目次

相続税の控除の全体像

相続税の計算において、各人の相続税額が決まったあとに、加算・控除がされることになります。

控除には次のようなものがあります。

・配偶者の税額軽減
・未成年者の税額控除
・贈与財産の加算と税額控除
・障害者控除
・相次相続控除
・外国税額控除


以下で概要を確認しましょう。

課税価格から差し引くものと、税額から差し引くもの

相続税を減らす仕組みは、差し引く段階によって2つに分かれます。
この違いを押さえておくと、全体の見通しが立てやすくなります。


・課税価格から差し引くもの……基礎控除、債務控除・葬式費用、生命保険金や死亡退職金の非課税枠、小規模宅地等の特例
・税額から差し引くもの……配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、贈与税額控除、相次相続控除、外国税額控除


相続税は、まず遺産の総額から基礎控除を引いて課税の対象となる金額を求め、それをもとに相続税の総額を計算します。
そのうえで各人の税額を出し、最後に税額から差し引く控除を適用する、という順序です。
課税価格から差し引くものは全員の税額に影響しますが、税額から差し引くものは、その人の税額だけを減らします。

基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)

計算式と例(基礎控除以下なら申告は不要)

相続税には、誰にでも適用される基礎控除があります。
計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です(相続税法第15条1項)。
たとえば、相続人が配偶者と子2人であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額です。
遺産の総額がこの金額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。

法定相続人の数の数え方には、いくつか決まりがあります。

・相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます
・養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までしか数えられません

ただし、特別養子縁組による養子や、配偶者の実子で被相続人の養子となった人などは、実子として扱われます(相続税法第15条3項)。

詳しい計算は相続税の計算方法のページで

基礎控除を超える場合には、そこから相続税の総額を計算していくことになります。
計算の手順は、課税遺産総額を法定相続分で按分し、税率表を当てはめて各人の税額を出し、それを合計して相続税の総額を求める、という流れです。
このページでは控除の種類を中心にお伝えしますので、計算の詳細は別のページでご確認ください。

債務控除・葬式費用(遺産から差し引けるもの)

対象になるもの

相続によって財産を取得した人は、被相続人の債務と葬式費用を、課税価格から差し引くことができます(相続税法第13条1項)。
対象になるのは、次のようなものです。

・借入金(住宅ローン、事業用の借入れなど)
・未払いの医療費、施設の利用料
・未払いの公租公課(固定資産税、住民税、被相続人の所得税など)
・預かっている敷金・保証金の返還義務
・通夜・告別式の費用、火葬・埋葬の費用、お寺への読経料


差し引ける債務は、確実と認められるものに限られます(相続税法第14条1項)。
保証債務のように、実際に負担するかどうかが不確実なものは、原則として対象になりません。
なお、住宅ローンに団体信用生命保険がかかっている場合は、保険金でローンが完済されますので、債務控除の対象にはなりません。

対象にならないもの

一方、次のようなものは差し引くことができません。

・香典返しの費用
・初七日や四十九日など、法要にかかった費用
・墓地・墓石・仏壇の購入費用(非課税財産にかかる債務のため)
・遺体の解剖にかかった費用


香典返しが対象外なのは、受け取った香典が相続税の対象になっていないためです。
また、墓地や仏壇は相続税の非課税財産ですので(相続税法第12条1項2号)、その購入のための未払金も差し引けません。
生前に墓地や仏壇を購入して代金を支払っておけば、その分は課税される財産が減ることになります。

弁護士費用・税理士費用は相続税から控除できる?

相続開始後に生じる費用のため債務控除の対象にならない

遺産分割を弁護士に依頼した費用や、相続税の申告を税理士に依頼した費用は、相続税から差し引けるのでしょうか。
結論としては、債務控除の対象にはなりません。
債務控除の対象となるのは「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」だからです(相続税法第13条1項1号)。
弁護士費用や税理士費用は、相続が始まった後に相続人が自分の判断で契約して生じる費用で、被相続人の債務ではありません。

同じ理由で、次のような費用も対象外です。

・遺産分割にかかった費用(鑑定費用など)
・相続登記の登録免許税、司法書士の報酬
・戸籍の取得費用
・遺言執行者に支払う報酬


「相続開始の時点で確定している被相続人の債務かどうか」が判断の基準になります。
被相続人が生前に依頼していた弁護士費用の未払分であれば、被相続人の債務ですので、債務控除の対象になります。

