、本籍地の市区町村で取得します。
遠方の場合は、郵送でも請求できます。
郵送の場合は、請求書・本人確認書類の写し・返信用封筒に加えて、手数料として定額小為替を同封します。
2024年3月1日からは、戸籍の広域交付制度が始まりました(戸籍法第120条の2)。
本籍地以外の市区町村の窓口でも、まとめて戸籍謄本を請求できる制度です。
ただし、請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母などの直系尊属・子や孫などの直系卑属の戸籍に限られ、兄弟姉妹の戸籍は取得できません。
また、窓口に来庁した本人が請求する制度なので、委任状による代理人の請求や、弁護士の職務上請求には利用できません(同条2項)。
コンピュータ化されていない一部の戸籍も対象外です。
住民票の除票や戸籍の附票は、住所地または本籍地の市区町村で取得します。
4-2.登記関係の書類は法務局
不動産の登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取得できます。
オンラインでの請求もできます。
登記申請書の様式と記載例は、法務局のホームページで公開されています。
一方、固定資産評価証明書は法務局ではなく、不動産の所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)で取得します。
被相続人がどこにどれだけ不動産を持っていたか分からない場合は、同じ窓口で名寄帳を取り寄せると確認できます。
4-3.金融機関の所定様式は各金融機関
預貯金の相続手続きに使う書類は、金融機関ごとに様式が異なります。
被相続人が亡くなったことを伝えると、その金融機関の手続きの案内と所定の様式を送ってもらえます。
残高証明書も、その金融機関に請求します。
相続税の申告に使う場合は、相続開始日時点の残高証明書を請求することになります。
証券会社の残高証明書、生命保険会社の支払通知書も、それぞれの会社に請求します。
5.戸籍集めを楽にする法定相続情報証明制度
5-1.戸籍の束を一覧図1枚にまとめられる制度
相続の手続きは、金融機関・法務局・税務署と、提出先が複数にわたります。
そのたびに戸籍の束を提出し、返却を待ってから次へ回すというのは、大変な手間です。
この負担を減らすのが、法定相続情報証明制度です(不動産登記規則第247条)。
戸籍一式を法務局に提出して確認を受けると、相続関係を一覧にした図(法定相続情報一覧図)の写しを交付してもらえます。
この写し1枚が、戸籍の束の代わりになります。
交付手数料は無料で、必要な通数を出してもらうことができます。
5-2.法務局への申出の流れ
申出は、次の流れで行います。
・(1)被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍などを集める
・(2)相続関係を示す一覧図を作成する
・(3)申出書とあわせて法務局に提出する
・(4)確認を受けて、一覧図の写しの交付を受ける
申出先は、被相続人の本籍地・最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局です。
郵送でも申出ができます。
代理人による申出ができるのは、親族のほか、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの資格者に限られています。
5-3.複数の手続きで使い回せる
一覧図の写しは、次のような手続きで戸籍の束の代わりに使えます。
・不動産の相続登記
・預貯金の払戻し・名義変更
・有価証券の名義書換
・相続税の申告
・自動車の移転登録
複数の金融機関に口座がある場合や、不動産が複数の地域にある場合ほど、効果が大きくなります。
ただし、一覧図には相続放棄をしたかどうかや、遺産分割の内容までは記載されません。
そのため、相続放棄申述受理証明書や遺産分割協議書は、別途必要になります。
6.書類集め・相続手続きを弁護士に依頼するメリット(他士業との違い)
6-1.弁護士・司法書士・税理士・行政書士で対応できる範囲が違う
相続の手続きにかかわる専門家は複数いますが、法律上扱える範囲が異なります。
・弁護士……書類の作成・収集に加え、相続人間の交渉の代理、遺産分割調停・審判の代理まで一貫して行えます(弁護士法第3条1項)
・司法書士……不動産の相続登記の代理と、それに必要な書類の作成を行えます(司法書士法第3条1項)
・税理士……相続税の申告・税務代理・税務相談を行えます(税理士法第2条1項)
・行政書士……権利義務に関する書類として遺産分割協議書などを作成できます。ただし、他の法律で制限されている業務は行えません(行政書士法第1条の3)
