相続人以外にも寄与分は認められる?
ざっくりポイント
  • 相続人以外にも寄与分は認められる?
  • 相続人以外に求められる特別寄与料とは?
  • 相続人以外に特別寄与料が認められる条件とは?
目次

【Cross Talk】相続人以外にも寄与分は認められますか?

亡き夫の母親と同居して長年介護をしてきました。相続人以外であっても寄与分は認められますか?

寄与分は相続人にしか認められませんが、特別寄与料が認められる可能性があります。

相続人以外の寄与分について、詳しく教えてください。

相続人以外の親族には、特別寄与料の制度が新設された

相続人以外の親族が、被相続人の介護や家業に大きく貢献していた場合、相続人と同じように「寄与分」を請求することができるのでしょうか?子どもの配偶者(嫁)や兄弟姉妹などが献身的に尽くしてくれたにもかかわらず、相続人ではないからといって、その貢献分が評価されないのは不公平に感じられます。 この記事では、相続人以外の親族は、寄与分その他何らかの請求をすることができるのか、認められる場合の条件などについて、弁護士が解説していきます。

相続人以外にも寄与分は認められる?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 寄与分とは?
  • 寄与分が認められるのは相続人だけ

相続人以外にも寄与分は認められますか?

残念ながら、寄与分は相続人にしか認められていません。

寄与分とは?

寄与分とは、相続人の中に、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別な貢献をした人がいる場合に、その貢献度に応じて、その相続人の相続分を増やす制度です。
被相続人に対して「特別な寄与」をした相続人は、遺産分割協議や家庭裁判所の手続きにおいて、自身の寄与分を主張することで、より多くの遺産を受け取ることができます。

寄与分は相続人以外には認められない

現行の民法では、寄与分が認められるのは相続人に限定されており、相続人以外の方には認められません。

民法904条の2第1項は、寄与分が認められる要件として、「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」と明記しています。ここでいう「共同相続人」とは、被相続人の配偶者、子ども、直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹といった、法律で定められた相続人の範囲に該当する人のみを指します。

したがって、たとえ被相続人の財産の維持や増加に大きく貢献したとしても、内縁の配偶者、再婚した配偶者の連れ子(養子縁組をしていない場合)、子どもの配偶者、兄弟姉妹の配偶者などは相続人に該当しないため、寄与分を主張することはできません。

しかし、このような相続人以外の方の貢献が全く考慮されないのは公平に反するとの考えから、2019年7月1日に施行された改正民法において、相続人以外の方の貢献を評価する新たな制度として「特別寄与料」が創設されました。

相続人以外は特別寄与料の主張ができる

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人以外は特別寄与料の主張ができる
  • 特別寄与料とは?

相続人以外の親族が介護に専念していた場合、相続においてどのような主張ができるのでしょうか?

相続人以外の親族は、特別寄与料の主張ができる可能性があります。

特別寄与料とは?

特別寄与料とは、2019年7月1日に新たに施行された制度です。
相続人以外の被相続人の親族が、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供を行い、これにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与があったと認められる場合に、当該親族が相続人に対してその寄与に応じた相当額の金銭の支払いを請求できる権利を指します。

この制度は、従来の寄与分制度が相続人に限定されていたことによる不均衡を是正し、相続人ではない親族による被相続人への貢献を適正に評価することを目的として創設されました。

特別寄与料を請求できる人

特別寄与料を請求できるのは、以下の要件を全て満たす相続人以外の被相続人の親族です。
民法上の親族の定義に基づき、6親等内の血族、配偶者、および3親等内の姻族が該当します(民法725条)。具体的には、被相続人の兄弟姉妹、甥姪、叔父叔母のほか、子どもの配偶者なども含まれることになります。

以上より、被相続人の子どもの配偶者、被相続人の兄弟姉妹(被相続人に子どもがいる場合など)、被相続人の配偶者の兄弟姉妹などが、一定の要件を満たす場合には特別寄与料を請求できる可能性があります。一方、内縁の配偶者や事実婚のパートナー、離婚した元配偶者などは民法上の親族に該当しないため、特別寄与料を請求することはできません。

特別寄与料が認められる条件

知っておきたい相続問題のポイント
  • 相続人以外の親族に特別寄与料が認められる条件とは?

特別寄与料が認められるのはどのような場合でしょうか?