配偶者の税額軽減

1億6,000万円か法定相続分のどちらか多い額まで

相続税法第19条の2に規定されているもので、被相続人の配偶者が相続をする遺産の価額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、相続税はかからないとするものです。

この税額軽減は、配偶者が遺産分割で得た遺産によって計算するので、申告までに遺産分割が行われていない場合には利用できません。
もし、10ヶ月の相続税の申告期間内に間に合わない場合には、一旦は申告期限後3年以内の分割見込書を添付して申告・納税を行い、3年以内に遺産分割を行って更正の請求を行って配偶者の税額軽減を適用してもらうことで、納めすぎていた税金を返してもらいます。

3年を経過するような場合でも、3年を経過した日の翌日から2ヶ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出して承認を受け、遺産分割ができなくなった事情が解消して4ヶ月以内に遺産分割を行えれば、配偶者の税額軽減の制度を適用することが可能です。

未成年者の税額控除

18歳に達するまでの年数×10万円

相続人が未成年者である場合には、未成年者控除の対象となり(相続税法第19条の3)、18歳に達するまでの年数に10万円をかけた金額の控除を受けることができます。
以前は20歳を基準としていましたが、成年年齢の引下げに伴い、現在は18歳が基準です。

年数に1年未満の端数があるときは、切り上げて1年として計算します。
たとえば15歳6か月の相続人であれば、18歳まで2年6か月ですので3年として扱い、10万円×3年=30万円が控除額になります。
控除しきれない金額があるときは、その未成年者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます(同条2項)。

贈与財産の加算と税額控除

加算期間は7年へ段階的に延長

相続開始前に生前贈与した財産は、相続税の対象となる遺産として加算されます。加算の対象になるのは、相続や遺贈によって財産を取得した人(相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人を含みます)が被相続人から受けた贈与であり、相続で財産を取得していない人への贈与は加算されません。

この加算の対象となる期間は、従来は相続開始前3年以内でしたが、税制改正により7年以内に延長されました(相続税法第19条1項)。
延長された部分については、緩和措置が設けられています。
相続開始前3年以内に取得した財産以外、つまり4年前から7年前までの贈与については、その合計額から100万円を差し引いた残額が加算されます。
また、この改正は2024年1月1日以後の贈与から適用され、経過措置によって加算される期間は段階的に延びていきます。
そのため、相続の開始時期によって加算される期間が異なりますので、具体的な取扱いは税理士にご確認ください。

贈与税額控除(二重課税の調整)

ただし、この贈与をするにあたって贈与税を支払っている場合には、贈与税と相続税で二重に課税されることになります。
そのため、該当する贈与税は控除の対象となります(相続税法第19条、相続税法施行令4条)。

障害者の税額控除

85歳に達するまでの年数×10万円

相続人が障害者である場合には、今の年齢から満85歳に達するまでの年数に10万円をかけた額の控除を受けることができます(相続税法第19条の4)。
障害者の中でも症状が重いとされる特別障害者に該当すると、20万円をかけることになります。

相次相続控除

10年以内に相次いで相続があった場合

相続が複数重なることを相次相続といいます。
たとえば、父が亡くなった直後に母が亡くなった場合、父母の子どもは父の相続・母の相続と、相次相続を行うことになります。
10年以内に相次相続をした場合には、一定の金額の控除を受けることができます(相続税法第20条)。

外国税額控除

外国で課された相続税相当額の控除

遺産が国外にあり、外国で相続税に相当する課税がされている場合があります。
この場合に日本の相続税法で課税をすると二重課税になるので、相続税額から控除をすることになります(相続税法第20条の2)。

あわせて確認したい非課税枠・特例

生命保険金・死亡退職金の非課税枠

生命保険金と死亡退職金は、民法上は相続財産ではありませんが、相続税ではみなし相続財産として課税の対象になります。
ただし、それぞれに非課税枠が設けられています。

・生命保険金……500万円×法定相続人の数(相続税法第12条1項6号)
・死亡退職金……500万円×法定相続人の数(同項7号)


