
目次
- 相続税のペナルティの全体像
- 延滞税と加算税の2階建て構造
- 申告・納付の期限は10か月
- 延滞税
- 原則の税率
- 実際に適用される特例の割合
- 過少申告加算税
- 調査通知前の自主的な修正申告なら課されない
- 調査通知後から更正の予知前まで
- 調査による更正の予知後
- 無申告加算税
- 調査通知前の自主的な期限後申告
- 調査通知後から更正・決定の予知前まで
- 調査による更正・決定の予知後
- 繰り返しの無申告への加重
- 重加算税
- 過少申告は35%・無申告は40%
- 5年以内の繰り返しはさらに10%加重
- 重加算税の対象になる「仮装・隠蔽」の具体例
- 遺産を故意に申告から除く・名義預金を隠す
- 書類の改ざん・税務調査での虚偽の答弁
- 単なる申告漏れ・計算ミスとの違い
- ペナルティを軽くする・避ける方法
- 期限内の申告・納付が第一
- 調査の通知前に自主的に申告する
- 課されそうな場合・課された場合の対応
- 税務調査への対応
- 不服がある場合に争う手段
- 悪質な脱税は刑事罰の対象になりうる
- 弁護士と税理士のワンストップ対応
- もめて申告期限に間に合わないおそれがある場合
- 申告・税務調査対応と不服申立てを一括で
- よくある質問+まとめ
- 申告期限を1日過ぎたらどうなる?
- 自分から申告すれば軽くなる?
- 申告漏れと脱税の違いは?
- 重加算税に納得できない場合は争える?
- まとめ
相続税のペナルティの全体像
延滞税と加算税の2階建て構造
相続税の申告や納付が遅れると、本来の税額に上乗せして負担が生じます。
この上乗せは、性質の異なる2種類が重なる仕組みになっています。
・延滞税……納付が遅れたことに対する利息にあたるもの。遅れた日数に応じて増えていきます
・加算税……適正な申告をしなかったことに対する行政上の制裁。税額に一定の割合を乗じて課されます
加算税には、過少申告加算税・無申告加算税・重加算税があります。
延滞税は日数に応じて増えますが、加算税は一度課されればそれ以上増えません。
逆にいえば、加算税は課されるかどうかと、何%になるかで負担が大きく変わります。
そして、その分かれ目になるのが「税務調査の通知が来る前かどうか」です。
申告・納付の期限は10か月
相続税は相続開始を知ったときから10カ月以内に申告・納付する必要があります。
そして、この期間内に申告・納税をしなかった場合には、ペナルティが課されます。
このペナルティの内容として延滞税と加算税というものがあります。
正確には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内が期限です(相続税法第27条1項)。
期限が土日祝日にあたるときは、その翌日が期限になります。
遺産分割がまとまっていなくても、この期限は延びません。
延滞税
原則の税率
延滞税は、納付期限までの納付がない場合に課されるものです。
納付期限から2ヶ月以内は7.3%、それ以降は14.6%を乗じた金額で計算されます。
実際に適用される特例の割合
上の7.3%・14.6%は、国税通則法第60条2項が定める原則の割合です。
実際には、市中金利の水準に合わせた特例により、これより低い割合が適用されています。
具体的には、次のいずれか低い割合になります。
・納期限の翌日から2か月を経過する日まで……年7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
・2か月を経過する日の翌日以後……年14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
国税庁が公表している実際の割合は、次のとおりです。
・令和8年1月1日から令和8年12月31日まで……納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、その翌日以後は年9.1%
・令和4年から令和7年まで……納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.4%、その翌日以後は年8.7%
割合は年ごとに見直されますので、計算するときはその年の割合を確認してください。
なお、延滞税は本税だけにかかり、加算税には課されません。
また、期限内に申告した後で修正申告をしたような一定の場合には、延滞税の計算期間から除かれる期間があります。
過少申告加算税
申告した税金が本来納めるべき税額より少ない場合に課される加算税です。
調査通知前の自主的な修正申告なら課されない
調査通知前に自主的に修正申告を行った場合には、過少申告加算税は課されません。
根拠は国税通則法第65条6項で、税務調査の事前通知が来る前に、自分から気づいて修正申告をした場合には適用しないと定められています。
申告の後に財産の計上漏れに気づいたときは、通知が来る前に動くかどうかで結論が変わります。
調査通知後から更正の予知前まで
税務調査の通知は来たものの、まだ調査で指摘される前に自分から修正申告をした場合は、5%になります。
追加で納める税額のうち、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については、10%です。
通知が来てしまった後でも、指摘される前に申告すれば税率は下がるということです。
調査による更正の予知後
しかし、税務署の調査によって発覚し、修正申告をする場合には、追加で納める税金に10%を乗じた計算した金額が課されます。
当初申告した相続税額もしくは50万円のいずれか多い方の金額を超える場合には超える部分については15%が課されます。
無申告加算税
相続税申告をしなかった場合には無申告加算税が課されます。
調査通知前の自主的な期限後申告
