- 成年後見の制度の概要
- 成年被後見人が遺言を作成する場合の規定
- 成年被後見人が遺言を作成する場合には公正証書遺言を利用すべき
【Cross Talk 】成年被後見人は遺言を作成できますか?
私の母が認知症なのですが、このような場合に遺言を作成することはできますか?
意思表示をすることができれば医師2名の立会いのもと、作成することができます。注意点も併せて確認しましょう。
よろしくお願いします。
認知症を患うなどして意思能力が低下している場合には、本人に不利益にならないように、またこのような場合でも取引自体はスムーズにできるように、という観点から、成年後見という制度が設けられています。 この制度が利用されると、本人が単独でできることが大きく制約されます。 遺言は、意思表示をすることができれば単独で作成することができるのですが、医師2名の立会いのもとで行うことになっています。
成年被後見人とは
- 成年被後見人とは
- 成年後見制度の概要
そもそも、この成年被後見人というのはどのような人なのでしょうか。
成年後見制度により、保護の対象として取引を制限された人のことをいいます。成年後見制度は、判断能力が低下している人を対象に、成年後見人が代理人として取引をすることによって、本人を保護しつつ、相手の取引にも配慮する制度です。
成年被後見人とはどのような人なのでしょうか。
成年被後見人とは
成年被後見人とは、成年後見の制度で保護の対象に当たる人のことをいいます。 日常生活に必要な買い物から、時には自宅を売却するなどの契約をする際には、正常な判断能力が不可欠です。 一方で、加齢・認知症などの疾患によって、正常な判断能力は低下してしまいます。 自分が行っている取引行為がどういうことなのかを判断する能力のことを意思能力といい、意思能力がない人の行為は無効とされています。 しかし、取引の相手方に意思能力があるのかどうかを逐一確認できませんし、万が一意思能力がないとされると、取引ができなくなり、日常生活に支障をきたします。 そこで、加齢・認知症などで意思能力に影響が出ている人を保護しつつ、必要な取引をスムーズに行うために、成年後見人が保護者となって代理で取引行為をすることで、日常生活に支障をきたさないようにしたのが成年後見の制度です。成年後見を申し立てるための要件
判断能力が低下している方がいたとして、どのような要件があれば成年後見制度が利用できるのでしょうか。成年後見について規定する民法7条は、
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
- 利害関係人から家庭裁判所に申立て
- 家庭裁判所への請求
によって成年後見が開始するとしています。
難しい法律用語ですが、わかりやすく表現すると、成年後見制度は、自分のしていることが良いのか悪いのかわからなくなってきている状態にある場合に、家庭裁判所での手続をとって認められるもの、と考えてください。
成年後見を申し立てるとどうなるのか
成年後見の制度を利用すると次のようになります。 まず、成年後見で保護の対象とされた成年被後見人の、日用品の購入その他日常生活に関する行為以外の法律行為については、成年後見人が取り消すことができるとされます(民法9条)。 そして、成年後見人には代理権が与えられているので(民法859条)、成年被後見人のために各種取引をすることになります。つまり、飲食や日用品の買い物は一人でできる状態にしつつ、それ以上の判断能力が必要なもの、例えばリフォームや施設の賃貸、ヘルパーとの契約などについては、成年後見人を通して行うこととなっています。
成年被後見人が遺言を作成するには
- 成年被後見人が遺言を作成するための方法
- 遺言を作成することができる場合には公正証書遺言が良い
成年被後見人の行為が制限されているのはわかりましたが、そうすると遺言は成年後見人が作成することができるのでしょうか。
いいえ、遺言はあくまで状態が回復しているときに本人が作成することになります。
成年後見が開始された場合の遺言作成について確認しましょう。
成年後見人が代理をして遺言を作成することはできない
まず、上述の通り、成年被後見人の取引行為は、成年後見開始によって制限され、成年後見人が代理して行うので、遺言も成年後見人が代理して作成できるようにも思えます。 しかし、遺言の作成は単なる財産上の行為ではなく、身分行為(家族に関する法律問題に関する行為)も含むものであるため、代理して遺言を作成することはできないとされています。成年被後見人も医師2名の立会いのもとで遺言を作成できる場合がある
以上より、遺言の作成は本人が行うしかないため、成年被後見人は、遺言を作成するための能力が回復しているときに遺言を作成する必要があり、これを確認するために医師2名の立会いが必要とされています(民法972条)。認知症は現在では治療によっても回復するのは難しいとされており、進行を遅くするなど、生活の質を上げることが中心になりますので、判断能力が十分な状態で遺言を作成できない可能性が高いといえます。 しかし、精神疾患のような場合で回復が有り得る場合には、回復した際に遺言を作成することができる可能性が高いといえます。 いずれにしても、遺言を作成できる場合の判断は一様ではないので、まずは弁護士に相談をしてみましょう。
遺言を作成する場合には公正証書遺言を利用すべき
遺言を作成できる場合でも、できる限り公正証書遺言を作成するのをお勧めします。 遺言を作成できる以上は、遺言に関するどの方式によっても法律上は問題がありません。 とはいえ、自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合には、作成をしたときに作成者本人が成年被後見人となっているような場合に、本当にそのような内容の遺言を本人が作ったのか?という点を巡って、紛争になることが想定されます。公正証書遺言は、遺言書を作成するのが公証人であり、公証人が本人から遺言の内容を聞き取りしながら作成をします。 公証人が作成するからといって遺言書が必ず有効になるというわけではありませんが、遺言をする能力に問題がある場合には作成は中止されますし、公証人が作成したことで社会的な信頼も高く、紛争に至るのを未然に防止することが可能です。
公正証書遺言を作成する際には、公証人と事前にやりとりをして、書類や遺言書案の手配をする必要がありますので、弁護士に依頼をして作成するのが望ましいといえます。まとめ
このページでは、成年被後見人が遺言を作成できるかについてお伝えしてきました。 法律の条文上は遺言を作成することもできるのですが、その判断は慎重に行うべきなので、まずは弁護士に相談をすることをお勧めします。
- 判断力があるうちに後見人を選んでおきたい
- 物忘れが増えてきて、諸々の手続きに不安がある
- 認知症になってしまった後の財産管理に不安がある
- 病気などにより契約などを一人で決めることが不安である
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