ここでは、相続人以外の親族に特別寄与料が認められる条件について解説していきます。

相続人以外の親族であること

請求者は被相続人の親族である必要があります。また、相続人は、原則として寄与分という別の制度によって貢献が考慮されるため、特別寄与料を請求することはできず、特別寄与料の請求者は相続人(相続放棄をした方、相続欠格者、相続廃除者を含む)ではないことが前提となります。
この要件は、寄与分と特別寄与料の制度的な区別を明確にするためのものです。また、法律婚を前提としており、事実婚の関係にある方はここにいう親族とは認められていません。

特別の寄与をしたこと

請求者は、被相続人に対して療養看護その他の労務の提供を行ったことが必要です。
寄与分と異なり、財産給付が含まれていないため、被相続人の事業に出資をしたとしても特別寄与料の対象にはなりません。

相続財産が維持・増加したこと

提供された特別な労務によって、被相続人の財産が維持または増加したという因果関係が必要です。
例えば、献身的な介護によって介護施設の利用費用を抑えられた場合や、無償での事業の手伝いによって事業の収益が向上した場合などが該当します。 単に労務を提供したという事実だけでは足りず、その貢献が具体的に被相続人の財産の維持・増加に繋がったことが求められます。これは、特別寄与料が、貢献に見合った経済的な対価を相続財産から支払うという考えに基づいているためです。

労務の提供が無償でなされたこと

療養看護その他の労務の提供が無償で行われたことが必要です。もし、労務の対価として相当な報酬を得ていた場合、改めて特別寄与料を請求することは二重の利益取得にあたるため認められません。

特別寄与料の請求方法

知っておきたい相続問題のポイント
  • 特別寄与料の請求方法とは?
  • 話し合いで決まらない場合は、調停・審判を活用する

特別寄与料を請求するには、どうすればいいのでしょうか?

ここでは、特別寄与料を請求する方法について解説していきます。

当事者同士で話し合う

まず、特別寄与料を請求する親族(特別寄与者)は、相続人に対して直接、その貢献の内容を具体的に伝え、特別寄与料の支払いを求めます。この際、どのような療養看護や労務の提供を行い、それによって被相続人の財産がどのように維持・増加したのかを明確に説明することが重要です。

相続人が特別寄与者の主張に納得し、特別寄与料の金額についても合意できれば、合意書や覚書などの書面を作成し、合意内容を明確にしておくことが望ましいです。これにより、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

家庭裁判所に調停を申立てる

当事者間の話し合いで解決できない場合、特別寄与者は家庭裁判所に特別の寄与に関する処分調停を申立てることができます。申立先は、相手方(相続人)の住所地の家庭裁判所、または当事者間で合意した家庭裁判所となります。当事者間で合意した家庭裁判所に申立てる場合は、申立書と共に管轄合意書を提出する必要があります。

調停手続きでは、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会が、双方から事情を聴取し、解決に向けた提案を行うなどして、合意による解決を試みます。当事者間で合意が成立すれば、その内容が調停調書に記載され、法的な効力を持ちます。

しかし、話し合いがまとまらない場合、調停は不成立となり、自動的に特別の寄与に関する審判の手続きに移行します。審判では、家庭裁判所が、当事者から聴取した事情や提出された証拠などを総合的に考慮し、特別寄与料の請求を認めるかどうか、また認める場合の金額などを最終的に判断します。

特別寄与料の権利行使の期間制限

特別寄与者が、相続の開始および相続人を知ったときから6か月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過したときは、特別寄与料の支払いを求めることができなくなるため、注意が必要です。

まとめ

相続人以外の方には、原則として寄与分は認められませんが、一定の要件を満たす被相続人の親族は、相続人に対して特別寄与料を請求できます。 特別寄与料を請求する場合には、まず当事者間で協議を行い、合意に至らない場合は家庭裁判所に調停を申立てます。調停が不成立となれば、審判によって裁判所が判断を下します。
相続人以外の方で、被相続人の財産維持・増加に貢献されたにもかかわらず、相続で適切に評価されていないと感じている方は、お一人で悩まず、当事務所の弁護士にご相談ください。専門的な知識と経験に基づき、特別寄与料請求の手続きや交渉をサポートいたします。

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この記事の監修者

弁護士 山田 将志第二東京弁護士会
相続の際は、手続のご負担の面でもお気持ちの面でも大変な部分があることと存じますが、依頼者様が少しずつ前に進めるよう専門家として可能な限りお手伝いさせていただきます。

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