遺贈の放棄についての基本的な知識を知ろう
ざっくりポイント
  • 遺言により財産を譲り受けるのが遺贈
  • 遺贈も放棄ができる
  • 包括遺贈の場合は相続放棄と同じく期間制限や裁判所への手続きがあるので注意
目次

【Cross Talk】そんな相続財産なんかいらない!遺贈を要らないといえる?

先日知人が亡くなりました。 近所ということもありほぼ毎日顔を合わせるくらい親交があった方で、亡くなった際に遺言書を作成していたらしく、私に自宅を遺贈してくれるようです。 とはいえ、知人の相続人の方ともめるのも嫌ですし、自宅をいただいても固定資産税がかかるだけかなぁ…と。遺贈を断ることってできないでしょうか。

遺贈の放棄という制度がありますので知っておきましょう。

要らない遺贈を放棄するには?その制度や方法を知ろう。

遺言書で特定の方に財産を譲ることを「遺贈」といいます。 これだけを聞くと一方的に財産を得ることになるので得をすることのように思えるかもしれませんが、不要な財産を譲り受けた場合に維持費がかかる・相続人とトラブルになるなど、決していいことばかりではありません。そのため遺贈を断りたい…という場合もあるのですが、遺贈は契約のように申し込み・承諾という関係にない、一方的に行われるものです。そのため遺贈時に拒絶をするということができるわけではないので、遺贈の放棄をすることになります。基本的な仕組みとその手続きなどについてお伝えいたします。

遺贈・遺贈の放棄とは?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺贈とは何か
  • 遺贈の放棄の仕組み

まず遺贈の放棄の基本的な事項を教えてください。

遺言書で財産を譲るのが遺贈で、遺贈を受けた方がその効力を否定するための手続きが遺贈の放棄です。

まず「遺贈」そのものとその放棄について確認をしましょう。

遺贈の意味

遺贈とは、遺言書で財産を譲り渡す行為のことをいいます。 人は最後の意思表示として遺言書を残して、その遺言書の中で自分の財産についてどのようにするのかを決めることができます。

基本は相続人以外の者にすることが多く、法律上相続を受けることができない内縁の妻や孫がいるような場合に、遺言書で自身の財産を遺贈することがよくあります。 遺贈を受ける方のことを、受遺者(じゅいしゃ)と言いますので知っておいてください。

遺贈の種類(包括遺贈・特定遺贈)

遺贈には包括遺贈・特定遺贈の2つの種類があります。

包括遺贈とは、遺産の全部又は一部を一定の割合を示して遺贈を行うことです。 例えば、財産の一部を遺贈するのであれば「○○には、遺産の1/5を遺贈する」という形での遺贈を行います。 包括遺贈を受けた方は相続人と同様に取り扱われることになります(民法965条)。

特定遺贈とは、特定の財産を示して遺贈を行うことをいいます。 例えば、「○○には、A不動産を遺贈する」という形での遺贈を行います。 2つの遺贈の種類によって遺贈の放棄の方法が異なるので確認しておいてください。

遺贈の放棄の意味

例えば贈与契約の場合には、「あげる」「もらう」という申し込みと承諾が一致して初めて成り立つのですが、遺贈は遺言書を作るという一方的な行為でなされます。 そのため、本件の相談者のように、受遺者が本来予期していなかった財産をもらってしまうことがあります。

また、相続人には遺留分という最低限認められている権利があり、遺贈の仕方によってはこの権利を侵害して相続人と争いになる場合があります。 生前の贈与の場合は「あげます」という申し出に対して「いりません」と断れば良いのですが、遺贈の場合には「遺贈の放棄」が必要となります。

遺贈の放棄と相続放棄の違い

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺贈の放棄と相続放棄の違い

よく似た言葉で「相続放棄」というものがあるのですが、それとは異なるものですか?

