被相続人が亡くなって遺産分割をする場合に、共同相続人に未成年者がいる場合があります。
この場合にはどのような点に注意が必要でしょうか。
1.未成年者の遺産分割には親(もしくは未成年後見人)の同意又は代理による
遺産分割をするためには、他の相続人と遺産分割協議を行ったり、協議の内容に不満がある場合には、遺産分割調停・審判を起こす必要があります。
このような行為をするためには高度な判断能力が必要で、未成年者には難しい場合があります。
そのため民法は、未成年者が法律行為をするには、基本的には親権者の同意が必要としています(民法第5条)。
また、親は子の財産を管理し、子の財産に関する法律行為の代理をおこないます(民法第824条)。
この法律の建前からすると、遺産分割をするには、親の同意か親が代理して行うことになります。
なお、親がすでにいない・親権を喪失している(民法第834条)という事情がある場合には、未成年後見が開始し(民法第838条)、後見人が同意や代理を行います。
2.共同相続をする場合には利益相反行為となる
例えば、両親のどちらかが亡くなって、もう一方の親と子が共同相続することになった場合で、子が未成年者だとします。
相続人である親は、自分と子の財産についての代理人あるいは同意権者として、一人で遺産相続を自由にできる状態です。
そのため、子の相続分をなしにしてしまって、自分一人で相続することもできてしまう状況といえます。
このような、自分の利益と相反するような状態である場合を「利益相反行為」と呼んでいます。
遺産分割協議をする場合はもちろん、子だけ相続放棄をするような場合にも利益相反行為にあたります。
他方、親が既に離婚をしていて共同相続人ではないような場合には、同意や代理をすることは利益相反にはなりません。
また、親が自分のみ・自分と子の分両方の相続放棄をする場合には、子の相続分を侵害するおそれがないので、利益相反にはなりません。
3.利益相反行為については特別代理人の選任が必要
利益相反行為がある場合には、親権を行う者は家庭裁判所に対して特別代理人の選任を請求しなければならないとしています(民法第826条1項)。
特別代理人とは、家庭裁判所から選任される人で、利益相反行為がある場合に子が不利益を被らないように選任される人のことをいいます。
遺産分割協議は、親権者と子の特別代理人で行うことになります。
なお、銀行の口座の払戻しや不動産登記をする際に、特別代理人の選任をしていない場合は、手続を受け付けてもらえませんので、確実に行うようにしましょう。
4.まとめ
このページでは、遺産分割協議に未成年者がいる場合についてお伝えしました。
未成年者が遺産分割協議をする場合には、単独で行うことはできず、親権者・未成年後見人の同意・代理が必要になります。
親権者が共同相続人である場合には、利益相反になり特別代理人の選任が必要となります。
利益相反かどうか迷うような場合や、手続をするにあたって助力を求めたい場合には、弁護士に相談してみてください。
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