登記の代理は司法書士、相続税の申告は税理士というように、専門家によってできることが決まっています。
6-2.弁護士に依頼できる範囲
弁護士に依頼した場合、次のことをまとめて任せることができます。
・相続人調査(戸籍の収集)
・財産調査(残高証明書の取得、名寄帳の請求など)
・遺産分割協議書の作成
・他の相続人との連絡・交渉の代理
・遺産分割調停・審判の代理
他の相続人が財産の内容を明かさない場合には、弁護士会を通じて金融機関などに照会をかける方法もあります(弁護士法第23条の2)。
この方法は、弁護士でなければ利用できません。
6-3.もめている・交渉や調停が必要な場合は弁護士
分け方がすでに決まっていて、あとは書面にして登記や申告を済ませるだけであれば、登記は司法書士に、相続税の申告は税理士に依頼するのが自然です。
一方、次のような事情がある場合には、弁護士へのご相談を検討していただいたほうがよいといえます。
・相続人の間で分け方の意見が分かれている
・疎遠な相続人がいて、連絡を取ることに負担を感じている
・財産の内容を明かしてもらえない、使い込みが疑われる
・未成年者・認知症の方・行方不明者が相続人にいる
遺産分割について他の相続人との交渉を代理することができるのは、弁護士に限られます(弁護士法第72条)。
7.当事務所の相続手続きサポート(弁護士と税理士の連携)
7-1.書類収集から相続税申告まで一貫して対応できる
当事務所では、書類の収集から相続人調査、遺産分割協議のとりまとめ、相続登記の手配、相続税の申告まで、一連の流れに対応しています。
手続きごとに専門家を探し、同じ事情を何度も説明する必要がありません。
弁護士をサポートする法律事務の専門職(パラリーガル)が多数在籍しており、煩雑な書類の収集を進めることができます。
7-2.グループの税理士法人との連携
相続税の申告については、グループの税理士法人と連携して対応します。
遺産の分け方は相続税額に影響しますので、分割の段階から税務の見通しを踏まえて進められる点が、連携している強みです。
遺言・相続に関する初回のご相談は無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
無料
8.よくある質問(相続手続きの書類・弁護士)
転籍や婚姻のたびに戸籍は作り替えられていますので、1か所の役所ですべてそろうとは限りません。
相続人については、現在の戸籍謄本を用意します。
子がいない方の相続で兄弟姉妹が相続人になる場合には、被相続人の父母についても出生から死亡までの戸籍が必要になり、集める範囲が一気に広がります。
弁護士は、受任している事件について、職務上請求により戸籍謄本などを請求することが認められています(戸籍法第10条の2第3項)。
市町村合併で本籍地がどこの役所の管轄になったのか分からないといった場合でも、たどって取り寄せることができます。
一方、分け方について意見が分かれている場合や、他の相続人と直接やりとりをすることに負担を感じている場合には、交渉や調停の代理までできる弁護士が適しています。
当事務所では、登記が必要な場合には司法書士と連携して手配します。
・相続放棄・限定承認……自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(民法第915条1項)
・準確定申告……相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月(所得税法第125条1項)
・相続税の申告・納付……相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月(相続税法第27条1項)
・相続登記の申請……所有権を取得したことを知った日、または遺産分割が成立した日から3年(不動産登記法第76条の2)
相続税の申告が必要な場合は、10か月から逆算して、遅くとも数か月のうちに戸籍と財産の資料をそろえておきたいところです。
9.まとめ
書類は、どの手続きでも共通して必要になるものと、手続きごとに追加されるものに分けて考えると整理しやすくなります。
もっとも時間がかかるのは戸籍の収集ですので、まずそこから着手し、法定相続情報証明制度もあわせて検討されるとよいでしょう。
書類集めに手が回らない場合や、相続人の間で話がまとまらない場合には、弁護士に相談をしてみましょう。
当事務所では、遺言・相続に関する初回のご相談を無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
相続手続き代行に関する当事務所の弁護士監修コラム


相続手続きを何もしない場合にどうなるか



