
- 成年後見制度の概要
- 家族も欠格事由さえなければ成年後見人になれる
- 家族が成年後見人になる場合の注意点
【Cross Talk 】成年後見人は家族でもなれるのでしょうか。
父が認知症にかかり成年後見制度の利用を考えています。いろいろ調べていると弁護士などの専門職にある人の情報発信をよく見るのですが、成年後見人は専門職の方がなるのですか?私たち家族は成年後見人になれないのでしょうか。
専門職が成年後見人になるケースは増えていますが、家族も成年後見人になることができます。ただし、裁判所への報告など負担になることもあるので、注意をしましょう。
そうなんですね、詳しく教えてもらえますか?
コンビニで食料を買う・住んでいる家の賃貸借契約をするなどの法律行為は日常生活に欠かせません。他方で、判断能力を失ってしまった状態の人に行わせることが必ずしも適切ではない契約も存在することから、民法で後見人という保護者をつける成年後見制度というものが用意されています。
この成年後見人には欠格事由がない限り家族もなることは可能ですが、注意もあります。このページでは家族も成年後見人になれるのか、なる場合の注意点についてお伝えいたします。
成年後見制度の概要

- 成年後見制度とは
- 家族も成年後見人になれる
- 成年後見制度を利用する場合の手続き
家族も成年後見人になることができるのでしょうか。
はい、家族も成年後見人になることが可能です。 成年後見制度が何をするものかと併せて確認しましょう。
家族も成年後見人になることができることを、成年後見制度の概要とともに確認しましょう。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、高齢や認知症が原因で判断能力を失って契約などの法律行為ができなくなったときに、後見人をつけて援助をする制度のことをいいます。 コンビニで食料を買う・住むための自宅の賃貸借契約をする・働く場所を探すための雇用契約を結ぶといった法律行為は、私たちの日常生活に必要不可欠です。
法律行為をするには、法律行為をするとどのような結果になるのかを認識できることが必要で(このような能力のことを意思能力と呼んでいます)、意思能力がない者の行為は無効とされることになっています(民法第3条の2)。 高齢や認知症などが原因で契約ができない状態になってしまったときに、本人を保護するための制度として成年後見制度がおかれています(民法7条以下)。
関連記事:法定後見と任意後見二つの成年後見制度の違いについて解説
成年後見人は何をするのか
成年後見制度において成年後見人は何をするのでしょうか。 成年後見人の主な職務は、本人の財産管理・療養介護に必要な法律行為を代理することです。 成年後見を利用すると、本人(成年被後見人と呼びます)は、日用品の購入などの日常生活を営むのに必要なこと以外の法律行為は制限されます。 そのため、成年後見人は、本人のために契約を代理したり、各種の支払いを行ったりします。
また、本人が一人でいる間に自宅に上がり込んだ人に無理やり契約をさせられるような場合も考えられますが、成年後見人は、こうした契約について取り消しすることができます。 一連の行為については年に1回家庭裁判所に報告をする義務があります。
成年後見人になれる人
ここまで法律的な話をしていることから、成年後見人になるためには何らかの資格などが必要と思えます。
しかし、成年後見人になれる人は、後述するように法律上成年後見人になれない人以外、どなたでも成年後見人になることが可能です。弁護士、司法書士、介護福祉士などの法律・介護の専門家も成年後見人になることがありますが、親族等でもなることが可能です。
成年後見人になれない人
民法847条は成年後見人になれない人として次の者を欠格事由としています。
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人
- 破産者
- 被後見人に対して訴訟をし、またはした者並びにその配偶者及び直系血族
- 行方の知れない者
欠格事由に該当する人は、成年後見人となることができません。
関連記事:成年後見人になる人・なれない人とは?資格は必要?必要な手続きについて
家族は成年後見人になれるのか
家族は欠格事由にあたらない限り、成年後見人になることができます。 なお、2019年に厚生労働省で行われた第3回成年後見制度利用促進専門家会議において、最高裁判所としては「後見人となるにふさわしい親族等の身近な支援者がおり、中核機関等による親族後見人への継続的な支援が期待できる場合には、これらの者を後見人に選任することが望ましい」としており、親族が成年後見人となることに最高裁判所は積極的であるといえます。
家族が成年後見人になるメリット
家族が成年後見人になるメリットとしては次の3つが挙げられます。
- 安心して遺産の管理を任せられる
- お金の使い方・介護の方針について本人の希望に沿える
- 報酬がかからない
専門家に成年後見人となってもらうことは面識のない第三者に遺産の管理をまかせることになります。 専門家には不正をしないような仕組みはあるものの、時折成年後見人による不祥事は発生しており、どうしても不安になることがあります。 親族であれば、このような心配が少なく、安心して遺産の管理を任せることができます。
また、成年被後見人の考えが分かるように、親族に成年後見人に就任してもらえれば、成年被後見人が望むお金の使い方・介護の方針に沿って成年後見業務を行ってもらうことが期待できます。
さらに、専門家に成年後見業務を行ってもらう場合には報酬を支払う必要がありますが、親族に成年後見業務を行ってもらう場合には報酬を支払わなくてもかまいません(支払ってもかまいません)。 専門家に依頼する場合に比べて、経済的負担を和らげることが可能です。
家族が成年後見人になるデメリット
家族が成年後見人になるデメリットとしては、次の2つが挙げられます。
- 成年後見人になる親族の事務的な負担が増える
- 成年後見人になる親族による使い込みが起きる可能性がある
まず、親族であっても成年後見人になる以上、法律で規定されていることを行わなければなりません。裁判所への報告などの義務は親族であれば免除されるわけではないので、成年後見人に就任した人は裁判所への報告などの事務的な負担が増えます。
また、親族であることから金銭的な管理にルーズになってしまい、着服をする事例の増加が報告されています。 着服によってトラブルに発展することもあるので注意が必要です。
家族が成年後見人になれない場合
家族が成年後見人になることは問題ないのですが、後見人予定者として家族を指定しても、家庭裁判所が成年後見人として申請された家族の選任を認めない場合があります。
次のような事情がある場合には、家族であっても成年後見人として選任してもらえない可能性があります。
- 親族間で成年後見人の選任についての意見の対立がある
- 本人に賃料収入等の収入がある場合
- 本人の遺産が多額である場合
- 本人の遺産を運用することを成年後見人予定者が考えている場合
- 本人の財産状況が不明確であり着服のおそれがある
- 成年後見人になろうとしている人が本人の遺産を利用しようとしている場合
もし、成年後見人になれる場合でも、成年後見監督人を別途選任することもあります。
実際に家族が成年後見人になるのはどのくらいか?
実際に家族が成年後見人になる割合はどのくらいなのでしょうか。 この点について、裁判所が発表している令和4年1月から12月までの成年後見関係事件の概況によると、全39,564件のうち、親族が成年後見人となる割合は7,560件で、全体の約19.1%程度となっています。
成年後見監督人はどのようなことをするの?
場合によっては、成年後見監督人が選任されます。 成年後見監督人とは、成年後見人の行為を監督する人のことで、民法851条で次の職務を行うとしています。
- 成年後見人の事務の監督
- 成年後見人が欠けた場合に遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求
- 急迫の事情がある場合に必要な処分をする。
- 成年後見人と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表する
成年被後見人の資産や賃料収入などが多いような場合に、成年後見人が不正を行わないよう監督するために選任されることがあります。
成年後見制度を利用する手続きの概要
成年後見の開始と成年後見人の選任は、家庭裁判所による審判によって行われます。 申立てをする際には、申立書および添付書類を作成して裁判所に申立てを行います。 成年後見人になりたい人・したい人がいる場合には、この際に候補者を推薦することができ、そのための書類が用意されています。
任意後見制度の利用
将来判断能力を欠いた場合にそなえて、任意後見制度を利用することも検討しましょう。 任意後見制度とは、判断能力があるうちに任意後見契約を結んでおき、判断能力が衰えた際に任意後見人が後見事務を行うものです。
任意後見制度によれば、後見事務の内容を契約で決めておくことが可能なので、成年後見制度(任意後見制度と対比する場合は法定後見制度ともいいます)よりも自由度が高いものです。 将来判断能力が落ちた際の対応については、任意後見制度の利用も検討するのが良いでしょう。
後見制度支援信託
成年被後見人となる人に財産がある場合には後見制度支援信託を利用することも検討しましょう。 後見制度支援信託とは、成年被後見人が生活をするための費用を成年後見人が管理し、それ以外の財産については金融機関に信託を行うものです。
成年後見制度では本人の看護療養のための支出しかできず、その他の財産を守るための行動を取ることができない可能性が高いです。 そのため、遺産を守るために後見制度支援信託を、信託銀行等に管理を任せるために、後見制度支援信託を利用します。
このとき、成年後見人は原則として専門家が選任され、その専門家が後見制度支援信託については家庭裁判所と協議を行い、裁判所からの指示に基づいて遺産の信託を行います。 一度後見制度支援信託の利用が開始されれば、専門家が成年後見人になる必要も低いことから、親族などに成年後見人を引き継いでもらうことも可能です。
家族が成年後見人になる場合の注意点

