
目次
- 遺留分の割合とは(総体的遺留分と個別的遺留分の2段階)
- 総体的遺留分と個別的遺留分の2段階
- 誰に遺留分があるか(遺留分権利者の範囲)
- 配偶者・子・直系尊属にはあり、兄弟姉妹にはない
- 代襲相続人(孫)にはあり、胎児にもある
- 相続放棄した人にはない
- 総体的遺留分の割合
- 直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外は2分の1
- 個別的遺留分の割合
- 総体的遺留分に法定相続分をかけて求める
- 前提となる法定相続分(民法第900条)
- 相続人の組み合わせ別の遺留分割合と具体例
- 組み合わせ別の遺留分割合
- 遺産3,000万円の場合の金額例
- 遺留分の金額を求めるには(計算の入口)
- 基礎財産に割合をかけて求める
- 詳しい計算は計算方法のページ・簡易計算ツールで
- 弁護士に相談するメリット
- 基礎財産の範囲の判断で金額は大きく変わる
- 正確な算定・1年の期限内の請求・交渉や調停の代理
- 税理士法人との連携で相続税まで対応できる
- よくある質問+まとめ
- 兄弟姉妹に遺留分はない?
- 孫は請求できる?
- 相続放棄したら遺留分はどうなる?
- 遺産3,000万円なら遺留分はいくら?
- まとめ
遺留分の割合とは(総体的遺留分と個別的遺留分の2段階)
総体的遺留分と個別的遺留分の2段階
相続において、法定相続人に最低限保障されている権利のことを「遺留分」と呼んでいます。
遺留分の侵害があった場合には、受遺者・受贈者に対して、遺留分侵害額請求という金銭での請求をすることができます(民法第1046条)。
いくらの金額について遺留分侵害額請求ができるのかについて、民法では割合で示されているので、遺留分侵害額請求をするためには遺留分割合がどのくらいあるのかを知っておく必要があります。
遺留分の割合には、遺留分権利者全員に対して保障されている「総体的遺留分」と、個別の相続人に割り当てられている「個別的遺留分」があります。
つまり、遺留分の割合は2段階で決まります。
まず、遺留分権利者全体でどれだけ確保されるかを決め(総体的遺留分)、次にそれを各相続人に振り分ける(個別的遺留分)という順序です。
自分がいくら請求できるのかを知るには、この2段階を順番にたどることになります。
誰に遺留分があるか(遺留分権利者の範囲)
配偶者・子・直系尊属にはあり、兄弟姉妹にはない
割合を計算する前に、そもそも自分に遺留分があるかを確かめておきましょう。
民法は「兄弟姉妹以外の相続人」に遺留分を認めています(民法第1042条1項)。
そのため、遺留分がある人とない人は次のように分かれます。
- 配偶者……遺留分がある
- 子(および代襲相続人である孫など)……遺留分がある
- 父母や祖父母などの直系尊属……遺留分がある
- 兄弟姉妹(および甥・姪)……遺留分はない
兄弟姉妹に遺留分が認められていないのは、被相続人と生活の結びつきが比較的薄く、遺産に対する期待を法律で保護する必要性が低いと考えられているためです。
そのため、子などの直系卑属も、親・祖父母などの直系尊属もいない方が「全財産を配偶者に相続させる」という遺言を残した場合、兄弟姉妹は遺留分を主張することができません。
なお、遺留分があるのは相続人になった人だけです。
子がいる場合、父母や祖父母は相続人になりませんので、遺留分もありません。
代襲相続人(孫)にはあり、胎児にもある
被相続人の子が先に亡くなっている場合、その子(被相続人から見た孫)が代襲して相続人になります(民法第887条2項)。
代襲相続人は、本来の相続人が受けるはずだった相続分をそのまま引き継ぎますので(民法第901条1項)、遺留分も同じように引き継ぎます。
孫が2人いる場合には、本来の子1人分を2人で分けることになります。
また、胎児は相続については既に生まれたものとみなされますので(民法第886条1項)、無事に生まれれば遺留分を持つ相続人として扱われます。
一方、兄弟姉妹の代襲相続人である甥・姪には、もともと兄弟姉妹に遺留分がないため、遺留分もありません。
相続放棄した人にはない
家庭裁判所で相続放棄をした人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。
相続人でない以上、遺留分もありません。
注意していただきたいのは、相続放棄をした人がいると、他の相続人の遺留分の割合が変わることがある点です。
たとえば、配偶者と子2人が相続人のケースで、子の1人が相続放棄をすると、残る子1人の法定相続分は4分の1から2分の1に増え、遺留分も4分の1に増えます。
なお、遺留分を放棄する手続きは相続放棄とは別のもので、相続開始前であれば家庭裁判所の許可を受けて遺留分だけを放棄することもできます(民法第1049条1項)。
総体的遺留分の割合
直系尊属のみが相続人なら3分の1、それ以外は2分の1
総体的遺留分については、民法第1042条1項に次のように規定されています。