法律上は違います。ただ包括遺贈を受けた場合には手続きは同じとなるということを知っておいてください。

相続の場面で似たような言葉として、相続放棄というものがあります。 相続放棄は相続人になる場合に、家庭裁判所に対して申述を行って、相続人としての地位を放棄するための法律上の手続きです。

他方、遺贈の放棄は、遺言書によって財産を譲り受けた場合の手続きになります。 遺贈の放棄は受遺者としての法律行為である一方、相続放棄は相続人としての法律行為であり、両行為は別の手続きです。

相続放棄は、相続財産があるものの負債の方が多い、相続で揉めているので遺産はいらないからその紛争から離れたい、といった場合に利用する手続です。他方、遺贈のうち包括遺贈の場合には、相続人と同一の権利義務を有することとなるため、相続放棄と同様に家庭裁判所への申述手続きとなります。

相続放棄をした人が遺贈を受けた場合

相続放棄と遺贈の違いに関連して、相続放棄をした人が遺贈を受けた場合について確認しておきましょう。 遺贈は相続欠格者以外の相続人のに対してもすることができますが、その相続人が相続放棄をすることがあります。

このような場合、相続人ではないものの、受遺者としての地位もあるため、遺贈を放棄しない限り、遺贈を受けることは法的には可能となります。 しかし、たとえば自宅をどうしても遺したいものの、亡くなった方に多額の借金があるような場合、相続放棄をしたうえで自宅の遺贈を受けるということが制度上可能となります。

本来自宅を継ぐためには、負債を含めて相続を受け、借金を全額支払うか、限定承認をしたうえで自宅について先買権を行使して買い戻すかする必要があるにも関わらず、遺贈の手続を踏めば何らの負担をせずに自宅を遺贈で受け継ぐことになります。

そのため、詐害行為取消権を主張されたり(民法424条)、場合によっては信義則違反(民法1条2項)を理由に相続放棄や遺贈を否定されたりする可能性があるとされています。

遺贈の放棄はどのような方法で行えばいいの?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺贈の放棄の方法

では遺贈の放棄はどのように行えば良いのですか?

包括遺贈と特定遺贈によって手続きが異なるので確認してください。

遺贈には、前述の通り、特定遺贈と包括遺贈の2種類の方法があります。この2つの方法によって遺贈の放棄の方法が異なるのを知っておきましょう。

包括遺贈の場合

包括遺贈の場合には、相続放棄と同様に家庭裁判所に申述をする方法になっています。 申述は、申述書と遺贈が分かる書類を、亡くなった方の最後の住所を管轄している地域の家庭裁判所に提出して行います。 この放棄の手続きは、相続放棄と同様に遺贈があったことを知ったときから3か月以内にする必要があります。

特定遺贈の場合

一方特定遺贈の場合には、このような手続制限がないので、相続人や遺言書について遺言執行者がいる場合には遺言執行者に対する意思表示で行います。 実務上は遺贈の放棄をしたことを公に示す手段として内容証明郵便で行います。

しかし遺贈義務者(遺贈の履行をする義務を負うもの)その他の利害関係人は、受遺者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨の催告をすることができる(民法987条)とされています。

そのため、この期間内に受遺者が遺贈を承認するか、放棄するのかを決めて意思を表示しないと、遺贈を承認したものとみなされることとなります(民法987条)。遺贈を承認した以降は特定遺贈の放棄をすることはできなくなる(民法989条1項)ため、迅速な判断が必要になります。

遺贈を放棄したい場合に期限はある?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 包括遺贈は相続放棄に準じるため原則3ヶ月以内の期間制限がある

遺贈の放棄の期間制限はあるのですか?

包括遺贈は相続放棄に準じて行うことになるので、上述の通り3ヶ月以内に申述をしなければならないという期間制限があることを知っておいてください。

包括遺贈の場合

包括遺贈の放棄は、上述した通り相続放棄の手続きに則って行います。 そのため、原則として「自己のために包括遺贈があることを知ったときから」3ヶ月以内に手続きをしなければならないという期間制限があります(民法第915条)。

ただし、相続人の相続放棄の場合にも、3ヶ月を経過したことにやむを得ない事情がある場合で、裁判所がやむを得ないと認めた場合には、例外的に相続放棄を認めており、遺贈の放棄も同様に例外が認められる場合があります。ただし例外であることは認識しておく必要があります。

特定遺贈の場合

特定遺贈の場合には、放棄の期間制限はありませんので、遺言者の死亡後であれば、いつでも放棄することが可能です。 ただし上述の通り、遺贈義務者やその他利害関係人からの催告があった場合は注意が必要です。

遺贈を放棄したらどうなるの?

