遺言をする場合の注意点として、遺言に必要な期間やタイミングなどを解説します。
ざっくりポイント
  • 遺言をするのは一般に早ければ早いほどよい
  • 遺言のタイミングは定年退職後や健康が悪化した場合など
  • 遺言を一度してもいつでも撤回することができる
目次

【Cross Talk 】定年後の遺言は必要?タイミングは?

会社を定年退職したので、これを機に遺言をしておこうかと考えています。それとも、まだ早いでしょうか?

万が一の事故や病気などを考えると、遺言をするのは早ければ早いほど安心といえます。それに、遺言は一度しても撤回することができますよ。

撤回できるなら、早めにしておいたほうがよさそうですね。遺言をする場合の注意点も教えてください。

万が一の事態を考えると、遺言をするのは早ければ早いほどよい。遺言は一度しても撤回ができる。

自分が亡くなったときに備えて遺言をしておくのは、何らかのきっかけがなければあまり考えないことかもしれません。 しかし、不慮の事故や病気など、遺言をしておけばよかったという事態に遭遇する可能性は誰にでもあります。また、遺言は一度しても撤回することが可能です。 そこで今回は、遺言をすべきタイミングや注意点、撤回の方法などを解説します。

遺言は早ければ早いほうがいい

知っておきたい相続問題のポイント
  • 公正証書遺言は作成するのに2週間程度かかる点に注意
  • 遺言をするのは、基本的には早ければ早いほどいい

遺言書を作成しようかと思っているのですが、遺言はいつまでにすべきですか?

いつ相続が発生するか厳密にはわからない点を考えると、基本的には、遺言をするのは早ければ早いほどいいですね。方式によっては、遺言書を作成するのに時間がかかる点にも注意しましょう。

遺言をするために必要な期間

遺言をするにあたっては、遺言書を作成すること自体にある程度の時間がかかることを考慮する必要があります。 遺言ができる方式は法律で限定されており、決まった方式を満たさなければ、せっかく遺言書を作成しても遺言としての効力が認められません(民法第960条)。 法律が定める遺言の方式は、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類です。このうち、秘密証書遺言と公正証書遺言は、遺言を完成させるために公証役場に赴いて手続きをする必要があります。

遺言を完成させるのに必要な期間のおおまかな目安としては、秘密証書遺言が1週間、公正証書遺言が2週間です。

自筆証書遺言は公証役場に行く必要がなく、自分で作成することができますが、方式をきちんと満たさなければ遺言としての効力が生じない点に注意しましょう。

遺言は早ければ早いほうがいい

遺言は法律上、満15歳からすることができます(民法第961条)が、いつくらいにすればいいのでしょうか。

一般的には、遺言をするのは早ければ早いほど相続に関するトラブルを防止しやすくなります。その大きな理由は、被相続人がいつ亡くなって相続が開始するかは、誰にもわからないからです。

健康状態が良好であっても、不慮の事故によって万が一の事態が発生することがあります。また、突然の病気などで意識不明の状態になった場合や、認知症などで判断能力が著しく低下した場合などは、遺言をすることが難しくなります。

後で詳しく解説しますが、一度遺言をしても、その後撤回することができるので、とりあえず現状にもとづいて遺言をしておいて、後で事情が変化した場合に対応することも可能です。

遺言をするタイミングを検討

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言をすべきタイミングは被相続人の立場や状況による
  • 子がいない夫婦、定年退職後、親の相続を見た、健康状態が悪化したなどは遺言をするタイミングにな

遺産をめぐる後々のトラブルを防止するために、どのタイミングで遺言をしておけばいいのかを知りたいです。

遺言をすべきタイミングは、被相続人の方の立場や状況によって異なりますので、ケースごとに見ていきましょう。

子のいない夫婦はすぐに遺言したほうがいい

子のいない夫婦は、遺言をすることをいつでも考えておくべきです。子が存在せずに相続となった場合には、配偶者だけでなく被相続人の親や兄弟姉妹と共同相続する可能性があるからです。 民法に規定されている相続人を法定相続人といいますが、子がいない場合の法定相続人は、被相続人の配偶者と、被相続人の親または兄弟姉妹です。

遺言をせずに被相続人が亡くなってしまうと、配偶者は被相続人の親または兄弟姉妹とともに被相続人の遺産を相続することになります。 これを防ぎたい場合、被相続人は自分が亡くなる前に遺言書を作成し、遺産の大部分を配偶者が相続する旨を定めておく必要があります。

ただし、被相続人の親については最低限の取り分である遺留分が法律で認められているため、遺留分を侵害する遺言をした場合(遺産の全てを配偶者に相続させるなど)は、その分を被相続人の親に請求される可能性がある点に注意しましょう。