- 裁判所への報告は負担である
- 原則として亡くなるまで成年後見人を代わることはできない
家族が成年後見人になるのに注意すべき点はありますか?
やはり裁判所への報告が負担であると考える人は多いようです。
家族が成年後見人となる場合にはどのような注意が必要でしょうか。
裁判所への報告は大きな負担となる
成年後見人は毎年家庭裁判所に後見事務の内容・財産目録・収支表などを作成して報告する必要があります。 そうしたこともあって、弁護士等の専門職にある人は、報酬を得ながら成年後見を行っています。
家族などの専門職以外の方が成年後見人となった場合、こうした報告が非常に大きな負担となることを覚悟しなければなりません。
原則亡くなるまで成年後見人を代わることはできない
成年後見人は原則として、正当な事由を裁判所が認めない限り、成年被後見人が亡くなるまで、成年後見人を代わってもらったり、辞職をすることができません。
長年にわたって後見事務をするような場合、当初は時間があったので引き受けたにもかかわらず、だんだん事務を引き受ける時間がなくなった場合でも、成年後見人を辞職することができないので注意しましょう。
場合によっては成年後見監督人がつけられることもある
遺産があまりにも多い場合や、内容が複雑な場合には、不正をしないように成年後見監督人がつけられることがあります。 成年後見監督人とは、成年後見人の職務を監視する役割の人で、成年後見監督人から事務に関する報告を求められたときは、成年後見人はきちんと対応する必要があります。
また、一部の後見事務をするにあたって成年後見監督人の許可が必要になるような場合もあるので、手続きが煩雑になる可能性があります。
まとめ
このページでは、家族が成年後見人になることができるか、その場合の注意点などについてお伝えしました。 家族でも成年後見人にはなれますが、家庭裁判所への報告義務などの負担があることに留意しておきましょう。 不明な点や不安な点がある場合には、弁護士に成年後見人を依頼することをおすすめいたします。

- 判断力があるうちに後見人を選んでおきたい
- 物忘れが増えてきて、諸々の手続きに不安がある
- 認知症になってしまった後の財産管理に不安がある
- 病気などにより契約などを一人で決めることが不安である
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この記事の監修者
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