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺贈の放棄後は対象物に権利はない
  • 手元に持っているものがある場合には、相続人等に引き継ぐまで管理する義務がある

遺贈の放棄を行った後に気を付けることはあるのでしょうか。

手元に遺贈された財産がある場合には、相続財産管理人に引き継ぐまで管理をしなければならないので注意をしましょう。

遺贈を放棄した場合には、遺贈された財産に対する権利は何もありません。 まだ実際に手元に何も受け取っていない場合には問題ありませんが、受け取った後に遺贈を放棄した場合には、手元に遺贈された財産がある状態になります。 相続人が居る場合には当該相続人に、相続人が居ない場合には相続財産管理人に、財産を引き継ぐ必要があります。

そして、その引継ぎまでは「自己の財産におけるのと同一の注意」(※)をもって相続財産を管理する必要があります(民法第918条)ので、注意が必要です。 (※)財産についての注意義務については「善管注意義務」という取引の当事者が守るべき注意義務があるのですが、自己の財産におけるのと同一の注意義務は、これよりも一段階低い注意義務であるとされています。

要は商売をするにあたっての業者のような注意が必要か、自分のものと同じような扱いでいいのか、という注意義務の違いがあることも知っておきましょう。

遺贈の放棄をする際の注意点

知っておきたい相続問題のポイント
  • 遺贈の放棄は基本的には撤回ができない
  • 遺贈の放棄をしても相続分は残る

遺贈の放棄をする際の注意点はありますか?

遺贈の放棄は、原則として撤回ができないこと、遺贈の放棄をしても相続分は残ることを知っておきましょう。

遺贈の承認・放棄をしたら基本的に撤回できない

遺贈は一度放棄をしたら基本的に撤回ができません(民法989条1項)ので、遺贈の放棄については慎重に行いましょう。 例外的に、遺贈の放棄が、錯誤、詐欺・脅迫によって、無理やり放棄をさせられたような場合には、放棄の意思表示の取消や無効の主張ができる可能性があります(民法989条2項、919条3項)。

遺贈の放棄をしても相続分は放棄されない

遺贈を受けた方が相続人である場合には、遺贈の放棄をしても、自身の相続分まで放棄されたことになりません。 したがって、相続争いに巻き込まれたくないと理由で遺贈の放棄だけをしても、そのままの状況では、相続人として遺産分割に関与する必要があります。 この場合、遺贈の放棄のみならず相続放棄の手続きも併せて行う必要があります。

遺言者の生前に遺贈の放棄はできない

遺贈の放棄ですが、遺言者の生前に遺贈の放棄をすることはできません。 遺贈の放棄について定める民法986条1項は「受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。」と定めており、遺言者が存命である間は遺贈の放棄はできません。

生前でも家庭裁判所の許可があれば行うことができる遺留分の放棄(民法1049条)とは異なるので注意しましょう。

死因贈与と混同しないように注意をする

遺産を譲り渡すことができるという同様の法的効果が発生するものに、死因贈与というものがあります。 死因贈与とは、一方が亡くなることを条件とする贈与契約で、一方的な意思表示でなされる遺贈と異なり、契約となので双方の合意が必要です。 一方的な行為である遺言とは異なるので、注意をしましょう。

まとめ

このページでは、遺贈の放棄についてお伝えしてきました。包括遺贈・特定遺贈で手続きは異なりますので、上記で記載した点に注意して手続きを行う必要があります。 不明な点があれば弁護士に相談して行うようにしましょう。

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この記事の監修者

弁護士 西部 達也第二東京弁護士会
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