
- 遺言書を見つけたときの法律の規定
- 万が一開封した場合にどのようなペナルティがあるか
- 遺言書の検認手続き
【Cross Talk】形見分けをしていたら遺言書が見つかった!いったいどうすれば良いの?
先日父が亡くなりました。四十九日法要も終わったので形見分けをするときに、父の日記などを整理していたら遺言書が見つかったんです。これって他の相続人に知らせなければならないでしょうか?法律上の規定とかあるのでしょうか。
その遺言書はどの遺言の形式でされたものでしょうか。公正証書遺言と自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言以外の場合には裁判所で検認をする必要があり、封がしている場合には勝手に開けると罰則があります。
なるほど!詳しく教えてもらってよいですか?
遺言書が見つかった場合について法律では検認という手続きが必要であるとしています。検認は裁判所で行う手続きで、変造や改ざんを防ぐために、どのような遺言がされていたかを確定するものです。 検認手続きを経ないで遺言書を利用すると罰則がありますし、そもそも相続登記にしても相続税の納付にしても行うことができなくなっています。遺言が見つかったら何をしなければならないか、検認とはどのような手続きなのかを詳しく見てみましょう。
封をしてある遺言書についての規定を知る

- 公正証書遺言以外の遺言書については検認が必要
- 封がされているものは検認手続きで開封する。
遺言書が見つかった場合にはどうすればいいのでしょうか。
公正証書遺言以外の遺言書が見つかった場合には、裁判所で検認することと法律で規定されています。封をしている遺言書の場合には裁判所で封を開けることになっています。これらに違反すると罰則もあるので注意しましょう。
遺言書を見つけたときの取り扱い、また遺言書に封がしてある遺言書についての取り扱いについて確認しましょう。
公正証書遺言以外は検認をする必要がある
公正証書遺言書と、自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言書以外の検認と、封をした遺言書の開封について確認しましょう。
自筆証書遺言書
民法1004条1項は、遺言書の保管者および遺言書の保管者がない場合に遺言書を発見した相続人は家庭裁判所に遺言書を提出して、その検認を請求しなければならないとしています。
そのため、自筆証書遺言書を見つけた場合には、検認が必要です。
もっとも、法務局における遺言書の保管等に関する法律に基づいて施行されている、自筆証書遺言書保管制度を利用して作成された自筆証書遺言書については、同法11条で1004条1項の適用を除外しているので、検認が不要です。
これは、改ざんなどを防ぐことが趣旨である遺言書の検認について、法務局が原本を保管しており、改ざん等の余地がないためです。
公正証書遺言書
民法1004条2項は、公正証書遺言書については検認が不要である旨を規定しています。
これは、公正証書遺言書を作成するのは公証人で、原本は公証役場で保管するため、改ざんなどの余地がないためです。
秘密証書遺言書
秘密証書遺言書については、同じように公証役場で手続きを行うものですが、原本を作成するのが本人で、封をした後の保管も本人が行うものであり、改ざんの余地があります。
そのため、民法1004条2項のように、例外が認められておらず、検認をすることが必要です。
その他の方式による遺言書
民法には上記の通常方式の他に、危急時遺言・隔絶地遺言といった遺言が用意されています。
遺言書を作成するタイプの遺言である場合には、家庭裁判所で確認される要件がありますが、これとは別に検認が必要ですので注意が必要です。
封をしている遺言書
以上のように遺言書の種類によって取り扱いが異なりますが、これとは別に封をしている場合には、開封は裁判所で行うことが規定されています(民法1004条3項)。
検認をしない・開封してしまった場合にどうなる
以上のような規定はありますが、そのことを知らずに遺言を執行したり、開封してしまうこともあるでしょう。 この場合、民法1005条は5万円以下の過料に処する旨の規定をしています。 ただ現実にこの規定が適用されて過料に処せられる可能性は少ないので、すぐに事情を話して検認の手続きをするようにしましょう。 なお、遺言の執行をしようとした、遺言書を開封したような場合でも、遺言の効力には影響はありませんので、検認を経て相続手続きで遺言書を利用することができます。検認を経ずに遺言書を開封してしまった場合の効力
検認を経ない・封のある遺言書を開封してしまった場合でも、遺言書が無効になるわけではありません。
ただし、相続人から偽造・変造を疑われてトラブルになったり、場合によっては相続手続きにおいてその遺言書では手続きができず、遺産分割をする必要になったりすることもあります。
検認はどうやって行うのか