- 直系尊属のみが相続人である場合:1/3
- それ以外の場合:1/2
- 兄弟姉妹には遺留分はない
「直系尊属」は、親や祖父母がこれに該当いたします。
個別的遺留分の割合
総体的遺留分に法定相続分をかけて求める
遺産に以上の遺留分割合をかければ相続における遺留分全体の額が計算できます。
相続人が複数いる場合には、個々の相続人が請求できる個別的遺留分の計算が必要です。
個別的遺留分の計算方法は、民法第1042条第2項に定められており、総体的遺留分に民法第900条・901条の規定に基づいて計算した各自の相続分をかけて計算します。
例えば、被相続人が夫で、法定相続人が妻と子ども2人である場合には、法定相続分は妻が1/2・子どもがそれぞれ1/4ずつとなります。
よって個別的遺留分は、総体的遺留分1/2に、各人の法定相続分をかけ、妻が1/4・子どもがそれぞれ1/8ずつとなります。
前提となる法定相続分(民法第900条)
個別的遺留分を求めるには、前提として自分の法定相続分を知っておく必要があります。
法定相続分は、相続人の組み合わせによって次のように決まっています(民法第900条)。
- 子と配偶者が相続人……子2分の1、配偶者2分の1
- 配偶者と直系尊属が相続人……配偶者3分の2、直系尊属3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人……配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
- 同順位の相続人(子、直系尊属、兄弟姉妹)が複数いるとき……各自の相続分は原則として等しい(民法第900条4号)
配偶者しかいない場合や、子だけが相続人である場合には、その人たちで全部を分けます。
父母の一方だけを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1になります(民法第900条4号ただし書)。
ただし、兄弟姉妹には遺留分がありませんので、この点が遺留分の計算に影響することはありません。
相続人の組み合わせ別の遺留分割合と具体例
組み合わせ別の遺留分割合
実際に多い組み合わせごとに、個別的遺留分の割合を並べると次のようになります。
- 配偶者のみ……配偶者2分の1
- 子のみ(1人)……子2分の1
- 子のみ(2人)……子それぞれ4分の1
- 子のみ(3人)……子それぞれ6分の1
- 配偶者と子1人……配偶者4分の1、子4分の1
- 配偶者と子2人……配偶者4分の1、子それぞれ8分の1
- 配偶者と直系尊属(父母2人)……配偶者3分の1、父母それぞれ12分の1
- 直系尊属のみ(父母2人)……父母それぞれ6分の1
- 配偶者と兄弟姉妹……配偶者2分の1、兄弟姉妹はなし
直系尊属のみが相続人のケースだけ、総体的遺留分が3分の1になる点にご注意ください。
父母2人が相続人であれば、3分の1を2人で分けて、それぞれ6分の1になります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人のケースでは、兄弟姉妹に遺留分がないため、配偶者の遺留分は2分の1と考えるのが一般的です。
遺産3,000万円の場合の金額例
遺産の額を3,000万円として、同じ前提で組み合わせだけを変えてみます。
(分かりやすさのため、生前贈与も債務もない前提で計算しています)
配偶者と子2人が相続人の場合は、次のようになります。
・配偶者……3,000万円×4分の1=750万円
・子……3,000万円×8分の1=375万円(1人あたり)
配偶者と父母2人が相続人の場合は、次のようになります。
・配偶者……3,000万円×3分の1=1,000万円
・父母……3,000万円×12分の1=250万円(1人あたり)
父母2人だけが相続人の場合は、次のようになります。
・父母……3,000万円×6分の1=500万円(1人あたり)
同じ3,000万円でも、誰が相続人かによって1人あたりの金額は大きく変わります。
遺留分の金額を求めるには(計算の入口)
基礎財産に割合をかけて求める
遺留分の金額は、割合だけでは決まりません。
何にその割合をかけるのか、つまり計算のもとになる財産の額を先に決める必要があります。
この計算のもとになる財産を、遺留分を算定するための財産(基礎財産)といいます。
基礎財産は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に、贈与した財産の価額を加え、そこから債務の全額を差し引いて求めます(民法第1043条1項)。
式にすると、次のとおりです。
・基礎財産=相続開始時の財産+一定の生前贈与−債務の全額
・遺留分の額=基礎財産×総体的遺留分×法定相続分
見落とされやすいのが、債務を差し引くという点です。
借金があると基礎財産は小さくなり、遺留分の額も下がります。
また、加算される生前贈与の範囲にも決まりがあります。
