遺言書が特に必要とされるケース、遺言書があっても問題のある事例を解説いたします。
ざっくりポイント
  • 相続人以外で遺産を譲りたい方がいるケースなどでは遺言書が必要となる
  • 相続人の間で仲が悪い、疎遠、行方不明者がいる場合も遺言書を残しておくことでトラブル回避に繋がることがある
  • 遺言書があっても遺留分を侵害している、法的に無効である際にはもめる可能性があるため注意
目次

Cross Talk 遺言書が特に必要とされるケースとは?

父が終活中なのですが、過去に離婚歴があり前妻との間に子どもがいます。私は後妻の子どもで会ったことがありませんが、相続時に揉めそうで不安です。遺言書を書いてもらった方が良いでしょうか?

はい。亡くなった方に離婚歴があり、前の配偶者との間に子どもがいる場合、その子どもにも当該亡くなった方の遺産を相続する権利があります。相続時に他の相続人とトラブルとなる事例が多くなっています。

詳しく教えてください!

遺言書が必要とされるケースとトラブルになる事例とは

相続では相続人の間で仲が悪い場合、疎遠である場合、相続税がかかる場合などでトラブルに発展してしまう可能性が高くなっています。また、遺言書があっても遺留分(相続人の最低限の取り分)を侵害している、法的に無効であるなどの理由で揉めてしまう事例があります。 今回は遺言書が特に必要とされるケース4つについて、遺言書があってもトラブルになる事例と対処法を解説いたします。

遺言書が必要な人・作成しておいた方が良い人の特徴

知っておきたい相続問題のポイント
  • 自分の意思で財産を渡す方を決めたい場合は遺言書の作成が必要になる
  • 将来の相続人間の紛争を防止したい場合も遺言書の作成が必要になる

遺言書の作成が必要になる人や作成しておいた方がいい人はどのような方でしょうか?

遺言書が必要な方は、自分の意思で遺産の配分を決めたい、相続人の中に仲が悪い、疎遠、行方不明等の方がいる場合、法定相続人以外の方に財産を渡したい場合など様々な例があります。詳しく紹介します。

自分の意思で遺産の配分を決めたい

遺言書がない場合、相続人が遺産分割協議をして遺産の配分を決めることになります。
相続人が生前の被相続人の意向を反映した分割をしてくれればいいのですが、必ずしもそうなるとは限りません。そのため、相続人の協議に任せず自分の意思で遺産の配分を決めたい場合には、遺言書を作成する必要があります。

仲が悪い・疎遠、行方不明の共同相続人がいる

遺言書がない場合、相続人が遺産分割協議をして遺産の配分を決めます。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があるので、仲が悪い・疎遠・行方不明の相続人などがいる場合、遺産分割協議が進まず、なかなか遺産を取得できないという事態に陥りかねません。
遺言書があれば、遺言書に記載されている遺産については遺産分割協議は必要なくなるので、遺言書を作成しておくと良いでしょう。

法定相続人以外の方に遺産を渡したい

遺言書がない場合、法定相続人が遺産分割協議をして遺産の配分を決めることになります。
法定相続人以外の方が遺産分割協議に加わって遺産を取得することはありません。
そのため、生前にお世話になった方など法定相続人以外の方に遺産を渡したい場合には、遺言書を作成してその方に対する遺贈をする必要があります。

関連記事:推定相続人と法定相続人の違いとは?定義や特定方法・相続人との違いを解説

法定相続人がいない

法定相続人がいない場合、相続財産は法人となり、裁判所が選任する相続財産清算人による清算が行われ、残った財産は国庫に帰属します。
そのため、国庫ではなくお世話になった方に遺産を渡したいとか、国ではなく自治体や慈善団体等に寄付したい場合には、遺言書を作成する必要があります。

相続税がかかることが予想される

遺産の額次第で相続税を納付しなければならない場合があります。
遺言書がない場合、遺産は相続人間の遺産分割協議によって分配されますが、通常は各相続人が法定相続分の財産を取得できるように分配されます。

ある相続人が遺産総額のうちかなりの割合を占める不動産を取得し、他の相続人が預貯金や有価証券を相続することになったような場合に相続税の納付が必要になると、不動産を取得した相続人は自身で相続税納付の資金を用意するか、用意ができなければ不動産を処分するなどして資金を用意するしかなくなります。このような事態を防ぐため、相続税がかかることが予想される場合には、遺言書を作成して相続人が納税資金に困らないように工夫をした遺産の分配方法を決めておくといいでしょう。

不動産を所有している

預貯金や有価証券と異なり、不動産には個性があり、全く同じ不動産は存在せず、現物を分割することが難しいという特徴があります。
そのため、遺産に不動産が含まれる場合、誰が不動産を取得するかで相続人間で争いになることが珍しくありません。このような争いを防止するには、遺言書を作成して誰が不動産を取得するかをあらかじめ決めておくことが効果的です。

相続人が多い

遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
相続人が多い場合、相続人全員が一堂に会して話し合いをすることは難しいですし、郵送等で書類をやり取りするにも時間がかかってしまいます。
また、相続人が多いと、相続人の意見がまとまらない可能性も高くなり、遺産分割調停や遺産分割審判といった法的手続きに移行せざるを得ないおそれもあります。
遺言書を作成すれば、遺言書に記載されている遺産については相続人間で遺産分割協議をする必要はなくなるので、相続人が多い場合も遺言書を合作成しておくといいでしょう。

相続をさせたくない方がいる

相続人の中に相続させたくない方がいる場合でも、遺言書がないとその相続人を含めた相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
そのため、相続をさせたくない方がいる場合、遺言書を作成する必要があります。相続をさせたくない方が兄弟姉妹や兄弟姉妹の子どもである場合、それらの相続人には遺留分がないので、遺言書によって全く相続させないようにすることができます。

また、被相続人への虐待などの非行があった相続人から相続の資格を奪う廃除という手続きがあります。廃除は遺言でも可能とされているので、虐待等の理由で相続をさせたくない場合にも遺言書を作成することが効果的です。

関連記事:相続させたくない人がいるので戸籍を抜くということはできる?