- 検認手続きについて
- 検認が済んだ後の相続手続きについて
では検認をするための手続きを教えてもらえますか?
家庭裁判所に請求して、期日に相続人全員で立ち会うことができます。検認が済んだ後の手続きについても確認しましょう。
検認の手続きについて詳しく確認しましょう。
家庭裁判所への申し立て
検認は家庭裁判所に申立てます。 申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。 管轄がどこにあるのかは、裁判所の管轄区域のホームページで調べましょう。 参考:裁判所「裁判所の管轄区域」検認の申立てに必要な書類
検認の申立てをするのに必要な書類は次の通りです。
- 遺言書の検認の申立書
- 遺言者が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 収入印紙
- 予納郵券
期日に立ち会う
検認は、家庭裁判所で期日を設けて相続人全員が立ち会うことができます。検認手続きの申立をした方以外の相続人には家庭裁判所から連絡が行くことになっています。検認期日において、遺言書の形状・内容などの事項を確認します。 なお、検認は遺言書がどのような状態であったか、どのような内容であったかを確定させるのみで、その内容が有効か無効かについての判断は行いません。 たとえば自筆証書遺言について、要件である押印が無かったような場合には、押印が無かった遺言書として検認で確認することになります。 その結果、遺言は無効であり、その証拠が検認を受けた遺言書ということになります。遺言書の有効・無効を争うためには、遺言無効確認の訴えを地方裁判所に起こすことになります。検認後の遺言書の使い方
検認を受けた後には検認済証明書が必要になります。 検認の手続きを行った家庭裁判所に150円分の収入印紙をおさめて取得します。遺言書を検認済証明書と一緒に提出して、各種相続手続きの添付書類とします。 たとえば、不動産登記をする場合には、登記申請書に登記原因証明情報を添付する旨の記載がありますが、その情報として遺言書と検認済証明書を提出します。遺言書の検認についてケース別解決方法

- 遺言書の検認についてのケース別解決方法
遺言書の検認で問題になるような場合はありますか?
いくつかの典型的な状況について知っておきましょう。
遺言書の検認については次の場合でよく問題となるので確認しましょう。
誤って遺言書を開封してしまった場合には検認が必要
書類を整理している中で、誤って遺言書を開封してしまうことがあるのはここまでお伝えしてきた通りです。
誤って開封してしまった場合には検認は不要となるわけではなく、検認が必要になります。
封の無い自筆証書遺言書を見つけた場合には検認が必要
封の無い自筆証書遺言書を見つけた場合でも検認は必要です。
自筆証書遺言書については、民法1004条1項の規定によって、封があっても無くても検認をする必要があります。
自筆証書遺言書については、秘密証書遺言書のように封をすることが法律上の要件とされておりませんので、封がされていない状態でも有効です。
中にはメモ・走り書きのようなものも存在しますが、自筆証書遺言の要件を満たしている場合には有効な遺言書で、その破棄で相続欠格になる(民法891条5号)などの重大なペナルティとなることがあるので注意しましょう。
遺言書を複数みつけた場合検認が必要
遺言書を複数みつけた場合、複数の遺言全てについて検認が必要です。
遺言書が複数見つかった場合で、その内容が抵触する場合、前の日付の遺言の内容を撤回し、後の日付の遺言が有効であるとされています(民法1023条1項・2項)。
遺言書の検認は遺言書の内容を確定するもので、それぞれの遺言書の内容を確定したうえで上記の判断をする必要があるので、見つけた複数の遺言書について、検認を行います。
もっとも、公正証書遺言書や自筆証書遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言書については、不要です。
検認が必要な遺言がある場合の対策

- 検認が必要な遺言をした場合の対策
- 誤って開封されない対策
検認が必要な遺言がある場合の対策としてどのようなものがありますか?
自宅で保管され誤って開封されないような注意が必要です。
検認が必要な遺言がある場合のどのような対策が必要でしょうか。
自宅で保管しているときに誤って開封されないように注意が必要です。
封紙に記載したりメモを同封したりするなどして、それが遺言書であり家庭裁判所での開封が必要である旨が分かるようにしておくのが良いでしょう。
内容が同居している相続人に不利であるような場合、みつかってそのまま破棄・隠匿される恐れがありますので、専門家に遺言を預かってもらうことも検討しましょう。
まとめ
このページでは、遺言者が亡くなった後に相続人が遺言書を見つけた場合の措置についてお伝えしました。遺言書を見つけた場合には検認の手続きを必要とし、封がしてある場合は相続人立会のもと開封をすることになっていることを知っておきましょう。

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