被相続人が亡くなって相続が開始したときに、遺産分割協議を行うことになります。
この遺産分割協議にあたって、共同相続人に認知症の方がいる場合には、注意が必要です。
このページでは、認知症の方が共同相続人に居る場合の相続についてお伝えします。
1.認知症を患っている場合には遺産分割協議ができないことも
遺産分割協議をするにあたっては、相続人がそれぞれどのような遺産分割をするかの判断が必要になります。
そのため、遺産分割協議をする当事者には、当該遺産分割によりどのような結果になるのかを判断できる能力、すなわち「意思能力」が必要であり、意思能力のない者が行った法律行為は無効とする旨が規定されています(民法第3条の2)。
認知症を患っているような場合には、その症状に応じて、意思能力がないと判断され、遺産分割協議が無効となることがあります。
2.認知症を患っているような場合の成年後見制度等
では、相続人に認知症で意思能力がないとされる場合は、どのように遺産分割協議をすれば良いのでしょうか。
同じく意思能力が未完全な未成年者には、親権者が法定代理人に就いているように(民法第5条・824条)、意思能力がないとされる場合には、成年後見制度を利用することによって、成年後見人に代理をしてもらうことで遺産分割協議を行います(民法第859条)。
3.成年後見制度を利用するためには
成年後見制度はどのようにして利用するのでしょうか。
3-1.申立権者から申立てをする
成年後見制度は、認知症などで意思能力が十分でないと判断されても自動的に開始するわけではなく、申立権者からの申立てが必要です。
誰が申立権者なのかは、民法第7条に規定されており、本人・配偶者・4親等以内の親族が行うのが基本となります。
3-2.家庭裁判所における審理
申立ては家庭裁判所に対して行います。
家庭裁判所は、後見開始をするための要件を満たしているか、後見人として誰を選任すべきか等を審理します。
審判が確定すると、成年後見制度が始まります。
3-3.万が一すでに他の相続人が成年後見人になっている場合
例えば、被相続人の妻が認知症の診断を受けて、子が後見人になっているような場合があります。
この場合、子は自分の相続と、被相続人の妻の後見人として遺産分割協議をすることになります。
極端な話をすると、子は被相続人の妻の相続分を0として、自分に財産を集めてしまうこともできてしまいます。
このような「利益相反」といえる状況にある場合には、利益相反となる法律行為をするにあたって、特別代理人を選任する必要がある点にも注意が必要です。
4.まとめ
このページでは、認知症の患者が相続人にいるときの注意点についてお伝えしました。
成年後見制度の利用が必要となるので、不明なことがある場合には弁護士に相談をするようにしましょう。
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