遺産分割が進まない…。長期化するリスクや具体的な解消法を解説
遺産分割が進まない原因は?
ざっくりポイント
  • 遺産分割協議は全員の合意が必要である
  • 遺産分割協議が進まないまま放置すると、手間だけでなく金銭的なデメリットもある
  • 遺産分割協議が進まない場合、裁判所を通じた解決手段がある
目次

【Cross Talk 】遺産分割が進まない原因は?

遺産分割の話し合いがまとまらないのは、よくあることなのでしょうか。

はい。相続人同士の関係や財産の内容によっては、協議が進まないことは珍しくありません。

どのような理由で協議が止まってしまうのか、具体的に知りたいです。

遺産分割が進まない原因は?

遺産分割協議を進める中で、話し合いがまとまらないこともあり、相続人同士の関係や財産の内容によっては、どこで話が止まっているのかわからなくなってしまうこともあります。 協議が進まないまま放置すると、遺産を動かせない状態が続くだけでなく、相続人が増えて状況がさらに複雑になるなどのリスクもあります。 この記事では、遺産分割協議が進まない主な原因を整理したうえで、放置した場合のリスクや具体的な対処法について解説します。どこで問題が生じているのかを把握し、状況に応じた対応を取るための参考にしてください。

遺産分割協議が進まない主な原因

知っておきたい相続問題のポイント
  • 特別受益や寄与分は相続分の調整に関わるため、評価をめぐって意見が対立しやすい
  • どこまで認めるかの基準が一致しないと、遺産の分け方を決める前提が定まらない

遺産分割協議が進まないのには、どのような原因があるのでしょうか。

いくつかの原因が考えられるので、ここではよくある事例を5つ紹介します。

相続人同士が不仲で話し合いがまとまらない

遺産分割協議とは、相続人全員で被相続人の財産をどのように分けるか、話し合って決める手続きです。相続人全員の合意によって成立するため、ひとりでも同意しない相続人がいると協議は成立しません。 遺産が絡むと協議の場で感情的な対立が生じる場面も多く、遺産の分け方をめぐって意見が衝突し、話し合いが前に進まなくなります。 相続が始まる前は仲良かった親族でも、相続でお金が絡むと対立が生じてしまうこともあるので、必ずしも不仲な場合に限らず、話し合いがまとまらないということは実際にもよく起こります。

相続財産の使い込みや隠匿がある

相続財産の使い込みとは、一部の相続人が財産を無断で使ってしまうことです。例えば、被相続人の預金を特定の相続人が引き出し、消費するなどが当てはまります。また、隠匿とは相続財産の存在を他の相続人に知らせずに隠すことです。 これらの行為があると遺産の範囲が不明確になるため、遺産分割協議が進められなくなります。また、相続人のあいだで不信感が生まれ、円滑な協議を行うことができません。 まずは事実関係の調査から入る必要があり、遺産分割協議は調査が全て完了してから行われます。

連絡が取れない相続人がいる

相続では、長年疎遠だった親族と連絡が取れない、被相続人が再婚したことで前の配偶者とのあいだの子どもの連絡先がわからないなどがあります。また、連絡先はわかっていても、相続に関わりたくないという理由で応答を拒否されることもあります。 遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立するため、ひとりでも連絡が取れない相続人がいると協議を進めることができません。そのため、このような場合は、通常よりも手続きに時間がかかり、遺産分割協議が長期化する原因となります。

分割方法に関して意見が合致しない

遺産の分け方については、相続人のあいだで意見が割れることもあります。 例えば、不動産を売却して現金で分けたいと考える人もいれば、不動産をそのまま取得したいと考える人もいます。このような違いが生じるのは、相続人ごとにおかれている状況や財産に対する考え方が異なるからです。 すぐに現金が必要な人にとっては売却した方が都合が良い一方、思い入れのある実家を残したい人にとっては売却自体を受け入れがたいこともあります。誰がどの財産を取得するのかは相続人にとっては重要なことであり、この点で意見が分かれると遺産分割協議は成立しにくくなります。

特別受益や寄与分を主張する相続人がいる

特別受益とは、被相続人から生前に受けた贈与や援助などのうち、相続分の前渡しと評価されるものをいいます。例えば、住宅購入資金の援助や多額の生前贈与などがこれにあたります。 寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人について、その貢献の度合いに応じて相続分を調整する考え方です。例えば、長年にわたって無償で介護をしていた場合や、家業を手伝って財産の形成に関わっていた場合などに寄与分が考慮されることがあります。 特別受益や寄与分が問題となるのは、どこまでが特別受益にあたるのか、どの程度の貢献を寄与分として評価するのかといった点について、相続人ごとに認識が分かれやすいからです。ある相続人が「生前に多額の援助を受けているのだから、その分は差し引くべきだ」と主張しても、他の相続人からは「援助ではなく当然の支援だった」と反論されることもあります。 特別受益や寄与分は遺産分割に直接影響するため、これらが問題となると遺産分割協議が進まなくなる原因となります。

遺産分割協議が進まず、長期化するリスク

知っておきたい相続問題のポイント
  • 不動産の処分や預貯金の払戻しに制約がかかる
  • 相続税の優遇措置を適用できない場合がある

遺産分割協議が進まないと、何か問題があるのでしょうか。

遺産の管理や税金面での問題があります。

どのような問題があるのか、具体的に教えてください。

遺産の管理がしづらい

相続が発生して遺産分割協議が成立するまでのあいだ、遺産は相続人全員の共有財産として扱われます。そのため、預貯金や不動産といった財産について、各相続人が単独で判断して使用したり売却したりできません。 例えば、不動産を売却する場合には相続人全員の同意が必要となり、ひとりでも反対すると売却ができません。また、賃貸に出すには共有者の過半数の同意が必要とされるため、過半数の同意がなければ手続きが進まないことになります。