相続人以外の人への贈与は相続開始前の1年間にしたものに限られますが、相続人に対する贈与のうち婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本として受けたものは、相続開始前の10年間にさかのぼって加算されます(民法第1044条1項・3項)。
詳しい計算は計算方法のページ・簡易計算ツールで
実際に請求できる金額(遺留分侵害額)は、ここまでで求めた遺留分の額から、自分が遺贈や贈与で受け取った額と遺産分割で取得する額を差し引き、自分が承継する債務の額を加えて算出します(民法第1046条2項)。
つまり、すでに何かを受け取っている場合には、その分だけ請求できる額は減ります。
このページでは割合の考え方までをお伝えしましたので、計算の詳細は別のページでご確認ください。
当事務所では、金額の目安をその場で確かめられる簡易計算ツールもご用意しています。
弁護士に相談するメリット
基礎財産の範囲の判断で金額は大きく変わる
遺留分の割合そのものは、相続人の組み合わせが決まれば機械的に定まります。
実際に争いになるのは、割合ではなく基礎財産のほうです。
どの生前贈与が加算されるのか、不動産や自社株をいくらと評価するのか、名義預金は誰のものかといった点で、金額は大きく動きます。
とくに相続人に対する生前贈与は、10年前までさかのぼって加算されることがあり、それが分かるかどうかで結論が変わります。
生前の資金の流れは、通帳の取引履歴や不動産の登記の履歴から見えてくることが少なくありません。
正確な算定・1年の期限内の請求・交渉や調停の代理
遺留分侵害額の請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効によって消滅します(民法第1048条)。
相続開始の時から10年を経過したときも同様です。
1年という期間は、遺言の内容を知ってから相手方と話し合っているうちに過ぎてしまうことがあります。
まずは内容証明郵便で請求の意思を伝えて期間の経過を止め、そのうえで金額の交渉に入るのが実務的な進め方です。
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の遺留分侵害額の請求調停や訴訟に進みます。
他の相続人との交渉を代理することができるのは、弁護士に限られます(弁護士法第72条)。
税理士法人との連携で相続税まで対応できる
遺留分侵害額が確定すると、相続税の課税価格も変わります。
すでに申告を済ませている場合には、更正の請求や修正申告が必要になることがあります。
当事務所はグループの税理士法人と連携しており、遺留分の請求から相続税の対応まで、窓口を分けずに進めることができます。
遺言・相続に関する初回のご相談は無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
無料
よくある質問+まとめ
民法は「兄弟姉妹以外の相続人」に遺留分を認めているため(民法第1042条1項)、兄弟姉妹と、その代襲相続人である甥・姪には遺留分がありません。
そのため、子などの直系卑属も、親・祖父母などの直系尊属もいない方が配偶者にすべてを相続させる遺言を残せば、その内容がそのまま実現されることになります。
代襲相続人は、本来の相続人が受けるはずだった相続分を引き継ぐためです(民法第901条1項)。
一方、子が健弱で孫が相続人になっていない場合には、孫に遺留分はありません。
遺留分だけを放棄したい場合には、相続開始前であれば家庭裁判所の許可を受けて遺留分の放棄をする方法があります(民法第1049条1項)。
相続開始後であれば、家庭裁判所の許可は不要で、請求しないという選択をすれば足ります。
配偶者と子2人であれば、配偶者が750万円、子がそれぞれ375万円です。
ただし、これは生前贈与も債務もない場合の目安です。
実際には、生前贈与を加算し債務を差し引いた基礎財産に割合をかけますので、金額は変わります。
まとめ
このページでは、遺留分の割合についてお伝えしました。
遺留分の割合は、まず遺留分権利者全体の取り分(総体的遺留分)を決め、次にそれに法定相続分をかけて各自の取り分(個別的遺留分)を求めるという2段階で決まります。
総体的遺留分は、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1で、兄弟姉妹に遺留分はありません。
もっとも、実際に請求できる金額は、生前贈与をどこまで加算するか、財産をいくらと評価するかによって大きく変わります。
また、遺留分侵害額の請求には知った時から1年という期間の制限があります。
ご自身の割合や金額に不安がある場合には、早めに弁護士に相談をしてみましょう。
当事務所では、遺言・相続に関する初回のご相談を無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。
遺留分侵害額請求に関する当事務所の弁護士監修コラム


遺産分割調停を弁護士に依頼する場合の費用について解説