なお、兄弟姉妹については遺留分がないため、自分の両親や祖父母が他界していて、兄弟姉妹が法定相続人になる場合は、遺言をする際に遺留分を考慮する必要はありません。

定年退職後

長年勤めていた会社を定年で辞めるなど、定年退職をした後は遺言をすべき1つのタイミングです。 定年退職後は、勤めていた企業や機関から退職金を受け取るなど、退職を機にそれまで住んでいたマイホームを売却したりなど、生活の変動を考える時期だからです。

また、子どもがいる場合は、子どもが経済的に独立する、結婚する、孫が生まれるなど、被相続人本人だけでなく、その子どもや子どもの家族にも生活に大きな変化が生じやすい時期でもあります。

自分や家族の生活に大きな変化が生じることは、それによって思わぬトラブルが発生しやすいということでもあります。相続をめぐるトラブルを防止するという観点からは、退職を機会に遺言を作成してみることをおすすめします。

親の相続を見たとき

祖父母が亡くなって自分の親がその遺産を相続するなど、親の相続を見たときは、自分の相続に備えて遺言を作成することを考える機会です。 遺言について家族で話し合いたいと思っても、何らかのきっかけがなければお互いに話しづらい場合も少なくないでしょう。親の相続を見たタイミングであれば、身近な実例があるので周囲とも話をしやすくなります。

また、親の相続で何らかのトラブルが発生した場合は、そこから学ぶこともできます。例えば、作成しておいたはずの遺言書がなかなか見つからないというトラブルがあったから、自分は公正証書遺言の方式で作成しておく、などです。

健康状態が悪化した

自分の健康状態が悪化した場合は、万が一に備えて遺言をしておくことを考慮するタイミングになります。 もっとも、健康状態が悪化するだけでなく、何らかの理由で意識不明の状態になった場合などは、遺言をしようにも物理的に不可能になってしまうため、注意しましょう。

健康状態が悪化したからといって、必ず遺言をすべきというわけではありませんが、遺産をめぐっての後々のトラブルを事前に防止するためには、意識が明瞭な時点で遺言について考えておくのも1つの方法です。

後で遺言が不要になった時の処理

知っておきたい相続問題のポイント
  • 作成した遺言が不要になった場合は、遺言の撤回をすれば無効にできる
  • 遺言の撤回ができる期間に制限はないので、相続開始前であれば方式を満たせばいつでも撤回できる

遺言を作成したのですが、もういらなくなったので破棄したいです。遺言が不要になった場合はどう処理すればいいですか?

作成した遺言が不要になった場合は、遺言の撤回をすれば無効にできます。なお、遺言を撤回できる期間に制限はありません。

遺言を作成したものの後に不要になった場合は、遺言の撤回をします。

遺言の撤回は民法に規定されており、遺言者は遺言の方式に従って、いつでもその遺言の全部または一部を撤回することができます(民法第1022条)。 そのため、一度遺言書を作成した場合でも、遺言者はいつでも遺言を撤回することが可能で、撤回できる時期について特に制限はありません。

遺言書を作成した被相続人が亡くなって相続が開始する前であれば、基本的にいつでも遺言を撤回できるということです。

遺言の方式とは、民法に規定されている3種類の遺言方式(自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言)のうち、いずれかに従って遺言を撤回しなければならないという意味です。

例えば、自筆証書遺言を撤回したい場合は、作成した自筆証書遺言書を破り捨ててしまえば、それだけで撤回の効果を得ることができます。

撤回するための遺言の方式は、遺言を作成した方式と同一である必要はありません。例えば、自筆証書遺言を撤回するための方式は自筆証書遺言である必要はなく、秘密証書遺言や公正証書遺言の方式でも撤回が可能です。

ただし、自筆証書遺言の方式によって他の遺言を撤回しようとする場合、方式に不備があると撤回自体が無効になってしまうので、遺言の撤回をする場合は弁護士に依頼するか、公証人がチェックしてくれる公正証書遺言の方式をとっておくと安全です。

まとめ

急な事故や病気などの万が一の事態を考えると、相続のトラブルを防止するには遺言をするのは一般に早ければ早いほどよいです。 遺言について考える必要性が高いタイミングとしては、子がいない夫婦の場合、定年退職後や親の相続を見た後、健康状態が悪化したときなどです。 一度遺言をしても、いつでも遺言を撤回することができる点からみても、タイミングをみて早めに遺言をしておくことが有効です。

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この記事の監修者

弁護士 手柴 正行第二東京弁護士会 / 第二東京弁護士会 法教育委員会委員
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