他にも、預貯金は金融機関が被相続人の死亡を把握すると引き出せる預貯金は制限されるため、相続人が自由に引き出すことはできなくなります。そして、凍結された口座の預金を引き出すには、遺産分割協議書や相続人全員の同意書などが必要となるため、協議がまとまっていない状態では資金を動かすことができません。

このように、遺産分割が進まないままでは不動産の処分や管理に制約がかかり、必要な対応を行うことができなくなるというリスクが生じます。

数次相続が生じて相続関係が複雑化する

数次相続とは、ある相続(一次相続)の遺産分割協議が終わらないうちに、さらに別の相続(二次相続)が発生することです。 例えば、父が亡くなり、母と子ども2人の合計3人が相続人となる一次相続が発生したとします。この時点では3人で遺産分割協議を行えば足りますが、協議がまとまらないうちに母が亡くなると、二次相続が発生します。 母は父の遺産についての持分を確定しないまま亡くなるので、その持分は母の相続人へと引き継がれます。その結果、「父の相続」と「母の相続」という異なる相続が並行するため、誰がどの相続について、どの立場で権利を持っているのか、直感的に把握しにくくなります。 このように、数次相続では複数の相続を並行して考える必要があるため、遺産分割協議が進みにくくなる原因となります。

相続税の優遇措置が受けられなくなる場合がある

相続税には、一定の要件を満たすことで税負担を軽減できる優遇措置があります。例えば、配偶者が取得した財産が控除される配偶者の税額軽減や、自宅の土地について評価額を大幅に減額できる小規模宅地等の特例などです。

しかし、これらの優遇措置は、相続税の申告期限までに適用要件を満たしたうえで申告する必要があります。そして、相続税の申告期限は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内とされています。

遺産分割協議がまとまっていないと、誰がどの財産を取得するのかが確定しないため相続税の申告期限に間に合わず、本来であれば軽減できたはずの税負担が増えてしまう可能性があります。

遺産分割が進まないときの対処法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 当事者同士でまとまらない場合は、家庭裁判所を通じた解決を図る
  • 最終的には裁判所の判断で遺産分割の方法を決めてもらうことができる

遺産分割協議が進まないときは、どうすれば良いでしょうか。

当事者同士でまとまらない場合には、家庭裁判所の手続きを利用して解決を図ることになります。

遺産分割調停を申立てる

遺産分割調停とは、遺産分割協議では話がつかなかったときに、家庭裁判所を通じて解決を目指す方法です。 当事者同士だけでは意見が対立して進まない場合でも、調停では裁判所の調停委員が双方の意見を聞きながら話し合いを進めていくため、どの点で意見が食い違っているのかを明らかにしながら調整を図ることができます。 もっとも、調停はあくまで合意による解決を前提とする手続きであるため、双方が納得しない限り成立しません。そのため、調停でも合意に至らない場合には、次の段階として裁判所の判断による解決へと進むことになります。

相続に強い弁護士に相談する

遺産分割協議が当事者同士の話し合いで進まない場合には、相続に強い弁護士に相談するという方法もあります。弁護士が関与すれば各相続人の主張を踏まえ、法的な観点から解決方法を提示してもらえます。

また、当事者同士では感情的な対立が強く話し合いが難しい場合でも、弁護士があいだに入ることで冷静な話し合いもしやすくなり、調停や審判といった裁判所の手続きに進む場合にも弁護士にそのまま対応を任せられます。 相続は法的な問題が絡む場面も多いため、弁護士に依頼すれば遺産分割を前に進めるためのアドバイスをもらえるのもメリットです。

遺産分割審判で裁判所の判断を仰ぐ

遺産分割調停でも合意に至らない場合には遺産分割審判に移行し、裁判所の判断によって遺産の分け方を決めます。 審判では各相続人の主張や提出された資料をもとに、裁判所がどの財産を誰が取得するのかを具体的に決定します。当事者同士の意見が対立したままでも、審判であれば最終的な分割方法が確定します。 ただし、審判は当事者の意向に関わらず結論が出されるため、必ずしも全員が納得できる結果になるとは限りません。そのため、話し合いでの解決を望むのであれば遺産分割協議でよく話し合い、必要に応じて弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。

まとめ

遺産分割協議が進まない原因は、人間関係の対立だけでなく、財産の内容や分け方に対する考え方の違いなど、様々な要素が重なって生じます。そのため、単に話し合いを続けるだけでは解決に至らず、そのまま手続きが止まってしまうことも少なくありません。 そして、協議がまとまらない状態を放置すると、遺産を管理できない状態が続いたり、数次相続によって関係者が増えたりするなど、状況はさらに悪化します。税務上の優遇措置を受けられなくなれば、金銭的な不利益にもつながります。 このような場合には、当事者同士の話し合いにこだわるのではなく、調停や弁護士への相談といった手段を適切なタイミングで取り入れることが重要です。状況に応じて方法を切り替えながら進めることで、遺産分割を前に進められるでしょう。

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この記事の監修者

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弁護士 篠田 大旗第二東京弁護士会
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