- 遺言執行者は一定の条件を満たす場合に限り解任できる
- 遺言執行者の解任には民法に定められた要件があり、家庭裁判所の判断が必要
- 解任後は新たに遺言執行者を選任できる
【Cross Talk 】遺言執行者は解任できる?
遺言執行者は解任できるのでしょうか。
一定の条件を満たす場合に限り、家庭裁判所の判断で解任できます。
どんな場合なら解任が認められるのか、詳しく知りたいです。
遺言執行者は、遺言の内容に従って相続手続きを進めるという重要な役割を担います。しかし、実際には手続きが進まない、説明がない、対応が極端に遅いといった理由から、相続人との間でトラブルになることも少なくありません。 そのため、「遺言執行者は解任できるのか」「どこまで問題があれば解任が認められるのか」と疑問を感じる方も多いでしょう。遺言執行者は相続人の判断だけで自由に解任できるわけではなく、民法で定められた要件を満たす必要があります。 本記事では、遺言執行者を解任できる具体的な場合、解任の手続きの流れ、そして解任後の相続の進め方について、順を追って説明します。
遺言執行者を解任できる場合について

- 遺言執行者の解任は、任務を怠った場合や公平性・適正性を欠く正当な理由がある場合に限り認められる
- 解任は当事者同士の判断ではできず、家庭裁判所の審判が必要
遺言執行者は解任できるのでしょうか。
一定の条件を満たせば、家庭裁判所の判断によって解任が認められます。
どのような場合に解任できるのか、詳しく教えてください。
遺言執行者に任務の懈怠がある
遺言執行者の解任については、民法で次のように定められています。 「遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。」(民法1019条) 「遺言執行者に任務の懈怠がある」とは、遺言執行者として果たすべき職務を正当な理由なく怠っている状態を指します。 遺言執行者は、遺言の内容に従って相続手続きを進める義務があるため、相続財産の調査や管理、財産目録の作成、遺言に基づく名義変更などの手続きが止まっていると、任務を怠っていると判断されます。 たとえば、遺言執行者として就任したにもかかわらず相続財産の調査や管理を行わない、財産目録を作成せず相続手続きを進めないまま放置しているなどが該当します。その他の正当な理由がある
遺言執行者としての公正性や適正性を欠く事情がある場合など、正当な理由があれば遺言執行者の解任が認められます。 遺言執行者は、特定の相続人のためではなく遺言内容を公平・中立に実現する立場にあります。そのため、遺言内容に反する処理を行ったり、特定の相続人に偏った対応をしたりすると解任事由になり得ます。 また、病気や長期不在などにより、客観的に見て職務の遂行が困難な状況にある場合なども、正当な理由として解任できる可能性があります。この要件は、遺言執行者としての職務を適切に果たせるかどうかが判断の基準です。 関連記事:遺言執行者の報酬はどのくらい?専門家に依頼した場合の報酬相場を解説遺言執行者を解任する手続きの流れ