調査通知前に自主的に申告を行った場合には、本来納付すべき税金に5%を乗じた金額が課されます。
根拠は国税通則法第66条8項です。
さらに、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合で、法定申告期限から1か月以内に申告したときは、無申告加算税は課されません(同条9項)。
調査通知後から更正・決定の予知前まで
調査の通知が来た後、指摘される前に自分から期限後申告をした場合は、10%になります。
納付すべき税額のうち50万円を超える部分は15%、300万円を超える部分は25%です。
調査による更正・決定の予知後
税務調査によって発覚した場合には、本来納付すべき税金に15%を乗じた金額が課されます。
これに加えて、納付すべき税額のうち50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%となります(国税通則法第66条2項・3項)。
300万円を超える部分の30%という区分は、2023年度の税制改正で設けられたもので、高額な無申告への対応を強めたものです。
繰り返しの無申告への加重
無申告を繰り返した場合には、さらに10%が上乗せされます(国税通則法第66条6項)。
過去5年以内に同じ税目について無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合などが対象です。
たとえば、調査で発覚した無申告が繰り返しにあたると、15%に10%が加わって25%になります。
重加算税
過少申告は35%・無申告は40%
遺産を故意に隠ぺいするような悪質なものについては重加算税が課されます。
過少申告が悪質と認定された場合の重加算税には、本来納付すべき税金に35%を乗じた金額が課されます。
無申告である場合に重加算税が課される場合には、本来納付すべき税金に40%を乗じた金額が課されます。
5年以内の繰り返しはさらに10%加重
重加算税にも、繰り返した場合の加重があります(国税通則法第68条4項)。
過去5年以内に同じ税目について無申告加算税または重加算税を課されたことがあるといった場合には、10%が上乗せされます。
その結果、過少申告の場合は45%、無申告の場合は50%になります。
重加算税が課されると、過少申告加算税や無申告加算税に代えて課されますので、両方が重なることはありません。
一方で、延滞税は別に発生します。
重加算税の対象になる「仮装・隠蔽」の具体例
遺産を故意に申告から除く・名義預金を隠す
重加算税が課されるのは、課税標準や税額の計算の基礎となるべき事実を隠蔽し、または仮装した場合です(国税通則法第68条)。
相続税で問題になりやすいのは、次のような行為です。
・被相続人の預金口座があることを知りながら申告書に載せない
・家族名義になっているが実質は被相続人の財産である預金(名義預金)を意図的に除く
・貸金庫の中の現金や貴金属を申告しない
・亡くなる直前に多額の現金を引き出し、その存在を伏せる
・海外の口座や不動産を申告しない
名義預金は、とくに指摘の多い項目です。
配偶者や子の名義でも、実際にお金を出したのが被相続人で、その管理も被相続人がしていたのであれば、相続財産として申告する必要があります。
書類の改ざん・税務調査での虚偽の答弁
財産を隠すだけでなく、事実と異なる外観を作り出す行為も対象になります。
・契約書や領収書を作り替える、日付を書き換える
・実際にはない債務を計上する
・贈与があったように装って財産を移す
・税務調査で、財産の存在を知りながら「知らない」と答える
・通帳や資料の提示を求められて、意図的に一部を隠す
税務調査での対応そのものが、隠蔽・仮装の評価に影響することがあります。
単なる申告漏れ・計算ミスとの違い
重加算税は、故意の隠蔽・仮装があって初めて課されるものです。
したがって、次のような場合は、過少申告加算税や無申告加算税にとどまるのが原則です。
・財産の存在を知らずに申告から漏れた
・評価の方法を誤った、計算を間違えた
・特例の適用要件を誤解していた
とはいえ、実際には「知らなかった」のか「知っていて隠した」のかが争点になります。
通帳の管理状況や、相続人の説明の一貫性、資料の提出状況などから判断されますので、調査の場での説明の仕方が結論を左右することがあります。
ペナルティを軽くする・避ける方法
期限内の申告・納付が第一
もっとも確実なのは、10か月の期限内に申告し、納付することです。
遺産分割がまとまらない場合でも、期限は延びません。
その場合は、いったん法定相続分で申告・納付をしておきます(相続税法第55条)。
このとき「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、後で分割が成立したときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って更正の請求ができます。
納税資金が足りない場合には、延納や物納という制度もあります。
いずれも期限までに申請が必要ですので、早めにご相談ください。
調査の通知前に自主的に申告する
申告した後で漏れに気づいた、あるいは申告が必要だったと後から分かった、という場合もあります。
このときは、税務調査の通知が来る前に動くかどうかで負担が変わります。
・過少申告……調査通知前の修正申告なら加算税なし。通知後は5%(超過部分10%)、指摘後は10%(同15%)
・無申告……調査通知前の期限後申告なら5%。通知後は10%から、指摘後は15%から
気づいた時点でできるだけ早く動くことが、そのまま負担の軽減につながります。
なお、自主的に申告しても延滞税は発生しますので、納付も同時に行うことが大切です。
課されそうな場合・課された場合の対応