相続人が3人であれば、生命保険金は1,500万円まで、死亡退職金も1,500万円まで課税されません。
この非課税枠は、相続人が受け取った場合に限られます。
相続放棄をした人や、相続人でない人が受け取った場合には適用されませんのでご注意ください。

小規模宅地等の特例

被相続人が住んでいた宅地や、事業に使っていた宅地については、評価額を大幅に下げられる特例があります(租税特別措置法第69条の4)。
居住用の宅地であれば、330平方メートルまでの部分について評価額を80%減額できます。
自宅の評価が下がることで、相続税がゼロになることもある、影響の大きい特例です。ただし、この特例を使って税額がゼロになる場合でも、相続税の申告自体は必要です。
ただし、誰が取得するか、その後も住み続けるかといった要件が細かく定められています。
また、配偶者の税額軽減と同じく、原則として申告期限までに遺産が分割されていることが前提です(同条4項)。

もめている相続の相続税は弁護士と税理士のワンストップで

もめていると税額軽減・特例が期限までに使えないおそれ

相続税の控除のうち、影響がとくに大きいのが配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例です。
この2つには共通の落とし穴があります。
いずれも、原則として申告期限までに遺産が分割されていることが前提になっている、という点です。
遺産分割でもめていると、10か月の申告期限までに分割が終わらず、これらを使えないまま申告することになります。

その場合は、いったん法定相続分で申告・納付をしておきます(相続税法第55条)。
このとき「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことが欠かせません。
これを付けておけば、申告期限から3年以内に分割が成立したときに、更正の請求によって特例の適用を受けられます。
添付を忘れると、後から分割がまとまっても適用を受けられなくなるおそれがあります。

紛争解決と申告・控除の適用を一括で

つまり、もめている相続では、遺産分割の交渉と相続税の申告を同じ時間軸で進める必要があります。
他の相続人との交渉を代理することができるのは、弁護士に限られます(弁護士法第72条)。
一方、相続税の申告や税務代理は税理士の業務です(税理士法第2条1項)。

当事務所はグループの税理士法人と連携していますので、遺産分割の交渉を進めながら、期限に間に合う形で申告の準備を並行して進めることができます。
分け方によって使える特例が変わりますので、分割の内容を決める段階から税務の見通しを踏まえられる点も、連携している強みです。
遺言・相続に関する初回のご相談は無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。

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よくある質問+まとめ

債務控除の対象にはなりません。
債務控除の対象は「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」に限られ(相続税法第13条1項1号)、相続開始後に相続人が依頼して生じた費用は含まれないためです。
税理士費用、相続登記の登録免許税、司法書士の報酬なども同じ理由で対象外です。
遺産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。
ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、申告が必要です。
これらは申告することが適用の要件になっているためです。
「税額がゼロだから申告しなくてよい」とは限らない点にご注意ください。
配偶者が取得した遺産の額が1億6,000万円までであれば、相続税はかかりません。
法定相続分相当額のほうが多い場合は、その金額までが無税になります。
ただし、申告期限までに遺産分割が成立していることが原則として必要で、申告も必要です。
なお、配偶者が多く取得すると、その配偶者が亡くなったときの相続(二次相続)で税負担が重くなることがあります。
一次相続と二次相続を通した負担を見ながら分け方を決めることをおすすめします。
従来の3年以内から、7年以内に延長されています(相続税法第19条1項)。
延長された4年前から7年前までの部分については、合計額から100万円を差し引いた残額が加算されます。
2024年1月1日以後の贈与から適用され、経過措置により加算される期間は段階的に延びていきます。

まとめ

このページでは、相続税の各種控除についてお伝えしました。
控除は、課税価格から差し引くもの(基礎控除・債務控除・非課税枠・小規模宅地等の特例)と、税額から差し引くもの(配偶者の税額軽減・未成年者控除・障害者控除・贈与税額控除・相次相続控除・外国税額控除)に分けて整理すると分かりやすくなります。
影響が大きい配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、原則として申告期限までに遺産分割が成立していることが前提です。
遺産分割でもめていると、これらを使えないまま申告することになりかねません。
分け方が決まらないまま申告期限が近づいている場合には、早めに弁護士に相談をしてみましょう。
当事務所では、遺言・相続に関する初回のご相談を無料でお受けしています(ご依頼いただく場合には、別途弁護士費用と実費が発生します)。

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