- 遺言執行者の解任は相続人同士の話し合いでは決められず、家庭裁判所の審判が必要
- 申立書には民法1019条の要件に沿った「解任が相当な理由」を具体的に記載する
- 審判内容に不服がある場合は即時抗告が可能
遺言執行者を解任するには、どうすれば良いのでしょうか。
家庭裁判所に申立てを行い、裁判所の審判によって解任が可能です。
申立ての手続きについて詳しく教えてください。
家庭裁判所に申立てを行う
遺言執行者を解任するには、家庭裁判所へ遺言執行者解任の審判の申立てが必要です。申立てができるのは相続人や受遺者などの利害関係人であり、複数いる場合は代表者1名が申立人となります。 申立先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。 なお、審判を申立てたとしても、直ちに遺言執行者が解任されるわけではありません。家庭裁判所は申立書の内容や提出された資料、遺言執行者の意見などを踏まえ、解任が相当かどうかを判断します。申立てに必要な書類を準備する
遺言執行者解任の審判の申立てには、以下の書類が必要です。家庭裁判所から審判書が発行される
遺言執行者の解任が相当と判断されると、遺言執行者解任の審判がなされます。そして、申立人に対して審判書謄本が交付され、遺言執行者は法律上その地位を失います。 審判が出るまでの期間は事案の内容によりますが、おおむね1ヶ月前後かかるのが一般的です。この間、原則として遺言執行者の地位は維持されるため、相続財産の管理状況に不安がある場合には別途「職務執行停止」などの保全措置を検討する必要があります。 審判が確定すると解任の効力は正式に発生し、その後は新たな遺言執行者の選任や相続人による手続きの進行へと移ります。内容に不服があれば即時抗告が可能
家庭裁判所の審判に不服がある当事者は、上級裁判所に対して即時抗告ができます。 即時抗告とは、家庭裁判所の審判の当否について、上級裁判所に審理してもらうための手続きです。遺言執行者が解任された場合は遺言執行者本人、解任の申立てが却下された場合は申立人側、それぞれ即時抗告を行えます。 即時抗告は審判書の送達を受けた日から2週間以内に手続きを行う必要があるため、期間を過ぎると審判の内容は確定し、原則として争うことはできません。 即時抗告がなされると、家庭裁判所の判断が妥当であったかを高等裁判所が審理します。その結果、原審判が維持されることもあれば、取り消しや差戻しがなされる場合もあります。 即時抗告が認められるのは、判断に法的な問題がある場合などに限られるため、即時抗告を検討する際は、審判の理由や事実認定を冷静に整理することが重要です。遺言執行者を解任した後の相続について

- 利害関係人は、家庭裁判所に申立てを行うことで新たな遺言執行者を選任できる
- 相続人だけで遺産分割協議を行うことも可能
遺言執行者を解任した場合、その後の相続手続きはどうなるのでしょうか。
新しい遺言執行者を家庭裁判所で選任するか、相続人だけで手続きを進めます。
それぞれの方法について、詳しく教えてください。
新しい遺言執行者を選任する
遺言執行者が解任された場合、利害関係人は家庭裁判所に対して新たに遺言執行者の選任を申立てられます。 ここでいう利害関係人とは、相続人だけでなく遺言によって財産を受け取る受遺者、相続財産に関係する債権者などです。申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。 遺言執行者の選任手続きでは、申立書のほか遺言書の写しや被相続人の戸籍関係書類、遺言執行者候補者の身分関係書類などを提出し、これらの資料を用いて裁判所が適任かどうかを判断します。また、事案によっては追加資料の提出を求められることもあります。 必要な資料に迷ったら、管轄の家庭裁判所に確認したうえで準備を進めると良いでしょう。相続人だけで相続手続きを行う
遺言執行者を選任は必須ではないため、遺言執行者が解任されたら相続人だけで遺産分割協議を行うことも可能です。 ただし、民法上遺言執行者がいなければ行えない手続きも存在します。たとえば、遺言による子どもの認知や、相続人の廃除または廃除の取り消しなどです。また、相続人だけで手続きを進めると意見の対立が生じやすく、手続きが停滞したり紛争に発展したりするリスクも否定できません。 そのため、遺言の内容が複雑な場合や相続人間で調整が難しい場合、新たに遺言執行者を選任したうえで手続きを進めると良いでしょう。まとめ
遺言執行者は、任務を怠った場合やその他の正当な理由がある場合に、家庭裁判所の判断によって解任できます。ただし、感情的な対立や遺言内容への不満だけでは解任は認められず、法律上の要件を満たすかどうかが重視されます。 解任が認められた後は、新たに遺言執行者を選任するか、相続人だけで相続手続きを進めるかを選択します。遺言の内容や相続関係が複雑な場合や、相続人間で調整が必要な場合などは、遺言執行者を改めて選任した方が手続きが円滑に進むでしょう。 遺言執行者の解任やその後の対応は、相続全体の進行に大きく影響します。問題が生じている場合は早い段階で状況を整理し、適切な手続きを選択しましょう。

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