そもそもなぜ遺言書は必要?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書がなければ基本的に法定相続人が法定相続分で相続することになる
  • 遺言書を作成することで相続財産を自由に分配し、相続人間の紛争を防止することができる

そもそもなぜ遺言書の作成が必要になるのでしょうか?

遺言書がない場合、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、原則として法定相続人が法定相続分どおりに相続することになります。遺言書があれば遺留分を侵害しない範囲で相続財産を自由に処分でき、相続人間の協議も必要ないので、相続財産を自由に分配したい場合や、相続人間の紛争を防止したい場合には、遺言書の作成が必要になるのです。

なぜ遺言書が必要かという疑問を持たれている方は、遺言書がない場合に相続がどうなるかを考えるといいでしょう。
遺言書がない場合、法定相続人全員による遺産分割協議が必要になります。仲が悪い方、疎遠な方がいても遺産分割協議に加わってもらわなければなりません。

基本的には法定相続分を基礎とする遺産分割が行われることが多いのですが、相続をめぐって相続人間で深刻な対立が生じることも珍しくありません。また、法定相続人がいないときは、相続財産は最終的に国庫に帰属することになります。
このように、遺言書がない場合、死後の財産の分配を自分で決められず、相続人間に将来の紛争の火種を残すことにもなりかねないのです。

遺言書を作成すれば、遺留分を侵害しない範囲で相続財産の分配を自由に決めることができます。また、相続財産は遺言に従って分配されるので、相続人間の協議も必要ありません。さらに、相続人以外の方に相続財産を譲る(遺贈する)こともできるので、相続人ではない親族、友人に財産を残したり、自治体や慈善団体など自分が希望する団体に寄付をしたりすることも可能です。

したがって、自分の希望通りに相続財産を分配し、相続人間の紛争を防止したい場合には、遺言書を作成する必要があります。

遺言書を作成する際に理解しておきたいポイント

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言という種類がある
  • 遺言書を作成したいときは弁護士に相談を

遺言書を作成する際に理解しておくべきポイントがあれば教えてください。

遺言書には大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があり、作成に必要な費用や手続きが異なりますので、どちらがふさわしいかを検討したうえで作成する必要があります。自分ではなかなか判断ができないと思われますので、遺言書を作成したいときは、まずは相続に詳しい弁護士に相談をするといいでしょう。

遺言書の種類

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文、日付及び氏名を自書し、押印をする方式の遺言書です。
以前は遺言書の内容を全て手書きする必要がありましたが、現在は相続財産の目録についてはパソコン等で作成することが認められています。
自筆証書遺言は、遺言者自身が作成するため、作成のための特別な費用や手続きは必要ありません。
自筆証書遺言には紛失やかいざん等のおそれがありますが、法務局の自筆遺言証書保管制度を利用することで、紛失やかいざん等によるデメリットを防止できます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公務員である公証人が作成する公正証書による遺言書の方式のことです。
自筆証書遺言は法律で定める方式に違反すると無効となる場合がありますが、公証人が作成する公正証書遺言には方式違反ということはまず考えられません。

また、原本は公証役場で保管するので、紛失や改ざん等のおそれもありません。
ただし公正証書遺言には、公証人手数料がかかる、2名以上の証人が必要であり遺言書の内容が漏れるおそれがあるなど、自筆証書遺言にはないデメリットもあります。

関連記事:遺言書の種類別にどのような費用がかかるかを解説

遺言書を作成するタイミング

遺言書は、相続財産について法定相続分とは異なる分配をしたいとか、相続人間のトラブルを防止したい等といった動機から作成されるものです。

そのため、結婚、出産などによって家族構成(相続人の構成)が変わったとき、あるいは自宅を購入した場合など財産の状況が大きく変化したときなどが、遺言書を作成するタイミングといえます。
それ以外にも、健康状態に不安が生じたときや、加齢によって物忘れが激しくなるなど認知症の可能性を意識し始めたときなども、遺言書を作成するタイミングといえるでしょう。

関連記事:遺言書はいつ作るべき?ベストなタイミングとその理由について

遺言書を作成する際の相談先

遺言書を作成したいがどうすればいいか分からないという場合の相談先としては、弁護士がもっともふさわしいと言えます。
自筆証書遺言は法律に定める方式に違反すれば無効となりますし、方式を満たして有効だとしても、内容次第では相続人間の紛争を防止することができない(一部の相続人の遺留分を侵害する等)こともあり、遺言書を作成しても遺言者の意図したとおりの効果を実現できるとは限りません。
相続に詳しい弁護士に相談をすれば、方式違反による無効を回避したり、相続人の遺留分に配慮して将来の相続人間の紛争を防止する内容にしたりすることができるというメリットがあります。

まとめ

法定相続人以外に相続させたい、特定の相続人に多く相続させたい場合には遺言書が必要です。相続人の間で仲が悪い、疎遠であるケースでも遺言書を作成しておいたほうが良いでしょう。 遺言書を作成しても、遺留分を侵害している、遺言者が高齢・認知症である際にはトラブルになってしまう可能性があります。遺言書の作成では、相続に強い弁護士に相談してみましょう。

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この記事の監修者

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弁護士 明見 裕美東京弁護士会
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