税務調査への対応
相続税の税務調査は、申告から1年から2年ほど経ってから行われることが多いといわれています。
調査の前には、原則として事前通知があります。
通知を受けたら、まず申告の内容と手元の資料を照らし合わせて、指摘されそうな点を洗い出しておきます。
とくに、亡くなる前の預金の出入り、家族名義の預金、生前贈与の有無は、必ずといっていいほど確認されます。
資料の準備と、聞かれたことにどう答えるかの整理ができているかで、調査の進み方は大きく変わります。
分からないことを推測で答えると、後で説明が食い違い、隠蔽を疑われる原因にもなります。
不服がある場合に争う手段
加算税の賦課決定に納得できない場合には、争う手段が用意されています。
・再調査の請求……処分をした税務署長などに対して見直しを求める
・審査請求……国税不服審判所長に対して審査を求める
・税務訴訟……裁決に不服がある場合に裁判所に訴える
再調査の請求と審査請求は、どちらを先に行うかを選ぶことができます(国税通則法第75条1項1号)。
期間は短く、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内です(同法第77条1項)。
とくに重加算税は、故意の隠蔽・仮装があったかどうかが要件ですので、争う余地のある処分です。
通知書が届いたら、期間が経過する前にご相談ください。
悪質な脱税は刑事罰の対象になりうる
加算税は行政上の措置ですが、悪質な場合には刑事罰の対象にもなります。
偽りその他不正の行為により相続税を免れた者は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定められています(相続税法第68条1項)。
免れた税額が1,000万円を超えるときは、情状により罰金の上限がその税額まで引き上げられます(同条2項)。
申告書を提出しないことにより相続税を免れた場合についても、別に罰則が定められています(同条3項)。
実際に刑事事件になるのは、金額が大きく、手口が計画的なものに限られますが、制度としてこうした定めがあることは知っておいてください。
弁護士と税理士のワンストップ対応
もめて申告期限に間に合わないおそれがある場合
加算税や延滞税でご相談をいただくきっかけとして多いのが、遺産分割がまとまらないというものです。
分け方が決まらないと財産の全体像もつかみにくく、気づいたら10か月が迫っている、という状況になりがちです。
この場合、法定相続分での申告と分割見込書の提出で期限に間に合わせつつ、遺産分割の交渉を並行して進めることになります。
他の相続人との交渉を代理することができるのは、弁護士に限られます(弁護士法第72条)。
他の相続人が財産の内容を明かさない場合には、弁護士会を通じて金融機関などに照会をかける方法もあります(弁護士法第23条の2)。
申告・税務調査対応と不服申立てを一括で
相続税の申告と税務調査への対応は税理士の業務です(税理士法第2条1項)。
一方、処分に対する不服申立てや税務訴訟の代理は弁護士が行います。
当事務所はグループの税理士法人と連携していますので、遺産分割の交渉から申告、調査対応、争う場面まで、窓口を分けずに進めることができます。
遺言・相続に関する初回のご相談は無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
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よくある質問+まとめ
ただし、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合で、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告したときは、無申告加算税は課されません(国税通則法第66条9項)。
この場合でも、延滞税は納付が遅れた日数に応じて発生します。
税務調査の通知が来る前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税は課されません。
無申告の場合も、通知前に期限後申告をすれば5%で済みます。
通知が来た後でも、指摘される前に申告すれば税率は下がりますので、気づいた時点で早めに動くことが大切です。
財産の存在を知らずに漏れた、評価を誤ったといった場合は申告漏れで、過少申告加算税や無申告加算税の対象になります。
財産があることを知りながら意図的に隠した、書類を作り替えたといった場合には、重加算税の対象となり、悪質であれば刑事罰の対象にもなりえます。
再調査の請求または審査請求のいずれかを選んで申し立て、その結果にも不服があれば税務訴訟という流れになります。
重加算税は故意の隠蔽・仮装があったことが要件ですので、単なる申告漏れとの評価をめぐって争点になりやすい処分です。
期間は処分を知った日の翌日から3か月と短いので、早めにご相談ください。
まとめ
このページでは、相続税の延滞税・加算税についてお伝えしました。
延滞税は納付の遅れに対する利息にあたるもので、加算税は適正な申告をしなかったことへの制裁です。
加算税の負担は、税務調査の通知が来る前に自分から申告するかどうかで大きく変わります。
また、故意の隠蔽・仮装があると重加算税となり、繰り返しの場合はさらに10%が加重されます。
遺産分割がまとまらず期限が迫っている場合や、調査の通知が届いた場合には、早めに弁護士に相談をしてみましょう。
当事務所では、遺言・相続に関する初回のご相談を無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
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